告知:2018年度東京工業大学 健康・衛生週間特別講演会「ストレスとの付き合い方」(2018/10/17 17:30 ~19:00、大岡山&すずかけ台キャンパス)

ヨシダヒロコです。

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pdfで「いらすとや」の素材を使っているのが笑えます。

大学には保健管理センターというのがあり、たしか『動物のお医者さん』の時代からそう呼んでいたと思います。健診など受ける他、メンタルヘルス系のスタッフもいて、わたしはカウンセラーの先生にお世話になりました。今回の催しでは、先生方がどんな方かは存じ上げませんが、医師とカウンセラーが遠隔でつないだキャンパスを会場に対談するというのが面白いなと思ってご紹介します。

一般も対象です。講師の先生方は大岡山でお話しするそうです(大学に問い合わせました)。なので遠隔のすずかけ台は映像だけになるのかなと思います。

概要

日時
2018年10月17日(水)17:30 – 19:00
会場
参加について
入場無料
※事前申込は不要です。開演までに会場にお越しください。

https://www.titech.ac.jp/event/2018/042378.html

すずかけ台には研究内容を展示した小規模な博物館が図書館の近くだったかにあり、一昨年上京したときに訪ねようとして、あまりに様子が変わっていたためたどり着けませんでした。いつか行ける日が来たらいいなと思っています。まずは無事にたどり着くところからですね。

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告知:第40回日本生物学的精神医学会・第61回日本神経化学会大会 合同年会(2018/09/06~08、神戸国際会議場)(同日テーマ追記)

ヨシダヒロコです。

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Credit:  Neural pathways in the brain by NICHD


http://www.c-linkage.co.jp/jsbpjsn2018/index.html

(2018/09/02 2:44追記:テーマは「脳とその病いを成り立ちから理解する」です)

以前前夜祭的な講演会を紹介したように思っていましたが違っていて、これです。学会関係者でなくとも入れるのか分かりません。

本番の学会ですが、ここを読んでいる方に専門が近いお医者様がいらっしゃればもうとっくに行くことになっているだろうし、翻訳者も含めて一般人には少し敷居が高いのですが(学生は安く入れるよう)、あとで要旨がWeb上に出るそうなので、この分野興味ある人にはいいのではと思い書いています。ただ、学会員でないと読めそうもないでしょうか。

今年の精神神経学会(6月)も神戸で、「トランプ大統領は精神疾患か?:米国精神医学会 Goldwater rule をめぐって」という非常に攻めた演題があってネットで話題になったり、お名前を存じ上げている精神科医複数のシンポジウム(病跡学)で漱石や伊藤計劃が扱われました。来年は新潟だそうです。

この合同学会でも、6日に「基礎研究で活躍する精神科医の魂は進化したのか?」という面白そうな題のものがありますね。分野的にも普通に精神医学的なものから、再生医療が入っていたりオートファジーだったり、神経科学的だったり純粋な神経の研究だったりと多彩です。

無理なんですが仮に今度のに行くことができたらブレインバンクは外せないのと、製薬会社がお昼とかにランチョンセミナーをやっているのが気になります。

告知:「第18回市民講演会 脳からこころを解き明かす」(NCNPブレインバンク、2018/09/29、国立精神・神経医療研究センター ユニバーサルホ―ル(教育研修棟1F))

ヨシダヒロコです。

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開会挨拶 国立精神・神経医療研究センター病院 病院長 村田 美穂

1.うつ病とはどんな病気?
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 所長 中込 和幸

2.双極性障害・うつ病の脳病変を探る
理化学研究所脳神経科学研究センター チームリーダー 加藤 忠史

3.「希望の贈り物」運動:ブレインバンクを御存知ですか?
  3.1. NCNP ブレインバンクの取り組み
    国立精神・神経医療研究センター NCNP ブレインバンク 医長 齊藤 祐子
  3.2. 精神疾患ブレインバンクの取り組み
    福島県立医科大学 准教授 國井 泰人
  3.3. 高齢者ブレインバンクの取り組み
    東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク 部長 村山 繁雄
4.総合討論
司会:国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 部長 住吉 太幹
閉会挨拶 東京都健康長寿医療センター センター長 許  俊鋭

 

ブレインバンク事務局のHP

http://www.brain-bank.org/

ロゴ”Gift of Hope” の説明です。

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Gift of Hopeは英語圏の多くのブレインバンクで、生前同意登録の際に使われている言葉です。登録していただいた方が死亡された時に、脳などを研究に使わせていただくことにより、病気の原因が解明され予防と治療法が確立される可能性があります。「後の世代の同じ病気で苦しむ人たちに希望という贈り物をする」という意味がこめられています。
ブレインバンクは日本でこの運動を広げるために「Gift of Hope」をロゴマークに採用しました。


 

今回の講演はかなり自分と関係がありますが、同じ日に地元で用事がありますし無理そうです。

うつ病などに若くして罹った場合、生命保険に断られることをご存知ですか?死ぬ恐れが高いからでしょう。自分は約21歳で罹患しました。その頃国民年金でさえ学生は必須でなかった頃で、払えないときでも「猶予」をしておいたことで障害年金受給につながりました。生命保険に入ってから病気になった場合は保険金払われるそうですね。

