ラクマ(元フリル)で英語、辞書、医学(歯科)系のレファレンスを探す。

ヨシダヒロコです。

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Credit: Pixaday

季節の変わり目で調子がおかしくなり、しかも先日は富山・石川で雪が降りました。昨日まで2日ほど風邪でぶるぶるでした。

さて、古書などのレファレンスについてラクマやメルカリに流れている場合があると、翻訳者のみなさんも探しているようです。大学関係の方だったかTwitterで言うには、メルカリに出すような人は教科書も読んでないから状態がいいと。メルカリについてはやってないのですけど、昨日前から登録していたラクマで調べてみました。もともとは翻訳者aoさんが古着にはまっていると聞いて冬に試してみたアプリです。本ではないですが収獲がすでにあったので、また改めて。

マンガなどで時代に愛着のあるものは古書で買いたがります。先ほど映画化された(そしてまた見逃してしまった)岡崎京子『リバーズ・エッジ』はわたしが興味持った頃、岡崎さんがひどい事故に遭い(まだ執筆には戻れてないはず)絶版だったようなので、中古本で買いました。

英語学習、辞書、絵本などでは洋書でも出品があります。ただ入門書が多く、多国語は初歩以外期待できないです。医学系も出品があって、わたしは歯科の仕事がたまにあるのですけど、医歯薬出版の『常用歯科辞典』第3版が安く売ってました。ちなみにこれは新版CDが医歯薬出版からでていて、中身が見られます。CDあるならいつか欲しいなあ。前の版で本でもいいという人なら安く手に入るかも。

以前、同業者Mさんのブログを読んでいて、歯科レファレンスの話を読んだときに「すごいなー」と思っていたのですけど、今まで仕事来たときに辞書くらいないか調べなかったのかわたし?と昨日自分に突っ込み入れたくなりました。

主な歯科辞典は、井口富美子さんの(元)ブログ”In Tandem”にあります(下リンク)。題名の研究社歯学英和辞典はLogoVistaのもので、新版がこの記事の後に出てます。半額になったら買おうかな。

ブログは幅広くは読み切れていないのですけど、ブログでなくとも会話を交わした翻訳者友達の言葉共々とても参考になります。ちなみにわたしは歯医者さんに行ったときに、ギリギリの情報を出して普段からの疑問を質問することもあります。

CD版研究社歯学英和辞典

https://blog.goo.ne.jp/tedesco_log/e/e1b16ac865988c3b6c734f0509caddc8

一昨年出たこの辞典新版、医歯薬出版のページです。中身が見られます。

常用歯科辞典 第4版

https://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=457900

他に、『English Grammar In Use』(青)も扱いが多数ありました。中身見てみないと分からないですけどわたしは赤色のAdvancedかも。前の英語の先生が薦めてくれた本だっけと、いつかある筋から勉強法についていろいろ聞かれて先生を質問攻めにしたときの記録を引っ張り出してみると、「基本に返れ」。本より大学(恐らく英語圏の)やオンラインコースがお薦めとありました。

以下もお薦めと。GrammarlyはWordアドインなので英訳の仕事に使ってます。FireFoxプラグインにもなります。

learnenglish.de

dailygrammar.com

grammarly

grammargirl

Dr.grammar

辞書で書籍版漢字源もあったんですけど、5版のCD-ROM持ってました。LogoVistaブラウザだと部首などで調べられるそうです。

いろいろ気づかせてくれたので、ラクマの条件を保存してたまに見ることにします。

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長らく積ん読の『朝日新聞校閲センター長が絶対に見逃さない間違えやすい日本語』レビュー。

ヨシダヒロコです。

わたしが普段使わない「自慢」という言葉をわざわざ使いますが、『校閲ガール』はドラマになる前に目ざとく見つけて大好きになりました。本を買ったころに訳は忘れたけど校閲に興味を持っていて(今もですけど)、一緒にAmazonのサジェストで朝日のこの本を知ったのだと思います。長らく積ん読でしたが、冬頃にペットの看病をしつつ獣医さんの待ち合わせなどで本を開き読み終えました。

間違った言葉遣いを読みやすく教えてくれる本で、ようやくご紹介できます。新入学・就職などのシーズンに当たっているため遅れてちょうど良かったかもしれません。文章の書き方講座もあります。

『校閲ガール』は昔ブログを書きました。今は続編2冊が出ていて是非レビューしたいです。下に貼ったのは文庫本も出ています。ドラマも合わせてお薦めです。

ひたすら楽しいエンタメ『校閲ガール』。

翻訳者は(「翻訳家」は訳書を何冊も出してる人で、わたしみたいな実務系の人は「翻訳者」といいます)語学力があればなれると勘違いしている人が多く、「外国暮らしの経験があれば」「留学してれば」という話になることはありますが、大事なものが抜けています。そう、日本語。わたしは20代の頃に県の研修を受けてボランティアで2年ほど日本語教師をやりました。「こそあど」とか「は」と「が」の違いを外国語として眺めたときに説明できない自分がいました。当時もう翻訳を視野に入れていたため、そもそも自分の母語を理解していないことに気がつきました。日本語は勤め人や学生同様、翻訳者にもとても大切なことを知ったのでした。

