第1回JTF翻訳品質セミナー『誰も教えてくれない翻訳チェック~翻訳者にとっての翻訳チェックを考える~』齋藤貴昭(Terry Saito)さん(2017/05/22)に出席して。

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ヨシダヒロコです。

このエントリもっと早く上げたかったんですが、強行軍で東京と往復し、帰宅後しばらくして強烈な風邪を引き、熱出して寝込んだり、今月は気温が低く持病の頭痛がひどかったりして、やっと落ち着いてきました。この話はきちんと書きたかったですからね。

このセミナーは昨年JTFの翻訳祭で伝説になったものだったので、早々と希望を出していました。続く石黒さんのお話も聞きたかったのですが、予算の関係でアウトでした。JTF翻訳品質セミナーは旧「標準スタイルガイド検討委員会」から名前が変わってから今回が初めてで、HPには「本セミナーは、翻訳の品質を真剣に考え、その向上に実践的に取り組む方のための講座です」と書いてあります。

https://www.jtf.jp/jp/style_guide/styleguide_seminar.html

テリーさんのお話は4年前にWildLight出だしのころ大阪で聞きました(下のリンク)。このツールはWord上で動くマクロなのですが、TagEditorの仕事がその頃多く使いこなせずにいました。今回お話を聞いて、あの時の話をバージョンアップさせた感じだと思いました。JTFセミナーで同年末に似た主旨のお話があったようです。

関西通翻勉強会SKITに参加しました(2014/07/20)。

会場は東京の土地勘が少しあってもちょっと分かりにくく、まあまあ早起きしたのに早くホテルを出なかったためもあり、3駅からアクセスできる分複雑でした。少々遅刻。

会場では噂のチェックマトリックスがハンドアウトとともに渡されました。A3 くらいで大きいです。チェック工程の1例が表で細かく書いてありますが、使いやすいようにアレンジしてくださいということです。

入っていったときは、前振りの話をされていたと思います。何語か分からない文章と数字、その日本語訳では明らかに数字が違っているという例を出して、「お客さんにも翻訳が分かる人とか分からない人色々いる(知らない人の方が多い)けど、言葉が分からずとも数字の間違いなら分かる→翻訳が悪いと言われる」という話がありました。

翻訳に関わる要素に5M(Material, Machine, Method, Mesurement, Man)がありまして、他に5W2Hも付け加えられてた気がしますが、5つのMとは翻訳材料(原稿、参考資料、用語集など)、情報機器・ツール・書籍(PC、翻訳支援ソフト、Officeなど)、管理方法(工程管理、チェック手法など)、基準(仕様、スタイルガイドなど)、(経営者、コーディネーター、チェッカーなど)で、これは翻訳会社の場合なので翻訳者の場合は最後を翻訳者の能力とします。

また、「翻訳の質」についても話があり、テリーさんは何が翻訳の質なのかまだもっさりした印象だそうだけど、翻訳者さんは流暢さとか読みやすさを大事にしているようだと。それももちろん大事なんだけど、まず正確さが大事とおっしゃっていました。「ルールへの適合性」という言葉で表現していましたが、スタイルガイド、用語集、文献など。優先度でいうと、1.正確さ、2.用語集、3.スタイル、4.流暢さということでした。

流暢さとルールへの適合性はどちらも大事で両輪であり、翻訳祭のときはそこがよく分かってもらえなかったのか、それを理解してブログにレポートを上げた翻訳者Sさんが「言いたいことをよくここまでくみ取ってくれた」と賞賛されていました。なので今回は少し強調したのかもしれません。普通に考えてテリーさんではなくとも、コーディネーターさんが流暢さは別にいいと言うはずないですけどね。

参考資料がすごく多いときのTipがあり、「これはどういう位置づけですか?」と聞いてみるといいとのこと。

そして今回のお題はヒューマンエラー、ポカミスですが、気合いではどうしようもありません。人がチェックして気をつけてるとか大丈夫ですか?と。人間の能力を過信してはいけません、といわれました。

ポカミスの例。

  • 「Shift」の”f”を忘れて全世界に文章(マニュアル的なものだったかと)を出してしまった……。
  • 以下のツイート。

人は思い込むものです。文の意味を理解した途端に勝手に意味を補完します。ミススペルはケアレスではなく「誤訳」です。

  • ビスの忘れ。ビスを付け忘れたかをチェックするために、工場で赤ペンチェックを入れました。2000~3000回繰り返すと、赤ペンだけチェックしたものが現れます。反復動作は記憶されて定着しますが、精神作用は定着しません。ちなみに人の集中力が続くのはたった50分間だそうです。

脳の使い方が違う項目を一緒にしてはいけません。

エージェントの出してくるQAチェックシートはあまりよろしくないというお話しもありました。

こういうポカミスを避けるには、チェックを分解(参照照合、単純照合、読解:参照照合は造語で、用語集やスタイルガイドなどとの照合)し、チェックツールを使います。他に、これはいろんな人がやっていると思いますが、と前置きして客観性を持たせるため時間を置いたり、場所を変えたり、プリントアウトしたりする方法や、ツールではFUGO、WildLight、色deチェック、JustRightなどがあります。ツールは刃物と一緒なので、勝手をさせない、例えば数字を変えさせたりしないようにしましょう。