わたしは後にもっと厄介な双極性障害と分かり、それまでも献血ができなくなったり、骨髄バンクも献体もそもそも無理など、もともと自分の存在に対し役立たず感が強いのに、何にもできなかったのです。うつ病なら再発もあり得るけど治ることもありますから、献血とかなら。わたしの病気は一生のおつきあいです。肝臓に負担がかかることから3年ほど前に断酒もしましたがもう慣れました。

唯一、わたしのような疾患の患者が死後のため登録しておくと非常に感謝される可能性が高いのがブレインバンクです。名前の通り、脳を寄付します。足りてないらしいので。

本当に参っていたときに書類を取り寄せたことがあったのですが、家族の承諾が取りにくいというか、ちゃんと話し合ってくださいとのことでした。落ち着いているときに話し合っておけばいいかもしれないですね。

一般向け講演会なので患者さんやご家族にもいいかもしれないし、身体の病と精神の病は既に垣根がなくなっているのに、当事者以外の翻訳者さんには精神科に弱い方が多い印象があるので、そういう方にもいいかも。もちろんごく一般の方にも。翻訳者さんレベルのは、近いうちに9月末の学会(神戸)をご紹介しますがプログラムだけで頭から湯気が出そうです。

登壇者のうち、加藤先生の本は2冊ほど読んでレビューしました。また新しいの(脳関係)最近出てるようですね。脳科学とか簡単に言いますが、あんな複雑な臓器が他にあるんだろうか……。いろんな先生が病気の原因を必死に探っています。

この日が都合付かなくとも、「講演会のお知らせ」ページがあり認知症なども扱っています。

http://www.brain-bank.org/study/lecture.html

国立精神・神経医療研究センターは精神科治療の親玉みたいなところなので、どんなところなのか一度見てみたいなと思っています(自分がお世話になることはないと思うけど見学がてら)。また機会を見つけます。

#同センターつながりで、今NHK Eテレでは「#8月31日の夜に」という3分ほどの予告番組を放送しています。長期の休みの後には色々な理由で不登校になる子供たち、追いつめられる子供たちが出るそうで、彼ら彼女ら向けの特番を複数回やるそうです。

大学で面倒な目に遭ってGW後から全く学校に行けなくなった過去があるので(既に病気レベルだった)気持ちは多少分かります。福祉番組ハートネット、よかったら見てみてください。

 

 

 

『コウノドリ』第2シーズンは悲しくて泣けてしまう。

ヨシダヒロコです。

(書いてすぐ追記:2016年3月にこんなの書いてます

医薬翻訳者もマンガ『コウノドリ』読みましょう。  )

第1シーズンも燃え尽きるお医者さんが出てきたりして「うわあ」となったんですが、第2シーズンで話が深くなった気がします。『コウノドリ』はいろいろ辛いから見られない、という方もいらっしゃるかも。ということでわたしもわたしの辛かった話をします。辛いと時には泣きながら、なんで見ているんでしょうね。

主人公は産科医の鴻鳥(コウノトリ)サクラ(綾野剛)、四宮春樹(星野源)、下屋加江(松岡茉優)、新生児科医の白川 領(坂口健太郎)、助産師の小松留美子(吉田羊)などです。妊婦さんやご家族は毎回ゲスト出演なのです。

キャスト   http://www.tbs.co.jp/kounodori/cast/                  魚拓

ゲスト   http://www.tbs.co.jp/kounodori/guest/0.html 

ゲストは魚拓取れないのでHPなくなったら終わりですね。様々な俳優さん、女優さん、出演した赤ちゃんの顔写真と役柄紹介(赤ちゃん以外)があります。

わたしは20代はじめでハラスメントのためうつになり、治らないまま結婚して今度はDVに遭い、別れましたが病状が悪くなって実家に帰り、30代を棒に振りました。その間に実は双極性障害だったと分かりました。結婚するときも産婦人科チェックはしたのですが、正直ジェットコースターのように振り回されそれどころではなく。離婚後少し一息つけるようになったらもう40代になっていました。メンタルの治療は恐らく一生です。

40代初め当時好きになった人(もう過去形に近いのでそう書きます)について初めて「この人と似た子供がいたらいいのにな」と思ったものでしたが、それは叶いませんでした。双極性障害の人には妊娠は勧められないと主治医に言われたからです(遺伝性がある)。実際にはそこのところ知らずに産んでいる患者さんがいるのですが、実際自分の面倒を見るのも大変な患者さんが多いでしょう。年齢的なものもあり、甥姪をせいぜい可愛がることにしました。もう大きくなっておばちゃんの相手はあまりしてくれませんが。

そういうわけで、20代30代で「自分のような性質を持った子供が産まれたら可哀想だ」と悩みましたし、40代に到っては年齢的なものに加え、スタートラインにも立てませんでした。つくれば産まれるであろう子供が可愛かったのだと思います。まあ、今はペット2匹のお母さんですしそれもいいのですが。

そういうわけもあり、今回のコウノドリが悲しい現実を突きつけてくるのもあり、胸が痛いと思いながら1話を2回見たりしています。でももう終わってしまいますね。今作では第8話時点で2人の先生が辛い経験から新しい道を選ぶ決心をしましたし、小松さんの身に起こったこともわたしには人ごとではありません。こういう人は沢山いるはず。彼女が天涯孤独ということから、なんだか余計悲しくなりました。

