五感で感じる化学(3)――【番外編1】アカハラとブラック研究室が消え去る日はいつ?

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Photo: Classmates ironypoisoning via Visual hunt /  CC BY-SA

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ヨシダヒロコです。

この連載は、本来化学の基礎を分かりやすくというものです。今回は、本当はラストに持ってこようと思っていたサイエンス界隈の問題2つのうち、予定を変更して化学のみならず、実験系の理系に特に多い問題を取り上げます。春先でちょうど人が動く時期ですし、まだ寒い頃にこんな署名集めが始まったからです。2017/04/02現在、当初の目的500名を達成して1000名を集め国に持っていこうとしています。

文部科学省と各大学にアカデミックハラスメント対策を徹底し,被害者の保護とケアを最優先するよう求めます

自らの経験、周囲で見聞きした経験からも言えますが、若い学生の将来が沢山これまで奪われてきました。全員やる気があったとして、行けるところに進んでいたらどうなっていたでしょう。後ろの方にリンク貼りますが、わたしもその被害者で学生時代から30年近く精神を患っています。途中で遺伝も半分くらいは絡む病であったと分かりましたが。

文系にハラスメントがないわけではありません。そのいやらしさは例えば、詩人・文月悠光(ふづきゆみ)さんの書いた「詩人と娼婦」問題(「私は詩人じゃなかったら「娼婦」になっていたのか? 」(リンク))に出ていると思います。今は有料記事になっていますが。セクハラしている方が文学的な問題とはき違えているところがすごくいやらしいです。

学生を追い詰める「ブラック研究室」の実態
http://newswitch.jp/p/8290
魚拓
家庭教師や塾教師をしていたとき、お母さん方が「資格で安泰に」「手に職」のようにおっしゃることがよくありました。自分ができなかったことを子供に代わりにさせようというお母さんも。でも、それで本人の意に反して理系にやるとすれば、お子さんをひとりの人間として見ていないことになります。これから書くような悲惨なことも起こりかねません(自分から「行く」というなら問題点を教えた上で行ってみれば、と言うのもいいかと思います)。

また、翻訳者には文系出身で専門知識がないことに悩む人が多く、理系出身は少数派です。何か理系を「打ち出の小槌」のように「なんでもできる」と勘違いする方もいます(翻訳会社にもいます)。人によっては死人が出んばかりの過酷な目にあって卒業しているのに、嫉妬なのか無知なだけなのか、無神経な言葉の対象にされることすらあります。今までいちいち言ってきませんでしたが、理系の実態は最悪の場合こうなる(=命がない)なのです。実は上に挙げた文月さんは、「詩人」という肩書きについてくる偏見についてエッセイで書いていて、「理系」と何かが似ています。

冷静なイメージがあり冷たく見えようとも理系も人間ですから、研究室の上の人間が1ヶ月も罵倒すればご飯も喉を通らないし眠れなくなります。そこから「死」に向かうなんて簡単です。そうやって大学に行けなくなった生徒は、専攻によっては珍しくありません。論文を人質に取られハラスメントされることもあり、そうすると卒業ができなかったり危うくなったり、手柄を取られたりすることだってあると聞いています。された方は泣き寝入りしかできなかったのではないでしょうか。

そうやって噂になるのが「ブラック研究室」ですが、誰も何もできません。入ってから分かっても配置換えできたらいいのですが。Googleで検索してみたらこうなりました。

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「アカハラ=アカデミックハラスメント」という名前は実はかなり古いですけど、そう呼ばれる前からこのハラスメントはありました。例えばいじめが学生時代にあって、いじめられた方はずっと引きずったり進路が狂ったりするのに、いじめた方はしれっと普通に家庭持ったりしているというような理不尽さと同様のことが起きています。

なお、アカハラは教員間にもあり、中間管理職的な教員がもっと上から受けるものもあります。

わたしがいわゆる「専門知識」(たった学部並みですが)と引き替えに得たのは健康を長期にわたって害し、就職も逃すという結果でした。きちんと就職もしたかったし、やりたいことをやれるだけの体力も欲しかった。ですが(2017/05/23追記:修士に)進学したときに不況に入ったということもあって、卒業も就職も叶いませんでした。それを何も知らない人は「理系でいいねー、うらやましい」と言います。何とか卒業はしたくて(その後修士に進んで出ないとやりたいことができないため)、這うようにして学校に行きました。うつ症状が出ると朝がとても辛くなるので、這うというのは誇張ではありません。

進学を控えた、特に理工系や生命科学系の学生さんは、そういうハラスメントがあり得ると前もって知っておくだけでも少しは違うかもしれません。同じ研究室で朝から晩、深夜まで(朝まで?)閉じ込められていると面倒が起きやすいようです。研究室にいる時間が自分の経験では10時間くらいで普通でした。病気していたから無理できなかったですが、頑張れる人はもっと残っていました。

Classmate - Patrick_and_Mike

“Classmate – Patrick/Mike” by Marck Schoenmaker is licensed under CC BY 2.0

他のブログで読んだ対策案へのつっこみです。

1.研究室訪問:やらないよりはマシですが、それで全部は分からないと思います。わたしは修士に進むとき当時自分の大学からはあまり行われていなかった大学を替わるということをやったので、3校6講座の先生に約束取って会いました。一番話しやすかったのが最終的に決まった先生で、その予感は幸い外れていなかったのですが、世の中には最初はよくても裏表があったり豹変したりする人がいます。研究室はよく「あそこはきつい」とか噂が立つのですけど、今思えば自分が学部でいたところも事前に噂がありました。

2.ハラスメント相談室:人の話を総合すると、あまり役に立たないようです。既に削除されたTwitterによると、「相談したことを相手に漏らす」という相談室があるらしく、大学にもよるようですけど役に立たないと。他にセクハラ窓口の旗振り役が自らセクハラをしているというしょうがない話を読んだことがあります。

