『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』を初めてのほとり座で(2018/06/29)(8/14追記)。

ヨシダヒロコです。

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ほとり座ができる前後はいろいろ書いていた割に、行くのがこんなに(2年)遅れました。今までも見たい映画いろいろやってましたけど、映画見にいくこと自体に使えるお金なかったり余裕なかったり。昨年末も『ドリーム』その他東京でジタバタしたあげく見られなかったり。まだ書いてませんが、『ドリーム』はDVDでですけどとても楽しませてもらいました。また書きます。

さて、ほとり座です。総曲輪(そうがわ)通りの向こうへ、電停中町(西町北)のそばを入っていくと繁華街としては寂しいのですが中央通りにあります(総曲輪とも賑わってた時代を知っているので寂しいです)。金沢と同じく、富山も中心部が駅から離れています。モータリゼーションの影響で、今は郊外の方が栄えているでしょう。

しばらく迷って控えめな看板を見つけ、少し遅れて入りました。ライブハウスも兼ねていると知ってましたが、椅子は普通のオフィスの椅子様のもので、大きなディスプレイに向かって20席ほど並べてあります。ワンドリンク制なので、普通の映画館くらいの料金で飲み物ついてきます。ウィルキンソンのジンジャーエール瓶(辛口も)があって嬉しく、迷わず選びました。わたしは服薬している都合でよく水を持ち歩いては飲むので、本当は飲みもの持ち込み禁止のところ、許可を取りました。

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今回の映画はどこで知ったのだったかな。研究員(どうやら教授でなくポスドクらしいですね)が予算出なかったりで頭脳流出したり、合法ドラッグ製造に手を染めたりして警察のご厄介になったりという話で、先月も書いたのですけど3部作のコメディです。監督は長編初めてで大ヒット。今作は2作めです。1作目は日本でDVD化されておらず、今夏イタリア映画祭『Viva! イタリア Vol.4』で上映します。

1作目(原語です)

今作

http://www.synca.jp/itsudatte/

筋は『ブレイキング・バッド』(未見)に似ているそうですけど、前科持ちの研究者たちが専門知識を生かし、「研究員ギャング」として捜査に協力します。1作目のあらましは2作目の冒頭にあったので助かりました。

ある人が「今まで20年以上研究者やってきてこんなに人の役に立ったと思ったことなかった」というようなセリフが泣けたと(多分研究者の方)ツイートしてるの流れてきました。わたしは、辞めた研究員が中華料理屋で働いて仕事に慣れずどつかれたりしてるのが物悲しかったです。

みな必要とされてると知り張り切って、終盤は「その車はやめた方が……」いう不謹慎な「クラシックカー」まで持ちだして(ローマは歴史があるし展示でもしてあったのでは)道路を疾走し、アクションもあるし大活躍します。個人的には不謹慎な「クラシックカー」、よく出したなと思ったけど笑ってしまいました。太っちょの化学専門家は存在感抜群でした。ものがドラッグなので、化学が分かる方はもっと面白いと思います。

「サピエンツァ」という言葉が数回聞こえましたが、ローマ・ラ・サピエンツァ大学が協力している模様です。なんと「協力したよー」と第3作の宣伝とかしてます。

https://www.uniroma1.it/it/notizia/smetto-quando-voglio-un-ponte-tra-il-cinema-e-la-sapienza

あと、日常会話ではこんなもんなの?と思うほど口が悪い。研究者も警察も。cazzo(発音はカッツオ)というのは男性の局部ですが、話してる間にバンバン言ってました。以前、「僕はかつよさんとかそういう名前の女性とは結婚できない」ということを日本在住のイタリア人が本に書いてました。だから映画の中の皆さんはきっととてもお上品なんですね。

聞きにくいけどわたしの先生にも質問しておきますので(そのためにSkypeレッスン入れるかなー物好きだな自分)、気になる人はまた追記を見に来てください。

(2018/08/14 19:32追記:やっとレッスン受けました。昔この単語は放送できなかったんだけど、今では全くどこでも流れているらしいです)