わたしは普段なるたけ本を本屋さんで買っていますが、品揃えはネットが勝っているので(近くにそんな大きな本屋さんがない)注文かける際にAmazonの「なか見!検索」は嬉しいですね。見ると分かる通り、○×やクイズ形式で間違った日本語を解説してくれていて、レイアウトもほっこりする絵が入っていて読みやすいです。わたしも間違えたものが少ないとは言えなかったので、自分でスキャンして電子データにしたい!と思ったくらいでした。

四字熟語の漢文のうんちくはなかなかお役立ちで、例えば「朝令暮改、朝礼令改」(p106)のウンチクを引用すると、

前漢の文帝の頃、商人や地主の力が強くなり、農民が疲弊していました。そうした状況を臣下の晁錯(ちょうそ)が文帝に上奏しました。その内容が班固の「漢書」食貨志(しょっかし)に記されています。食貨志は「食」と「貨幣」にまつわる話をまとめた、いわゆる経済報告書のようなものです。

勤苦此(かく)の如くなるに、

尚復(なおまた)水旱(すいかん)の災被(あ)り

急政暴賦(きゅうせいぼうふ)

賦瞼(ふれん)時ならず

朝(あした)に令して而(しか)も暮改む

「農民の生活はこのように苦しいのに、水害や干ばつに見舞われ、苛酷で暴力的な政治に虐げられ、急に租税をかけられ、朝に出された命令が夕方には改められる」と農民が翻弄されている様子を報告しています。その中に「朝令暮改」が書かれているのです。

という感じで、かなり読み応えがあります。間違って使う人、自分含めて沢山いそうだと読み進めるうちに思ったのでした。

各章末には、著者の教えていたカルチャーセンターの添削でこんな風に直しました、という実際の例が出てきます。わたしは今まで接続の意味で「が」を使う人でしたが、これを読んでからできるだけやめています。

著者の前田さん、朝日校閲センターの本には文章書き方の本も含めるとこんなものがあります。朝日からはこの他にもあり多いです。すぐ下の本は、「マジで書けない」人がAmazonレビューで怒っている模様。

朝日系ということでは、昔これを参考にしました。翻訳者の間では定番です。ほかに中公新書でいいのでしょうか、『理科系の作文技術』もあります(未読)。

毎日からも出ています。他の新聞社は探しましたが辞典で小学館があるのみだったかと思います。記者ハンドブックみたいのは色々出てます。

意味がすっきり通る美しい文章を書くことは、翻訳者の目標だと思います。日本語に訳すときも、その反対でも、気をつけていないと外国語に引っ張られて滑らかになってくれないのです。そんな訳で日本語(書き方・文法諸々)が大事なのよく分かっているので、こういう本も読んで適宜アップしますね。

『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃』読了。

ヨシダヒロコです。

Hand inserts a molecule into DNA.

Credit : Adobe Stock

これは翻訳祭で言及したうち最後のレビューです。あの時点では真ん中より後ろを読んでいました。年内に読了しており、2018年1月早々にレビューするつもりでしたがいろいろあって遅れました。仲野先生の病理学本のおまけがありますが、4月にずれ込むでしょう。

『ゲノム編集の衝撃』と比べてこの本の特徴を一言で言えば、前者は入門書なのに対しこちらはよりディープかつ詳細であること、人工知能やクラウド・コンピューティングとの組み合わせでゲノム解析を加速化することが書かれています。ITへの言及は前者にはありませんでした。難病が治るかもという使い方もできれば、SFのようなことも可能になるかもしれません。そういう意味で、実現するようなことがあればわたしでさえ恐ろしいと思うような話もありました。すでにAndroidもGmailもアマゾンも使ってますけれど。

著者の小林雅一氏は東大理学部物理学科卒、ボストン大でマスコミ論を専攻、雑誌や新聞社での勤務経験があり、慶應メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭、現在KDDI総研リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授。専門は先端技術(IT、ライフサイエンスなど)の動向調査ということです。ずっと大学にいた方ではなく、民間経験も豊富な方がご自分の得意な分野で書かれた本という印象です。

目次を書き写しておきます。

1章 「人類の寿命は500歳まで延びる」は本当か――ゲノム編集「クリスパー」の衝撃

2章 解明されてきた人間の「病気」「能力」「特徴」――パーソナル・ゲノムの時代

3章 ゲノム編集の歴史と熾烈な特許争いの舞台裏――誰が「世紀の発明」を成し遂げたのか

4章 私たち人類は神になる準備ができているか――グーグルとアマゾンの戦略

2章に分子生物学の説明もあるのですが、初学者や勉強中の人に親切とは言えない気がします。図もその部分を除けば少ないので、すでに生物や分子生物学の知識が多少ある人、ITにもひどいアレルギーがない人に適しているように思います。

1987年、大阪大学微生物病研究所の石野良純氏(現・九州大学教授)が発表した論文中で、大腸菌DNA内に奇妙な塩基配列が発見されました。それから四半世紀、これをベースにクリスパー・キャス9が作られました。メスのようにDNAをピンポイントで切断、遺伝子組換えにはるかに勝ります。分子生物学の基礎さえあれば誰でも扱え、そして早いのです。

問題点はオフ・ターゲット効果で、狙ってない場所で切れてしまいます。

中国で行われたヒト受精卵のゲノム編集について(2015)、デザイナーベビーの問題について。どこまでが医療でどこからがそうでない目的なのか、境界線をどう引くかは難しい問題です。生まれてくる我が子の知的障害をゲノム編集で治療する場合、ナチスが行ったような優性学を思い出させるなど、倫理面での議論が豊富と感じました。

