長らく積ん読の『朝日新聞校閲センター長が絶対に見逃さない間違えやすい日本語』レビュー。

ヨシダヒロコです。

わたしが普段使わない「自慢」という言葉をわざわざ使いますが、『校閲ガール』はドラマになる前に目ざとく見つけて大好きになりました。本を買ったころに訳は忘れたけど校閲に興味を持っていて(今もですけど)、一緒にAmazonのサジェストで朝日のこの本を知ったのだと思います。長らく積ん読でしたが、冬頃にペットの看病をしつつ獣医さんの待ち合わせなどで本を開き読み終えました。

間違った言葉遣いを読みやすく教えてくれる本で、ようやくご紹介できます。新入学・就職などのシーズンに当たっているため遅れてちょうど良かったかもしれません。文章の書き方講座もあります。

『校閲ガール』は昔ブログを書きました。今は続編2冊が出ていて是非レビューしたいです。下に貼ったのは文庫本も出ています。ドラマも合わせてお薦めです。

ひたすら楽しいエンタメ『校閲ガール』。

翻訳者は(「翻訳家」は訳書を何冊も出してる人で、わたしみたいな実務系の人は「翻訳者」といいます)語学力があればなれると勘違いしている人が多く、「外国暮らしの経験があれば」「留学してれば」という話になることはありますが、大事なものが抜けています。そう、日本語。わたしは20代の頃に県の研修を受けてボランティアで2年ほど日本語教師をやりました。「こそあど」とか「は」と「が」の違いを外国語として眺めたときに説明できない自分がいました。当時もう翻訳を視野に入れていたため、そもそも自分の母語を理解していないことに気がつきました。日本語は勤め人や学生同様、翻訳者にもとても大切なことを知ったのでした。

わたしは普段なるたけ本を本屋さんで買っていますが、品揃えはネットが勝っているので(近くにそんな大きな本屋さんがない)注文かける際にAmazonの「なか見!検索」は嬉しいですね。見ると分かる通り、○×やクイズ形式で間違った日本語を解説してくれていて、レイアウトもほっこりする絵が入っていて読みやすいです。わたしも間違えたものが少ないとは言えなかったので、自分でスキャンして電子データにしたい!と思ったくらいでした。

四字熟語の漢文のうんちくはなかなかお役立ちで、例えば「朝令暮改、朝礼令改」(p106)のウンチクを引用すると、

前漢の文帝の頃、商人や地主の力が強くなり、農民が疲弊していました。そうした状況を臣下の晁錯(ちょうそ)が文帝に上奏しました。その内容が班固の「漢書」食貨志(しょっかし)に記されています。食貨志は「食」と「貨幣」にまつわる話をまとめた、いわゆる経済報告書のようなものです。

勤苦此(かく)の如くなるに、

尚復(なおまた)水旱(すいかん)の災被(あ)り

急政暴賦(きゅうせいぼうふ)

賦瞼(ふれん)時ならず

朝(あした)に令して而(しか)も暮改む

「農民の生活はこのように苦しいのに、水害や干ばつに見舞われ、苛酷で暴力的な政治に虐げられ、急に租税をかけられ、朝に出された命令が夕方には改められる」と農民が翻弄されている様子を報告しています。その中に「朝令暮改」が書かれているのです。

という感じで、かなり読み応えがあります。間違って使う人、自分含めて沢山いそうだと読み進めるうちに思ったのでした。

各章末には、著者の教えていたカルチャーセンターの添削でこんな風に直しました、という実際の例が出てきます。わたしは今まで接続の意味で「が」を使う人でしたが、これを読んでからできるだけやめています。

著者の前田さん、朝日校閲センターの本には文章書き方の本も含めるとこんなものがあります。朝日からはこの他にもあり多いです。すぐ下の本は、「マジで書けない」人がAmazonレビューで怒っている模様。

