2017年を振り返り(仕事・勉強編)。

ヨシダヒロコです。

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作ったスワッグにイタリア語の教科書を敷きました(何となく……)。

 

今年の仕事はとにかく低調だったけど、勉強したことが生きるような収獲もありました。仕事がなかったらラッキー休み!にはならず、何が自分には足りないか分析したり強みになるものも作らないといけません。

2013年くらいから物理というか宇宙物理方面が面白いなと思い、2016年(だったよね?)に放送大学に入ってから半年ほどして物理を専攻したいと思ったんです。電車に乗っていてぱーーっと書きたいことが出てきて乗り過ごしてしまいました。富山や石川で乗り過ごすとエラいことになるんですが。

体調が悪すぎた年がここ2年ほど続きましたが、今年は比較的体が動いたし積ん読も多少は崩せました。今年後期で大学では物理を3教科履修し、2科目で試験を受けられることが昨日分かりました。とても難しいのですが、受かってくれることを祈ります。

物理を勉強すると、ものが動くとは何かとか、電気とはこんな風になっているなどの基礎的なことから入るので、医療機器の原理のトライアルってわりと多いんですけど、合否にかかわらず助かりました。もともとそういう目的で履修したのではないのですが。トライアルは沢山受けました。あと、登録年数から考えて絶対仕事を回してくれなさそうなところ、例えばMT絡みなどで考えの合わないところとは関係を切りました。

翻訳についての本も読み、日英に少しだけ自信が付きましたし、自分はどういう方向に行くべきか考えました。

MOOCのCourseraで米国を中心とした現代詩の勉強もしています。日本のgaccoでは、東北大2講座(memento moriとオーロラ)修了に続き、東北大(東日本大震災の教訓を活かした実践的防災学へのアプローチ)と北大(CoStep)1講座ずつ申しこみました。

他言語の勉強では、かなり頑張って受けたイタリア語検定準2級に2回連続であと3点で落ち、少し息切れしたようです。1月は放送大単位認定試験で潰れますし。先生が今年最後の授業で言われたことをよく理解してないので詳しくは来年に持ち越しですが、レベルを少し落とした”Qui Italia”(写真中にある)で文法をおさらいすることになりそうです。試験は秋まで延期かな。試験にしても、将来的に翻訳するにしても文法からは逃げられないし、わたしは結構穴が沢山あるので。

そういえば、初めてイタリア語で絵本(注:翻訳)のコンテストに出しました。

スペイン語は、DELEをお休みしました。近所にはなく遠征しなくてはいけないのできついですし。今年はB1でボロボロな落ち方を2回しているので1つ落としてA2で受ける予定です。今年から先生が変わって文法をよく教えてもらっています。バレンシアの方です。イタリア語もスペイン語も、過去形1つ取っても複数ありますから面倒です。レッスン増やしたいなと思うんですがさあどうなるか。加藤伸吾先生の『スペイン語力養成ドリル2000題』も再びちょくちょくやるつもり。そんなこと言ってる間に先生の新刊でましたけど。

英語の学校には全然行けなくて残念でした。

課外活動的なものでは、仕事に直接関係あるもので大きかったのが翻訳祭。その前にエージェント訪問したりイタリア語の通学レッスンを受けられたことも含め。ブースでいつものコーディネーターさんの素顔も見られ、その後仕事が楽になったと思います。直前に山グッズの仕事を無茶振りしたとちょっと申し訳なさそうでしたが、いやわたしに当たってよかったです(山は経験ないに等しいけど好きなので)。自分が10分とはいえ登壇者になったことも今後に生かしたいです。あとは春にテリーさんの翻訳チェックのJTFセミナーに行きました。

サイエンスカフェとやまには結構行って、「原子っちゃなんけ」、「変光星」、「iPS」(金沢の聞イテミル・考エテミル!?とCiRA共催)、「重力波」(飛騨)、「育種」などでした。

講演会では山中先生らのもの(高岡)と、「夢のたまご塾」というティーン向け合宿講座(飛騨)の後ろに座って梶田先生の講演も聞きました。高岡のものは内容の紹介に関していろいろ制限がかかっており、面倒な思いもしたため、全く書いてません。惜しかったのは双極性障害を研究している理研の加藤忠史先生が金沢に来られたのを見落としたことでした。

博物館などでは、大阪市立科学館のイベントで朝のアルマ望遠鏡をライブ中継で見て、春の東京では英国自然史博物館展、放送大学のサークル見学でみんなで国立天文台に行きました。春、東京ではバベルの塔とか色々やってましたが何であんなに混んでるんでしょうねえ。断念しました。

来年の抱負などは体調次第なので一昨年くらいから書いてないのです。仕事関係の人間関係でいいことも辛いこともありました。影響力のある人は、仕事にSNSを活用することを紹介するときに、これは役に立つけど向こうにいるのは人間なのでしんどいこともある、と初心者には一言添えた方が親切なのでは、と思ったりもします。

ともあれ、1月のお出かけ予定は何から始まるかまだはっきりとはしてないですが、去年くらいから興味が増している詩歌にまつわる本や写真集なども今後ここで紹介できたらと思います。あ、これは趣味に近いのかな。でも書いといたらカメラとかの仕事来ないかな。

今年はあと1本、プライベート面での出来事を振り返って終わります。

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サイエンスZEROのノーベル賞特集(2017/12/10, 17)。

ヨシダヒロコです。

ノーベル賞だけが偉いと思っているわけではありません。特に名誉があり目立つ賞の1つではあるでしょうが、賞金ならブレークスルー賞の方が3億円とずっと高いですし(賞金額と主催がグーグルということは最近知りました)、ノーベル賞には数学や生物学部門もないですし。

ただ、この賞は技術や発見の内容が詳しく報道されることがあり、知らなかったものを知ることができます。

Twitterの科学クラスタはカウントダウンしてネット中継を見ています。物理学賞はやはり予想通りの重力波で、観測してから2年だからものすごく早かったのですが、みんな待っていた観測でしたし。

http://www4.nhk.or.jp/zero/x/2017-12-10/31/20489/2136659/

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その興奮冷めやらぬ10月半ばには、夏頃から噂されていたLIGO-Virgoによる中性子星合体の記者会見が夜中にYouTubeで延々行われました。Twitter天文・物理クラスタが解説をつぶやいてくれるので3/4位は流していましたが、成果がでか過ぎること、これで新しい天文学が始まってしまったのを目撃した興奮で呆然となりなんだか疲れてしまいました(記者会見はLIGOのチャンネルにあります)。専門の研究者さんですら余波で「仕事が手に付かない」とつぶやく有様で。