クリスパーは特許を争っていますが、群がる大企業や動く金が生々しい(企業名が出ている)様子です。

2章は上に書いたように分子生物学の説明がありますが、初めての人がいきなり読んでもたぶん分からないでしょう。ゲノムワイドなど、ゲノムから病気の原因となる遺伝子を発見する試みが書かれています。

前に紹介した『ゲノム編集の衝撃』はアメリカのチャン氏しか取材していなかったのですが、本書では特許争いのもう一方であるアメリカのダウドナ氏とフランスのシャルパンティエ氏についても3章でバックグラウンドを書いています。「ノマド科学者」だった、と書かれているシャルパンティエ氏のヒストリーは興味深かったです。

ところで先日、豚の体内でヒトの臓器を作るという驚くような研究があってネットでも議論されました。カズオ・イシグロの小説みたいだと。

多少似た話がこの本にもありました。豚とヒトは臓器のサイズが似ているのでいます。臓器移植を目的として、移植した場合感染してまずいことになってしまう豚のレトロウイルスを発現する遺伝子を62個もゲノム編集で改変したという話です。1型糖尿病患者に豚すい臓の一部を移植することは外国で行われており、日本でも2016年にヒトと豚など異種移植の実施を許可しました。ちなみに1型糖尿病は遺伝性。他の遺伝性疾患、難病も遺伝子治療の歴史があります。

気持ち悪いとか言う人の気持ちもそうだろうとは思うのですが(生理的に気味が悪いという感情は周りからはどうすることもできない)、喉から手が出るほど臓器が必要なことに生まれながらなっている人の気持ちは、中年になって実は長患いが遺伝病だったらしいと分かってしまったわたしには何となく分かります。健康だと分からないでしょうね。ちなみに、昨夏金沢であって行ってきたCiRA(iPS細胞研究所)のサイエンスカフェで聞きましたが、糖尿病で一度にダメになるというすい臓・肝臓・腎臓の移植率は待ってても各1桁(%)です。

ここまで書いてきて何ですが、ゲノム編集はすでにこれから学ぶ人にとってはすでに「遅れて」いるそうです。ツイート中にあるURLトップページでもう記事はそこにはないため、改めてリンクを貼り直しました。だから分子生物学は進歩が早いと翻訳祭でも言ったのです。

ゲノム編集技術「CRISPR」は、もう古い? すでに研究は「次世代」へと向かっている

魚拓

今までの技術を知るためには、倫理面も分かる本書はコスパも良く最適ですが、入門書ではないことに注意して読んでもらえたらと思います。

左巻先生ご夫妻の検定外教科書『大人のやりなおし中学生物 木と草の違いはどこにあるの?ごはんをかむとなぜ甘くなる?』読了。

ヨシダヒロコです。

翻訳祭で話した本のうちでラストから2冊目。実はこれが易しそうに見えてなかなかどうしていい意味で期待を裏切りました。初学者の場合レイアウトも大事だと思っています。この本は手書きイラスト、色つきの部分、文字の配分が良く、好感が持てました。

わざわざ「左巻先生の」と断ったのは、理科教育やニセ科学批判問題で有名な方だからです。ニセ科学とは科学に見えてそうでないものを指し、例を挙げれば「水にきれいな言葉をかけたらきれいな結晶を作る」みたいなものです。ご夫妻で教育現場に長年おられて、著書も沢山ありますがこれが初めて読む本になりました。下に挙げる「高校生物」の化学版(左巻先生著)はレファレンスとして秋に買いました。

中学生物だけでなく、高校生物の検定外教科書もあります。著者からいって間違いないのでそのうち揃えておきたいのですが。

共著者は北大理学部の教授をされていた栃内先生。ブログつながりが長く、今はよくTwitterを拝見している先生です。『進化から見た病気――「ダーウィン医学」のすすめ』(ブログ掲載時に題名間違ってました、すいません!)は2009年出版時に読んでブログにレビュー(リンク)があります。

 

「中学理科」は題名にあるとおり、大人が生物をやりなおす場面になったときのための検定外教科書です。1章30分で読めるように書いたとあり、確かに読みやすいです。Amazonにページの画像があります。検定外のため、文科省の指導要綱には従ってない部分があり、元塾講師・家庭教師として思うにはDNAのあたりがかなり突っ込んであるのがそうでしょうか。最近は知りませんが、中学校ではほとんどやらないのではないでしょうか。

読者対象はこんな人々。P3より、

1.仕事や学業で生物の基礎を短時間で学び直したい大人。

2.中学生物を短時間で復習したい中学生、高校生。

3.中学生物の全体を知るために予習したい中学生。

このうち、1.の人がメインだそうです。受験準備にもいいと思います。

さらに目次をあげておきます。

第1章 植物の体のつくりと働き・暮らし

第2章 植物の仲間とその歴史

第3章 動物の暮らしと体のつくり

第4章 動物の仲間とその歴史

第5章 生物の細胞と発生

第6章 生物の遺伝

第7章 生物どうしのつながり

第8章 生物の進化

第9章 生物の歴史

第10章 人類の成り立ち

4択ミニテストが随所にはさんであり、簡単そうに見えて意外に間違えてしまうのですが、理解度を確認できます。とはいっても基本的に読み物なので、見開きなどでコラムがあって「へええ」「ほー」という内容で読みでがあります。これだけ内容があって、もし読者が理解できたら簡単にニセ科学にもだまされないのでは?と思うくらい。