朝日系ということでは、昔これを参考にしました。翻訳者の間では定番です。ほかに中公新書でいいのでしょうか、『理科系の作文技術』もあります(未読)。

毎日からも出ています。他の新聞社は探しましたが辞典で小学館があるのみだったかと思います。記者ハンドブックみたいのは色々出てます。

意味がすっきり通る美しい文章を書くことは、翻訳者の目標だと思います。日本語に訳すときも、その反対でも、気をつけていないと外国語に引っ張られて滑らかになってくれないのです。そんな訳で日本語(書き方・文法諸々)が大事なのよく分かっているので、こういう本も読んで適宜アップしますね。

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和む本(6)と今さら2018年カレンダー、すべて星関係。

ヨシダヒロコです。

車だろうが電車(第三セクター)だろうがまともに走ってくれず、こんなの小学校以来のことなのでびっくりの冬でした。北陸の人はこれで完全に春になるとは思わずまだ警戒していると思います。なので、富山市の本屋で取り置きしてもらったカレンダーが2月下旬まで買いに行けず。

まあ、お金持って富山市に行って、別の本を買ったこともあるからわたしも悪いんですけど。

このカレンダーは天文系の検定用で、暦の部分は星の運行などがこまこま書いてあります。写真はとても美しく、3月はもう消えていきつつある冬の星座オリオンです。ただおばちゃんのわたしが近くを見る用の眼鏡で見上げると全然字が見えず、写真も値段高くしてもいいからもう少しサイズが欲しかったかな。これは寝る前の和み用です。検定については今のところあまり考えてません。

仕事部屋にはNewtonの11月号付録を貼っています。ハッブルがとらえた”Mystic Mountain”とのことです(わたしの写真、綺麗に撮れてないですが)。上と同じく装飾的に使っています。在庫がなくなるのがすぐなので、Newtonは昨年末からFujisankei経由で定期購読していますが、沢山読むのはなかなか難しく、日経サイエンスも読みたいなーと思うのに追いつきません。このカレンダーについては付録つき中古はもうないかも。

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実務的なものは、この間3月からのものが届いたGE Healthcareの卓上カレンダーです。めくるの忘れるくらい最近見てないですけど、手近にあると便利です。応募は研究者ではなく翻訳者と書いても通ります。過去ログに書きました。

写真集的な本と、写真集が続きます。

Amazonだったかでお薦めされたものを覚えておいて、本屋さんに注文かけたのを年末に買いました。綺麗な星の写真と豆知識が書いてあります。知らなかったこともありました。

この写真集は見ての通り2016年刊で、第3写真集が2017年末に出ています。処女写真集については前に告知のみ書いていると思います。こんなすごいのは撮れそうにないですが、KAGAYAさんはホタルイカの時期にうちの県にも来ています。撮影条件も書いてありますので、頑張ればホタルイカ撮れますかね?

確か『趣味の園芸』バックナンバーも買ってきた覚えがあるので、またお花の写真でもぬくぬくしながら見ることにします。

『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃』読了。

ヨシダヒロコです。

Hand inserts a molecule into DNA.

Credit : Adobe Stock

これは翻訳祭で言及したうち最後のレビューです。あの時点では真ん中より後ろを読んでいました。年内に読了しており、2018年1月早々にレビューするつもりでしたがいろいろあって遅れました。仲野先生の病理学本のおまけがありますが、4月にずれ込むでしょう。

『ゲノム編集の衝撃』と比べてこの本の特徴を一言で言えば、前者は入門書なのに対しこちらはよりディープかつ詳細であること、人工知能やクラウド・コンピューティングとの組み合わせでゲノム解析を加速化することが書かれています。ITへの言及は前者にはありませんでした。難病が治るかもという使い方もできれば、SFのようなことも可能になるかもしれません。そういう意味で、実現するようなことがあればわたしでさえ恐ろしいと思うような話もありました。すでにAndroidもGmailもアマゾンも使ってますけれど。