この辺を簡単にまとめたものをやってくれるのはきっとこの番組だろうと思ったら、やってくれました。30分とコンパクトなので見やすいです(コズミック☆フロントNEXTは好きですが録画が溜まりまくっています)。12/10辺りは授賞式だったので、それに合わせたのでしょう。受賞者のひとりバリー・バリッシュ教授のインタビューを取ってきました。LIGOに関わった日本人研究者も出演。中性子星合体についても取り上げ、最後の方で「コクーンモデル」という非常に美しいシミュレーションを見せてくれました。下のYouTubeにもそれらしいものが出てます。

ちなみにバリッシュ教授は、東北に作られる予定の加速器・国際リニアコライダー(ILC)にも関わっています。個人的には是非東北に招致してもらって、いろんな国から人が来たり、行き来が増えて欲しいと思っています。

年が明けてから改めて書きますが、富山市天文台では2/25に重力波サイエンスカフェを開催します。ゲストは宇宙線研究所 重力波観測施設 重力波研究グル-プ  宮川 治さんです。

 

zero_cryo

http://www4.nhk.or.jp/zero/x/2017-12-17/31/25353/2136660/

続いて化学賞ですが、化学は範囲が広く毎年よく分からないことが多いです(苦笑)。今回のクライオ電子顕微鏡は、番組をよく見て意義が分かりました。発展途上の技術ですが、製薬に使えるそうです。名古屋大の藤吉客員教授は受賞者3人と仲がいいそうで、スウェーデンの写真も見せてくれました。

わたしが扱っていたようなコレステロールの仲間(試薬では粉末)でも、今はどうか知りませんが大きな結晶を作ってX線解析で構造決定というのが究極でした。しかし再結晶しようとしてもなかなかできないことがありました。

そこへいくと、藤吉先生たちが扱っていたのは生体組織だったりするので、「そんなん結晶になるの?」と見てて思ったのですが、やはり延々できないことがあったそうです。それがこの電子顕微鏡を使えばタンパク質の構造が見える、というわけです。

*****

他の賞についても少し書いておくと、文学賞は名前はよく知っていたカズオ・イシグロ氏で、あの有名な本ではなく(追憶の中の)長崎についての本を読んだことがあります。日本は英国に引っ越したこの人に国籍を与えなかったくせに、ノーベル賞を取ったとなると母国の手柄は欲しいのですね、とマスコミを見てて思いました。なんだかなあ。

平和賞をもらったICANについて詳しいわけではないのですが、原爆を作ったマンハッタン計画参加者は何を思っていたのかなあとはずっと思っていて、読めてない本も手元にあるのですが、彼らのことを知ることが第2第3のマンハッタン計画があったときに歯止めとなるかもしれません。個人ができることは限られているので、力のある人や団体に頑張ってもらうしかないですけどね。

『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』読了。

ヨシダヒロコです。

しばらくは翻訳祭で紹介してレビュー書いてない本を中心に書いていきます。先月末は本を掛け持ちして結構大変でした。この本はゲノム編集についての一般向けの本で、クロ現が元になっているそうです。

またもや書評サイトHONZより、クマムシ博士こと堀川大樹さんの文です。

『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』来るべき未来に備えて正しい理解を

先月だったか見た番組『BS1スペシャル「“ゲノム編集”食物~密着 食の未来の最前線~」』魚拓)、これはオンデマンドでも見られるし、再放送も今後ありそうですが、映像で見ると不気味に思うところもありました。日本で作られている、ゲノム編集ですごく大きく育つ(正確には筋肉が増える)マダイとか。技術的には遺伝子組換えより安全だそうですし、その理屈も理解してはいるのですが。

目の前にあったら?もちろん味見はしますよ。うちの辺りでタイはあまり食べられないですし、あまり刺身でスーパーに売ってないんです。

怖い感じがしたといっても、このドキュメンタリーの中で研究者が言っているように、「自然」な食べ物なんてもうないんです。品種改良の知識のある人はご存知かもしれません。交配でかけ合わせてかけ合わせて、人間に都合のいい野菜や家畜が作られてしまっています。

今、秋にあったお花の品種改良についてのサイエンスカフェをまとめていて、写真の許可待ちです。そこでゲノム編集の話を初めて聞いたのですが、きれいなお花も分子生物学バリバリでどんどん新しい品種が作られています(とはいえ品種改良でも観賞用でも原種は珍重されますけどね)。今ざっと見直すと、その研究施設も本に(追記)出てました。

本の話に戻ると、ゲノム編集で使うクリスパーという塩基配列は、もともと日本人研究者が見つけた不思議な配列が元でした。そこにキャス9というのをあとでくっつけたのですが、同時期に発明したとかしないとかややこしい理由でヨーロッパの研究者ペアとアメリカの研究者の間で訴訟問題になっています。特許専門の翻訳者さんは、経緯に興味を持つでしょうね。取材班はその片方、アメリカ側の研究室訪問も行っています。

ノーベル賞確実と言われているだけに、誰に特許が認められるのかは大きいかもしれません。

その他にも研究のエピソードが豊富で、なかなか見られないものを取材班に連れ回してもらっているような感じで面白かったです。段組がゆったりして写真や図があり、とっつきやすいレイアウトではと思います。

医療への応用も期待されており、iPSとの合わせ技もあるそうです。

もちろん倫理上の話も書いてあります。遺伝子組換えの時で行ったように国際会議を開いたりしていますが、ヒト受精卵の扱いをどうするのかは抜け駆けする人もいるらしくて。

BSドキュメンタリーではこんなものがありました。『オーダーメイド・ベイビー』(魚拓)。デザイナーズ・ベイビーと同義かと思います。「これこれこんな赤ちゃんが欲しい(例えば髪はブロンドで、目は青で……)」という望みを叶えてしまう?という話。3つの番組が紹介されていて、一番興味があったDNA捜査の話は期待を裏切らなかったです。とはいえ、NHKのドキュメンタリーを全部信用しているわけではありません。一応見てみてから考えてます。

