ヨシダヒロコです。
今回体調が悪く参加が危なかったのですが、懇親会(途中まで一緒でしたが、自分の好きな片町のごしゃごしゃしたところ)は取りやめました。
課題本は読書会にも自分にも初のドイツミステリーで、評判が高く読みたかったものです。
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犯罪 (創元推理文庫)
フェルディナント・フォン・シーラッハ 東京創元社 2015-04-03 |
短編集で、犯罪を犯した人の11の物語。ページ数も知る限り課題本としては一番少なく、ネタバレしてもよければ読んだ作品だけでも、ということでした。ギリギリに買いましたが、結局金沢へ行く電車の中で読み終えました。ドイツというと、きっちりかっちり融通きかない的なイメージありそうですけど、もともと弁護士が本業である罪人に対する(やむにやまれなかったケースも多い)著者の温かい目線を感じました。むかし第2外国語の授業で陰鬱なリーダーを延々読まされたせいもあったかも。今回結構イメージ変わったと思います。
少し遅れて着いたら、ちょうど始まるところでした。連休ど真ん中、リニューアルしたばかりの109にうつのみやが入ることになり、地下フロアの広場に衝立を立てての会でした。幹事さんは「翻訳者さんは(会場の様子の予想が付かず)デンジャラスなので呼ばないことにした」と。確かに案内をする係の方がわたしの真後ろにいて、方向が分からない人に何回も道案内をしてました。
読書会では詳しい資料を頂きます。著作リスト、著者プロフィール、翻訳者さんの金沢読書会へのメッセージ。今回酒寄先生は、この辺りに住んでらしたことがあるそうで、立山を舞台にした掌編も寄せてくださいました。シーラッハは著者紹介にあるとおりナチの末裔なので、そういう出自の人にスポットライトが日本では当たりにくい気がしますが、そこに向き合った作品も書いたと説明がありました。
その他に、途中でですが、NHK語学講座で知られているマライ・メントラインさんのブログ記事も紹介してもらいました。3年ほど前に卒業するまで、NHKテレビ講座など見てたのでドイツ語を目にする機会あったと思います。結構ドイツ人の本音が出てたり、意外と言葉の響きが明るかったりしましたっけ。
【まさかの来日】 天才作家シーラッハ、やはり尋常じゃなかった!
自己紹介が一巡して、感想のコーナーになったのですが、幹事さんがどの作品が一番好きかをカウントしていました。ぶっちぎりで『フェーナー氏』、次点で『チェロ』でした。わたしも皆さんも他にいいなと思った作品はあり、同じ博物館でずっと警備しているうちに妄想を募らせていく『棘』、完璧な『正当防衛』、シーラッハお得意の共感覚ものと見られる『緑』など。ラストのスカッとする『エチオピアの男』などが挙がったと思います。
人気の高かった『フェーナー氏』は、わたしは妻から夫に対するモラハラで追いつめられる、しかもこれだけのページ数で怖さが出るのはすごいと思ったのですが、男性2人が「怖い」と、結婚生活の長い方が2人「結婚生活も長いといろんなことが……」という感想でした。『チェロ』は仲のいい姉弟に起こった悲劇で、好きなかたはどっぷりという感じで絵で表現された人も。
ちなみに『サマータイム』は文庫化で4行ラストに加えられており(ハードカバーにはない)、それでもトリックが分からないのですが、みんなで疑問持ち寄ってどうなったんだっけ?解説があったんですがそれで合ってたか忘れてしまいました。
どちらかというと、ミステリーというよりこんがらがった人間模様を経験した人の事件簿を見ているような。複数の人が言ってましたが、明らかにドイツ系の名前ではない登場人物も多いんですね、という意見も。司法制度も日本とは大分違うようでした。
ドイツミステリ、堪能いたしました。次は9月だそうで、なるたけ行けますように。