著者の小林雅一氏は東大理学部物理学科卒、ボストン大でマスコミ論を専攻、雑誌や新聞社での勤務経験があり、慶應メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭、現在KDDI総研リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授。専門は先端技術(IT、ライフサイエンスなど)の動向調査ということです。ずっと大学にいた方ではなく、民間経験も豊富な方がご自分の得意な分野で書かれた本という印象です。

目次を書き写しておきます。

1章 「人類の寿命は500歳まで延びる」は本当か――ゲノム編集「クリスパー」の衝撃

2章 解明されてきた人間の「病気」「能力」「特徴」――パーソナル・ゲノムの時代

3章 ゲノム編集の歴史と熾烈な特許争いの舞台裏――誰が「世紀の発明」を成し遂げたのか

4章 私たち人類は神になる準備ができているか――グーグルとアマゾンの戦略

2章に分子生物学の説明もあるのですが、初学者や勉強中の人に親切とは言えない気がします。図もその部分を除けば少ないので、すでに生物や分子生物学の知識が多少ある人、ITにもひどいアレルギーがない人に適しているように思います。

1987年、大阪大学微生物病研究所の石野良純氏(現・九州大学教授)が発表した論文中で、大腸菌DNA内に奇妙な塩基配列が発見されました。それから四半世紀、これをベースにクリスパー・キャス9が作られました。メスのようにDNAをピンポイントで切断、遺伝子組換えにはるかに勝ります。分子生物学の基礎さえあれば誰でも扱え、そして早いのです。

問題点はオフ・ターゲット効果で、狙ってない場所で切れてしまいます。

中国で行われたヒト受精卵のゲノム編集について(2015)、デザイナーベビーの問題について。どこまでが医療でどこからがそうでない目的なのか、境界線をどう引くかは難しい問題です。生まれてくる我が子の知的障害をゲノム編集で治療する場合、ナチスが行ったような優性学を思い出させるなど、倫理面での議論が豊富と感じました。

クリスパーは特許を争っていますが、群がる大企業や動く金が生々しい(企業名が出ている)様子です。

2章は上に書いたように分子生物学の説明がありますが、初めての人がいきなり読んでもたぶん分からないでしょう。ゲノムワイドなど、ゲノムから病気の原因となる遺伝子を発見する試みが書かれています。

前に紹介した『ゲノム編集の衝撃』はアメリカのチャン氏しか取材していなかったのですが、本書では特許争いのもう一方であるアメリカのダウドナ氏とフランスのシャルパンティエ氏についても3章でバックグラウンドを書いています。「ノマド科学者」だった、と書かれているシャルパンティエ氏のヒストリーは興味深かったです。

ところで先日、豚の体内でヒトの臓器を作るという驚くような研究があってネットでも議論されました。カズオ・イシグロの小説みたいだと。

多少似た話がこの本にもありました。豚とヒトは臓器のサイズが似ているのでいます。臓器移植を目的として、移植した場合感染してまずいことになってしまう豚のレトロウイルスを発現する遺伝子を62個もゲノム編集で改変したという話です。1型糖尿病患者に豚すい臓の一部を移植することは外国で行われており、日本でも2016年にヒトと豚など異種移植の実施を許可しました。ちなみに1型糖尿病は遺伝性。他の遺伝性疾患、難病も遺伝子治療の歴史があります。

気持ち悪いとか言う人の気持ちもそうだろうとは思うのですが(生理的に気味が悪いという感情は周りからはどうすることもできない)、喉から手が出るほど臓器が必要なことに生まれながらなっている人の気持ちは、中年になって実は長患いが遺伝病だったらしいと分かってしまったわたしには何となく分かります。健康だと分からないでしょうね。ちなみに、昨夏金沢であって行ってきたCiRA(iPS細胞研究所)のサイエンスカフェで聞きましたが、糖尿病で一度にダメになるというすい臓・肝臓・腎臓の移植率は待ってても各1桁(%)です。