わたしは前半を読んでいて、「ああこんな話子供の頃に大好きだったなあ」と思い、分子生物学のところは一応確認のために読み、「遺伝子組み替え」のコラムを頷きつつ読み(知らないことがあった)、最後の方で、太古の昔にあった植物や恐竜の絵や描写があるので、今そういう生き物が生きていたらどんなだったかなと想像したりしました。

字はまあありますが、新書サイズで小さいのでどこにでも持っていって読めます。生物はとても範囲が広いと放送大学の院で授業を取ったときに教わりました。この本は「中学」と付いてはいても、今の時代を生きていくのに最低限必要な知識を楽しく読書してつけられる本だと思います。

「理系のハナシは難しいと思っていませんか?実は中学レベルの約束事を知っていれば、内容の多くを理解できます」(裏表紙より)。

『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』読了。

ヨシダヒロコです。

しばらくは翻訳祭で紹介してレビュー書いてない本を中心に書いていきます。先月末は本を掛け持ちして結構大変でした。この本はゲノム編集についての一般向けの本で、クロ現が元になっているそうです。

またもや書評サイトHONZより、クマムシ博士こと堀川大樹さんの文です。

『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』来るべき未来に備えて正しい理解を

先月だったか見た番組『BS1スペシャル「“ゲノム編集”食物~密着 食の未来の最前線~」』魚拓)、これはオンデマンドでも見られるし、再放送も今後ありそうですが、映像で見ると不気味に思うところもありました。日本で作られている、ゲノム編集ですごく大きく育つ(正確には筋肉が増える)マダイとか。技術的には遺伝子組換えより安全だそうですし、その理屈も理解してはいるのですが。

目の前にあったら?もちろん味見はしますよ。うちの辺りでタイはあまり食べられないですし、あまり刺身でスーパーに売ってないんです。

怖い感じがしたといっても、このドキュメンタリーの中で研究者が言っているように、「自然」な食べ物なんてもうないんです。品種改良の知識のある人はご存知かもしれません。交配でかけ合わせてかけ合わせて、人間に都合のいい野菜や家畜が作られてしまっています。

今、秋にあったお花の品種改良についてのサイエンスカフェをまとめていて、写真の許可待ちです。そこでゲノム編集の話を初めて聞いたのですが、きれいなお花も分子生物学バリバリでどんどん新しい品種が作られています(とはいえ品種改良でも観賞用でも原種は珍重されますけどね)。今ざっと見直すと、その研究施設も本に(追記)出てました。

本の話に戻ると、ゲノム編集で使うクリスパーという塩基配列は、もともと日本人研究者が見つけた不思議な配列が元でした。そこにキャス9というのをあとでくっつけたのですが、同時期に発明したとかしないとかややこしい理由でヨーロッパの研究者ペアとアメリカの研究者の間で訴訟問題になっています。特許専門の翻訳者さんは、経緯に興味を持つでしょうね。取材班はその片方、アメリカ側の研究室訪問も行っています。

ノーベル賞確実と言われているだけに、誰に特許が認められるのかは大きいかもしれません。

その他にも研究のエピソードが豊富で、なかなか見られないものを取材班に連れ回してもらっているような感じで面白かったです。段組がゆったりして写真や図があり、とっつきやすいレイアウトではと思います。

医療への応用も期待されており、iPSとの合わせ技もあるそうです。

もちろん倫理上の話も書いてあります。遺伝子組換えの時で行ったように国際会議を開いたりしていますが、ヒト受精卵の扱いをどうするのかは抜け駆けする人もいるらしくて。

BSドキュメンタリーではこんなものがありました。『オーダーメイド・ベイビー』(魚拓)。デザイナーズ・ベイビーと同義かと思います。「これこれこんな赤ちゃんが欲しい(例えば髪はブロンドで、目は青で……)」という望みを叶えてしまう?という話。3つの番組が紹介されていて、一番興味があったDNA捜査の話は期待を裏切らなかったです。とはいえ、NHKのドキュメンタリーを全部信用しているわけではありません。一応見てみてから考えてます。

ちなみに科学捜査については化学同人から『科学捜査ケースファイル 難事件はいかにして解決されたか』という本が秋に出てたの、やっと注文できました。まだ東京で紹介した本で読み切れなかったのを読んでいたので、翻訳祭の後工程はわたしの中でまだ終わってなかったのですね。気晴らしの本も読みたいですね。

今後紹介する2冊目、『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃』は字数も多いし図も少ないし、それなりに基本を押さえてないと読めないです。扱っている話題はこちらの方がディープです。

『遺伝子は、変えられる――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』読了。

ヨシダヒロコです。

翻訳祭のミニ講演会で紹介した多くの本のうち、一押しでした。これはとっくに読み終わっていますが、最後におまけでつけてあまり説明できなかったスライドにあったゲノム編集の本は、片方がもう少しで終わります。

翻訳祭でもお話ししたし下のリンクにもアップしたのですが、エピジェネティクスについて読んだ本はこれが4冊目です。他に、羊土社の専門書を買ったはいいが眺めて「歯が立たない」と思ったこともあります。それで、これが一番分かりやすかったです。というか型破りでした。