ちなみに科学捜査については化学同人から『科学捜査ケースファイル 難事件はいかにして解決されたか』という本が秋に出てたの、やっと注文できました。まだ東京で紹介した本で読み切れなかったのを読んでいたので、翻訳祭の後工程はわたしの中でまだ終わってなかったのですね。気晴らしの本も読みたいですね。

今後紹介する2冊目、『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃』は字数も多いし図も少ないし、それなりに基本を押さえてないと読めないです。扱っている話題はこちらの方がディープです。

『遺伝子は、変えられる――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』読了。

ヨシダヒロコです。

翻訳祭のミニ講演会で紹介した多くの本のうち、一押しでした。これはとっくに読み終わっていますが、最後におまけでつけてあまり説明できなかったスライドにあったゲノム編集の本は、片方がもう少しで終わります。

翻訳祭でもお話ししたし下のリンクにもアップしたのですが、エピジェネティクスについて読んだ本はこれが4冊目です。他に、羊土社の専門書を買ったはいいが眺めて「歯が立たない」と思ったこともあります。それで、これが一番分かりやすかったです。というか型破りでした。

第27回翻訳祭ミニ講演会『専門外から生物・バイオ系を武器に ~メディカルの基礎にも』資料(1)プレゼン資料(2017/11/29、アルカディア市ヶ谷)。

第27回翻訳祭ミニ講演会『専門外から生物・バイオ系を武器に ~メディカルの基礎にも』資料(2)書籍情報など(2017/11/29、アルカディア市ヶ谷)。

もちろん、その前の3冊やさらに生物の基礎について本を読んでいたから楽しく進めたのかもしれません。そこは無駄になってないと思いますが、手っ取り早くどんな感じか知りたいという方には、この本をまず読んでもいいかも。今とても進歩の早い分野だそうですが、4分野ほどの医学周辺領域の話に医学や遺伝と関係のない身近な話をうまく混ぜてあります。Amazonレビューでは、「実生活に関係ない」というハッピーな方もいらっしゃいましたが、がんにも関係あるのでその人も将来無関係ではいられないかも。わたしは遺伝性の病を持っており、それもあってエピジェネティクスを知ろうと心に決めました。

この本には遺伝学や分子生物学の理屈には詳しく立ち入っていなくて、読み物として面白いという感じです。最初の方の章をお見せするとこんな感じで、話のバラエティが多彩でついつい読んでしまいます。理屈や理論が知りたい方は本屋さんへどうぞ。特にDNAってなんだっけからやりたい人は、今入試前でいろんな参考書があるのでは。中学高校の参考書(教科書より手に入りやすいしカラーで見やすい)、学び直し的な本も豊富なはずです。複数眺めているとぴんと来る本があるのではと思います。

 

2017-12-25 00_Fotor

背景を入れて著作権には配慮したのですが……(以前写真家さんに聞きました)

 

翻訳は、原書を見たわけではないですがすらすらと読めとっかかりが少なかったです。「ぼくら」という1人称複数についてAmazonレビューで指摘がありましたが、たぶんWeでしょうが訳しにくそうで悩ましいです。きっと著者は親しみを込めて書いたのでしょうね。

ひとつ疑問があるとすれば、予備知識のない人には「遺伝子は変えられる」と言われると本当に変えられるのかと勘違いしそうなことで、実際には遺伝子の一部がスイッチを入れるようにオン、オフになって、オフになるとDNAの機能が変わったり止まったりしタンパク質も作られなくなるだけで、塩基配列は変わらずそこにあるわけです。遺伝子が制御されるためいいことも悪いことも後天的に起こる場合があって、中には子孫に伝わるものもあります。この本で出てきた「トラウマ」などがそうです。題名については出版社の意向が大きいことを知っていますが、少々ミスリードだったかなと思います。

Amazonレビューの中には、何かの自己啓発本と勘違いしている人がいました(苦笑)。

ちなみに原題は”Inheritance   How our gene changes our lives-and our lives change our genes”で、『遺伝――遺伝子が生活を変え、生活が遺伝子を変える方法』という感じでしょうか。”Lives”は、「生命」と「生活」の掛け言葉のような気がします。

わたしにはエピジェネティクスはこの身に関わっているためすごく身近に感じる話なんですが、なんだか体の中でこまこまやっていると思うと面白いですね(腹が立つこともあります)。医療にもこれからどんな風に使われていくのか、現状はどうなのか、膨大な論文があるのでしょうが知りたくなりました。

『コウノドリ』第2シーズンは悲しくて泣けてしまう。

ヨシダヒロコです。

(書いてすぐ追記:2016年3月にこんなの書いてます

医薬翻訳者もマンガ『コウノドリ』読みましょう。  )

第1シーズンも燃え尽きるお医者さんが出てきたりして「うわあ」となったんですが、第2シーズンで話が深くなった気がします。『コウノドリ』はいろいろ辛いから見られない、という方もいらっしゃるかも。ということでわたしもわたしの辛かった話をします。辛いと時には泣きながら、なんで見ているんでしょうね。

主人公は産科医の鴻鳥(コウノトリ)サクラ(綾野剛)、四宮春樹(星野源)、下屋加江(松岡茉優)、新生児科医の白川 領(坂口健太郎)、助産師の小松留美子(吉田羊)などです。妊婦さんやご家族は毎回ゲスト出演なのです。

キャスト   http://www.tbs.co.jp/kounodori/cast/                  魚拓

ゲスト   http://www.tbs.co.jp/kounodori/guest/0.html 

ゲストは魚拓取れないのでHPなくなったら終わりですね。様々な俳優さん、女優さん、出演した赤ちゃんの顔写真と役柄紹介(赤ちゃん以外)があります。

わたしは20代はじめでハラスメントのためうつになり、治らないまま結婚して今度はDVに遭い、別れましたが病状が悪くなって実家に帰り、30代を棒に振りました。その間に実は双極性障害だったと分かりました。結婚するときも産婦人科チェックはしたのですが、正直ジェットコースターのように振り回されそれどころではなく。離婚後少し一息つけるようになったらもう40代になっていました。メンタルの治療は恐らく一生です。