ここまで書いてきて何ですが、ゲノム編集はすでにこれから学ぶ人にとってはすでに「遅れて」いるそうです。ツイート中にあるURLトップページでもう記事はそこにはないため、改めてリンクを貼り直しました。だから分子生物学は進歩が早いと翻訳祭でも言ったのです。

ゲノム編集技術「CRISPR」は、もう古い? すでに研究は「次世代」へと向かっている

魚拓

今までの技術を知るためには、倫理面も分かる本書はコスパも良く最適ですが、入門書ではないことに注意して読んでもらえたらと思います。

第4回日本翻訳大賞読者推薦作品投票(2018/01/20~31)(2018/02/05推薦文追記)。

ヨシダヒロコです。

translationaward

放送大の試験他でとっ散らかっていて、やっと投票する気力が出ました。こちらに書くのが遅くなりましたが、明日までです。

https://besttranslationaward.wordpress.com/

わたしの推薦文に問題がなければ、あとで貼り付けます。候補作には条件がありますので、HPをご覧ください。匿名での投票もできます。

(2018/02/05 4:18追記:今見たら推薦文が全部出ていました。バラエティに富んでいます。自然科学や医学その他の翻訳書を薦める人が出て欲しいです。去年『重力波は歌う』を読んで推薦しておくべきだった……去年、小説などは全然手が回りませんでした)

【推薦者】吉田 博子
【推薦作品】『遺伝子は、変えられる。――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』
【作者】シャロン・モアレム
【訳者】中里京子
【推薦文】
医学・分子生物学分野で熱いエピジェネティクスを、豊富な患者の例(プライバシー配慮済み)と著者の広い興味範囲で巧みに結びつけ、難しい概念のハードルを下げた本。DNAの塩基配列はそのままでも、外的なきっかけなどで遺伝子がオン/オフになる不思議な現象で、親から引き継いだ遺伝子がすべてではないことを説明してくれる。ただ、ものによっては経験したことが子孫に遺伝するケースもある。エピソードが面白くて、ダビデ像は石の性質からかかとが弱くて修復をよくするというトリビアから人間のかかとの話に持っていったりして全体でエピソードが集まってひとつの「お話」のよう。読みやすく訳した翻訳家さんにも敬意を表したい。とかく難しいといわれる医学などの分野でもっとこういうポピュラーサイエンスの好著が出て欲しい。

 

左巻先生ご夫妻の検定外教科書『大人のやりなおし中学生物 木と草の違いはどこにあるの?ごはんをかむとなぜ甘くなる?』読了。

ヨシダヒロコです。

翻訳祭で話した本のうちでラストから2冊目。実はこれが易しそうに見えてなかなかどうしていい意味で期待を裏切りました。初学者の場合レイアウトも大事だと思っています。この本は手書きイラスト、色つきの部分、文字の配分が良く、好感が持てました。

わざわざ「左巻先生の」と断ったのは、理科教育やニセ科学批判問題で有名な方だからです。ニセ科学とは科学に見えてそうでないものを指し、例を挙げれば「水にきれいな言葉をかけたらきれいな結晶を作る」みたいなものです。ご夫妻で教育現場に長年おられて、著書も沢山ありますがこれが初めて読む本になりました。下に挙げる「高校生物」の化学版(左巻先生著)はレファレンスとして秋に買いました。

中学生物だけでなく、高校生物の検定外教科書もあります。著者からいって間違いないのでそのうち揃えておきたいのですが。

共著者は北大理学部の教授をされていた栃内先生。ブログつながりが長く、今はよくTwitterを拝見している先生です。『進化から見た病気――「ダーウィン医学」のすすめ』(ブログ掲載時に題名間違ってました、すいません!)は2009年出版時に読んでブログにレビュー(リンク)があります。

 