妊婦さんでいえば、2話、3話の産後うつの方がよく気持ちがよく分かり共感しました。「自分なんていなくなっても誰も困らない」と掃除もせずに荒れた部屋で、構ってもらえない赤ちゃんがずっと泣いているというのは、赤ちゃんを除けば自分も経験しているのでこれも人ごとではありませんでした。それを夫が何も分かってあげないというのは悲しすぎました。

さらに、妊婦さんやお父さんやご家族の話だけでなく、上にも少し書いたように医療者の事情が出てきます。きちんと見ていなかったので見直そうと思いますが、子宮頸がんの話が最初の方にあり、サクラ先生と重要な関係にあるのですが、最近の村中璃子先生のジョン・マドックス賞受賞と合わせておさらいしておきたいと思います。大手メディアはどこも報じてないらしいですけどね。このがんに限らず、ドラマで何回も出てくる「自分の命を危険にさらしてまでも産みます」という気持ちも少し分かった気がします。

海外の一流科学誌「ネイチャー」 HPVワクチンの安全性を検証してきた医師・ジャーナリストの村中璃子さんを表彰(Buzzfeed)

四宮先生は能登出身だということが終盤で分かります。コミックスしばらく続き買ってなかったのでびっくりしました。まっとうな医療者にとって患者(妊婦さんは患者さんと言っていいのか分かりませんが)を失うというのはどういうことか、乗り越えることができるのかという、助けてもらってばかりのわたしには耳が痛い問題ですがその辛さを追体験できました。ちょうど生死とは何か、と秋には考えていましたので。救急など緊急性の高い専門では特に、医療者が潰れないようにするのが一苦労だろうなと感じました。

サクラ先生のモデルになった荻田先生はネット上で期間限定の外来をやっています。この発言がいいですね、と話題になったので引用します。産婦人科医か助産師になりたい中学生の子の相談。

コウノドリ

さて、最後はピアノ音楽です。清塚さんは『のだめカンタービレ』の千秋役の吹き替えでもう知らぬ間に聞いていました。この作品ではサクラの吹き替えですが、サクラも弾く演技うまいというか今回かなり頑張ったそうです。わたしは弾かないから分からないけど。

五感で感じる化学(3)――【番外編1】アカハラとブラック研究室が消え去る日はいつ?

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Photo: Classmates ironypoisoning via Visual hunt /  CC BY-SA

他の連載 (1) (2)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

ヨシダヒロコです。

この連載は、本来化学の基礎を分かりやすくというものです。今回は、本当はラストに持ってこようと思っていたサイエンス界隈の問題2つのうち、予定を変更して化学のみならず、実験系の理系に特に多い問題を取り上げます。春先でちょうど人が動く時期ですし、まだ寒い頃にこんな署名集めが始まったからです。2017/04/02現在、当初の目的500名を達成して1000名を集め国に持っていこうとしています。

文部科学省と各大学にアカデミックハラスメント対策を徹底し,被害者の保護とケアを最優先するよう求めます

(2019/10/30追記:遅ればせながらリンクを削除します。署名を集めていた研究者が夏ごろだったかセクハラをしていたことが分かりました)

自らの経験、周囲で見聞きした経験からも言えますが、若い学生の将来が沢山これまで奪われてきました。全員やる気があったとして、行けるところに進んでいたらどうなっていたでしょう。後ろの方にリンク貼りますが、わたしもその被害者で学生時代から30年近く精神を患っています。途中で遺伝も半分くらいは絡む病であったと分かりましたが。

文系にハラスメントがないわけではありません。そのいやらしさは例えば、詩人・文月悠光(ふづきゆみ)さんの書いた「詩人と娼婦」問題(「私は詩人じゃなかったら「娼婦」になっていたのか? 」(リンク))に出ていると思います。今は有料記事になっていますが。セクハラしている方が文学的な問題とはき違えているところがすごくいやらしいです。

学生を追い詰める「ブラック研究室」の実態
http://newswitch.jp/p/8290
魚拓
家庭教師や塾教師をしていたとき、お母さん方が「資格で安泰に」「手に職」のようにおっしゃることがよくありました。自分ができなかったことを子供に代わりにさせようというお母さんも。でも、それで本人の意に反して理系にやるとすれば、お子さんをひとりの人間として見ていないことになります。これから書くような悲惨なことも起こりかねません(自分から「行く」というなら問題点を教えた上で行ってみれば、と言うのもいいかと思います)。

また、翻訳者には文系出身で専門知識がないことに悩む人が多く、理系出身は少数派です。何か理系を「打ち出の小槌」のように「なんでもできる」と勘違いする方もいます(翻訳会社にもいます)。人によっては死人が出んばかりの過酷な目にあって卒業しているのに、嫉妬なのか無知なだけなのか、無神経な言葉の対象にされることすらあります。今までいちいち言ってきませんでしたが、理系の実態は最悪の場合こうなる(=命がない)なのです。実は上に挙げた文月さんは、「詩人」という肩書きについてくる偏見についてエッセイで書いていて、「理系」と何かが似ています。