3.法テラス:下のリンク先にありますがわたしはDV調停離婚経験者で(有責側が調停起こしたと理解しています)、その後制度が法テラスに変わりました。一般的に弁護士に相談しようとすると役所などに法テラスを薦められます。証明しにくいものがアカハラやモラハラ(精神的ハラスメント、家庭だけではなく職場などにもある)の特徴だと思うので同列に書きます。

調停当時、弁護士さんによって対応はえらく異なりました。アカハラやモラハラの場合、証拠もはっきりしないのに大学という組織にケンカ売ってくれる弁護士さんは簡単にいますかね?DVでも精神的被害の訴えだけで勝訴したという話を聞いたことがありません。弁護士会などが犯罪被害相談ダイヤルを設けている自治体もありますが、常時開いていない場合もあり、うちの県では存在自体ほとんど知られていません。電話で訴えても先につながるとは限りません。

アカハラを受けて、裁判で勝訴したという例もあります。

http://thelancet.com/pdfs/journals/lancet/PIIS0140-6736(05)71533-6.pdf

(なくなったら困るので、ダウンロードしたもの。PIIS0140673605715336

試料などを持ち出され廃棄された日本人の女性研究者が勝訴した話で、2001年のLancetにあったものがなぜかその近辺だけpdfで見つかりました。証拠があったからこその勝訴ではないかと思います。

ブログ主のアカハラ体験で、この10年超ブログ書いたうちのトップ5には入っている記事です。

アカハラ被害体験とそこからの救済について(長いです。2015年と17年に追記)。

最後にキャンパスでの性 被害の話です。入学時の歓迎会などでのお酒の強要、最近はアルハラとも言うらしいですが、さらにセクハラやそれ以上の被害がこれから増えるのでしょう。深刻な被害もあるので書いておきます。今まで大学内の性 被害は表に出なかったのが変わってきました。去年大学内での性 犯罪摘発が多かったのは単に被害者が訴え出られるようになっただけだと思います。酒の席でなくとも性 被害はありますが、もしも被害に遭った時のことを考え次に書いておきます。
(性 暴力の定義を注釈として最後に付けます)

あまり知られていないようですけど、性 加害者で一番多いのは「夜道の見知らぬ人」ではなく「友人・知人」で80%(最後の注釈参照)を超えます。つまり、ほぼ泣き寝入りだと言うことです。わたしは大学外での被害者ですが、身近なケース2件だったためそれが被害だと気づくのに10年くらい遅れ、気づいた後パニックを起こしたりしました。
都道府県ごとに被害の後処理が1ヶ所ですむワンストップセンターができつつあり、病院や警察で何回も被害状況を話す必要がありません。東京の「レイプクライシスセンターTSUBOMI」は、時効がきている件でも3回まで電話で聞いてくれます(被害者センターも各地にありますが、相談可能かはケースバイケースのようです)。全国のワンストップセンターは以下の通り。
http://purplelab.web.fc2.com/onestopcenter.html

悲しいですが訴え出ても相談しても2次被害があります。新入学のみなさんに言いたいのは、お酒ってうまく使わないと一番メジャーなドラッグですからね。泥酔させられ被害に遭ったケースが昨年大きく報道されたものではほとんどでした。しんどいのなら一気飲みは断るのが身のためです。命にも関わりますし。仲がよい人ではなかったけど、同級生が1人急性アルコール中毒で亡くなっています。
酒が絡んだ性 暴力などの参考意見を医師のツイートやブログから注釈に張りました。

最近の強 姦罪改正で、男性に対する性暴力も認められるようになりました。ちなみに米有名私大も強 姦被害がひどく、オバマ前大統領がどうにかしようとしたくらいでした。
法律の改正点はこんな感じです。
現行刑法は「男尊女卑の発想」 性 犯罪刑法改正、残る論点は
https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20170315-00068739/
なお、学内でもデートDV、ストーカーがあり得ます。

そういうわけで、この時期入学したり研究室に配属されたりする学生さん向けに各種ハラスメントについて書きました。将来的に進む方にも参考になればと思います。いや、大学でのサバイバルも大変ですね。何か「こうすれば逃げられる」という手立てがあれば良いのですが、今回のテーマは詰まるところ「暴力」で加害者にはまず実感がないため、気がつかないうちに「自分が悪い」という方向に追いつめられる被害者も十分考えられます。まずは気がつくところからかと思います。

注釈:

性 暴力の定義は日本福祉大のHPでこんな感じです。恐らくほとんどの女性は被害経験があるでしょう。

※キャンパス・セクシュアルハラスメントとは
相手方の意に反した性的な行為や言動そのもの。また、それによって、学業や大学業務を遂行する上で不利益を与えたり、学業や就業の環境を著しく悪化させてしまうことを指します。
※性 暴力とは
レイプや痴漢行為、のぞきなどの明らかな犯罪ばかりではなく、相手方の意に反した肉体的な暴力あるいはことばの暴力によって性的関係を強要したり、間接的に性的接触を行うなどの犯罪的行為を含みます。
—–
知人・友人からの被害80%のソースは以下の通り。

性暴力の8割「知人から」…被害者支援の弁護士「自分を責めないで」(弁護士ドットコム)
https://www.bengo4.com/c_1009/c_1198/li_328/
魚拓

子の性暴力被害なくそう 大津のNPO、小中学校へ出張講座(京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20170327000021

魚拓

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医師の意見

日付をクリックして付いたコメントも見てみることをお薦めします。

河野美代子のいろいろダイアリー
http://miyoko-diary.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/post-e617.html