「中学理科」は題名にあるとおり、大人が生物をやりなおす場面になったときのための検定外教科書です。1章30分で読めるように書いたとあり、確かに読みやすいです。Amazonにページの画像があります。検定外のため、文科省の指導要綱には従ってない部分があり、元塾講師・家庭教師として思うにはDNAのあたりがかなり突っ込んであるのがそうでしょうか。最近は知りませんが、中学校ではほとんどやらないのではないでしょうか。

読者対象はこんな人々。P3より、

1.仕事や学業で生物の基礎を短時間で学び直したい大人。

2.中学生物を短時間で復習したい中学生、高校生。

3.中学生物の全体を知るために予習したい中学生。

このうち、1.の人がメインだそうです。受験準備にもいいと思います。

さらに目次をあげておきます。

第1章 植物の体のつくりと働き・暮らし

第2章 植物の仲間とその歴史

第3章 動物の暮らしと体のつくり

第4章 動物の仲間とその歴史

第5章 生物の細胞と発生

第6章 生物の遺伝

第7章 生物どうしのつながり

第8章 生物の進化

第9章 生物の歴史

第10章 人類の成り立ち

4択ミニテストが随所にはさんであり、簡単そうに見えて意外に間違えてしまうのですが、理解度を確認できます。とはいっても基本的に読み物なので、見開きなどでコラムがあって「へええ」「ほー」という内容で読みでがあります。これだけ内容があって、もし読者が理解できたら簡単にニセ科学にもだまされないのでは?と思うくらい。

わたしは前半を読んでいて、「ああこんな話子供の頃に大好きだったなあ」と思い、分子生物学のところは一応確認のために読み、「遺伝子組み替え」のコラムを頷きつつ読み(知らないことがあった)、最後の方で、太古の昔にあった植物や恐竜の絵や描写があるので、今そういう生き物が生きていたらどんなだったかなと想像したりしました。

字はまあありますが、新書サイズで小さいのでどこにでも持っていって読めます。生物はとても範囲が広いと放送大学の院で授業を取ったときに教わりました。この本は「中学」と付いてはいても、今の時代を生きていくのに最低限必要な知識を楽しく読書してつけられる本だと思います。

「理系のハナシは難しいと思っていませんか?実は中学レベルの約束事を知っていれば、内容の多くを理解できます」(裏表紙より)。

『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』読了。

ヨシダヒロコです。

しばらくは翻訳祭で紹介してレビュー書いてない本を中心に書いていきます。先月末は本を掛け持ちして結構大変でした。この本はゲノム編集についての一般向けの本で、クロ現が元になっているそうです。

またもや書評サイトHONZより、クマムシ博士こと堀川大樹さんの文です。

『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』来るべき未来に備えて正しい理解を

先月だったか見た番組『BS1スペシャル「“ゲノム編集”食物~密着 食の未来の最前線~」』魚拓)、これはオンデマンドでも見られるし、再放送も今後ありそうですが、映像で見ると不気味に思うところもありました。日本で作られている、ゲノム編集ですごく大きく育つ(正確には筋肉が増える)マダイとか。技術的には遺伝子組換えより安全だそうですし、その理屈も理解してはいるのですが。

目の前にあったら?もちろん味見はしますよ。うちの辺りでタイはあまり食べられないですし、あまり刺身でスーパーに売ってないんです。

怖い感じがしたといっても、このドキュメンタリーの中で研究者が言っているように、「自然」な食べ物なんてもうないんです。品種改良の知識のある人はご存知かもしれません。交配でかけ合わせてかけ合わせて、人間に都合のいい野菜や家畜が作られてしまっています。

今、秋にあったお花の品種改良についてのサイエンスカフェをまとめていて、写真の許可待ちです。そこでゲノム編集の話を初めて聞いたのですが、きれいなお花も分子生物学バリバリでどんどん新しい品種が作られています(とはいえ品種改良でも観賞用でも原種は珍重されますけどね)。今ざっと見直すと、その研究施設も本に(追記)出てました。