冷静なイメージがあり冷たく見えようとも理系も人間ですから、研究室の上の人間が1ヶ月も罵倒すればご飯も喉を通らないし眠れなくなります。そこから「死」に向かうなんて簡単です。そうやって大学に行けなくなった生徒は、専攻によっては珍しくありません。論文を人質に取られハラスメントされることもあり、そうすると卒業ができなかったり危うくなったり、手柄を取られたりすることだってあると聞いています。された方は泣き寝入りしかできなかったのではないでしょうか。

そうやって噂になるのが「ブラック研究室」ですが、誰も何もできません。入ってから分かっても配置換えできたらいいのですが。Googleで検索してみたらこうなりました。

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「アカハラ=アカデミックハラスメント」という名前は実はかなり古いですけど、そう呼ばれる前からこのハラスメントはありました。例えばいじめが学生時代にあって、いじめられた方はずっと引きずったり進路が狂ったりするのに、いじめた方はしれっと普通に家庭持ったりしているというような理不尽さと同様のことが起きています。

なお、アカハラは教員間にもあり、中間管理職的な教員がもっと上から受けるものもあります。

わたしがいわゆる「専門知識」(たった学部並みですが)と引き替えに得たのは健康を長期にわたって害し、就職も逃すという結果でした。きちんと就職もしたかったし、やりたいことをやれるだけの体力も欲しかった。ですが(2017/05/23追記:修士に)進学したときに不況に入ったということもあって、卒業も就職も叶いませんでした。それを何も知らない人は「理系でいいねー、うらやましい」と言います。何とか卒業はしたくて(その後修士に進んで出ないとやりたいことができないため)、這うようにして学校に行きました。うつ症状が出ると朝がとても辛くなるので、這うというのは誇張ではありません。

進学を控えた、特に理工系や生命科学系の学生さんは、そういうハラスメントがあり得ると前もって知っておくだけでも少しは違うかもしれません。同じ研究室で朝から晩、深夜まで(朝まで?)閉じ込められていると面倒が起きやすいようです。研究室にいる時間が自分の経験では10時間くらいで普通でした。病気していたから無理できなかったですが、頑張れる人はもっと残っていました。

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“Classmate – Patrick/Mike” by Marck Schoenmaker is licensed under CC BY 2.0

他のブログで読んだ対策案へのつっこみです。

1.研究室訪問:やらないよりはマシですが、それで全部は分からないと思います。わたしは修士に進むとき当時自分の大学からはあまり行われていなかった大学を替わるということをやったので、3校6講座の先生に約束取って会いました。一番話しやすかったのが最終的に決まった先生で、その予感は幸い外れていなかったのですが、世の中には最初はよくても裏表があったり豹変したりする人がいます。研究室はよく「あそこはきつい」とか噂が立つのですけど、今思えば自分が学部でいたところも事前に噂がありました。

2.ハラスメント相談室:人の話を総合すると、あまり役に立たないようです。既に削除されたTwitterによると、「相談したことを相手に漏らす」という相談室があるらしく、大学にもよるようですけど役に立たないと。他にセクハラ窓口の旗振り役が自らセクハラをしているというしょうがない話を読んだことがあります。

3.法テラス:下のリンク先にありますがわたしはDV調停離婚経験者で(有責側が調停起こしたと理解しています)、その後制度が法テラスに変わりました。一般的に弁護士に相談しようとすると役所などに法テラスを薦められます。証明しにくいものがアカハラやモラハラ(精神的ハラスメント、家庭だけではなく職場などにもある)の特徴だと思うので同列に書きます。

調停当時、弁護士さんによって対応はえらく異なりました。アカハラやモラハラの場合、証拠もはっきりしないのに大学という組織にケンカ売ってくれる弁護士さんは簡単にいますかね?DVでも精神的被害の訴えだけで勝訴したという話を聞いたことがありません。弁護士会などが犯罪被害相談ダイヤルを設けている自治体もありますが、常時開いていない場合もあり、うちの県では存在自体ほとんど知られていません。電話で訴えても先につながるとは限りません。

アカハラを受けて、裁判で勝訴したという例もあります。

http://thelancet.com/pdfs/journals/lancet/PIIS0140-6736(05)71533-6.pdf

(なくなったら困るので、ダウンロードしたもの。PIIS0140673605715336

試料などを持ち出され廃棄された日本人の女性研究者が勝訴した話で、2001年のLancetにあったものがなぜかその近辺だけpdfで見つかりました。証拠があったからこその勝訴ではないかと思います。

ブログ主のアカハラ体験で、この10年超ブログ書いたうちのトップ5には入っている記事です。

アカハラ被害体験とそこからの救済について(長いです。2015年と17年に追記)。

最後にキャンパスでの性 被害の話です。入学時の歓迎会などでのお酒の強要、最近はアルハラとも言うらしいですが、さらにセクハラやそれ以上の被害がこれから増えるのでしょう。深刻な被害もあるので書いておきます。今まで大学内の性 被害は表に出なかったのが変わってきました。去年大学内での性 犯罪摘発が多かったのは単に被害者が訴え出られるようになっただけだと思います。酒の席でなくとも性 被害はありますが、もしも被害に遭った時のことを考え次に書いておきます。
(性 暴力の定義を注釈として最後に付けます)