魚拓
この先生のおっしゃることその通りで、被害に遭うとなぜでしょうね、被害者がいろいろと責められます(女性が被害者の場合、女性にまで)。なにか社会的に性 被害を生み出す土壌があるのだろうと考えています。
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今回のおまけ:陰鬱な内容だったので、最後に綺麗な話題を。院生の時先輩が紹介していた「生物発光」という現象。ホタルとかホタルイカなどがそうです。バイオで検出に使いますが、近所の大学でバイアルの中で光るのを見せてもらったことがあり、とても美しいものでした。

Firefly

Photo: Firefly Mr.k_Taiwan via VisualHunt /  CC BY-NC-SA

監修:原典行(元東京工業大学大学院 物質科学専攻助教)

精神科訪問看護を試してもうすぐ1ヶ月(双極II型障害者)。

ヨシダヒロコです。

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Walt Stoneburner,  Nursing Books

https://www.flickr.com/photos/waltstoneburner/3336401711

今年は体調が特に大変だったですが、その兆しが1年半ほど前からあって、この環境にいたら自分の健康まずいなと思い、環境変えたいけどすぐに変えられないのでいろいろ役所その他(主に精神科・障害者関係。電話弁護士相談も)に尋ねたんです。市役所は障害者支援というと授産所(安く働かせる施設)とかしか考慮してないんです。少なくともうちの管轄では。

 

そんなわけで、躁うつの波もあったしやっとやっとだった1年でした。都会に住む幼なじみで看護師の卵の友達が、精神科訪問看護というものを教えてくれました。それまでは精神科救急という番号に夜間かけていたんですが(119の精神科版で、基本的には看護師さんが事情を聞いて医師につないで応急処置をする。24時間都道府県ごとにある)、限界があるので。それまで試した保健所も担当が忙しすぎて医者と連携して対応するには無理があり、前述の友達によると「具合の悪いわたし(患者本人)があちこち動いている状態」みたいに言われました。

どういう病気の人が訪問を頼んでいるかというと、少し前ですが厚労省の資料があります。わたしは前のDSMで言えば気分(感情)障害で、死にたくなることもあったから話は簡単ではなかったようです。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000048931.pdf

最終的に、隣の県の医師に市役所で聞いた民間の訪問看護ステーションを教え(聞けば役所知ってるんじゃん)、1ヶ月ほど前に書類が揃って医者や役所とも書類が行き来し、週1の訪問が始まりました。始まった早々、問題の1つである家族関係(介護とかではない)でまた問題が勃発し、医師の考えを裏付けるようなアドバイスをもらい、それに従ってなるたけ没交渉で接しています。間に入って何か言ってくれる事もありました。おかげで落ち着くようになりました。

頭痛で行ってる町医者によると、訪問はこの辺ではまだ浸透してなくて、市役所でも訪問「介護」と間違える人がいたり。1年くらい状況を伝えていたのに、もっと早く教えてくれればわたしも苦しまずに済んだということで、話を聞いていた人とは違うけど市役所の担当課で「わたしはもう少しで死ぬところだった」とぶち切れたことが10月にありました。ステーションは民間なんだけど、何か問題あったときには市役所に話が行きます。役所は本当に横の連携が取れてない、他の役所のやってること知らないと思います。

医師が県をまたいでいたり、地方で制度を知らない人のためにこのエントリを書きました。看護師さんとの相性もあると思いますが、こういう制度もありますよと。保険治療で、公費負担(うちの県では1割)がききます。

(2016/12/04 1:12追記:通っている医者に自分に使えるか聞いてみるか、県をまたいでいる場合は市役所などがステーションを知っているはずです)

放送大学大学院の試験(『精神医学特論』、2016/07/23)。

ヨシダヒロコです。

このエントリをもっと早く書かなかったのは、この試験範囲にあった内容がそのまま相模原の事件と関わるようなことだったため、世間が落ち着くのを待っていたためです。15回中14、15回は精神医療の歴史でした。優生思想だけはなかったですが、偶然去年から今年にかけてEテレ『ハートネット』で知る機会があったことは先月のうちに書きました。事件特番の『バリバラ』再放送は週末なので、興味のある方是非。自分にも刺さる内容でした。

放送大学大学院科目生になって1ヶ月。

シラバスです。

http://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H28/daigakuin/B/kyoutsu/8910707.html#syllabus

結論から言うと、この授業は受けてとても良かったと思っています。患者としても翻訳者としても。石丸先生はテキストに厳密に沿うのではなく、下に挙げるような先生をゲストとして読んで呼んでなにか心にしみいるようなインタビューをしていました。
20代のときひどい睡眠障害があって毎晩『ラジオ深夜便』聞いていたら、3時頃になってしみじみと『こころの時代』が始まるのですが、あんな感じ。学部では『死生学入門』を担当、わたしの受けた授業でも、エリザベス・キューブラー・ロスの『死ぬ瞬間』を薦めていました。他に呉秀三の私宅監置の本も。テキスト巻末には膨大なレファレンスがあります。

「治療は面接開始でもう始まっている」とか、「薬に先だって医師が患者に処方される」とか、「あらゆる病気が心身症なのでICD-10では心身症という言葉がなくなった」という意味の記述とか、なるほどーと思いました。

ゲストの先生方。たしかもう1人いらしたような。

「統合失調症と向き合う」
遺伝子多型についての研究裏話で、バイオ勉強しといて良かったという内容でした。
(2016/08/13 8:58追記:研究裏話は授業で。以下のリンクはゲストの先生のファミリーヒストリーの話で、それが研究につながります)
http://jpop-voice.jp/schizophrenia/s/1404/01.html

「教授ご挨拶 | 筑波大学医学医療系臨床医学域 災害精神支援学講座」
http://plaza.umin.ac.jp/~dp2012/greeting.html

 