40代初め当時好きになった人(もう過去形に近いのでそう書きます)について初めて「この人と似た子供がいたらいいのにな」と思ったものでしたが、それは叶いませんでした。双極性障害の人には妊娠は勧められないと主治医に言われたからです(遺伝性がある)。実際にはそこのところ知らずに産んでいる患者さんがいるのですが、実際自分の面倒を見るのも大変な患者さんが多いでしょう。年齢的なものもあり、甥姪をせいぜい可愛がることにしました。もう大きくなっておばちゃんの相手はあまりしてくれませんが。

そういうわけで、20代30代で「自分のような性質を持った子供が産まれたら可哀想だ」と悩みましたし、40代に到っては年齢的なものに加え、スタートラインにも立てませんでした。つくれば産まれるであろう子供が可愛かったのだと思います。まあ、今はペット2匹のお母さんですしそれもいいのですが。

そういうわけもあり、今回のコウノドリが悲しい現実を突きつけてくるのもあり、胸が痛いと思いながら1話を2回見たりしています。でももう終わってしまいますね。今作では第8話時点で2人の先生が辛い経験から新しい道を選ぶ決心をしましたし、小松さんの身に起こったこともわたしには人ごとではありません。こういう人は沢山いるはず。彼女が天涯孤独ということから、なんだか余計悲しくなりました。

妊婦さんでいえば、2話、3話の産後うつの方がよく気持ちがよく分かり共感しました。「自分なんていなくなっても誰も困らない」と掃除もせずに荒れた部屋で、構ってもらえない赤ちゃんがずっと泣いているというのは、赤ちゃんを除けば自分も経験しているのでこれも人ごとではありませんでした。それを夫が何も分かってあげないというのは悲しすぎました。

さらに、妊婦さんやお父さんやご家族の話だけでなく、上にも少し書いたように医療者の事情が出てきます。きちんと見ていなかったので見直そうと思いますが、子宮頸がんの話が最初の方にあり、サクラ先生と重要な関係にあるのですが、最近の村中璃子先生のジョン・マドックス賞受賞と合わせておさらいしておきたいと思います。大手メディアはどこも報じてないらしいですけどね。このがんに限らず、ドラマで何回も出てくる「自分の命を危険にさらしてまでも産みます」という気持ちも少し分かった気がします。

海外の一流科学誌「ネイチャー」 HPVワクチンの安全性を検証してきた医師・ジャーナリストの村中璃子さんを表彰(Buzzfeed)

四宮先生は能登出身だということが終盤で分かります。コミックスしばらく続き買ってなかったのでびっくりしました。まっとうな医療者にとって患者(妊婦さんは患者さんと言っていいのか分かりませんが)を失うというのはどういうことか、乗り越えることができるのかという、助けてもらってばかりのわたしには耳が痛い問題ですがその辛さを追体験できました。ちょうど生死とは何か、と秋には考えていましたので。救急など緊急性の高い専門では特に、医療者が潰れないようにするのが一苦労だろうなと感じました。

サクラ先生のモデルになった荻田先生はネット上で期間限定の外来をやっています。この発言がいいですね、と話題になったので引用します。産婦人科医か助産師になりたい中学生の子の相談。

コウノドリ

さて、最後はピアノ音楽です。清塚さんは『のだめカンタービレ』の千秋役の吹き替えでもう知らぬ間に聞いていました。この作品ではサクラの吹き替えですが、サクラも弾く演技うまいというか今回かなり頑張ったそうです。わたしは弾かないから分からないけど。

第27回翻訳祭ミニ講演会『専門外から生物・バイオ系を武器に ~メディカルの基礎にも』資料(2)書籍情報など(2017/11/29、アルカディア市ヶ谷)。

ヨシダヒロコです。

さて、プレゼンで出てきた書籍情報+αです。

<プレゼンには出てこなかった本>

第2版を読んだのですが、なかなか大変でした。今は新版が出てます。

仲野先生つながりで、本屋で中身を見ました。期待してます。

文庫になっていてお求めやすいです。話し言葉で研究人生を語ってくれています。

過去ログです。なかなか進まない本は、複数のエントリにある場合があります。

「マンガでわかる最新ポストゲノム100の鍵 」読み始め。
投稿日:

「マンガでわかる最新ポストゲノム100の謎」レビュー。
投稿日: 2013/01/19

「基礎から学ぶ生物学・細胞生物学」ようやっと読了&今後の予定。
(今は第3版が出ています)
投稿日: 2013/12/04

富山県中央植物園春の蘭まつり&「青いコチョウラン作出秘話」(2014/03/01)。
投稿日:

岩波科学ライブラリー「エピジェネティクス入門 三毛猫の模様はどう決まるのか」を2回通読。
投稿日: 2014/03/13

『理系なら知っておきたい生物の基本ノート 生化学・分子生物学編』は文系にもお薦め。
投稿日: 2015/06/18

『新版 絵で分かるゲノム・遺伝子 DNA』再読。
投稿日:

今さらですが『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』を読んでみた(2015/07/26)。
投稿日:

バイオのトライアル合格&再度トライアルについて。
投稿日:

放送大学大学院『現代生物科学(’14)』ぎりぎりの提出課題、単位認定試験 (2017/01/21、02/15成績追記)。
投稿日:

岩波新書『エピジェネティクス』ようやっと読了。

『遺伝子は、変えられる– あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』読了。
投稿日: 2017/12/25

『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』読了。
投稿日: 2017/12/27

『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 』(予定)

『大人のやりなおし中学生物 木と草の違いはどこにあるの?ごはんをかむとなぜ甘くなる?』(予定)

『こわいもの知らずの病理学講義』(予定)

(予定)のところは読んでいる本もあり、マイペースで感想をアップしてここにもリンクします。

おつきあい頂きありがとうございます。何かの参考になりますように。

第27回翻訳祭ミニ講演会『専門外から生物・バイオ系を武器に ~メディカルの基礎にも』資料(1)プレゼン資料(2017/11/29、アルカディア市ヶ谷)。

ヨシダヒロコです。

 

 

Future Genome.jpg

National Human Genome Research Institute (NHGRI)  Next Generation DNA Sequencing“  Credit: Darryl Leja, NHGRI    https://www.flickr.com/photos/genomegov/27861478565/