あまり知られていないようですけど、性 加害者で一番多いのは「夜道の見知らぬ人」ではなく「友人・知人」で80%(最後の注釈参照)を超えます。つまり、ほぼ泣き寝入りだと言うことです。わたしは大学外での被害者ですが、身近なケース2件だったためそれが被害だと気づくのに10年くらい遅れ、気づいた後パニックを起こしたりしました。
都道府県ごとに被害の後処理が1ヶ所ですむワンストップセンターができつつあり、病院や警察で何回も被害状況を話す必要がありません。東京の「レイプクライシスセンターTSUBOMI」は、時効がきている件でも3回まで電話で聞いてくれます(被害者センターも各地にありますが、相談可能かはケースバイケースのようです)。全国のワンストップセンターは以下の通り。
http://purplelab.web.fc2.com/onestopcenter.html

悲しいですが訴え出ても相談しても2次被害があります。新入学のみなさんに言いたいのは、お酒ってうまく使わないと一番メジャーなドラッグですからね。泥酔させられ被害に遭ったケースが昨年大きく報道されたものではほとんどでした。しんどいのなら一気飲みは断るのが身のためです。命にも関わりますし。仲がよい人ではなかったけど、同級生が1人急性アルコール中毒で亡くなっています。
酒が絡んだ性 暴力などの参考意見を医師のツイートやブログから注釈に張りました。

最近の強 姦罪改正で、男性に対する性暴力も認められるようになりました。ちなみに米有名私大も強 姦被害がひどく、オバマ前大統領がどうにかしようとしたくらいでした。
法律の改正点はこんな感じです。
現行刑法は「男尊女卑の発想」 性 犯罪刑法改正、残る論点は
https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20170315-00068739/
なお、学内でもデートDV、ストーカーがあり得ます。

そういうわけで、この時期入学したり研究室に配属されたりする学生さん向けに各種ハラスメントについて書きました。将来的に進む方にも参考になればと思います。いや、大学でのサバイバルも大変ですね。何か「こうすれば逃げられる」という手立てがあれば良いのですが、今回のテーマは詰まるところ「暴力」で加害者にはまず実感がないため、気がつかないうちに「自分が悪い」という方向に追いつめられる被害者も十分考えられます。まずは気がつくところからかと思います。

注釈:

性 暴力の定義は日本福祉大のHPでこんな感じです。恐らくほとんどの女性は被害経験があるでしょう。

※キャンパス・セクシュアルハラスメントとは
相手方の意に反した性的な行為や言動そのもの。また、それによって、学業や大学業務を遂行する上で不利益を与えたり、学業や就業の環境を著しく悪化させてしまうことを指します。
※性 暴力とは
レイプや痴漢行為、のぞきなどの明らかな犯罪ばかりではなく、相手方の意に反した肉体的な暴力あるいはことばの暴力によって性的関係を強要したり、間接的に性的接触を行うなどの犯罪的行為を含みます。
—–
知人・友人からの被害80%のソースは以下の通り。

性暴力の8割「知人から」…被害者支援の弁護士「自分を責めないで」(弁護士ドットコム)
https://www.bengo4.com/c_1009/c_1198/li_328/
魚拓

子の性暴力被害なくそう 大津のNPO、小中学校へ出張講座(京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20170327000021

魚拓

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医師の意見

日付をクリックして付いたコメントも見てみることをお薦めします。

河野美代子のいろいろダイアリー
http://miyoko-diary.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/post-e617.html

魚拓
この先生のおっしゃることその通りで、被害に遭うとなぜでしょうね、被害者がいろいろと責められます(女性が被害者の場合、女性にまで)。なにか社会的に性 被害を生み出す土壌があるのだろうと考えています。
———————————–

今回のおまけ:陰鬱な内容だったので、最後に綺麗な話題を。院生の時先輩が紹介していた「生物発光」という現象。ホタルとかホタルイカなどがそうです。バイオで検出に使いますが、近所の大学でバイアルの中で光るのを見せてもらったことがあり、とても美しいものでした。

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Photo: Firefly Mr.k_Taiwan via VisualHunt /  CC BY-NC-SA

監修:原典行(元東京工業大学大学院 物質科学専攻助教)

精神科訪問看護を試してもうすぐ1ヶ月(双極II型障害者)。

ヨシダヒロコです。

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Walt Stoneburner,  Nursing Books

https://www.flickr.com/photos/waltstoneburner/3336401711

今年は体調が特に大変だったですが、その兆しが1年半ほど前からあって、この環境にいたら自分の健康まずいなと思い、環境変えたいけどすぐに変えられないのでいろいろ役所その他(主に精神科・障害者関係。電話弁護士相談も)に尋ねたんです。市役所は障害者支援というと授産所(安く働かせる施設)とかしか考慮してないんです。少なくともうちの管轄では。

 

そんなわけで、躁うつの波もあったしやっとやっとだった1年でした。都会に住む幼なじみで看護師の卵の友達が、精神科訪問看護というものを教えてくれました。それまでは精神科救急という番号に夜間かけていたんですが(119の精神科版で、基本的には看護師さんが事情を聞いて医師につないで応急処置をする。24時間都道府県ごとにある)、限界があるので。それまで試した保健所も担当が忙しすぎて医者と連携して対応するには無理があり、前述の友達によると「具合の悪いわたし(患者本人)があちこち動いている状態」みたいに言われました。