富山では上映期間もう終わるし、都市部ではほぼ終わってるし、早く書いておこうと急ぎました。久しぶりに映画館に行って楽しかったです。今月ほとり座は少し改装してカウンターやレジは1階になるとか。あと学生証を持っている大人(放送大学とか)も学割効きます。

パンフにはイタリアの研究者の日本と似てるように読める現状なども書いてあり、『旅するイタリア語』で音楽や映画のコーナーを持っている野村雅夫さんなども文を寄せています。

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あと、チラシの裏も。

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ほとり座、ちっちゃいけど長く続いてほしいです。少し離れたMax Theaterも上映するものが違うので、お互いに映画好きなお客さんがたくさん来てほしいですね。

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大隅良典栄誉教授、すずかけ台からのノーベル生理学・医学賞受賞おめでとうございます(2016/10/09、13、20、12/13追記)。

ヨシダヒロコです。

自分が修士の半ばまでいた大学からおそらく初めてのノーベル賞が出ました。おめでとうございます。写真は東工大トップページの英語版、日本語版です。誰が受賞してもその結果を楽しみにしようと思ってましたがびっくり。こういう場合、肖像権上の問題とかどうなるの……メール書いておこう。

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修士だけいて、病気で勉強も思うに任せなかったのでどんな先生がいらっしゃるのか専門の近く以外にはよく知りませんでした。文系があることは知っていましたが。一般にこの大学は大岡山と言われがちですが、生命理工学部は横浜のすずかけ台にあって、キャンパスは結構離れています。授業行くのに苦労したのを覚えていて、興味は持ちかけていた生命科学の雑誌(高校で生物を履修していなかったため。今は仕事のため独学中)眺めては「難しいなあ」と思っていました。雑草が生い茂っていたキャンパス、という印象がありましたが今はどうなんでしょう。

先生の研究室HPはこの通り。素敵ですね。ノーベル賞一報がでたすぐには、手書きのベンジャミンの絵があったのですけど。http://www.ohsumilab.aro.iri.titech.ac.jp/

オートファジーは今後勉強したいです。今年は去年のように説明できない受賞結果が多いので、とにかくリンクや書籍を集めてきました。

まず、サイエンスZEROで10/09日曜夜に特番です。再放送+オンデマンドあり。
http://www.nhk.or.jp/zero/index.html

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大隅先生は1年ほど前にもご出演です。この頃チェックしだしていたのですが、見たかどうか忘れました。かなり新しい結果や第一線の先生も出演して解説してくれる番組です。しかも一般向け。ネコについてとかもあります。

NHKオンデマンド | サイエンスZERO 「長寿のカギ!? 細胞内のリサイクル“オートファジー”」
http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2015061892SA000/?capid=sns002

大隅良典栄誉教授 ノーベル生理学・医学賞受賞記者会見を開催 | 東工大ニュース | 東京工業大学
http://www.titech.ac.jp/news/2016/036429.html

Honorary Professor Yoshinori Ohsumi wins Nobel Prize in Physiology or Medicine for 2016 | Tokyo Tech News | Tokyo Institute of Technology
http://www.titech.ac.jp/english/news/2016/036279.html

大隅良典先生のノーベル生理学医学賞2016受賞に寄せて | 東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻
http://www.bs.s.u-tokyo.ac.jp/news/2016nobel.html

大隅良典名誉教授のノーベル賞受賞決定を受けて、元基礎生物学研究所長・元岡崎国立共同研究機構長 毛利秀雄名誉教授の寄稿を掲載いたします
「隣のおじさん-大隅良典君(ノーベル生理学・医学賞の受賞を祝して)」
http://www.nibb.ac.jp/pressroom/news/2016/10/07.html
この文章一番お勧めです。

ノーベル賞大隅さん「細胞の自食」解明…がん抑制期待
(写真11枚)
http://mainichi.jp/graphs/20161003/hpj/00m/040/004000g/1