翻訳祭に行かれた方も、残念ながら行けなかった方もこちらを見に来てくださってありがとうございます。以前書いた通り、ミニ講演会の資料を公開します。一段階目はプレゼンそのもの。Slideshareというツールを使ったので、スライドをダウンロードできます。

ミニ講演会で初めてプレゼンというものしてみた感想を簡単に。

  • ノーパソのコネクタにはHDMIと書いてあったのに、現地でこちらの端子が小さすぎて合わないことが判明。メーカーに確認しておくべきだった。パソコン貸してくださったMさん、ありがとうございました。
  • スライドショーの間隔がデフォルトで設定されているのに気が付かず、本番で勝手に変わってしまってどうして?となりました。結果最後の2枚のスライドはよく説明できなかった……。
  • 原稿やスライドを作って人に伝える準備をしていると、対象のオーディエンスを想定するので、その過程自体が勉強になります。
  • 本番でかなり消耗することも確かで、イベントあるごとに話してる皆さんはすごい!と思いました。
  • 声を録音したり、カラオケボックスでも練習したり。タブレットのボイスレコーダーアプリは感度がよすぎたようです。
  • 今回機会を与えて下さってありがとうございました。90分よりは気軽だし、面白い試みだと思います。

 

埋め込みができないので、スライドはこちらからどうぞ。ダウンロードはpdfで、ノートは含まれていないので下にコピペします。

https://www.slideshare.net/secret/uAbku3kCPnpmOW

タイトル(P1)

みなさんおはようございます。吉田博子と申します。今回は生物やバイオ系の独習についてお話しさせていただきます。化学の翻訳者からスタートして、医薬は医療機器の翻訳が多いです。このタイトル付けといて何ですが、バイオは「メディカルの基礎」ではありませんね。

P2
はじめに、大事なことを挙げておきます。この「ひとつの参考として」のところは強調したいです。(参考)のところは過去の経験で、結局自分のやり方を編み出す他なかったりしました。学習方法も翻訳の勉強方法も結局は同じかもしれません。最後が一番肝心で、学習していて「分からないところが分からない」というのはいろんな場合でまずいです。そういうことがないようにしていきましょう。

P3

意外に思われるかもしれませんが、理系出身者は物理・化学が多く生物を履修してないようです。というか、わたしも取らせてもらえませんでした。東京と北陸で子供を教えましたが、10年くらい前に関西の難関医学部で生物での受験がやっとOKになった覚えがあります。ですので自分も生物には苦手意識がありました。理系出身でも分野の得意不得意があるし、今回のように分野を増やすときはやはり勉強しないとだめです。

P4
それではわたしのやり方をお話しします。翻訳を始めて結構経ってからのことで、バイオのトライアルに歯が立たないのが悔しくて始めたことです。これから本の書影が沢山出てきますが、スライドの最後にあるようにあとですべてブログに載せるつもりですので頑張ってメモを取らなくても大丈夫です。わたしは最初1人の研究者さんに勉強方法を質問しましたが、生物の専攻の方に聞いたこともありました。人が違えば言うことも違いますので、もし知り合いの研究者さんに質問しても、意見は様々かもしれません。

P5

上の3つは研究者さんからのアドバイスです。「新しい本」というのがキモのようです。『細胞の分子生物学』というぶっとい本があって、化学の専攻の人と生物の専攻の人で少し言うことが違い、生物専攻の人は活用しているようでした。

P6

それで、絵の多い本を3冊です。他にもあると思います。一応言っておくと、生物の基礎の上に分子生物学があります。バイオとは幅が広くあいまいなことばなので、分子生物学と言い換えます。DNA、RNA、タンパク質が関わる学問です。高校生物があやふやだと後が大変なので、分かるところまで戻って勉強しましょう。それでまた難しめの本に進んだり、分からなければもう1回読み直したり本を変えたりすればいいと思います。例えばAさんに合う本がBさんに合わないこともあるので、大きい本屋でどれがしっくりくるかいろいろ見るのがいいと思います。一番右の左巻先生の本は中学生物で、最近出会ってここに入れておきました。

P7

他に、易しめの生物の本です。左の本は有名ですね。右のような高校の参考書も最近はカラーで分かりやすく、予備校の先生の本です。化学式がほぼないので、アレルギーのある方にお薦めです。なんとSTAP騒動の最中に書かれました。

P8

このような図録もあり、高校で使っているようです。コラムが頑張っていて、例えばiPS細胞については京都の研究所の方が書いていたりします。説明だけでは分かりにくいことがフルカラーの図や写真で描いてあるので、生物だけでなく理科一般にお薦めです。昔子供に化学を教えるときに、実験を見せてあげたくてもできないので代わりにこのシリーズを使っていました。

P9

さて、エピジェネティクスという概念があります。今医学でも使われていますが、分子生物学でホットな話題のようです。わたしがこれを知りたいと思ったのは、いきなりカミングアウトしてますが持病を理解したいという気持ちもありました。発生の分野に関係があります。書評サイトにHONZというのがありまして、そのコラムを参考にして同じように3冊読んでみました。わたしの頭痛のお医者さん(注)は、この間学会に行ってきたすぐ後に診察を受けに行ったら、「この分野はとても今進んでて……」とおっしゃってました。

(注)町医者ですのでいろいろ診られる先生です。

P10

エピジェネティクスといわれてもピンと来ないと思いますので。細かいことは省きますが、DNAの鎖にCH3という赤いものが付いていますね。これがメチル基がくっつくメチル化です。DNAにメチル基が付くと左からTTCGなどとなっている塩基の順番が同じでも、できてくるタンパク質が違い、性質の現れ方が変わったりします。
P11

そういうわけで、HONZで紹介された3冊を青木さんのレビューに従って順番に読みました。三毛猫とエピジェネティクスは関係がありますが、どの本にも残念ながらページは割いてはありません。どれも新書で入手しやすいです。ビジュアル的には読みにくいですが。一番右の仲野先生の本は、「お笑い系研究者」を目指しているようですが科学的な事実の間にすごく普通に個人の主観が入っていることがあり笑ってしまうこともありました。余談ですが、新刊の病理学はもっとお笑い傾向が強いようで、売れてるそうです。