どういう病気の人が訪問を頼んでいるかというと、少し前ですが厚労省の資料があります。わたしは前のDSMで言えば気分(感情)障害で、死にたくなることもあったから話は簡単ではなかったようです。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000048931.pdf

最終的に、隣の県の医師に市役所で聞いた民間の訪問看護ステーションを教え(聞けば役所知ってるんじゃん)、1ヶ月ほど前に書類が揃って医者や役所とも書類が行き来し、週1の訪問が始まりました。始まった早々、問題の1つである家族関係(介護とかではない)でまた問題が勃発し、医師の考えを裏付けるようなアドバイスをもらい、それに従ってなるたけ没交渉で接しています。間に入って何か言ってくれる事もありました。おかげで落ち着くようになりました。

頭痛で行ってる町医者によると、訪問はこの辺ではまだ浸透してなくて、市役所でも訪問「介護」と間違える人がいたり。1年くらい状況を伝えていたのに、もっと早く教えてくれればわたしも苦しまずに済んだということで、話を聞いていた人とは違うけど市役所の担当課で「わたしはもう少しで死ぬところだった」とぶち切れたことが10月にありました。ステーションは民間なんだけど、何か問題あったときには市役所に話が行きます。役所は本当に横の連携が取れてない、他の役所のやってること知らないと思います。

医師が県をまたいでいたり、地方で制度を知らない人のためにこのエントリを書きました。看護師さんとの相性もあると思いますが、こういう制度もありますよと。保険治療で、公費負担(うちの県では1割)がききます。

(2016/12/04 1:12追記:通っている医者に自分に使えるか聞いてみるか、県をまたいでいる場合は市役所などがステーションを知っているはずです)

放送大学大学院の試験(『精神医学特論』、2016/07/23)。

ヨシダヒロコです。

このエントリをもっと早く書かなかったのは、この試験範囲にあった内容がそのまま相模原の事件と関わるようなことだったため、世間が落ち着くのを待っていたためです。15回中14、15回は精神医療の歴史でした。優生思想だけはなかったですが、偶然去年から今年にかけてEテレ『ハートネット』で知る機会があったことは先月のうちに書きました。事件特番の『バリバラ』再放送は週末なので、興味のある方是非。自分にも刺さる内容でした。

放送大学大学院科目生になって1ヶ月。

シラバスです。

http://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H28/daigakuin/B/kyoutsu/8910707.html#syllabus

結論から言うと、この授業は受けてとても良かったと思っています。患者としても翻訳者としても。石丸先生はテキストに厳密に沿うのではなく、下に挙げるような先生をゲストとして読んで呼んでなにか心にしみいるようなインタビューをしていました。
20代のときひどい睡眠障害があって毎晩『ラジオ深夜便』聞いていたら、3時頃になってしみじみと『こころの時代』が始まるのですが、あんな感じ。学部では『死生学入門』を担当、わたしの受けた授業でも、エリザベス・キューブラー・ロスの『死ぬ瞬間』を薦めていました。他に呉秀三の私宅監置の本も。テキスト巻末には膨大なレファレンスがあります。

「治療は面接開始でもう始まっている」とか、「薬に先だって医師が患者に処方される」とか、「あらゆる病気が心身症なのでICD-10では心身症という言葉がなくなった」という意味の記述とか、なるほどーと思いました。

ゲストの先生方。たしかもう1人いらしたような。

「統合失調症と向き合う」
遺伝子多型についての研究裏話で、バイオ勉強しといて良かったという内容でした。
(2016/08/13 8:58追記:研究裏話は授業で。以下のリンクはゲストの先生のファミリーヒストリーの話で、それが研究につながります)
http://jpop-voice.jp/schizophrenia/s/1404/01.html

「教授ご挨拶 | 筑波大学医学医療系臨床医学域 災害精神支援学講座」
http://plaza.umin.ac.jp/~dp2012/greeting.html

 

この授業は1年前に受けたかったのですが叶わず、改訂前のテキストを持ってますがDSM-Vができたためでしょう、今年度から新内容です。DSM改訂点の説明も多いですが、「これだけに頼らないでください」という意味のことは繰り返し言われました。

試験は、授業が半分まで来たところで受ける提出課題・自習用課題、過去問2年分くらいあればシンプルなテストなので大丈夫かと思います。ただややこしいところもあるので、初めて接する人には学習が難しいかもしれません。もともとあった知識の確認的に受講したので何とかなりました。とは言っても採点結果はまだですが。

わたしは違いますけど、臨床心理士を目指している方が「試験にはこれだけで十分だった(病気について)」というコメントが旧版テキストの前書きにありました。

後期は受けたい科目が学部にもあり、院については生物(バイオ含む)を取って手順とか映像で見られないかと期待しています(次は1年間の選科生にしたい)。高校の頃やってみたかった生態学も、今ではデータや統計バリバリなのですね。

最後に、きっと読み甲斐あるだろうなと思われるこんな本が出るそうです。

(2016/08/17追記:試験の結果はA○でした(○の中にAが入っている)。9割から満点でした。周りの人も苦労しているようには見えませんでした)