大隅さん「洗濯機のCMと紛らわしいと言われたことも」(会員登録)
http://www.asahi.com/articles/ASJB42R1FJB4UBQU00F.html

上記事魚拓

教えてもらいましたが、”fuzzy”でなくて”phagy”と全然スペルが違うそう。日本語の発音は同じです。

大隅良典氏オートファジー研究をリード(2014/04/03)(会員登録)
http://mainichi.jp/articles/20140403/mog/00m/040/999000c

上記事魚拓

「私と科研費」
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/29_essay/no78.html
本来は補助金とは知りませんでした。皆あんなに必死になっているのに。

ノーベル賞・大隅教授「年間100万円あれば、やりたいことを進められる研究者がたくさんいる」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161005-00010000-nkogyo-ind

上記事魚拓

ノーベル生理学・医学賞を受賞大隅良典氏の会見(全文1)少年時代からの夢
https://thepage.jp/detail/20161004-00000002-wordleaf
ノーベル生理学・医学賞を受賞大隅良典氏の会見(全文2)競争好きではない(有料)
https://thepage.jp/detail/20161004-00000001-wordleafk
ノーベル生理学・医学賞大隅氏の会見(全文3完)役に立つという言葉は問題(有料)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161004-00000002-wordleafk-sctch
PageはYahoo! Japan系列で、1ヶ月648円、Yahoo!プレミアム会員だと540円の有料です。

「日本に必要なのは、社会全体でサイエンスを支えるという意識」- 東工大・大隅良典 栄誉教授 (1) 細胞の自食作用「オートファジー」とは
http://news.mynavi.jp/articles/2016/08/02/ohsumi/

【 #ノーベル賞 】「この先、日本人研究者は受賞できるのか?」 科学界に広がる悲観の背景
https://www.buzzfeed.com/satoruishido/no-be-ru-shou-ko-no-senjitsu-bon-bito-kenkyuusha-ha-jushou-d?utm_term=.ifpVJAzX1

実験医学500号(2012年8月号)特集「世界を動かした生命医科学のマイルストーン」より
小さな細胞から見えてきたオートファジーの世界
[著]大隅良典
https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/articles/9784758100861/yoshinori_ohsumi.html?ad=g_a1
「はじめに」のところ、わたしも子供たちが身近な生き物に接する機会がなくなったと感じています。小さい頃、野原で草花を摘んだり虫を捕ったりで、遊びながら沢山学びました。今は公園が芝生なことを危惧していた方もTwitterにいて、まったく同感です。雑草植えたらいいのに。学問的な文章の意味が取れない人でも、最初と最後は読んで欲しいと思います。

あまりにも異常な日本の論文数のカーブ
「ある医療系大学長のつぼやき   鈴鹿医療科学大学学長、前国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog 」
http://blog.goo.ne.jp/toyodang/e/26f372a069cbd77537e4086b0e56d347


(2016/10/13 8:48記事いくつか追記)

新聞を読んで/ ノーベル賞受賞に浮かれている場合ではない・・・日本の研究は実は危機的状況に – 隗より始めよ・三浦淳のブログ

http://blog.livedoor.jp/amiur0358/archives/1061614317.html

上記事魚拓

<ノーベル賞>日本人の女性研究者が出ない理由
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161009-00000007-mai-soci

上記事魚拓
私の研究は科研費に支えられた(大隅氏)ノーベル賞に導いた総額18億円
オートファジーのすぐ後に科研費ゼロだけど?お役所の姿勢が見えますねと指摘してた人が。
https://newswitch.jp/p/6415

上記事魚拓


(2016/10/20 8:09さらに追記)

「ノーベル生理学・医学賞受賞の大隅良典氏に単独インタビュー 『このままでは日本のサイエンスはダメになる』」 (会員登録)