本の話に戻ると、ゲノム編集で使うクリスパーという塩基配列は、もともと日本人研究者が見つけた不思議な配列が元でした。そこにキャス9というのをあとでくっつけたのですが、同時期に発明したとかしないとかややこしい理由でヨーロッパの研究者ペアとアメリカの研究者の間で訴訟問題になっています。特許専門の翻訳者さんは、経緯に興味を持つでしょうね。取材班はその片方、アメリカ側の研究室訪問も行っています。

ノーベル賞確実と言われているだけに、誰に特許が認められるのかは大きいかもしれません。

その他にも研究のエピソードが豊富で、なかなか見られないものを取材班に連れ回してもらっているような感じで面白かったです。段組がゆったりして写真や図があり、とっつきやすいレイアウトではと思います。

医療への応用も期待されており、iPSとの合わせ技もあるそうです。

もちろん倫理上の話も書いてあります。遺伝子組換えの時で行ったように国際会議を開いたりしていますが、ヒト受精卵の扱いをどうするのかは抜け駆けする人もいるらしくて。

BSドキュメンタリーではこんなものがありました。『オーダーメイド・ベイビー』(魚拓)。デザイナーズ・ベイビーと同義かと思います。「これこれこんな赤ちゃんが欲しい(例えば髪はブロンドで、目は青で……)」という望みを叶えてしまう?という話。3つの番組が紹介されていて、一番興味があったDNA捜査の話は期待を裏切らなかったです。とはいえ、NHKのドキュメンタリーを全部信用しているわけではありません。一応見てみてから考えてます。

ちなみに科学捜査については化学同人から『科学捜査ケースファイル 難事件はいかにして解決されたか』という本が秋に出てたの、やっと注文できました。まだ東京で紹介した本で読み切れなかったのを読んでいたので、翻訳祭の後工程はわたしの中でまだ終わってなかったのですね。気晴らしの本も読みたいですね。

今後紹介する2冊目、『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃』は字数も多いし図も少ないし、それなりに基本を押さえてないと読めないです。扱っている話題はこちらの方がディープです。

『遺伝子は、変えられる――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』読了。

ヨシダヒロコです。

翻訳祭のミニ講演会で紹介した多くの本のうち、一押しでした。これはとっくに読み終わっていますが、最後におまけでつけてあまり説明できなかったスライドにあったゲノム編集の本は、片方がもう少しで終わります。

翻訳祭でもお話ししたし下のリンクにもアップしたのですが、エピジェネティクスについて読んだ本はこれが4冊目です。他に、羊土社の専門書を買ったはいいが眺めて「歯が立たない」と思ったこともあります。それで、これが一番分かりやすかったです。というか型破りでした。

第27回翻訳祭ミニ講演会『専門外から生物・バイオ系を武器に ~メディカルの基礎にも』資料(1)プレゼン資料(2017/11/29、アルカディア市ヶ谷)。

第27回翻訳祭ミニ講演会『専門外から生物・バイオ系を武器に ~メディカルの基礎にも』資料(2)書籍情報など(2017/11/29、アルカディア市ヶ谷)。

もちろん、その前の3冊やさらに生物の基礎について本を読んでいたから楽しく進めたのかもしれません。そこは無駄になってないと思いますが、手っ取り早くどんな感じか知りたいという方には、この本をまず読んでもいいかも。今とても進歩の早い分野だそうですが、4分野ほどの医学周辺領域の話に医学や遺伝と関係のない身近な話をうまく混ぜてあります。Amazonレビューでは、「実生活に関係ない」というハッピーな方もいらっしゃいましたが、がんにも関係あるのでその人も将来無関係ではいられないかも。わたしは遺伝性の病を持っており、それもあってエピジェネティクスを知ろうと心に決めました。

この本には遺伝学や分子生物学の理屈には詳しく立ち入っていなくて、読み物として面白いという感じです。最初の方の章をお見せするとこんな感じで、話のバラエティが多彩でついつい読んでしまいます。理屈や理論が知りたい方は本屋さんへどうぞ。特にDNAってなんだっけからやりたい人は、今入試前でいろんな参考書があるのでは。中学高校の参考書(教科書より手に入りやすいしカラーで見やすい)、学び直し的な本も豊富なはずです。複数眺めているとぴんと来る本があるのではと思います。