この授業は1年前に受けたかったのですが叶わず、改訂前のテキストを持ってますがDSM-Vができたためでしょう、今年度から新内容です。DSM改訂点の説明も多いですが、「これだけに頼らないでください」という意味のことは繰り返し言われました。

試験は、授業が半分まで来たところで受ける提出課題・自習用課題、過去問2年分くらいあればシンプルなテストなので大丈夫かと思います。ただややこしいところもあるので、初めて接する人には学習が難しいかもしれません。もともとあった知識の確認的に受講したので何とかなりました。とは言っても採点結果はまだですが。

わたしは違いますけど、臨床心理士を目指している方が「試験にはこれだけで十分だった(病気について)」というコメントが旧版テキストの前書きにありました。

後期は受けたい科目が学部にもあり、院については生物(バイオ含む)を取って手順とか映像で見られないかと期待しています(次は1年間の選科生にしたい)。高校の頃やってみたかった生態学も、今ではデータや統計バリバリなのですね。

最後に、きっと読み甲斐あるだろうなと思われるこんな本が出るそうです。

(2016/08/17追記:試験の結果はA○でした(○の中にAが入っている)。9割から満点でした。周りの人も苦労しているようには見えませんでした)

『さよなら、ねずみちゃん』(子どものトラウマ治療のための絵本シリーズ)と日本翻訳大賞。

ヨシダヒロコです。

今日は、ネット友達の訳書をやっと読んだけどよかったよ、という話と日本翻訳大賞の宣伝です。
売らんかな、みたいに読めたらすみません。

さよなら、ねずみちゃん (子どものトラウマ治療のための絵本シリーズ)

ロビー・ハリス

誠信書房

2015-09-30

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

この誠信書房って心理学では有名な出版社らしいのです。絵本にこういうものがあるとは思わなくて、訳者の遠藤さんが「本が出ました!」と秋にSNSでポストしたとき、ブックマークしておいて後でよく見たらかなり専門的なものを易しく、みたいな感じでした。この本はペットロスや大事な人の喪失がテーマで、シリーズの他の本ではテーマが性暴力とかです。

http://www.seishinshobo.co.jp/book/b202107.html

見返しがやたら可愛く、絵はたぶんパステルかなにかと水彩の優しい感じ。字数は多めで、やはり優しい感じ。訳文には性格が出ますけど、訳者さんのほのぼのしてるところが出てますね(訳者紹介に至るまで)。

小さな男の子が可愛がっていたねずみちゃんが朝起きたら冷たくなっていて、男の子は「死」に遭遇するのは初めてで、パパとママが悲しむ坊やを慰めてくれます。そして、ねずみちゃんを埋めてあげることにするのですが、寂しくないようにといろいろ可愛らしいことをします。わたしも子供の時から今までいろんなペットを飼っていますので、思い当たることはたくさんあり、ペットって好きな人には心の深いところに触れる存在なのかも。いやーもう涙腺崩壊、となってしまいました。ねずみという形を取っていますが、人間も想定した内容です。

ペットとお別れしたことがあるかた、大事な誰かとお別れしたことがあるかた、ねずみが好きなかたなどにお薦め。わたしの好きなねずみは、今天敵を飼っているし、数が少ない野生動物なので飼えませんが、カヤネズミです。ほかにはスナネズミとか。

この本を日本翻訳大賞に推薦しましたが、友達の訳書云々ではなくいい本だと思ったし、こういうのをもっと出して欲しかったから。ギリギリになっていいますが、推薦は5日23:59まで。ここに推薦作が出ています。去年中に出た新訳でない翻訳書で、文学作品とかに限りません。理科系の内容でもいいらしいです。今年読んでる暇が無かったからなあ。匿名で、推薦文を出さないオプションあり、自薦もありです。今回は無理そうな人は、推薦書が「おっ」と思ってもらえる楽しみもありますので、来年に向けて是非。面白そうなのいろいろあります。

https://besttranslationaward.wordpress.com/2016/01/25/2015recommended/

JRが精神障害者だけ半額にしない理由(JR西日本の場合)(2016/01/26,30, 06/06追記あり)。

ヨシダヒロコです。

(2016/01/26:本当に沢山の閲覧ありがとうございました。鎌仲ひとみさん批判記事レベルの反応でした。興味を持ってくださっている方がこれほど多いとはびっくりです。最後に反応ツイートなどを付けました)

(2016/01/30:またツイートを少し追記しました)

(2016/06/06:「障害者差別解消法」について『バリバラ』で放送があり、短い動画を貼りました)

楽しくない話題なので、あらかじめ清涼剤代わりに「さんふらわあ」の爽やかな写真を。

前からこの料金体系疑問でした。去年の夏に、療育手帳(知的障害)の人も5割引というのを知って尚更。

わたしが読んだり多少聞いた話はこんな感じ。手帳ができた頃、(恐らく差別のため)顔写真を付けることを家族会が反対して、そのためJR(当時の国鉄)は精神障害者の割引を断った。だけど今は写真付きで、なぜ割引しないのか分からない。

今は秋に延ばそうと思ったお出かけで、西の方のフェリー会社HPを見るとはっきり、前はなかった気がする「精神障害者の割引はありません」という言葉が書いてあったので、「いちゃもん付けるわけではないけど、なぜですか」と聞いてみました(前に乗ったことがあり、料金は知っていたけど疑問だった)。わたしは人より公的な機関、一般会社に問い合わせた経験多いと思います。苦情とかじゃなくても、面倒な離婚での名義変更とか。だから知っているのですが、企業窓口は派遣の方で、面倒くさいことはその方々がやっている。派遣では処理できないことが起こると、正社員の上司が出てくる感じです。