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201610/548515.html
「【会見での質疑応答】ノーベル生理学・医学賞受賞の大隅良典氏 オートファジーって何? 疾患とのかかわりは?」 (日経メディカル・会員登録)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201610/548490.html
「NASH、放射線防護、神経変性疾患 5分で分かる!オートファジー研究の最先端」 (会員登録)
5分は盛りすぎです。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/nishimura/201610/548533.html

ブログ『天漢日乗』「2016ノーベル生理医学賞 大隅良典東工大栄誉教授が受賞! ついでにいうと総合研究大学院大学名誉教授」
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2016/10/2016-3deb.html

ノーベル生理学・医学賞2016 大隅良典栄誉教授 | 東京工業大学(特設サイト?)
http://www.titech.ac.jp/nobel/

以上追記。


オートファジーを簡単に説明している記事がありました。この記事はほとんどインタビューです。

大隅さん会見「ノーベル賞には格別の重さ感じる」
http://www.asahi.com/articles/ASJB36RCDJB3ULBJ02C.html

上記事魚拓

――オートファジーを知らない人に説明してもらえませんか。

私たちは毎日、70~80グラムのたんぱく質を食べているが、たんぱく質を分解してアミノ酸という原料にしている。私たちの体内では300グラムくらいのたんぱく質が作られている。どこから来るかというと、私たちの体内ではたんぱく質が壊れてアミノ酸になって再利用されているよということ。

例えば、海で遭難した。1週間、水だけで生きた。たんぱく質合成を止めているわけではない。たんぱく質を分解しながら再利用するシステムなんだ。たんぱく質を食べて、再利用している。作っては壊し、作っては壊しを繰り返して、生物はある。

(2016/10/09 9:52追記:奥様は共同研究者だったそうです)

大隅萬里子先生の共同研究がノーベル賞を受賞| ニュース | ニュース | 帝京科学大学
http://www.ntu.ac.jp/topics/news/2016/10/05201411.html

一通り報道読ませて頂きましたが本当に謙虚な方で、お酒は大好きという茶目っ気があったりして。でも今の大学のあり方になるとここまで公の場ではっきりものを言う先生も珍しく、次に何を言われるのか楽しみだしもっと言って下さいと思います。学問が「役に立つ/立たない」でまた議論がありました。今まで長いことノーベル学者がもの申すということがあったのですが、事態が逼迫(ひっぱく)しているんだろうかと思います。

そこに天皇陛下がやはり生物学で、手間はかかっているが(タヌキ相手ですから)何の役に立つか分からない論文を出されました。変に研究が役に立っては困るという事情もあるんでしょうけど、天皇家は生物の研究者が多いし、陛下も何かの折りに興味津々で大隈先生を質問攻めにされたようなことを読みました。

最後に、大隅先生執筆、翻訳の教科書はあるのですが、一般に手の届きやすいものはお弟子さんの水島先生が一番人気のようです。『実験科学』には大隈先生も寄稿があります(今は紙版の在庫なし、版元に電子版あり)。

今後また本が出ることを期待しつつ、先生が幼少の頃影響を受けた本もあわせて紹介します。『ロウソクの科学』ってこんな素敵な装丁でもあったのですね。ファラデーは確か、クリスマス・レクチャーの創始者だったはず(クリスマスに子供たちに科学の講義をプレゼント)。最後2冊は子供でも読めそうで、もっと簡単そうなバージョンもあり。ただ現在は品薄だったり取り寄せだったりです。

(2016/12/13追記:17日から放送大学でお若いときの先生の講義を放送。BSあれば誰でも見られるはず)

2016年ノーベル生理学・医学賞の受賞が決定した大隅 良典 東京工業大学栄誉教授による講義の再放送について
魚拓

KAGRA見学会当選&宇宙線研究所若手支援基金開設。

ヨシダヒロコです。

見渡す範囲でいろんな人が言ってますが、暑いですねー。早くもバテ気味で、自分の部屋の構造(西向きなど)のためか冷やし方が分かりません。気がついたら冷えすぎていたり。暖かいものも適宜取っているのですが難しい。看護師さんによると、湯船に浸かる他に足湯もいいそうです(自律神経の調整)。