第27回翻訳祭ミニ講演会『専門外から生物・バイオ系を武器に ~メディカルの基礎にも』資料(1)プレゼン資料(2017/11/29、アルカディア市ヶ谷)。

第27回翻訳祭ミニ講演会『専門外から生物・バイオ系を武器に ~メディカルの基礎にも』資料(2)書籍情報など(2017/11/29、アルカディア市ヶ谷)。

もちろん、その前の3冊やさらに生物の基礎について本を読んでいたから楽しく進めたのかもしれません。そこは無駄になってないと思いますが、手っ取り早くどんな感じか知りたいという方には、この本をまず読んでもいいかも。今とても進歩の早い分野だそうですが、4分野ほどの医学周辺領域の話に医学や遺伝と関係のない身近な話をうまく混ぜてあります。Amazonレビューでは、「実生活に関係ない」というハッピーな方もいらっしゃいましたが、がんにも関係あるのでその人も将来無関係ではいられないかも。わたしは遺伝性の病を持っており、それもあってエピジェネティクスを知ろうと心に決めました。

この本には遺伝学や分子生物学の理屈には詳しく立ち入っていなくて、読み物として面白いという感じです。最初の方の章をお見せするとこんな感じで、話のバラエティが多彩でついつい読んでしまいます。理屈や理論が知りたい方は本屋さんへどうぞ。特にDNAってなんだっけからやりたい人は、今入試前でいろんな参考書があるのでは。中学高校の参考書(教科書より手に入りやすいしカラーで見やすい)、学び直し的な本も豊富なはずです。複数眺めているとぴんと来る本があるのではと思います。

 

2017-12-25 00_Fotor

背景を入れて著作権には配慮したのですが……(以前写真家さんに聞きました)

 

翻訳は、原書を見たわけではないですがすらすらと読めとっかかりが少なかったです。「ぼくら」という1人称複数についてAmazonレビューで指摘がありましたが、たぶんWeでしょうが訳しにくそうで悩ましいです。きっと著者は親しみを込めて書いたのでしょうね。

ひとつ疑問があるとすれば、予備知識のない人には「遺伝子は変えられる」と言われると本当に変えられるのかと勘違いしそうなことで、実際には遺伝子の一部がスイッチを入れるようにオン、オフになって、オフになるとDNAの機能が変わったり止まったりしタンパク質も作られなくなるだけで、塩基配列は変わらずそこにあるわけです。遺伝子が制御されるためいいことも悪いことも後天的に起こる場合があって、中には子孫に伝わるものもあります。この本で出てきた「トラウマ」などがそうです。題名については出版社の意向が大きいことを知っていますが、少々ミスリードだったかなと思います。

Amazonレビューの中には、何かの自己啓発本と勘違いしている人がいました(苦笑)。

ちなみに原題は”Inheritance   How our gene changes our lives-and our lives change our genes”で、『遺伝――遺伝子が生活を変え、生活が遺伝子を変える方法』という感じでしょうか。”Lives”は、「生命」と「生活」の掛け言葉のような気がします。

わたしにはエピジェネティクスはこの身に関わっているためすごく身近に感じる話なんですが、なんだか体の中でこまこまやっていると思うと面白いですね(腹が立つこともあります)。医療にもこれからどんな風に使われていくのか、現状はどうなのか、膨大な論文があるのでしょうが知りたくなりました。

第27回翻訳祭ミニ講演会『専門外から生物・バイオ系を武器に ~メディカルの基礎にも』資料(2)書籍情報など(2017/11/29、アルカディア市ヶ谷)。

ヨシダヒロコです。

さて、プレゼンで出てきた書籍情報+αです。

<プレゼンには出てこなかった本>

第2版を読んだのですが、なかなか大変でした。今は新版が出てます。

仲野先生つながりで、本屋で中身を見ました。期待してます。

文庫になっていてお求めやすいです。話し言葉で研究人生を語ってくれています。

過去ログです。なかなか進まない本は、複数のエントリにある場合があります。

「マンガでわかる最新ポストゲノム100の鍵 」読み始め。
投稿日:

「マンガでわかる最新ポストゲノム100の謎」レビュー。
投稿日: 2013/01/19

「基礎から学ぶ生物学・細胞生物学」ようやっと読了&今後の予定。
(今は第3版が出ています)
投稿日: 2013/12/04

富山県中央植物園春の蘭まつり&「青いコチョウラン作出秘話」(2014/03/01)。
投稿日:

岩波科学ライブラリー「エピジェネティクス入門 三毛猫の模様はどう決まるのか」を2回通読。
投稿日: 2014/03/13

『理系なら知っておきたい生物の基本ノート 生化学・分子生物学編』は文系にもお薦め。
投稿日: 2015/06/18

『新版 絵で分かるゲノム・遺伝子 DNA』再読。
投稿日:

今さらですが『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』を読んでみた(2015/07/26)。
投稿日:

バイオのトライアル合格&再度トライアルについて。
投稿日:

放送大学大学院『現代生物科学(’14)』ぎりぎりの提出課題、単位認定試験 (2017/01/21、02/15成績追記)。
投稿日:

岩波新書『エピジェネティクス』ようやっと読了。

『遺伝子は、変えられる– あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』読了。
投稿日: 2017/12/25

『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』読了。
投稿日: 2017/12/27

『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 』(予定)