フェリー会社の回答は明快で、「JRに従っている。この辺のフェリーは皆そう」というものでした。「もしJRが規定を変えたら?」とお聞きすると、「変えるとはっきりは言えないけど変えるかもしれない」というような話でした。まあ仮定だし先のことは分からないし、きちんと答えてくれたのでここは別に問題ないです。

問題はJR西日本。この間メールで来たアンケートの中身が気になって珍しく電話したときには親切な対応でしたが、そういうことは窓口の方によっても変わりますし。この話はお客さまセンターが担当と既に聞いていました。最初出た方は「国鉄時代のもので、お客さまのご意見を聞いて上にあげます」と言いました。そこで上に書いた家族会などを出すと、「お待ちください」と人が変わり、「個人的な意見を言ってはいけないといわれている」とおっしゃる女性が、多分この方も派遣の方なのかもしれませんが、こういうときのために用意された文章を読み上げました。何だか他にもありましたけど、要は「精神障害者への割引を認めると、他のお客さまの負担になる」というすごい文句でした。すこし良心がある人なら、すごい文面だと思うはずです。

要するに一般客の運賃が上がってしまうということなのですが、あまりにひどい文句なので呆然とし、しばらくあまり脈絡のないことをぶつぶつ口走ってしまいました。で、我に返って、多分無駄とは分かっているのですが、これを聞いて思ったことを伝えておきました。1)精神障害者は10割を払っているのであり、その客に対してあまりな内容ではないだろうか。文章として、もうちょっと言い様はないのだろうか。一応客商売をしているんですよね?(電話をかけた先が神戸だったので尚更)。2)国鉄体質はやはり変わってませんね。

白岡あささんなら、「なんでだす」って怒りそうな。

ちなみにブログに書いていいかという了承は取りました。件の文章は平成26年のもので、その前時代さに呆れるばかりです。他のJRも料金体系は同じなので、確認する気も起こりません。新幹線開通の感動を返せ!という感じです(用事があって開通当日に乗りました)。もちろん個々の従業員や駅員までも批判するつもりはありませんし、客だから何を言っても良いとは思ってませんが、何というか限度があります。精神疾患を持つ人は、人にもよりますしわたしが代表するつもりもないですが、多かれ少なかれ「自分は社会に(もしかしたらこの世に)不要な人間かも」と思いがちかと思います。普通の人も思うかもしれませんが、程度が全然違う。その文章を書いた人は、差別を受けながら暮らしている人の気持ちが分からなかったのでしょう。

おまけ1:新幹線開通でこの辺は第3セクターになりました。石川、富山、新潟のに乗りましたが、なぜか経営が苦しいはずの第3セクターでわたしも割引が受けられるようになりました。駅をみていると、いろいろコスト削減しているのが分かります。富山はまあまあ好調なようですが、あいの風とやま鉄道他ができることを、大企業のJRができないのはなぜなんでしょうね。

おまけ2:4月1日からこういう法律が施行されます。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律

内容をもう一度見てみましたが、具体的に差別した場合の罰則がすごくしょぼい。ないも同然です。この間『クロ現』で取り上げられていた、内部告発者が罰則のない法律その他の原因で苦しい目に遭っているのと同じく、罰則がないと大意は「差別してはいけません。仲良くしましょう」とまるで小学生の作文です。総理がアレだからですかねえ、とある相談窓口で話したところ、「それに尽きますね」と言われました。今気がつきましたが、パラリンピックがあるから整備してるのかもしれません。しかしこれじゃあね。

ちなみに障害者虐待防止法というのも23年に公布されて、それで捕まったのかというのをニュースで見たことありますが、色々書いてあるけど罰則は驚くほど少ないです。

読んで気持ちのいい話でない上にオチもないですが、当事者以外にはあまり知られてない話と思いますので。

(2016/01/26追記:当事者の方から教えてもらった便利なリンクと、Twitterでの反応を追加します)

精神障害者保健福祉手帳(障害者手帳)受けられる各種サービス
少々タイムラグがあるのは仕方ないとして、富山・石川では確かにこんな感じと確認しました。

 

 

 

これは、現実的には官僚がやってるから、という意味ですね。

 

(2016/01/30追記:反応ツイートを追加)

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まだ反応ツイートあれば教えてくださいませ。

(2016/06/06:昨日NHK総合にて、障害者バラエティー『バリバラ』で障害者差別解消法の特集がありました。本編には具体的な事例があってとても分かりやすいです。NHKからオフィシャルに、こんな動画が出ているのでご紹介します。番組中で放送されたものです)

モラハラ本・参考リンクについて。

ヨシダヒロコです。

今回少々プライベートな話なのですが、2004年に調停離婚して11年目になります。
わたしは向こうが有責だと思っているので、批判することに何のためらいも感じません。たとえ同業者であったとしても、もう何のつながりもないので。自分が離婚した頃には、精神的DVとしてのモラハラは全く認知されておらず(法律に含まれたばかり、くらいでした)、今回の裁判で急激に知られるようになった感があります。

わたしがアパートを出て行ってから、相手が調停を起こした理由は未だに分かりません。こちらから別れたかった理由は、モラハラを始めとした暴力です。以前、別の匿名ブログを持っていたときに色々書いていたのですが、考えがあって全削除しました。

いつか、モラハラ(今回の裁判で、モラハラとは幅が広いことを知りました)を始めとするDVなどについて書いてみたいと思っていましたが、一般化すると冷たくなる、自分の経験を押しつけるのも何だかな、ということで迷っています。下に出てくる、ネット友人でもある谷本さんが、「被害者が自分を客観視できるのはおよそ10年長くかかる(2015/03/15:谷本さんからの訂正依頼です)」と言っていて、11年目のわたしはまだまだかな、という感じです。精神疾患がこれを契機に悪化し障害者となりましたが、診断はギリギリでPTSDとはならず、躁うつ病(双極性障害)です。この病気は寛解はしても一生の服薬が必要であり、うつ病に比べ死亡率も高めです。