そんな訳で、ブログに書くべきことも滞っています。

そんなわたしに、飛騨市からお手紙が来ました。応募していたKAGRA見学会に通ったというのです。周囲の食べ物屋さんガイド付き(「とんちゃん」が気になる)。まだ体調がどうなるか分かりませんが、富山からだと「特急ひだ」で1時間です。出たばかりで最近買った『重力波は歌う』も書影を貼っておきます。坑道は14℃、熱中症の危険もあり、「危険なところであることを承知の上」という書類に現地でサインします。この辺は山ですし、山行きの格好をしていくつもりです。

ハードそうな場所で、体調が整えばいいのですが……。納期が日程にかぶる可能性があるので、行けなかったらレポートできないかもしれないので、とりあえず事前情報の提供だけでも。ちなみにスーパーカミオカンデもこれくらいの時期に見学会をやっており、応募は5月頃らしいです。

もう1つ、年末に東大物理の早野先生とKAGRAと両方にごくわずかですが寄付をしました。時々東大基金から関連情報がメルマガで送られてきます。さっきもらったものから。

宇宙線研究所若手支援基金

リンク先をご覧になればお分かりと思いますが、若手研究者をサポートするための基金ができました。今の研究職は本当に不安定で、大学での正規の職にはなかなか就けません。ポスドク(博士研究員)などでチャンスをうかがうことになりますが、生活は不安定な有期雇用となります。しかも博士になるまでに時間もお金もかかっています。

昨日ネットをさまよっていて知ったのですが、スーパーカミオカンデで大事故があったとき作業で活躍したのは全国からの学生ボランティアで、多くが研究者となって戻ってきたそう。

すでに京大iPS細胞研究所の山中先生がそのような寄付を募っています。梶田先生も同じく、国に頼っていては未来がないだろうと判断されたのかもしれません。同じくノーベル化学賞学者の白川先生が「このままでは日本の科学はダメになる」というようなことをおっしゃっていたそうですが、確かに今出ている結果は20年前とかのものなのです(ニュートリノ関係のサイエンスカフェで、他国も含めたノーベル賞までのタイムラグを聞きました)。

その他、学術系クラウドファンディングのacademistとか、一般の人が気軽に「投げ銭」できるシステムがこれから流行ってくれればなあと思います。『宇宙における星形成史』に少し募金しましたが、80万の所500万弱集まるなどすごい盛り上がりようでした。

Nishiharaさんの新作、「研究室の藪の中」&剽窃と無断引用の違い。

ヨシダヒロコです。

1年前ほどに、「ポスドクと羅生門と蜘蛛の糸と杜子春。」というエントリを書きましたが、この時紹介した、芥川に題を採った優れた作品を書いたのは西原史暁(Fumiaki Nishihara)さんという方です。言語学の研究を以前なさっていた方です。まだ20代なのには驚きました。

この方が、今話題の「剽窃」(つまり「盗作」)についてしばらく前に新作を書かれました。Twitterが流れてしまってつかみ損ねましたが、他の作家でも作品を書いてらっしゃるそうです。


研究室の藪の中

概要
ある剽窃さわぎから発覚した捏造。しかし、それをめぐる関係者——特任研究員、ポスドク、助教——の言葉は一致せずに……。

言わずと知れた芥川の「藪の中」からの作品ですが、わたしはこれのみオリジナルを読んでいません。あ、青空文庫にあるかな。ラストの1枚の紙は怖かったですね。

もう1つ、Nishiharaさんは「無断引用」という言葉を使うのを止めよう、と提唱しています。確かに、引用は正当な範囲でなら誰がやっても著作権違反になりません。この辺のことは、昔Niftyの翻訳フォーラムで良く習いました。でも、じゃあこれからAll rights reserved.を訳せと言われたときにどうしようと思うのですが。