ここまでで「気をつける」ではチェックできないことが分かりましたが、Easy To Noticeとして、チェックのポイントを絞ることを推奨していました。

  • 『ウォーリーを探せ!』で探すときと同じように、意識を集中する場所を際立たせる
  • 数字色分け
  • 知覚・認識力を総動員。パターンなど
  • “2”と”two”が混在するとき、色分けすると簡単(間違えやすいですよねー:筆者)
  • WildLightでの数チェック(色分け)
  • 用語集も色分け→単純照合へ

ミスをなくすには、「まずミスをしない」という発想が大事です。もしミスしてもその場で修正できる方法を紹介していました。人の能力に頼らないものです。

  • 数字入力を音声でフィードバック
  • タイプミスの場合
  1. Wordオートコレクト 間違いをしやすいものを登録、「日本に来日した」と入力したら「日本に●」と爆弾が出るようにする(これはWildLightの機能らしいです)
  2. AutoHotKey HotString Helper 日本語対応していないがTradosに使える
  •  原稿に色づけ
  •  自己鍛錬

ハンドアウトにはチェックフローがあるのですが、人力でやるクロスチェック・リライトが一番強調されており、これとスペルチェック以外はだいたいチェックツールで行うのがいいそうです。クロスチェック・リライトはツールをかける前に行いますが、それは翻訳者が「職人」だからです。ここでも自己鍛錬。順番を決め、守り、問題があれば最初からが大切だそうです。

フローの決め方として、ミスの多いものは前にするとか、最終チェックをするなどあったのですが、耳が痛かったのは「(手を抜いて)納期短縮の矛先にしない」「チェックをしない条件は、他で担保できる場合のみ」でした。

あと、チェックの前に対訳表作成は大事です。Trados Studioなどでもバイリンガルrtfファイルで出してくれますので。

レファレンスにあった、今まで知らなかった辞書を挙げておきます。日英向きですかね。1冊目と2冊目は同じ辞書で、セミナーでは上のKindle版が紹介されました。

最初に「東京から帰って風邪引いた」と書きましたが、そのころちょうど新しいエージェントから化学系のお仕事をもらっていました。セミナー後にトライアル結果待ちの会社の方とお茶していて、名刺で「え、これできるんですか?」と。アピールできる仕事の分野や簡単な内容を名刺には書いてあるんですが、その会社ではちょうど先日そんな人がいないかなあと言っていたところだったのです。ここまで即役に立ったのは初めてです(顔写真もありブログURL、趣味、使用ツールも書いてますが、一般の方にはとっつきにくいのでシンプルなの作るつもりです)。

かくしてチェックの仕事が来て、前にWildLightのセミナーに出たときにTradosはXbenchでチェックって何?と思っていたのが氷解しました。今までそう指定してきたエージェントがなかったこともありやり方が分からなかったのです。原稿はかなり直すことになりましたが、ちょうどセミナーで言われたことを人様の原稿でしたけどある程度実行することになりました。Xbenchにすぐに慣れず困ったし、セミナーで言われたことはかなり今後の課題でした。

それでも、そういう視点でチェック作業してみて、「最初からミスしない」は確かに有効と思いました。ツールをかけたとしても1回だけ出てくる誤訳は通り抜けてしまうことがあるし、それがcriticalな場合もありますから。ただ、チェックを頼まれて時間が読めない場合は自分が翻訳したときよりも厳しいかもしれません……。

チェックツールに関しては、今後WildLight辺りから手を付けていきたいです。DVDはまだ出てないようですが、翻訳セミナーと同じ場所で売るのでしょうか?過去の例だとレジュメが付いているそうで、嬉しいですね。わたしも買いたいのがあります。

余談ですが、他に東京で見たものはこれでした。

JTFセミナー東京道中(セミナー以外)(2017/05/20~23)。

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Resx Editorの代わりにSimple Resx Editorを。

こんにちは。富山で化学を中心とする技術翻訳をしていますヨシダヒロコです。医薬との2本立てが夢なのですが、なんだか寄り道ばかりです。

しばらく更新が頻繁だったのは、仕事が来ない間にたまったネタをできるだけアップしたかったからです。ですが、書ききる前にありがたいことにリピートがかかりました。ついでに、ちょっとお願いしたら単価も上がりました(「この間の人で」と言われたときにお願いするとうまくいきやすいと言います)。

今回の案件はソフトウェアの翻訳で、工学方面の知識が必要であまり日本では見かけない種類のものです(道路系)。翻訳では「そんなシステム日本にないよ」とか「そんな業種日本で聞いたことないよ」ってことが往々にして起こり、本どころかネット検索でもなかなか訳語が見つからず大変なことがあります。