さて、自分のことは今回はそれくらいにして情報提供に移ります。
モラハラ本は数読んでないし、持っているだけの本もありますが、「良さそう」と思ったものやURLを紹介します。

谷本惠美さんの(「えみ」の「え」は画数が多いです)『カウンセラーが語る モラルハラスメント――人生を自分の手に取りもどすためにできること』は裁判証拠として提出されたため、どこを見ても今買えない状態になっています。もともとすでにロングセラーだったのですが。

出版社のHPはここ。挙げてある本屋の他に他にhontoやe-hon、紀伊國屋もありますが、増版かけてもしばらくは入手困難かと思います。書影はこれ。

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http://www.shobunsha.co.jp/?p=2383

自分の場合は脱出してかなり時間が経ってから読みました。優しい調子で、加害者すら責めないように「モラハラパーソナリティ」という言葉を使っていたのが新しいです。加害者が「ジャイアン」というのも新鮮だったし、一番新しいと思ったのは、普通こういう本では「逃げなさい」と言われることが多いのです。実際今でもDV専門窓口にかけているわたしがちらっと聞くと、何かの理由で逃げられなかったり、結局相手の元に戻る人はいるそうです。でもこの本は、逃げない決断をした人へのアドバイスが書いてあります。

もう1冊の本のことはちょっと分かりません。ネットを通じて存じ上げている著者さんもおり、下に関連リンクは貼ります。

谷本さんの文章が読みたい方にお薦めなのは、まっちーさんという元当事者が書いた本です。持っているのですが、いろいろ考えてしまって手が伸ばせていません。1つには、脱出するまでのストーリーにもはや興味が無いことがあります。彼女のブログではその「あと」が書いてあって、参考になりました。周りに何人かDV・モラハラ元被害者がいますが、パートナーシップの面で悩んでいたり、傷を持っていたりする人は見かけます。幼なじみはまっちーさんのブログに助けられたそうです。実は、後書きを谷本さんが書いています。

モラハラは自分または相手の生死に関わるほどひどくなることがあり、思い出して落ち込むかもなのでちょっと読むタイミングを待っています。DVなどの元被害者さんが支持者に転身する例はよく見かけます。

ブログはこちら。
http://blog.goo.ne.jp/machimachi_2005

夫からのモラル・ハラスメント: 愛する人からの精神的イジメ 苦しいのはあなた一人じゃない

まっち~

河出書房新社

2014-04-18

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

最後に、かなりなトラウマ状態になると、普通の本が読めない事態もあるかもしれません(わたしはありました)。「レジリエンス」の本は良くできているなと思いました。買って書き込む気力はなかったですが、ワークブック形式になっていてレイアウトがすごく読みやすいんです。

傷ついたあなたへ―わたしがわたしを大切にするということ DVトラウマからの回復ワークブック

レジリエンス

梨の木舎

2005-11

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

最後に有用なリンク集です。
ざっと眺めた程度のものも入っていますが。

有名な「モラル・ハラスメント被害者同盟」
http://www.geocities.jp/moraharadoumei/

NPO法人レジリエンス代表・中島幸子さんインタビュー(前編)
DVから逃れられない“被害者の心理”とは? 支援団体代表に聞く「加害者に支配された世界」

魚拓

NPO法人レジリエンス代表・中島幸子さんインタビュー(後編)
「性暴力、児童虐待……すべての暴力はつながっている」 DV被害者支援団体代表に聞く、被害に遭ったあとのケア

魚拓

谷本さんのブログ(DVなどの話題はないです)
のたりのたり日記

もう1冊裁判所に提出された本の共著者である、熊谷佐智子さんが関わった記事
あなたは大丈夫?モラハラ夫に狙われる女性の特徴8つ【前編】     魚拓
あなたは大丈夫?モラハラ夫に狙われる女性の特徴8つ【後編】     魚拓

以前、何かの事件の時に、昔あった別のブログをメディア(具体的にはNHK)の方が探してこられ、受けた質問で今でも嫌な思いをしているので、そのような取材用途での問い合わせはご遠慮下さい。

NHKEテレ「TVシンポジウム『うつ病と躁(そう)うつ病を語る~自分らしく生きるために~』」(2014/10/18)。

ヨシダヒロコです。

24年前に適応障害と言われてからいろいろあって、結局今は双極II型です。

このシンポジウム、事情が許せば行きたかったくらいです。
ほんとは2時間くらいあったそうですが、そのうち1時間がTVになりました。
再放送の予定は今の所ないようですが、下のリンクから再放送希望を出せば、聞いてもらえるかもしれません。

下のリンクは番組表で、出演者が書いてあります。精神科医では、大野裕先生(認知療法で有名)、加藤忠史先生(「躁うつ病のホームページ」主宰。躁うつ病の研究者では日本で一番目立っている気がします)。その他、実名・仮名の患者さんたちと、司会は福祉ジャーナリストの町永俊雄氏(NHKの福祉系によく出てたアナウンサーだと思ってたのだけど、「元」らしいです)。

https://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20141018-31-18538&pf=f

遅れてこられた方のために、魚拓。リンクが切れてても見られます。

1時間の間に沢山の回復へのヒント(知っていることも知らなかったことも)を見たし、以前本を読んだときも(リンク)感じたんですが、自分の病状はここまでではないと思っても、人の闘病生活は参考になります。ブッダだという誇大妄想を持ってしまい、慈愛の心があふれるあまりにアリがいたら「アリさーん!」となってしまった躁うつ患者さんの話は笑ってしまいました。後で考えると、どういうメカニズムでそんなことが起きるのか不思議です。