 

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背景を入れて著作権には配慮したのですが……(以前写真家さんに聞きました)

 

翻訳は、原書を見たわけではないですがすらすらと読めとっかかりが少なかったです。「ぼくら」という1人称複数についてAmazonレビューで指摘がありましたが、たぶんWeでしょうが訳しにくそうで悩ましいです。きっと著者は親しみを込めて書いたのでしょうね。

ひとつ疑問があるとすれば、予備知識のない人には「遺伝子は変えられる」と言われると本当に変えられるのかと勘違いしそうなことで、実際には遺伝子の一部がスイッチを入れるようにオン、オフになって、オフになるとDNAの機能が変わったり止まったりしタンパク質も作られなくなるだけで、塩基配列は変わらずそこにあるわけです。遺伝子が制御されるためいいことも悪いことも後天的に起こる場合があって、中には子孫に伝わるものもあります。この本で出てきた「トラウマ」などがそうです。題名については出版社の意向が大きいことを知っていますが、少々ミスリードだったかなと思います。

Amazonレビューの中には、何かの自己啓発本と勘違いしている人がいました(苦笑)。

ちなみに原題は”Inheritance   How our gene changes our lives-and our lives change our genes”で、『遺伝――遺伝子が生活を変え、生活が遺伝子を変える方法』という感じでしょうか。”Lives”は、「生命」と「生活」の掛け言葉のような気がします。

わたしにはエピジェネティクスはこの身に関わっているためすごく身近に感じる話なんですが、なんだか体の中でこまこまやっていると思うと面白いですね(腹が立つこともあります)。医療にもこれからどんな風に使われていくのか、現状はどうなのか、膨大な論文があるのでしょうが知りたくなりました。

いたばし国際絵本翻訳大賞(2017年イタリア語)向けに絵本を探した話。

ヨシダヒロコです。

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11/30締め切りだったこのコンテスト、上京する用があったのでコツコツ仕上げて27日には投函できるようにしましたが、上京する道すがら地元の中央郵便局が時間が遅すぎて閉まっていて、結局東京まで運びました。

訳出に当たって、絵本関係は全く初めてなのでまず文体、と思い絵本はいろいろ読みました。最終的には課題関係なく自分が幼い頃に読んだものを眺めて「きれいだなあ……」となっていました。課題書は3~4才向けなので、そういう絵本を探してみると書き方が分かります。アメリアのコラムが色々あるらしいので1本読みました(英語向けですけど)。コンテストの講評を読んでおかなかったのは手落ちでした。姪が小さかったときどんな風に話していたかなとリアルな言葉遣いを心がけ、語尾にも気を使いました。小さな子が話している割には文法が難しかったり探しきれない表現や単語があったりしました(まだ自信がない)。

ここに挙げた他に日本人が書いた3~4才児向けも読みましたが、話は素敵だけど絵が惜しいなあと思ったので挙げません。結果的に全部翻訳書になりました。ミッフィーはこれが初めてになり、年齢ごとに別れているのですが、ブルーナ氏は晩年は下のようなテーマを書いていたらしい。第1作を読むと大分違います。Eテレ『グレーテルのかまど』でブルーナの特集を見て知りました。

『スイミー』は今はバイリンガルで出ているのは知りませんでしたが、原文も訳文も詩のようで、短いけれど訳しにくそう。必要な場合には谷川俊太郎さんは言葉を補って、でも世界観が壊れないようにしていました。それにしても、わたしが読んだのは教科書だったので絵本だと絵が美しいこと。ほれぼれでした。