P12
こんな本を読んでいて、やっとトライアルに受かりました(注)。バイオ翻訳者の隅っこに入れてもらえたようです。この本はレビューがいいなと思ったら本当にとっつきやすい翻訳書です。著者は非常に引き出しが多い人で、医学以外にも興味が持てるエピソードをいろいろ出してきて飽きさせません。一般書なのでここから読んでもいいかもしれません。夏に出たばかりで新しいですし、是非お薦めです。

(注)スライドの「2年半」は仕事や体調を見ながらで、多少長い本なので今回省いた大学1、2年くらい向けの本も2回ほど読んでいます。次の発言に載せます。

P13

わたしの場合は直接見た方が頭に入るので、こういう風に勉強しに出かけるのが好きです。講演にも行くことがあります。このようにして勉強しましたが、分子生物学は特に進歩が早く、やってもやっても追いつけないと実感しています。

P14

おまけです。そのうちノーベル賞と言われるゲノム編集について一般書を2冊紹介します。左はNHK取材班のもので、文字もゆったりして絵や写真も多く、いろいろな研究者に取材していますが、文章は平易です。右は今読んでいるところなのですが、左と話題はかぶっています。どちらの本でもこの技術の問題点に触れています。ゲノム編集については、秋口に花の品種改良についてのサイエンスカフェで始めて説明を受けました。

P15(ラスト)

みなさんもご自分の勉強の仕方を見つけてトライしてみてください。ありがとうございました。


 

次の発言に、書籍情報と今までに勉強した際に毎回書いていた勉強記録をピックアップします。

出張CiRA(iPS細胞研究所)カフェ × 聞イテミル・考エテミル!?「iPS細胞の現在:じん臓・すい臓・肝臓の再生医療」in 金沢に参加して(後編・2017/07/09)

ヨシダヒロコです。

後編が大変遅くなりましたが、前編はこちらです。スライド表紙や建物内部は撮影OKを頂きました。iPS細胞研究所と金沢の研究者さんのグループ「聞イテミル・考エテミル!?」の共同主催です。

出張CiRAiPS細胞研究所)カフェ × 聞イテミル・考エテミル!?「iPS細胞の現在:じん臓・すい臓・肝臓の再生医療」in 金沢に参加して(前編・2017/07/09

 

2人目のゲスト、長船(おさふね)先生はじん臓・すい臓・肝臓の研究をなさっている先生で、まず専門を決めたきっかけを話されました。

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増殖分化機構研究部門 長船 健二 教授

https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/research/osafune_summary.html

研究概要、略歴など。

先生が医師になった頃、研修医のシステムは今とは違っていました。わたしは先生と同年代で、医師の友人がわずかですがいるので少し分かります。専門を決めようとしたとき、開業医の息子でもないし何でも選べたのですが、病気で壊れたら再生しない臓器と再生する臓器があることに興味を持ったそうです。卒業した平成8年には再生医療はメジャーではありませんでした。じん臓の再生に関する研究をなさっていたそうです。

#詳しく知りたい方は、先生の研究についてのコラムがこちらにあります。

インタビュー『“未来”の担い手たち』

腎臓、膵臓、肝臓の再生に挑戦する(1)-全2回- 長船 健二 氏

http://www.jst.go.jp/ips-trend/column/future/06/no01.html   魚拓

(2)

http://www.jst.go.jp/ips-trend/column/future/06/no02.html    魚拓

前のゲストで出てきたiPS細胞の写真がまた出てきました。細胞があっちにもこっちにも固まっているそうです。無限に増えるのですが、くっつくと働きが悪くなるのでバラして別の皿に入れるそうです。200くらいの様々な細胞になれるそうです。

再生医療とは、健康な細胞や臓器を移植することで病気を治すことです。メカニズムはとりあえず横に置いておきます。

次に、「再生医療用iPS細胞ストック」の説明がありました。ニュースレターには載っていて、山中先生がTVでお話ししていたような記憶があり(寄付すると出演番組がメールで送られてくるので)今回のサイエンスカフェでも事前にこの用語を含めて何を知っているかアンケートを取られました。

例えば患者さん自身からiPSを取るとすると、取ってきて育てるのに3ヶ月くらい、しかも悩ましいことに育てると性質がバラバラなものができる(がん化含む)そうです。iPS作成の品質評価のステップで1年間、一番お金がかかります。次に分化誘導というものを行い、ES細胞のように発生の時にどんな刺激があるか、分かる範囲で同じものを与えてiPSに導きます。その品質評価が約10ヶ月くらいかかり、お金もかかります。

(広報の方から、上の長船先生の発言が少し分かりにくいので補足です)

「2014年の加齢黄斑変性の臨床研究の場合、細胞の採取から患者さんに移植するまでで約10ヶ月かかりました。その間に品質評価や分化誘導を行います。同時進行で行われる部分もあり、必ずしも足し算した時間とは一致しません」

今、ここに脊髄損傷になって救急車で運ばれてきた患者さんがいたとして、すぐに処置すれば治るかもというときにこれでは間に合いません。それで、もともとiPSのストックを用意しておくのです。

HLAホモiPS細胞というのがあります。HLAという免疫に関わる細胞のタイプ(番号)が同じな場合、輸血や移植のときも自分と同じと見なして拒絶反応が起きません。日本人では、HLA のA 24:02とB 52:01とDR-B1 15:02の3種で16%を占めます。両親から受け継いだHLA遺伝子が同じ場合をHLAホモといいます。

HLAホモの方は珍しいのですが、HLA型を調べる臍帯血提供者や骨髄ドナー、献血されたかたの中から同意が得られた方から、HLAホモの方を探して協力していただいています。細胞培養施設には臨床グレード(基準)があります。細胞調製施設(Facility for iPS Cell Therapy: FiT)など、写真を見せていただきました。

2017/03/18に、iPS細胞ストックは滲出性加齢黄斑変性の患者さんの手術に使われました(「他人のiPS細胞」などと記事になっています)。理研CDB高橋政代プロジェクトリーダー、神戸中央市民病院、大阪大学、CiRAの成果です。

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休憩の前にQ&Aタイム。

Q  iPS細胞の保存期間は?