『さよなら、ねずみちゃん』(子どものトラウマ治療のための絵本シリーズ)と日本翻訳大賞。

ヨシダヒロコです。

今日は、ネット友達の訳書をやっと読んだけどよかったよ、という話と日本翻訳大賞の宣伝です。
売らんかな、みたいに読めたらすみません。

さよなら、ねずみちゃん (子どものトラウマ治療のための絵本シリーズ)

ロビー・ハリス

誠信書房

2015-09-30

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

この誠信書房って心理学では有名な出版社らしいのです。絵本にこういうものがあるとは思わなくて、訳者の遠藤さんが「本が出ました!」と秋にSNSでポストしたとき、ブックマークしておいて後でよく見たらかなり専門的なものを易しく、みたいな感じでした。この本はペットロスや大事な人の喪失がテーマで、シリーズの他の本ではテーマが性暴力とかです。

http://www.seishinshobo.co.jp/book/b202107.html

見返しがやたら可愛く、絵はたぶんパステルかなにかと水彩の優しい感じ。字数は多めで、やはり優しい感じ。訳文には性格が出ますけど、訳者さんのほのぼのしてるところが出てますね(訳者紹介に至るまで)。

小さな男の子が可愛がっていたねずみちゃんが朝起きたら冷たくなっていて、男の子は「死」に遭遇するのは初めてで、パパとママが悲しむ坊やを慰めてくれます。そして、ねずみちゃんを埋めてあげることにするのですが、寂しくないようにといろいろ可愛らしいことをします。わたしも子供の時から今までいろんなペットを飼っていますので、思い当たることはたくさんあり、ペットって好きな人には心の深いところに触れる存在なのかも。いやーもう涙腺崩壊、となってしまいました。ねずみという形を取っていますが、人間も想定した内容です。

ペットとお別れしたことがあるかた、大事な誰かとお別れしたことがあるかた、ねずみが好きなかたなどにお薦め。わたしの好きなねずみは、今天敵を飼っているし、数が少ない野生動物なので飼えませんが、カヤネズミです。ほかにはスナネズミとか。

この本を日本翻訳大賞に推薦しましたが、友達の訳書云々ではなくいい本だと思ったし、こういうのをもっと出して欲しかったから。ギリギリになっていいますが、推薦は5日23:59まで。ここに推薦作が出ています。去年中に出た新訳でない翻訳書で、文学作品とかに限りません。理科系の内容でもいいらしいです。今年読んでる暇が無かったからなあ。匿名で、推薦文を出さないオプションあり、自薦もありです。今回は無理そうな人は、推薦書が「おっ」と思ってもらえる楽しみもありますので、来年に向けて是非。面白そうなのいろいろあります。

https://besttranslationaward.wordpress.com/2016/01/25/2015recommended/

NHKEテレ「TVシンポジウム『うつ病と躁(そう)うつ病を語る~自分らしく生きるために~』」(2014/10/18)。

ヨシダヒロコです。

24年前に適応障害と言われてからいろいろあって、結局今は双極II型です。

このシンポジウム、事情が許せば行きたかったくらいです。
ほんとは2時間くらいあったそうですが、そのうち1時間がTVになりました。
再放送の予定は今の所ないようですが、下のリンクから再放送希望を出せば、聞いてもらえるかもしれません。

下のリンクは番組表で、出演者が書いてあります。精神科医では、大野裕先生(認知療法で有名)、加藤忠史先生(「躁うつ病のホームページ」主宰。躁うつ病の研究者では日本で一番目立っている気がします)。その他、実名・仮名の患者さんたちと、司会は福祉ジャーナリストの町永俊雄氏(NHKの福祉系によく出てたアナウンサーだと思ってたのだけど、「元」らしいです)。

https://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20141018-31-18538&pf=f

遅れてこられた方のために、魚拓。リンクが切れてても見られます。

1時間の間に沢山の回復へのヒント(知っていることも知らなかったことも)を見たし、以前本を読んだときも(リンク)感じたんですが、自分の病状はここまでではないと思っても、人の闘病生活は参考になります。ブッダだという誇大妄想を持ってしまい、慈愛の心があふれるあまりにアリがいたら「アリさーん!」となってしまった躁うつ患者さんの話は笑ってしまいました。後で考えると、どういうメカニズムでそんなことが起きるのか不思議です。

うつ病と躁うつ病は似ているようですが、治療法が違います。主に薬物療法(後者は気分安定薬というものを使います)。その辺も短い番組の間に説明してありました。

番組中にあったのですが、自分が「頭がいいから」とか「頑張っているから」などの能力のためでなく、「自分であるから」というだけで周りの人が大事に思ってくれるという啓示は、わたし自身も長いこと病気と闘ってきて去年やっと分かったことです。当事者の方も言っていましたが、こういう意識があると自殺などの破滅的な行為も減るだろうし、病状も安定するだろうなと思いました。いい番組でした。

ちょっと和んで頂くために、現在のわたしのデスクトップです。ちょこまか泳ぐので、これ以上芸のあるものはなかなか撮れず。動物園で撮りました。

2014-09-22 13.32.30

「躁うつ病とつきあう」「躁うつ病はここまでわかった」第2版・レビュー。

ヨシダヒロコです。

年末年始に時間があったので、かなり読書をしました。この2冊は、自分の病である躁うつ病(双極性障害)についていろいろ目を開かせてくれました。前者の本は初版の内容が少し古く(15年ほど前)、版を重ねるごとに加筆してあって、一番新しい版は昨年です。ですので、最後の方は新しいそうです。後者は元々が2007年初版なので、比較的新しく、最新の第2版は2012年です。