「無断引用」という表現はやめよう

概要
他人の文章を自分の文章のように扱う研究上の不正は、「剽窃」または「盗用」と呼ぶのが正確であり、不正確で誤解を招く「無断引用」という表現を用いるのはやめるべきである。

某筆頭著者の件については、明日なにやら会見があるようですが、このパンチのあるブログで〆にします。

「アメリカポスドクの歩き方
在米高齢ポスドクが歩む二流研究者へのいばらの道」より

ただ純粋に悲しく悔しい

ある一流ラボに留学した知りあいがいた。
うつっていきなり非常に面白い現象を発見した。ボスは大興奮し色々なところで宣伝した。
しかし、その知りあいは最後の詰めのデータがどうしても良い結果にならなかった。
まわりに相談すると、間接的に捏造することを勧められたという。そうやって皆ポジションを得るんだよ。と。
でも、本人は捏造などしなくても証明できると信じてコツコツ実験を続けた。

こういうポスドク、沢山いるんだろうな……。

ハカセたちが綴る(おそらく)初のメルマガ「ヤバ研『博士@研究室』」。

ヨシダヒロコです。

長らくのツイ友である山本慎太郎(@nennpa)さんが編集長となって、ハカセたちが執筆する有料メルマガを創刊しました。その名もヤバ研「博士@研究室」。創刊号は今月上旬だったかな?に出て無料で読めたので、すぐに申し込みました。毎週配信で、月525円です。キャッチコピーは「学術研究の世界、その職業生活のほんとのところを(きっと)晒します」。こういうメルマガ、記憶にある限りでは知りません。

京大で人気を博した「素数ものさし」の話、料理のうまみの話なんかが今まで良く記憶に残っていますが、ヤバ研の始まりから進展を書いた藤原さんことえふわらさんの記事、あと山本さんこと念波さんの、先号にあった殺人的な阪大の院試の話や、今出ている4号にある編集後記はなんかポスドク問題にも触れていて、本領発揮と言ったところでしょうか。後から来た人のために、バックナンバーってないのかなあ?

山本さんは個人的に色々ものを書きためてきたそうなので、「書いたものが読みたい」とぶつぶつ言い続けてきた訳ですが、このように執筆者の皆さんにも(部数に応じて、ですが)利益が還元される形で読めるようになったのは個人的にも大変喜ばしいことです。わたしのようなものを書く(訳す)人間にしろ、博士のようにものを書くことに多大なお金と労力を費やして習得した人々にしろ、世の中の人は「ただで読める」と思ったら甘過ぎです。

ヤバ研

このフレーズも気に入っています。「飲み会に集まってくる比較的若め(学術界では)な研究者の集まりです。なにがヤバいと言って、ええと、心身の調子とか?今後の人生とか?」。

登録&サンプルはこちらからどうぞ。どうぞよろしく。

http://chokumaga.com/magazine/?mid=104&vol=2

(2015/06/09:「ヤバ研」の認知度上がってきたようですね。実は春からだったか、KADOKAWAに移転しています。こちらへどうぞ。 http://ch.nicovideo.jp/yabaken

理系女性が「ポスドク対象の婚活におけるフェルミ推定」を考えると。

ヨシダヒロコです。ちなみに40代理系出身バツイチです。

元夫も理系でした。

研究者って自称ギタリストと何が違うの?- ポスドク対象の婚活におけるフェルミ推定

このフェルミ推定は元々、こないだも出た「発言小町」から来ているんですが、婚活が進まないという29歳女性のもの。一読して「アホか!」と思いますが引用します。

絶望的な確率 : 恋愛・結婚・離婚 : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

婚活をしている29歳女です
婚活で理想の人に出会う確率が低すぎて困っています

条件としては
まず男5000万人
30-35歳300万人
未婚150万人
平均的な年収75万人
フツ面以上の人50万人
同居なし25万人
都市近郊に住居5万人
たったこれだけの条件で該当者が5万人にまで減りました
これに加えて
×なし4万人
マーチ以上の学歴4000人
やさしくDVしない人3500人
太ってない方2000人
はげてない方1500人
借金のない方1200人
浮気しない人1000人
タバコ吸わない人700人