A ヒトでは-160℃で永久に。液体窒素を使う。マウスは-80℃で保存可能。

Q. 目の細胞のがん化を防ぐ方法は?

A. そもそも目ががん化しにくい環境と言われています。また、少なくともがん化しやすい遺伝子変化がないことは確認しています。万が一がん化した場合にもがん細胞を除去する方法があります。

Q. レトロウイルスはなぜ使うのですか?

A. 遺伝子導入・発現はベクターを使います。効率よく細胞に遺伝子を導入できます。20~30年前に遺伝子治療を受けた患者さんは、導入遺伝子のすぐ先にがん遺伝子があって刺激されてしまい、白血病になってしまいました。エピソーマルベクターは核の中に入りません(なので比較的安全と考えられます)。

Q. わたしの質問ですが、HLA型の表のところを聞きました。

A. 24:02などは種類です。3種で16%ですが、90%をカバーするため20万人のHLAを調べる必要があります。2017年度末までに3種30%が目標です。

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ここで休憩です。

休憩時間には研究者さんつかまえて質問してもいいということだったそうです。飲み物とお菓子、両方いろいろが準備されて、乾燥したiPSの小さなサンプルがテーブルに用意されており、説明を受けながら容器に付いている拡大鏡を通して見ることができました。さっき見た写真とは違い、見やすいよう赤く染色してありました。

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事件が起こったのは話の後半でした。その日も金沢は暑くて(北陸が夏暑いことは割と知られていません)、何と停電になりました。タブレットで北陸電力を探してみると、金沢市がピンポイントでダウンしているようで、あの古い建物があだになったのかも。しばらくは「お茶でも飲んで待ちましょう」だったのですが、20分くらいどうなりそうもなかったので、先生とスタッフの方2人、計3人がそれぞれスライドを映したノートパソコンを持って(最新医学のことを話しているのに皮肉でした)薄暗い中マイクを使わずにしばらくお話しされました。非常にシュールなアクシデントでした。幸い20分ほどで復旧しました。

先生が研究されているのはじん臓・すい臓・肝臓ですが、これは特に糖尿病の患者さんなどで一度に悪くなることが多いそうです。

じん臓病→慢性腎不全(1300万人。糖尿病だと血管ボロボロ)→毒素をだす→透析(約32万人)移植数 1500人

すい臓→糖尿病(約320万人) →血管ボロボロ、脳梗塞、心筋梗塞   すい臓・すい島移植  40人

糖尿病:将来なる可能性のある人 2000万人

病院行ってない人を含めると 患者は900万人

肝不全(約40万人)→ 肝硬変  移植数 500人

移植しかないのですが、ドナーが追いついていません。それでiPSで解決する研究をしています。iPSは肺とじん臓が難しいそうです。

iPSからじん臓の組織を作りネズミに移植すると、糸球体ができて血管につながり、おしっこを濾過しているのが見られたそうです。でも「まだまだ」とおっしゃっていて、すでに18年も研究されているそうです。

すい臓→すい島をiPSで作る。ネズミは治せそうだそうです。移植したすい島を取り除くと血糖値が戻っているので効いているのかも?

今後の展望としては、3、4年で移植の研究をしたいそうです。糖尿病の研究はし烈で、北米だけでも200万人の患者がいるので製薬会社にはお金になるそうです。北米では1社始めています。

肝臓について。iPS肝臓細胞をネズミとサルに移植します。ハツカネズミは20日に1回出産します。質問したのですが、マウスというかネズミには2系統が研究所にいて、片方がハツカネズミに近いそうです。ネズミでうまくいっても念のためサルでも試すそうです。

最後にスライドで近く患者さんへの移植をする研究が始まる病気の一覧を見せてもらいました。パーキンソン病、加齢黄斑変性(既出)、角膜疾患、難治性心不全、軟骨疾患、がん、血小板減少症、先天性代謝異常症など多数あります。

法律が変わって移植までが早くなったので、実現は研究後近い未来だそうです。定年までやります、と何となくぼそっとした声でつぶやかれていたような。

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質問の時間が少しあって、付箋を貼っての質問コーナーに書いていた人もいたのですが、メチル化とかMHCとかレベルが高かったので(後で研究者の主宰したサイエンスカフェと思い出しなるほどと)、個別に聞いてくださいとなりました。

CiRAサイエンスカフェを地方都市で行ったのは初めてだそうですが、暑い中調整して参加でき、色々お話が聞けてよかったです。研究所も前から行きたくて、でもなかなか京都に行く時間や手間が取れなくて。

最先端のお話が少人数対象に目の前で聞けるので、サイエンスカフェは大変お薦めです。今回組織してくださった皆様、ありがとうございました。先生方やスタッフの皆様も遠くからお越し頂けました。

チラシやパンフレットを頂きました。

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左2冊は頂いたもの、一番右に送られてくるニュースレターを置いてみました。

 

 

難しいことはどうも……とおっしゃるけど何か本を読みたい方にはまずこれがおすすめです。2年前のレビューで、山中先生の山あり谷ありの研究人生を話し言葉で書いてあります。

今さらですが『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』を読んでみた(2015/07/26)。

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最後に、iPS関連のサイエンスカフェがまた金沢であるそうです。再生医療学会関連の10/22「アートとビオス」、金沢21世紀美術館で夕方からです。

https://comm.jsrm.jp/risk-communication/events/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%95%E3%82%A7%E3%80%8C%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%A8%E3%83%93%E3%82%AA%E3%82%B9%E3%80%8D/

このブログは過去のポストを検索してくる方が多いので、リンク切れを防ぐため情報をコピペします。参加方法は今学会に問い合わせ中です。

サイエンス・カフェ「アートとビオス」

  • 開催日時:2016年10月22日(土) 18:30~
  • タイトル:「アートとビオス」(日本再生医療学会「リスクコミュニケーションのモデル形成事業」サイエンス・カフェ企画)
  • 出演者:福原志保 (BCL)・八代嘉美 (日本再生医療学会/京都大学iPS細胞研究所)
  • 開催地:金沢21世紀美術館カフェレストラン “Fusion21”
    https://www.kanazawa21.jp/
  • 入場料:500円(ワンドリンク)