『大人のやりなおし中学生物 木と草の違いはどこにあるの?ごはんをかむとなぜ甘くなる?』(予定)

『こわいもの知らずの病理学講義』(予定)

(予定)のところは読んでいる本もあり、マイペースで感想をアップしてここにもリンクします。

おつきあい頂きありがとうございます。何かの参考になりますように。

第27回翻訳祭ミニ講演会『専門外から生物・バイオ系を武器に ~メディカルの基礎にも』資料(1)プレゼン資料(2017/11/29、アルカディア市ヶ谷)。

ヨシダヒロコです。

 

 

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National Human Genome Research Institute (NHGRI)  Next Generation DNA Sequencing“  Credit: Darryl Leja, NHGRI    https://www.flickr.com/photos/genomegov/27861478565/

翻訳祭に行かれた方も、残念ながら行けなかった方もこちらを見に来てくださってありがとうございます。以前書いた通り、ミニ講演会の資料を公開します。一段階目はプレゼンそのもの。Slideshareというツールを使ったので、スライドをダウンロードできます。

ミニ講演会で初めてプレゼンというものしてみた感想を簡単に。

  • ノーパソのコネクタにはHDMIと書いてあったのに、現地でこちらの端子が小さすぎて合わないことが判明。メーカーに確認しておくべきだった。パソコン貸してくださったMさん、ありがとうございました。
  • スライドショーの間隔がデフォルトで設定されているのに気が付かず、本番で勝手に変わってしまってどうして?となりました。結果最後の2枚のスライドはよく説明できなかった……。
  • 原稿やスライドを作って人に伝える準備をしていると、対象のオーディエンスを想定するので、その過程自体が勉強になります。
  • 本番でかなり消耗することも確かで、イベントあるごとに話してる皆さんはすごい!と思いました。
  • 声を録音したり、カラオケボックスでも練習したり。タブレットのボイスレコーダーアプリは感度がよすぎたようです。
  • 今回機会を与えて下さってありがとうございました。90分よりは気軽だし、面白い試みだと思います。

 

埋め込みができないので、スライドはこちらからどうぞ。ダウンロードはpdfで、ノートは含まれていないので下にコピペします。

https://www.slideshare.net/secret/uAbku3kCPnpmOW

タイトル(P1)

みなさんおはようございます。吉田博子と申します。今回は生物やバイオ系の独習についてお話しさせていただきます。化学の翻訳者からスタートして、医薬は医療機器の翻訳が多いです。このタイトル付けといて何ですが、バイオは「メディカルの基礎」ではありませんね。

P2
はじめに、大事なことを挙げておきます。この「ひとつの参考として」のところは強調したいです。(参考)のところは過去の経験で、結局自分のやり方を編み出す他なかったりしました。学習方法も翻訳の勉強方法も結局は同じかもしれません。最後が一番肝心で、学習していて「分からないところが分からない」というのはいろんな場合でまずいです。そういうことがないようにしていきましょう。

P3

意外に思われるかもしれませんが、理系出身者は物理・化学が多く生物を履修してないようです。というか、わたしも取らせてもらえませんでした。東京と北陸で子供を教えましたが、10年くらい前に関西の難関医学部で生物での受験がやっとOKになった覚えがあります。ですので自分も生物には苦手意識がありました。理系出身でも分野の得意不得意があるし、今回のように分野を増やすときはやはり勉強しないとだめです。

P4
それではわたしのやり方をお話しします。翻訳を始めて結構経ってからのことで、バイオのトライアルに歯が立たないのが悔しくて始めたことです。これから本の書影が沢山出てきますが、スライドの最後にあるようにあとですべてブログに載せるつもりですので頑張ってメモを取らなくても大丈夫です。わたしは最初1人の研究者さんに勉強方法を質問しましたが、生物の専攻の方に聞いたこともありました。人が違えば言うことも違いますので、もし知り合いの研究者さんに質問しても、意見は様々かもしれません。

P5

上の3つは研究者さんからのアドバイスです。「新しい本」というのがキモのようです。『細胞の分子生物学』というぶっとい本があって、化学の専攻の人と生物の専攻の人で少し言うことが違い、生物専攻の人は活用しているようでした。

P6

それで、絵の多い本を3冊です。他にもあると思います。一応言っておくと、生物の基礎の上に分子生物学があります。バイオとは幅が広くあいまいなことばなので、分子生物学と言い換えます。DNA、RNA、タンパク質が関わる学問です。高校生物があやふやだと後が大変なので、分かるところまで戻って勉強しましょう。それでまた難しめの本に進んだり、分からなければもう1回読み直したり本を変えたりすればいいと思います。例えばAさんに合う本がBさんに合わないこともあるので、大きい本屋でどれがしっくりくるかいろいろ見るのがいいと思います。一番右の左巻先生の本は中学生物で、最近出会ってここに入れておきました。

P7

他に、易しめの生物の本です。左の本は有名ですね。右のような高校の参考書も最近はカラーで分かりやすく、予備校の先生の本です。化学式がほぼないので、アレルギーのある方にお薦めです。なんとSTAP騒動の最中に書かれました。

P8

このような図録もあり、高校で使っているようです。コラムが頑張っていて、例えばiPS細胞については京都の研究所の方が書いていたりします。説明だけでは分かりにくいことがフルカラーの図や写真で描いてあるので、生物だけでなく理科一般にお薦めです。昔子供に化学を教えるときに、実験を見せてあげたくてもできないので代わりにこのシリーズを使っていました。