まだあるのですがそれを入れると該当者が数十人になってしまいます
外国人と結婚する人や年収があっても怖い職の人などを省いていくと絶望的になります

こちらの条件も受け入れてもらう必要があるのにその前の段階でこれです
だれかよいアドバイスお願いします
他の条件とは転勤やギャンブル、お酒、自営業か否か等です

パーセンテージを仮定して、こういう風にどんどん絞り込んでいくのをフェルミ推定と言うらしい。小町のコメント欄には「ドレイクの式」を思い出したという人がいて笑ってしまいますが、地球外生命体の存在確率を示す方程式だったと思います。掛け合わせることでどんどん狭められます。

N =[R*]×[fp]×[ne]×[fl]×[fi]×[fc]×[L]

ここで、

R* : 1年当たりに銀河系で生まれる恒星の数
fp : 恒星系が惑星を持つ確率
ne : 太陽型の惑星系のうち、生命の存在を許す惑星の数
fl : それらの惑星で実際に生命が発生する割合
fi : それらの生命が知的生命体にまで進化する割合
fc : それらの知的生命体が技術文明社会を発展させる確率
L : そのような技術文明社会の寿命(年)
N : この銀河系内に現在存在する文明社会の数

ちなみに「マーチ以上の学歴?」と思われた方もいらっしゃると思いますが、明治、青山、立教、中央、法政の頭文字のアルファベットを取ったものだそうです。

****
以下、一番上に挙げた「ポスドクの婚活市場におけるフェルミ推定」について突っ込みます。

学歴マーチ以上というのはほぼ全員満たす、と仮定したいが。

しかし、関東の文系女子が思うマーチ以上と西日本理系研究者が思うマーチ以上はだいぶ差がある気がする。

我々からすれば地方国立大博士はもちろんマーチ以上に含まれると思いますが、関東婚活女子に通じるでしょうか…… 通じると願って。

いやいや、地方国立大にも優良物件(不動産みたいで嫌)いると思いますけどね。地方国立大出身者として、除外されると何だかなあ、って感じ。話の合う人を探すと自然にそれなりの学歴を求めてしまうというのなら分かりますが、最初からMARCH以上!と言われると女性のわたしでもかなり引きます。要するに、友達とかに自慢するレッテルというかラベルが欲しいだけでしょう?

借金は…… 多くの方は奨学金を返せていないと思います。

これを借金に含めるか含めないか?

婚活女子によっても判断が変わると思いますが、なんにも知らない女子からすると、え、35 歳の人が奨学金? 苦学生? 実家貧乏? って思うかもしれないし、あんまりいい気持にはならない方もいるんでしょうね。

奨学金は借金に入らないと思いますが、そう思わない人もいるでしょうね。わたしもあと数十万残ってます。最終学歴は学士卒だけど、病気したり収入少なかったりで大変で(修士の時奨学金に通ってたらもっと大変だったはず)。博士まで行くと相当な額に上るだろうことは想像できます。でもこのブログに書かれている通り、理解できない人はできないでしょうね。

やさしくDVしない人: 研究者はステレオタイプならオタク気質で他人に無関心、それを温厚と言ってもいいかも、みたいな感じにして、95% クリアー。でも失職したら DV なるかも?

これは1回DVで失敗してみないと分からないです。それにしても最近のDVの市民権獲得状況には目を見張るものがありますね。こんなところにまで出てくるなんて。ただ、DVってしつこくやるとやる方もリソース使うので、忙しいポスドクにはそんな暇ないのでは?