2006年に山中伸弥教授らがiPS細胞の樹立を報告して、ちょうど10年となりました。それ以来、未来の医療として「再生医療」や「幹細胞」という言葉が、日夜新聞やニュースを賑わわせるようになりました。こうした研究はまた、病気の治療の研究だけではなく、生命のしくみを解き明かす生物学の研究でもあり、その成果はわたしたちが「あたりまえ」のと思っている「生命のすがた」を揺るがしてもいるのです。その一方、バイオテクノロジー自体が手軽に扱えるものとなってきており、それを用いたアート作品群、いわゆる「バイオアート」によって「生命のすがた」の描かれ方も多様になってきています。今回のサイエンスカフェでは、昨年、金沢21世紀美術館で「Ghost in the Cell:細胞の中の幽霊」を展示した福原志保さんをゲストに迎え、幹細胞とは何か、再生医療とは何か、といった話をテーマに、さまざまな技術が「生」へと介入することが可能となった現在について考えます。

BCLウェブサイト

http://bcl.io/

 

今回のサイエンスカフェの報告&iPS関連次回の予告は以上です。

#こういう内容に間違いがあっては困るので、CiRA国際広報室で何度もチェックして頂きました。どうもありがとうございました。

和む本(5)――『ピノコトリビュート アッチョンブリケ!(手塚治虫「ブラック・ジャック」40周年アニバーサリー)』

岩波新書『エピジェネティクス』ようやっと読了。

ヨシダヒロコです。

「エピジェネティクスが分かりたい!」と生物を履修してないわたしが4年ほど前に生物の大学学部の生物学教科書くらいから読み始め、一昨年去年と体調不良でなかなか読めず、もうちょっとでラストというところで力つきたりして、結局3回くらい読みました。3回目になるとさすがにページは進みますね。

著者はBSプレミアム『フランケンシュタインの事件簿 科学史 闇の事件簿』にもよくご出演の阪大医学部仲野徹先生。書評サイトHONZにもとうとう引き入れられて結構経ちます。

今まで他に読んだエピジェネティクス関連本はこんな感じ。HONZへの青木薫さんの寄稿(ここからパート3まで)に従いました。以下新しい順に過去ログです。

『エピゲノムと生命』読了&『エピジェネティクス』へ。

『新版 絵で分かるゲノム・遺伝子 DNA』再読。

『理系なら知っておきたい生物の基本ノート 生化学・分子生物学編』は文系にもお薦め。

岩波科学ライブラリー「エピジェネティクス入門 三毛猫の模様はどう決まるのか」を2回通読。

「基礎から学ぶ生物学・細胞生物学」ようやっと読了&今後の予定。

一番下リンクの教科書は羊土社のベストセラーで今は新版があるはずですが、ここまでしなくても上から2番目の高校参考書でもいいかも。『好きになる生物学』は大分前にクリアしてました。

今回の『エピジェネティクス』は、新書でコスパはいいです。ただ生物とかDNAとか知らない人がいきなり読むには適してないと思います。先生はこれ一冊読めば分かる本を書くつもりで書かれてますけど。新書だから図が少なくモノクロなのが唯一残念です。仕方ないけど。

目次。

序章 ヘップバーンと球根

第1章 巨人の肩から遠視鏡で

第2章 エピジェネティクスの分子基盤

第3章 さまざまな生命現象とエピジェネティクス

第4章 病気とエピジェネティクス

第5章 エピジェネティクスを考える

終章 新しい生命像をえがく

「エピジェネティクスとは何?」について先生の説明を、第1章から抜き出します。言葉が最初に発表されたのが1942年。「エピジェネティックな特性とは、DNAの塩基配列の変化をともなわずに、染色体における変化によって生じる、安定的に受け継がれうる表現型である」。ほ乳類や動物植物だけでなく、アカパンカビにもあるのだそうです。具体的には例えばDNAの塩基にメチル基がくっついて働きが変わってしまったりなどです。iPS細胞や同時受賞のガードン博士の実験は美しい、という言葉が最初数行のうちに出てきます。

2章はDNAなどの仕組みで完璧に「お勉強」だから難しいですが、ここがそこそこ分かると後が楽です。

エピジェネティクスが関係していることは第3章にありますが、ある種のネズミでのつがい特性、江戸時代にできた斑入りアサガオ、ルイセンコ学説、冬の寒さを記憶する植物、恐怖の記憶や学習、ミツバチのゲノム・女王バチになるには、育てられ方とストレス反応、マウスの毛色など様々な例が出てきて、先生がボケをかましているのが笑えます。難しい話だから和ませようとしているのか、「先生それ個人的感想……」みたいなのがちらっちらっと入っていて可笑しいです。医学史に強い先生なので、歴史的なことがちょいちょい入ってます。

3章にはトランスポゾンというゲノムからゲノムへと移動して回る遺伝子がトウモロコシから見つかったりなどの不思議な話もあります。他の生物からも後で見つかります。

4章は短く、その中ではがんのページが長くて一般の人が知っている病気だと白血病・生活習慣病が扱われています。他にまれな疾患3種ほど。

5章は4章に続いてエピゲノムという概念の話や、次世代シーケンサー(DNAの配列が早く読める)、三毛猫の雄の話やクローン羊ドリー、クロマチン免疫沈降法(新しい)、病気の話もしている。「あれもこれもエピジェネティクスに関係あると言いきっていいものだろうか」と自問自答もしています。

終章では、エピジェネティクス万歳!みたいな考え方とゲノムが基本的にすべてを決めるという考え方を対比して、先生の考え方を書いています。この分野を読みたかった目的ですが、統合失調症・双極性障害の発症にこのエピジェネティクスが絡んでいる可能性がある、ということはここで述べられています(双生児研究により)。PTSD発症に絡んでいるってどうなの?ということも書いてあります。分子メカニズム解析はここ20年ほどで爆発的に発達したけれど、生命科学の性質として各論ばかりになって複雑化し、分かりにくくなってしまうそうです。そういう時には各論にとらわれすぎず基本に戻りましょうと。

TVやTwitterなどで拝見するように、真面目だけどどこかほっとするキャラクターが出ている本でした。「今はまだそこまで分かっていない」「それは楽観的すぎる」みたいな曖昧な部分も残しつつ、色々説明してもらったなと。

新しい本では、たまたま出たばかりのアメリア会員の訳本なんですが、これが良さそうです。ただ、これいきなり読んで分かるのは素養のある人かと思います。エピジェネティクスは分かるの難しくて、自分もまだそこそこで、同じ本を複数回読んでやっと今の状態です。

生きものの身体は不思議だな、とつくづく思ったのでした。