それで題名のソフトですが、Resx Editorは.resx形式のファイルを翻訳するシンプルな翻訳者向けフリーソフトです。Tradosなどの複雑なものに慣れていると拍子抜けしますが。前回仕事が来たときは去年の終わり頃で、翻訳会社にSkypeチャットで質問しまくって(向こうもよく分かってなかったりして混乱しましたが)、何とかしました。ベクターなどにもありますがレビューもなく、他には怪しげな翻訳のダウンロードサイトがあるだけです。

それで今回2回目をやっていると、ソフトの使い方も忘れているし、やはり使いにくさにストレスがたまるので、ちょっと探してみました。すると、Matias E. Palomeque氏というアルゼンチン人の開発者が作ったSimple Resx Editorというのが見つかり、かなり評判がいいようです。エントリの下の方にチュートリアルビデオが貼ってあります。これでは分かりにくいかもですが、同じ題名のファイルで.jaが付いているのといないものがあり、両方を反転させて開くと2カ国語表示になります。これは元のResx Editorと同じです。

Simple~の方はまだ全く使いこなしていませんが機能が多く、取りあえず訳を書き込むウィンドウが存在し、スペースも広いのが助かります。Resx Editorは直接Excelのセルが横に伸びたような小さな窓に訳(と言っても短いのですが)を書き込むので、結構疲れるんです。

開発者のブログはこちら。
Simple Resx Editor

日本人の協力により、昨年日本語化されているようです。わたしはまだインストールしてませんが。
http://simpleresxeditor.blogspot.jp/2011/05/new-language-japanese.html


単純なresxエディタ0.5

検索して出てきた日本語のダウンロードサイトにはこんな文章があり、最近話題の機械翻訳か?ってほどひどい訳です。せっかくのソフトなのに……。

単純なresxファイルエディタ0.5: 説明

単純なresxファイルエディタ0.5の違いと偶然を強調することができます完全に効率的かつ有用なツールとして表示されます。

サポートされる言語:

英語
Español
Italiano(イタリア語のおかげサルボRapisarda)

電子辞書自爆&電子辞書のニュース。

こんにちは。富山で化学を中心とする技術翻訳をしていますヨシダヒロコです。

夕べ、しばらくかかった定期案件(ただし今回はプレスリリースではなくWebサイト)を納品してさっぱりしています。サイトにほぼ原文が同じと思われる文章が多数あったので、訳語を調べたり直したりしながら使ったのですが、最近睡眠不足で疲れ気味だったのできつかったです。

その仕事の途中に、同じエージェントからトライアルの打診が来ました。臨床試験です。やってみたかった分野なので喜んで受け、すぐに辞書を見繕いました。JammingからLogophileに乗り換えたときに、「ステッドマン医学大辞典」などのメジャーな電子辞書が古すぎて使えなくなってしまい、不便なので買い換えを狙っていたのです。

買ったのはこちら。

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ステッドマン医学大辞典 改訂第5版 [CD-ROM for Windows]

とりあえず初めの医学辞書として持っておいて損はない。

何で第5版かというと、第6版が最新で医学略語辞典が付いたバージョンまであるのですが、まだLogophileに対応していないのです(5/9追記:検索が来てるので追記。Logophileは定職を持っている方が空いた時間にやっているため、リソースが限られています。HPに対応していないと書いてあります。動作確認できてないだけなのかもしれませんが)。なので中古品を安く買い、予算的に余裕が出たお金で、やはりウェイティングリストに入っていた「南山堂プロメディカVer3」を買いました。これも中古。

辞書類


南山堂医学大辞典CD-ROMプロメディカ Ver.3

定評のある辞書。

両方とも、早く(正味2日で)届いて助かりました。

明日からGWですが、お仕事の方もいらっしゃるでしょう。そんな方のために、追加で新しい電子辞書発売と電子辞書セールのお知らせを書いておきます。

Logovistaでは、登録ユーザーを対象に5月7日まで最大35%オフのセールをやっています。分野違いの仕事も来るし最近辞書熱が高まっているので、欲しい辞書はいろいろあるのですが、散財したばかりなので「明鏡国語辞典」にしておこうかなと。安いですし。

もうひとつ、ジーニアスの新版が出ます。「ジーニアス英和(第4版)・和英(第3版)辞典」、今日発売です。Logophileなどの辞書引きソフトは、英和辞書を買っても和英として引けるので便利なんですが、ジーニアスにはいつも助かっています。辞書の情報はこちらから。

来月は金沢へ行く月例用事のついでに、Oxfordの英英辞書を買おうかなと画策中です。Cobuildの古いバージョンを持っているのですが、古すぎるのかインストールできないので。

さて、これから寝かせておいた短いトライアルを見直して納品します。惜しむらくは、こんなに頑張って買った辞書の出番があまりないトライアルだったことです(^_^;)。ただで手に入る「ライフサイエンス辞書」の方が役に立ったくらい。まあ、そのうち出番があるでしょう。