P9

さて、エピジェネティクスという概念があります。今医学でも使われていますが、分子生物学でホットな話題のようです。わたしがこれを知りたいと思ったのは、いきなりカミングアウトしてますが持病を理解したいという気持ちもありました。発生の分野に関係があります。書評サイトにHONZというのがありまして、そのコラムを参考にして同じように3冊読んでみました。わたしの頭痛のお医者さん(注)は、この間学会に行ってきたすぐ後に診察を受けに行ったら、「この分野はとても今進んでて……」とおっしゃってました。

(注)町医者ですのでいろいろ診られる先生です。

P10

エピジェネティクスといわれてもピンと来ないと思いますので。細かいことは省きますが、DNAの鎖にCH3という赤いものが付いていますね。これがメチル基がくっつくメチル化です。DNAにメチル基が付くと左からTTCGなどとなっている塩基の順番が同じでも、できてくるタンパク質が違い、性質の現れ方が変わったりします。
P11

そういうわけで、HONZで紹介された3冊を青木さんのレビューに従って順番に読みました。三毛猫とエピジェネティクスは関係がありますが、どの本にも残念ながらページは割いてはありません。どれも新書で入手しやすいです。ビジュアル的には読みにくいですが。一番右の仲野先生の本は、「お笑い系研究者」を目指しているようですが科学的な事実の間にすごく普通に個人の主観が入っていることがあり笑ってしまうこともありました。余談ですが、新刊の病理学はもっとお笑い傾向が強いようで、売れてるそうです。

P12
こんな本を読んでいて、やっとトライアルに受かりました(注)。バイオ翻訳者の隅っこに入れてもらえたようです。この本はレビューがいいなと思ったら本当にとっつきやすい翻訳書です。著者は非常に引き出しが多い人で、医学以外にも興味が持てるエピソードをいろいろ出してきて飽きさせません。一般書なのでここから読んでもいいかもしれません。夏に出たばかりで新しいですし、是非お薦めです。

(注)スライドの「2年半」は仕事や体調を見ながらで、多少長い本なので今回省いた大学1、2年くらい向けの本も2回ほど読んでいます。次の発言に載せます。

P13

わたしの場合は直接見た方が頭に入るので、こういう風に勉強しに出かけるのが好きです。講演にも行くことがあります。このようにして勉強しましたが、分子生物学は特に進歩が早く、やってもやっても追いつけないと実感しています。

P14

おまけです。そのうちノーベル賞と言われるゲノム編集について一般書を2冊紹介します。左はNHK取材班のもので、文字もゆったりして絵や写真も多く、いろいろな研究者に取材していますが、文章は平易です。右は今読んでいるところなのですが、左と話題はかぶっています。どちらの本でもこの技術の問題点に触れています。ゲノム編集については、秋口に花の品種改良についてのサイエンスカフェで始めて説明を受けました。

P15(ラスト)

みなさんもご自分の勉強の仕方を見つけてトライしてみてください。ありがとうございました。


 

次の発言に、書籍情報と今までに勉強した際に毎回書いていた勉強記録をピックアップします。

今さらですが『翻訳で、稼ぐ!猫先生の実務翻訳ガイド』。

ヨシダヒロコです。

 

 

一昨日納品した案件は趣味に少し関係があるのですが、第2外国語で取ったことがあり『旅するユーロ』で見てる言語→英訳→和訳でした。しかし英訳がおかしく、原語でネット辞書を引いたり検索したり。他の言語を訳した翻訳者さんも困ったのではないかなあ。

さて、Kindleを触っていて、お友達の猫先生の本を紹介していなかったことを思い出しました。猫先生は同郷の出身で、また同業の友達では一番古い付き合いに入り、とても頼りになる人です。去年、本を書く勉強会に参加した後この本を出しました。

紹介が遅れたのは、本が出てすぐ読んだきりKindleをしばらく開けてなくて、夏頃から久しぶりに開けこの本も読み返したのです。文章はつるつる読める感じです。お値段もリーズナブルで、これから翻訳者になろうとする人にちょうどいいかも。わたしを含め、初心を忘れちゃったかもという翻訳者さんにもお薦めです。

仕事がない場合とか、トライアルに受かるにはとか、専門分野ない人はどうするなど皆の気になることが丁寧に書いてあります。仕事ないときは、落ち込んで当たり前のことできなくなりますよね。

(わたしの場合、

1.トライアルを受ける。
2.勉強する(知識・英語や他言語・翻訳)。今年勉強だらけだったのは暇だったからです。
3.何ヶ月も仕事なくても、なるたけくさらない。

最近はたまにアメリアの定例トライアルを受けたりして弱点をさぐってます)

他に、翻訳志望者や仕事する上でのQ&Aが親切で、ブログ『女は翻訳でよみがえる』(このブログにもリンクあります)からの抜粋も。

今は猫先生はご近所ではなく、お互い富山にいたときもときどき会っていただけなので、最近インタビューなどで「へえ、知らなかった」と思うことがあります。Kindle本に1カ所富山弁をさっき発見して受けていました。

