五感で感じる化学(3)――【番外編1】アカハラとブラック研究室が消え去る日はいつ?

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Photo: Classmates ironypoisoning via Visual hunt /  CC BY-SA

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ヨシダヒロコです。

この連載は、本来化学の基礎を分かりやすくというものです。今回は、本当はラストに持ってこようと思っていたサイエンス界隈の問題2つのうち、予定を変更して化学のみならず、実験系の理系に特に多い問題を取り上げます。春先でちょうど人が動く時期ですし、まだ寒い頃にこんな署名集めが始まったからです。2017/04/02現在、当初の目的500名を達成して1000名を集め国に持っていこうとしています。

文部科学省と各大学にアカデミックハラスメント対策を徹底し,被害者の保護とケアを最優先するよう求めます

自らの経験、周囲で見聞きした経験からも言えますが、若い学生の将来が沢山これまで奪われてきました。全員やる気があったとして、行けるところに進んでいたらどうなっていたでしょう。後ろの方にリンク貼りますが、わたしもその被害者で学生時代から30年近く精神を患っています。途中で遺伝も半分くらいは絡む病であったと分かりましたが。

文系にハラスメントがないわけではありません。そのいやらしさは例えば、詩人・文月悠光(ふづきゆみ)さんの書いた「詩人と娼婦」問題(「私は詩人じゃなかったら「娼婦」になっていたのか? 」(リンク))に出ていると思います。今は有料記事になっていますが。セクハラしている方が文学的な問題とはき違えているところがすごくいやらしいです。

学生を追い詰める「ブラック研究室」の実態
http://newswitch.jp/p/8290
魚拓
家庭教師や塾教師をしていたとき、お母さん方が「資格で安泰に」「手に職」のようにおっしゃることがよくありました。自分ができなかったことを子供に代わりにさせようというお母さんも。でも、それで本人の意に反して理系にやるとすれば、お子さんをひとりの人間として見ていないことになります。これから書くような悲惨なことも起こりかねません(自分から「行く」というなら問題点を教えた上で行ってみれば、と言うのもいいかと思います)。

また、翻訳者には文系出身で専門知識がないことに悩む人が多く、理系出身は少数派です。何か理系を「打ち出の小槌」のように「なんでもできる」と勘違いする方もいます(翻訳会社にもいます)。人によっては死人が出んばかりの過酷な目にあって卒業しているのに、嫉妬なのか無知なだけなのか、無神経な言葉の対象にされることすらあります。今までいちいち言ってきませんでしたが、理系の実態は最悪の場合こうなる(=命がない)なのです。実は上に挙げた文月さんは、「詩人」という肩書きについてくる偏見についてエッセイで書いていて、「理系」と何かが似ています。

冷静なイメージがあり冷たく見えようとも理系も人間ですから、研究室の上の人間が1ヶ月も罵倒すればご飯も喉を通らないし眠れなくなります。そこから「死」に向かうなんて簡単です。そうやって大学に行けなくなった生徒は、専攻によっては珍しくありません。論文を人質に取られハラスメントされることもあり、そうすると卒業ができなかったり危うくなったり、手柄を取られたりすることだってあると聞いています。された方は泣き寝入りしかできなかったのではないでしょうか。

そうやって噂になるのが「ブラック研究室」ですが、誰も何もできません。入ってから分かっても配置換えできたらいいのですが。Googleで検索してみたらこうなりました。

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「アカハラ=アカデミックハラスメント」という名前は実はかなり古いですけど、そう呼ばれる前からこのハラスメントはありました。例えばいじめが学生時代にあって、いじめられた方はずっと引きずったり進路が狂ったりするのに、いじめた方はしれっと普通に家庭持ったりしているというような理不尽さと同様のことが起きています。

なお、アカハラは教員間にもあり、中間管理職的な教員がもっと上から受けるものもあります。

わたしがいわゆる「専門知識」(たった学部並みですが)と引き替えに得たのは健康を長期にわたって害し、就職も逃すという結果でした。きちんと就職もしたかったし、やりたいことをやれるだけの体力も欲しかった。ですが(2017/05/23追記:修士に)進学したときに不況に入ったということもあって、卒業も就職も叶いませんでした。それを何も知らない人は「理系でいいねー、うらやましい」と言います。何とか卒業はしたくて(その後修士に進んで出ないとやりたいことができないため)、這うようにして学校に行きました。うつ症状が出ると朝がとても辛くなるので、這うというのは誇張ではありません。

進学を控えた、特に理工系や生命科学系の学生さんは、そういうハラスメントがあり得ると前もって知っておくだけでも少しは違うかもしれません。同じ研究室で朝から晩、深夜まで(朝まで?)閉じ込められていると面倒が起きやすいようです。研究室にいる時間が自分の経験では10時間くらいで普通でした。病気していたから無理できなかったですが、頑張れる人はもっと残っていました。

Classmate - Patrick_and_Mike

“Classmate – Patrick/Mike” by Marck Schoenmaker is licensed under CC BY 2.0

他のブログで読んだ対策案へのつっこみです。

1.研究室訪問:やらないよりはマシですが、それで全部は分からないと思います。わたしは修士に進むとき当時自分の大学からはあまり行われていなかった大学を替わるということをやったので、3校6講座の先生に約束取って会いました。一番話しやすかったのが最終的に決まった先生で、その予感は幸い外れていなかったのですが、世の中には最初はよくても裏表があったり豹変したりする人がいます。研究室はよく「あそこはきつい」とか噂が立つのですけど、今思えば自分が学部でいたところも事前に噂がありました。