あとは幼いときに読んだものですが、最初の2冊は多分教科書でです。自分の中でキツネのイメージがよくなったの、この絵本たちの影響もあるのでは。新美南吉って旧仮名遣いで書いていて、宮沢賢治と並ぶほどの人だったのですね。黒井健さんの絵は、故やなせたかしさんの雑誌『詩とメルヘン』でよく見かけていて好きでした。投稿詩にイラストレーターが絵を付けるのですが、雑誌の版が大きいので迫力がありました。Wikipediaにはその後『詩とファンタジー』になり、やなせ氏の死後年2回発行になったとあります。有名な話なので、いろんな絵で出ているそうです。このシリーズからは賢治の絵本も沢山出ています。
この絵本、モノクロの絵が素晴らしくて引きこまれるんです。もともとわたしが好きな話をイギリス人が翻案したもので、字が多くて小さい子には向きません。恋の神キューピッド(エロス)と人間の娘プシケーの愛の話ですが、訳者あとがきも素晴らしい。恋はひとを「お馬鹿さん」にしてしまうもので、キューピッドは矢で自分を傷つけてしまうし(矢が当たるとその後見たものを好きになってしまう)、「お馬鹿さん」なプシケーは「これをしてはいけない」という昔話でよくあるお約束を破ってキューピッドの信頼を失ったとき、身を投げようと何回もしながら、「お馬鹿さん」と助けられながら色々努力します。この人と思ったらひたすら一途な姿がいじらしく、こういう2人はもう神話の中にしかいないのではないか、打算だらけの現代には存在しないのではないかと思うのです。
まあ少なくともわたしには関係ない話でしょうね。でも、この絵本を始め気に入ったものは少しずつ買いそろえたいです。他には同じ出版社で『ねむりひめ』も読みました。

今さらですが『翻訳で、稼ぐ!猫先生の実務翻訳ガイド』。

ヨシダヒロコです。

 

 

一昨日納品した案件は趣味に少し関係があるのですが、第2外国語で取ったことがあり『旅するユーロ』で見てる言語→英訳→和訳でした。しかし英訳がおかしく、原語でネット辞書を引いたり検索したり。他の言語を訳した翻訳者さんも困ったのではないかなあ。

さて、Kindleを触っていて、お友達の猫先生の本を紹介していなかったことを思い出しました。猫先生は同郷の出身で、また同業の友達では一番古い付き合いに入り、とても頼りになる人です。去年、本を書く勉強会に参加した後この本を出しました。

紹介が遅れたのは、本が出てすぐ読んだきりKindleをしばらく開けてなくて、夏頃から久しぶりに開けこの本も読み返したのです。文章はつるつる読める感じです。お値段もリーズナブルで、これから翻訳者になろうとする人にちょうどいいかも。わたしを含め、初心を忘れちゃったかもという翻訳者さんにもお薦めです。

仕事がない場合とか、トライアルに受かるにはとか、専門分野ない人はどうするなど皆の気になることが丁寧に書いてあります。仕事ないときは、落ち込んで当たり前のことできなくなりますよね。

(わたしの場合、

1.トライアルを受ける。
2.勉強する(知識・英語や他言語・翻訳)。今年勉強だらけだったのは暇だったからです。
3.何ヶ月も仕事なくても、なるたけくさらない。

最近はたまにアメリアの定例トライアルを受けたりして弱点をさぐってます)

他に、翻訳志望者や仕事する上でのQ&Aが親切で、ブログ『女は翻訳でよみがえる』(このブログにもリンクあります)からの抜粋も。

今は猫先生はご近所ではなく、お互い富山にいたときもときどき会っていただけなので、最近インタビューなどで「へえ、知らなかった」と思うことがあります。Kindle本に1カ所富山弁をさっき発見して受けていました。

今年は翻訳に関する本をよく読んでいる方ですが、こないだ読み終わった学習者にビシビシ愛の鞭をふるっている本(山岡洋一先生)もそのうちご紹介します。

和む本(5)――『ピノコトリビュート アッチョンブリケ!(手塚治虫「ブラック・ジャック」40周年アニバーサリー)』