浮気しない人: これはまあ、浮気するひまもないのが正解だけど、機会があればする人は多そう。でも、お金もないので女性がついてこない? 70% クリアー。

哀しすぎて笑ってしまいました。
まあ、婚活自体ちらっとやったことあるけど、二股三股当たり前でしょう。それが馴染めなかったのもあって一切手を引いたんですが、どの口が「浮気しない人」とか言うんですかね。

パラメータを少なくしたら結婚できる相手は増えるはず、だけど収入の条件だけは変えないほうがいいよ! と冒頭の増田記事にも書かれておりましたが。

ポスドク相手ならそれは難しいところ。

いまの 500 万もらってるけど 3 年後の見通しはほぼ絶望、という人より、いま 300 万だけど、そろそろパーマネントねらえるかも? な人にしないさい、と言えるでしょう。

(中略)

そのかわりあれです。

若いうちは共稼ぎで旦那様を支えてあげてくださいね。

北陸地方では共稼ぎ当たり前なんですよね。前にも書いたかな。北陸3県でトップ4までに入ってます。だから、若い女性に「専業主婦になりたい」という風潮が最近強いようですが、あれがさっぱり理解できません(17:07追記:下に注を書きました)。年収を高く設定して自分は楽したいのかな。自分はこの地で過去働けなかったときはすごく風当たりを感じたし、今でも「うちにこもって何をしているか分からない」と思われていそうです。北陸人の感覚としては(もちろんそういう女性は他県にもいると思いますが)、配偶者の給料が多かろうが少なかろうが働くのが当たり前で、少なければなおのこと支えなきゃ、というのがあります。

あとバツイチの感覚としては、結婚って何があるか分からないので、専業主婦やってていざというとき何のスキルもないのはすごくリスキーですよ。

そんなわけで、身内に年収が多少低くても奥さんが支えてうまくいっている例も知っているので、ポスドクの皆さんには幸せになって欲しいです。その身内はもちろん非正規雇用です。

そうそう、D5の彼もね。とりあえずは早く学位が取れますように。

(17:07追記:専業主婦との絡みで子育ての話が抜けていました。自分自身甥姪しかおらず、子をなすことが困難なので、語る資格はないとは思いますが、過去に沢山の思春期の子を持つお母さん方を仕事上見てきました。子育て環境について富山で20~30人に聞いた結果では、近所同士で結婚して、いざとなれば祖父母に頼れるケースが多かったと思います。お子さんは1人~2人でした。高学歴かつ研究職のような職に夫婦ともについているケースでは、祖父母に頼ったという話と、他県の同級生ですが0歳児保育にしたという話があります。上に書いた身内は双方の両親から離れており、良くやっているなあと思っています)

「ポスドク」のGoogleサジェストと彼女と配偶者がツラい件について。

ヨシダヒロコです。ただいま逃避中です。

わたし自身は学位取得者でもなんでもないのですが、ポスドク問題で2エントリほど書いたところちょくちょく読みに来られる人がいるので、今度は別の角度から書きます。

日曜早朝、仕事が進まず困っていたらTwitterでこんなのが回ってきました。

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ポスドクの結婚生活で気の毒な話も聞いたことがあったので、気になったし一番下をクリックしてみたら、発言小町が沢山出てきました。あそこって、しょうがない嫁姑やママ友の話だけではなく、ポスドクや博士課程学生の彼女や配偶者(理系が多い。まあ、女性ポスドクもいるとは思うんだけど……)が真剣に語っていることもあるんですね。

曰く「別れようと言われた末、3週間連絡がありません。泣いてしまいます」みたいな20代らしい女性から(彼はD3で、集中すると携帯の存在を忘れるそうです)、研究者が夫という方の「まるで単身家庭です。気が向いたときに甘えてきます」みたいなのも。

挙げ句の果てに、「研究者は忙しいため、振られてしまうことが多い」……うわー可哀想。自分の夫の将来性みたいなのを尋ねている人もいました。

恥ずかしながら、D論を通すのに(恐らく本ちゃんの他に)論文が3本必要なことを初めて知りました。間違いがあればご指摘お願いします。小町情報ですし。
というわけで、他に書きたいエントリもあるんですが、深夜の納期が終わったらまた。

#そんなに書き続けられるとは思わないんだけど、そのうち「ポスドク問題」てタグできたりして……。