うつ病と躁うつ病は似ているようですが、治療法が違います。主に薬物療法(後者は気分安定薬というものを使います)。その辺も短い番組の間に説明してありました。

番組中にあったのですが、自分が「頭がいいから」とか「頑張っているから」などの能力のためでなく、「自分であるから」というだけで周りの人が大事に思ってくれるという啓示は、わたし自身も長いこと病気と闘ってきて去年やっと分かったことです。当事者の方も言っていましたが、こういう意識があると自殺などの破滅的な行為も減るだろうし、病状も安定するだろうなと思いました。いい番組でした。

ちょっと和んで頂くために、現在のわたしのデスクトップです。ちょこまか泳ぐので、これ以上芸のあるものはなかなか撮れず。動物園で撮りました。

2014-09-22 13.32.30

「躁うつ病とつきあう」「躁うつ病はここまでわかった」第2版・レビュー。

ヨシダヒロコです。

年末年始に時間があったので、かなり読書をしました。この2冊は、自分の病である躁うつ病(双極性障害)についていろいろ目を開かせてくれました。前者の本は初版の内容が少し古く(15年ほど前)、版を重ねるごとに加筆してあって、一番新しい版は昨年です。ですので、最後の方は新しいそうです。後者は元々が2007年初版なので、比較的新しく、最新の第2版は2012年です。

双方とも、理研で精力的に双極性障害の研究をされている精神科医である、加藤忠史先生の著です。

躁うつ病とつきあう[第3版]

加藤忠史
日本評論社
2013-03-20 by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

躁うつ病はここまでわかった 第2版: 患者・家族のための双極性障害ガイド

加藤忠史
日本評論社
2012-08-10 by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

まず、「躁うつ病とつきあう」から。これは著者が大学病院勤務だった15年ほど前からの患者さんの話を書いてあります。巻末に「躁うつ病を知ろう」と題し、ざっと治療のコツのようなものが書いてあります。

わたしはこの2冊とも、日本評論社のサマーセールの時に買ったのですが、Amazonでの評価は様々で、どっちかというといまいちなものもあります。患者さんのディテールを多少ぼかしたり改変しているのだろうと思いますが(大体精神科系の本はそう)、特定の患者さんについて書いた場合は許可を取ってあります。

HP「躁うつ病のホームページ」(今まで気付かなかったのか、医師・研究者向けのページがありますね)やそこから購読できるメルマガで、他の患者さんのことも読んでいたのですが、ここには沢山の症例があって、引きこまれて読んでしまいました。自分はこんなにひどくないと思っても、何かしら教訓はあるものです。自分も含めて、なぜこんな病気になるんだろうという学術的な疑問もあります。

15年ほど前の研究は原始的で、アメリカの論文を読んで同じようなことをやろうと思い、教授にアドバイスを求めたら「実験器具ははんだ付けでできるよ」と言われたり。はんだ付け……。躁やうつを押さえるには、化学周期表でおなじみのリチウムがよく効き、わたしも飲んでいますが、そのリチウムの作用の研究でした。研究者になりたかったわたしには、こういうことも面白かったです。

あと、これはこの本を読んでみて知ったのですが、修正ECT(有名な電気けいれん療法を、筋弛緩剤を用いてマイルドにしたもの)は全然怖く感じないなあ、と。

巻末にある注意点で、自分が徹夜してはいけないことを初めて知りました……まあ朝が来たら寝ていたのですが。一晩徹夜しただけで、躁転(躁に転ずること)が起こることもあると。どうりで睡眠時間が不規則になるといろいろ不調が出たり、他にも片頭痛がひどくなったりしたものです。あと、当たり前だけどできにくいことに、薬を絶対やめないことがあります。勝手にやめて再燃するケースは多いそう(精神科系の薬では基本です)。家族に患者がいることはあっても遺伝はないですし、妊娠・出産もできます(2016/01/04:わたしの場合年齢的にもう無理なので関係はないのですが、主治医は遺伝があるからやめなさいと言っていました。ちなみに遺伝要素は病因の半分だそう)。

さて、「躁うつ病はここまでわかった」の方ですが、より専門的な内容となっています。加藤先生の他に、4人の精神科医と、敷島カエルさんという患者さんの手記からなります。

加藤先生の章は上の本を詳しくしたような感じで、他の先生の書かれたもので注目したのは、岡本先生の躁うつ混合状態(p106)、名前通り両方が混ざるのですが、エネルギーはあるのにうつっぽくて自殺したがったりして危険なのです。わたしが去年なっていた状態はこれらしいです。双極II型と境界パーソナリティ障害との鑑別は、上の本にもありましたがこの箇所にもありました。どうも見分けにくいとか、同じ病気を違う角度から見ているとか、医師によって微妙に言い方が違うのですが、似ていることは間違いないようです。

基本的に薬で抑えられる病気だということは双方の本で一貫していたと思いますが、ラピッドサイクラー(躁うつの交替が激しい)やなかなか合う薬が見つからなくて入退院を繰り返す患者さんもいらっしゃるようで、大変だなあと。わたしも軽くはないので、気分安定薬(波を押さえる)が3種類出ている理由がよく分かりました。

敷島カエルさんの手記はずしりときました。躁とうつを繰り返し、満足に子供が育てられない苦しみが綴ってあります。この章はこの間東京に行ったときに、帰りの夜行バスを待ちながら読んでいました。

「たとえばある日突然アクシデントによってけがをして歩けなくなったとします。足に傷を負って松葉杖をついて元通り歩けるようになるまでリハビリをします。それと同じで、躁うつ病もある日それこそうつになったり、躁になったりして、体が止まったり、逆に動きすぎたりしてしまうのです。うつの状態では”歯磨きをしただけですごい進歩”という日がありますが、それで『よく頑張ったね』とは誰も思わないでしょう。ましてや外を歩けるようにでもなれば、着替えをして意欲も出てきているわけで、ずいぶんな進歩なのですが、別に誰も賞賛しない普通のことなのです。躁うつ病が理解されにくいのは当然のことかもしれません。」(p172)