双方とも、理研で精力的に双極性障害の研究をされている精神科医である、加藤忠史先生の著です。

躁うつ病とつきあう[第3版]

加藤忠史
日本評論社
2013-03-20 by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

躁うつ病はここまでわかった 第2版: 患者・家族のための双極性障害ガイド

加藤忠史
日本評論社
2012-08-10 by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

まず、「躁うつ病とつきあう」から。これは著者が大学病院勤務だった15年ほど前からの患者さんの話を書いてあります。巻末に「躁うつ病を知ろう」と題し、ざっと治療のコツのようなものが書いてあります。

わたしはこの2冊とも、日本評論社のサマーセールの時に買ったのですが、Amazonでの評価は様々で、どっちかというといまいちなものもあります。患者さんのディテールを多少ぼかしたり改変しているのだろうと思いますが(大体精神科系の本はそう)、特定の患者さんについて書いた場合は許可を取ってあります。

HP「躁うつ病のホームページ」(今まで気付かなかったのか、医師・研究者向けのページがありますね)やそこから購読できるメルマガで、他の患者さんのことも読んでいたのですが、ここには沢山の症例があって、引きこまれて読んでしまいました。自分はこんなにひどくないと思っても、何かしら教訓はあるものです。自分も含めて、なぜこんな病気になるんだろうという学術的な疑問もあります。

15年ほど前の研究は原始的で、アメリカの論文を読んで同じようなことをやろうと思い、教授にアドバイスを求めたら「実験器具ははんだ付けでできるよ」と言われたり。はんだ付け……。躁やうつを押さえるには、化学周期表でおなじみのリチウムがよく効き、わたしも飲んでいますが、そのリチウムの作用の研究でした。研究者になりたかったわたしには、こういうことも面白かったです。

あと、これはこの本を読んでみて知ったのですが、修正ECT(有名な電気けいれん療法を、筋弛緩剤を用いてマイルドにしたもの)は全然怖く感じないなあ、と。

巻末にある注意点で、自分が徹夜してはいけないことを初めて知りました……まあ朝が来たら寝ていたのですが。一晩徹夜しただけで、躁転(躁に転ずること)が起こることもあると。どうりで睡眠時間が不規則になるといろいろ不調が出たり、他にも片頭痛がひどくなったりしたものです。あと、当たり前だけどできにくいことに、薬を絶対やめないことがあります。勝手にやめて再燃するケースは多いそう(精神科系の薬では基本です)。家族に患者がいることはあっても遺伝はないですし、妊娠・出産もできます(2016/01/04:わたしの場合年齢的にもう無理なので関係はないのですが、主治医は遺伝があるからやめなさいと言っていました。ちなみに遺伝要素は病因の半分だそう)。

さて、「躁うつ病はここまでわかった」の方ですが、より専門的な内容となっています。加藤先生の他に、4人の精神科医と、敷島カエルさんという患者さんの手記からなります。

加藤先生の章は上の本を詳しくしたような感じで、他の先生の書かれたもので注目したのは、岡本先生の躁うつ混合状態(p106)、名前通り両方が混ざるのですが、エネルギーはあるのにうつっぽくて自殺したがったりして危険なのです。わたしが去年なっていた状態はこれらしいです。双極II型と境界パーソナリティ障害との鑑別は、上の本にもありましたがこの箇所にもありました。どうも見分けにくいとか、同じ病気を違う角度から見ているとか、医師によって微妙に言い方が違うのですが、似ていることは間違いないようです。

基本的に薬で抑えられる病気だということは双方の本で一貫していたと思いますが、ラピッドサイクラー(躁うつの交替が激しい)やなかなか合う薬が見つからなくて入退院を繰り返す患者さんもいらっしゃるようで、大変だなあと。わたしも軽くはないので、気分安定薬(波を押さえる)が3種類出ている理由がよく分かりました。

敷島カエルさんの手記はずしりときました。躁とうつを繰り返し、満足に子供が育てられない苦しみが綴ってあります。この章はこの間東京に行ったときに、帰りの夜行バスを待ちながら読んでいました。

「たとえばある日突然アクシデントによってけがをして歩けなくなったとします。足に傷を負って松葉杖をついて元通り歩けるようになるまでリハビリをします。それと同じで、躁うつ病もある日それこそうつになったり、躁になったりして、体が止まったり、逆に動きすぎたりしてしまうのです。うつの状態では”歯磨きをしただけですごい進歩”という日がありますが、それで『よく頑張ったね』とは誰も思わないでしょう。ましてや外を歩けるようにでもなれば、着替えをして意欲も出てきているわけで、ずいぶんな進歩なのですが、別に誰も賞賛しない普通のことなのです。躁うつ病が理解されにくいのは当然のことかもしれません。」(p172)

ここの箇所は特に深く頷きました。

おまけですが、巻末のQ&Aによると、低用量ピル(普通に処方されるピル)は気分障害が減るそうです。つまり、わたしが飲んで感じたとおり、情緒が安定するようです。ピル関係の検索がよくあるので、参考までに。