今年は翻訳に関する本をよく読んでいる方ですが、こないだ読み終わった学習者にビシビシ愛の鞭をふるっている本(山岡洋一先生)もそのうちご紹介します。

岩波新書『エピジェネティクス』ようやっと読了。

ヨシダヒロコです。

「エピジェネティクスが分かりたい!」と生物を履修してないわたしが4年ほど前に生物の大学学部の生物学教科書くらいから読み始め、一昨年去年と体調不良でなかなか読めず、もうちょっとでラストというところで力つきたりして、結局3回くらい読みました。3回目になるとさすがにページは進みますね。

著者はBSプレミアム『フランケンシュタインの事件簿 科学史 闇の事件簿』にもよくご出演の阪大医学部仲野徹先生。書評サイトHONZにもとうとう引き入れられて結構経ちます。

今まで他に読んだエピジェネティクス関連本はこんな感じ。HONZへの青木薫さんの寄稿(ここからパート3まで)に従いました。以下新しい順に過去ログです。

『エピゲノムと生命』読了&『エピジェネティクス』へ。

『新版 絵で分かるゲノム・遺伝子 DNA』再読。

『理系なら知っておきたい生物の基本ノート 生化学・分子生物学編』は文系にもお薦め。

岩波科学ライブラリー「エピジェネティクス入門 三毛猫の模様はどう決まるのか」を2回通読。

「基礎から学ぶ生物学・細胞生物学」ようやっと読了&今後の予定。

一番下リンクの教科書は羊土社のベストセラーで今は新版があるはずですが、ここまでしなくても上から2番目の高校参考書でもいいかも。『好きになる生物学』は大分前にクリアしてました。

今回の『エピジェネティクス』は、新書でコスパはいいです。ただ生物とかDNAとか知らない人がいきなり読むには適してないと思います。先生はこれ一冊読めば分かる本を書くつもりで書かれてますけど。新書だから図が少なくモノクロなのが唯一残念です。仕方ないけど。

目次。

序章 ヘップバーンと球根

第1章 巨人の肩から遠視鏡で

第2章 エピジェネティクスの分子基盤

第3章 さまざまな生命現象とエピジェネティクス

第4章 病気とエピジェネティクス

第5章 エピジェネティクスを考える

終章 新しい生命像をえがく

「エピジェネティクスとは何?」について先生の説明を、第1章から抜き出します。言葉が最初に発表されたのが1942年。「エピジェネティックな特性とは、DNAの塩基配列の変化をともなわずに、染色体における変化によって生じる、安定的に受け継がれうる表現型である」。ほ乳類や動物植物だけでなく、アカパンカビにもあるのだそうです。具体的には例えばDNAの塩基にメチル基がくっついて働きが変わってしまったりなどです。iPS細胞や同時受賞のガードン博士の実験は美しい、という言葉が最初数行のうちに出てきます。

2章はDNAなどの仕組みで完璧に「お勉強」だから難しいですが、ここがそこそこ分かると後が楽です。

エピジェネティクスが関係していることは第3章にありますが、ある種のネズミでのつがい特性、江戸時代にできた斑入りアサガオ、ルイセンコ学説、冬の寒さを記憶する植物、恐怖の記憶や学習、ミツバチのゲノム・女王バチになるには、育てられ方とストレス反応、マウスの毛色など様々な例が出てきて、先生がボケをかましているのが笑えます。難しい話だから和ませようとしているのか、「先生それ個人的感想……」みたいなのがちらっちらっと入っていて可笑しいです。医学史に強い先生なので、歴史的なことがちょいちょい入ってます。

3章にはトランスポゾンというゲノムからゲノムへと移動して回る遺伝子がトウモロコシから見つかったりなどの不思議な話もあります。他の生物からも後で見つかります。

4章は短く、その中ではがんのページが長くて一般の人が知っている病気だと白血病・生活習慣病が扱われています。他にまれな疾患3種ほど。

5章は4章に続いてエピゲノムという概念の話や、次世代シーケンサー(DNAの配列が早く読める)、三毛猫の雄の話やクローン羊ドリー、クロマチン免疫沈降法(新しい)、病気の話もしている。「あれもこれもエピジェネティクスに関係あると言いきっていいものだろうか」と自問自答もしています。

終章では、エピジェネティクス万歳!みたいな考え方とゲノムが基本的にすべてを決めるという考え方を対比して、先生の考え方を書いています。この分野を読みたかった目的ですが、統合失調症・双極性障害の発症にこのエピジェネティクスが絡んでいる可能性がある、ということはここで述べられています(双生児研究により)。PTSD発症に絡んでいるってどうなの?ということも書いてあります。分子メカニズム解析はここ20年ほどで爆発的に発達したけれど、生命科学の性質として各論ばかりになって複雑化し、分かりにくくなってしまうそうです。そういう時には各論にとらわれすぎず基本に戻りましょうと。

TVやTwitterなどで拝見するように、真面目だけどどこかほっとするキャラクターが出ている本でした。「今はまだそこまで分かっていない」「それは楽観的すぎる」みたいな曖昧な部分も残しつつ、色々説明してもらったなと。

新しい本では、たまたま出たばかりのアメリア会員の訳本なんですが、これが良さそうです。ただ、これいきなり読んで分かるのは素養のある人かと思います。エピジェネティクスは分かるの難しくて、自分もまだそこそこで、同じ本を複数回読んでやっと今の状態です。

生きものの身体は不思議だな、とつくづく思ったのでした。