ここの箇所は特に深く頷きました。

おまけですが、巻末のQ&Aによると、低用量ピル(普通に処方されるピル)は気分障害が減るそうです。つまり、わたしが飲んで感じたとおり、情緒が安定するようです。ピル関係の検索がよくあるので、参考までに。

「統合失調症がやってきた」の簡単なレビュー。

ヨシダヒロコです。

精神科の患者でもありますが、症例報告など訳してみたいと思っています。もちろん仕事として。

さて、この本はハウス加賀谷&松本キックの漫才コンビ「松本ハウス」の本ですが、わたしがネットでお見かけする精神科医が2人大いに褒めていたので、期待して買いました。

病人にとって、闘病記とはある意味辛いものです。病気が違っても底を流れるものが似ていて、うるうるしてしまうのです。もちろん感動の涙ではありません。どちらかといえば、自分のつらかった闘病体験の追体験に似ています。ですから、健康な人に「感動した」的に片付けられてしまうと、「著者がこれだけ書くのにどれだけ苦労したと思っているんだ!」などなど、反発心を感じることがあります。

この「統合失調症がやってきた」は年末に仕事が切れたとき、一気に読み終えました。非常に読みやすい本であり、それは加賀屋さんの体験が多少要領を得ないところをキックさんや編集さんが頑張ってくれたのらしいのですが、加賀屋さん自身吐きそうな思いをして書いたそうです。確かに、その気持ちは少し想像できます。

10日以上考えましたが、本の抜粋がネット上にあり、それを読んで頂くのが一番と判断しました。わたし自身、幻覚など、非常に統合失調症のリアルな症状に近づけたと思っていますし、先に上げた精神科医の1人は「当事者本は数あれど、エポックメイキングな1冊」というようなことをツイートしていらっしゃいました。

統合失調症がやってきた

加賀屋さんはある新薬がぴったり合ったおかげで寛解(ほぼ症状がないけれど、薬はいる)状態までに持って行けました。誰でもそううまく行く訳ではないけれど、世の統合失調症の患者さんで薬がうまく見つからない方に、早く合う薬が見つかればいいなと思います。

なお、この後躁うつ病の本を2冊読んだので、そのうち書きます。病状の説明もありますが、どちらかといえば研究寄りの本です。躁うつ病の当事者本も読む予定です。

「あさイチ」でやっていた統合失調症特集がナイスであった。

ヨシダヒロコです。

躁うつ病の患者ですが、医学系の翻訳者もぼちぼちやっており、精神科の案件も受けられたらなと思っています。一番やってみたいのは症例報告です。ストーリーがあるところが好きです。

精神科医ぷしこま先生(@psykoma、Facebookページもお持ちです)が加賀屋ハウスさんの本を散々薦めていたので、たまたま今日は早く起きたことだし、1時間じっくり見せてもらいました。

加賀屋ハウスさんは子供の時から自己臭に対する幻聴(周りが「臭い」と言っているのが聞こえる)があって、色々あったけどそのまま大人になって松本さんとともにコントでボキャブラで売れ、2年休みがなかったそうです。ボキャブラ、よく見てたのに覚えてないなー。

その後調子を崩し、閉鎖病棟に入ったりなど治療・リハビリ10年。やっと復帰でき、今は寛解状態です。要するに、一見病気とは分からないまで治ったと言うことです。薬は継続です。プレッシャーをかけず待っていた相方さんもすごいなと思いました。松本さんは加賀屋さんのことが本当に分かっていて、精神科医の診察室で心配してくっついてくる家族のようでした。もちろん、ちゃんと認めてあげているんです。わたしはうちで家族とよく喧嘩になりますが、なかなかこういうやりとりは出来ないなと。

それで、これが新しい「統合失調症漫才」。統合失調症には、失礼ながら陽性症状と呼ばれる症状に幻覚・妄想・幻聴など派手な症状が多いので、コントにもしやすいのかもしれません。陰性症状と呼ばれるのもあって、コントの中でさらっと述べられていますね。これは、「幻聴妄想かるた」よりインパクトすごいかもしれません。少なくとも、非当事者には分かりやすいです。

あと2人患者さんが登場しますが、ひとりは映画にもなっている英国人ハーブ専門家のベニシアさん、その一人娘のジュリーさん。シングルマザーになったのをきっかけに発症、14歳の息子さんはお母さんの症状がよく分かっていて、例えば「ヒレカツ食べた」という言葉が出てくると、「ヒレカツとは何か」を丁寧に説明します。ジュリーさんがすぐ忘れてしまうからのようです。

最後のひとりは一般人の優太さん。専門学校生の時に発症、多くの薬を飲みましたが今は1日1錠だけ。東邦大学の若い人向けのデイケアが功を奏し、今はフルタイムで週5働いています。

どちらかといえば理想的なケースばかりかもしれません。紹介されたFaxの中には深刻なものもありました。例えば患者さんに病識がない(病気であると思っていない)とか。だから医者にも行かないとか。

NHK総合の精神医療関係の番組はほぼ見放していたのですが、これは良かったです。こんな感じで、他の疾患や難病も扱って欲しいですね。難病については今、患者さんの負担増とか騒がれていますし……。

最後に、加賀屋さんが松本さんとネタを考えていて、「そこでおまえの決めぜりふ」「『そうですね』」に爆笑したんですが、おそらくこの「そうですね」は精神科医がよく使いそうな言葉だからでしょう。

統合失調症がやってきた

ハウス加賀谷

イースト・プレス

2013-08-07

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

今日は読みたい本の話ばかりですが、これも読んでみたいです。