2.ハラスメント相談室:人の話を総合すると、あまり役に立たないようです。既に削除されたTwitterによると、「相談したことを相手に漏らす」という相談室があるらしく、大学にもよるようですけど役に立たないと。他にセクハラ窓口の旗振り役が自らセクハラをしているというしょうがない話を読んだことがあります。

3.法テラス:下のリンク先にありますがわたしはDV調停離婚経験者で(有責側が調停起こしたと理解しています)、その後制度が法テラスに変わりました。一般的に弁護士に相談しようとすると役所などに法テラスを薦められます。証明しにくいものがアカハラやモラハラ(精神的ハラスメント、家庭だけではなく職場などにもある)の特徴だと思うので同列に書きます。

調停当時、弁護士さんによって対応はえらく異なりました。アカハラやモラハラの場合、証拠もはっきりしないのに大学という組織にケンカ売ってくれる弁護士さんは簡単にいますかね?DVでも精神的被害の訴えだけで勝訴したという話を聞いたことがありません。弁護士会などが犯罪被害相談ダイヤルを設けている自治体もありますが、常時開いていない場合もあり、うちの県では存在自体ほとんど知られていません。電話で訴えても先につながるとは限りません。

アカハラを受けて、裁判で勝訴したという例もあります。

http://thelancet.com/pdfs/journals/lancet/PIIS0140-6736(05)71533-6.pdf

(なくなったら困るので、ダウンロードしたもの。PIIS0140673605715336

試料などを持ち出され廃棄された日本人の女性研究者が勝訴した話で、2001年のLancetにあったものがなぜかその近辺だけpdfで見つかりました。証拠があったからこその勝訴ではないかと思います。

ブログ主のアカハラ体験で、この10年超ブログ書いたうちのトップ5には入っている記事です。

アカハラ被害体験とそこからの救済について(長いです。2015年と17年に追記)。

最後にキャンパスでの性 被害の話です。入学時の歓迎会などでのお酒の強要、最近はアルハラとも言うらしいですが、さらにセクハラやそれ以上の被害がこれから増えるのでしょう。深刻な被害もあるので書いておきます。今まで大学内の性 被害は表に出なかったのが変わってきました。去年大学内での性 犯罪摘発が多かったのは単に被害者が訴え出られるようになっただけだと思います。酒の席でなくとも性 被害はありますが、もしも被害に遭った時のことを考え次に書いておきます。
(性 暴力の定義を注釈として最後に付けます)

あまり知られていないようですけど、性 加害者で一番多いのは「夜道の見知らぬ人」ではなく「友人・知人」で80%(最後の注釈参照)を超えます。つまり、ほぼ泣き寝入りだと言うことです。わたしは大学外での被害者ですが、身近なケース2件だったためそれが被害だと気づくのに10年くらい遅れ、気づいた後パニックを起こしたりしました。
都道府県ごとに被害の後処理が1ヶ所ですむワンストップセンターができつつあり、病院や警察で何回も被害状況を話す必要がありません。東京の「レイプクライシスセンターTSUBOMI」は、時効がきている件でも3回まで電話で聞いてくれます(被害者センターも各地にありますが、相談可能かはケースバイケースのようです)。全国のワンストップセンターは以下の通り。
http://purplelab.web.fc2.com/onestopcenter.html

悲しいですが訴え出ても相談しても2次被害があります。新入学のみなさんに言いたいのは、お酒ってうまく使わないと一番メジャーなドラッグですからね。泥酔させられ被害に遭ったケースが昨年大きく報道されたものではほとんどでした。しんどいのなら一気飲みは断るのが身のためです。命にも関わりますし。仲がよい人ではなかったけど、同級生が1人急性アルコール中毒で亡くなっています。
酒が絡んだ性 暴力などの参考意見を医師のツイートやブログから注釈に張りました。

最近の強 姦罪改正で、男性に対する性暴力も認められるようになりました。ちなみに米有名私大も強 姦被害がひどく、オバマ前大統領がどうにかしようとしたくらいでした。
法律の改正点はこんな感じです。
現行刑法は「男尊女卑の発想」 性 犯罪刑法改正、残る論点は
https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20170315-00068739/
なお、学内でもデートDV、ストーカーがあり得ます。

そういうわけで、この時期入学したり研究室に配属されたりする学生さん向けに各種ハラスメントについて書きました。将来的に進む方にも参考になればと思います。いや、大学でのサバイバルも大変ですね。何か「こうすれば逃げられる」という手立てがあれば良いのですが、今回のテーマは詰まるところ「暴力」で加害者にはまず実感がないため、気がつかないうちに「自分が悪い」という方向に追いつめられる被害者も十分考えられます。まずは気がつくところからかと思います。

注釈:

性 暴力の定義は日本福祉大のHPでこんな感じです。恐らくほとんどの女性は被害経験があるでしょう。

※キャンパス・セクシュアルハラスメントとは
相手方の意に反した性的な行為や言動そのもの。また、それによって、学業や大学業務を遂行する上で不利益を与えたり、学業や就業の環境を著しく悪化させてしまうことを指します。
※性 暴力とは
レイプや痴漢行為、のぞきなどの明らかな犯罪ばかりではなく、相手方の意に反した肉体的な暴力あるいはことばの暴力によって性的関係を強要したり、間接的に性的接触を行うなどの犯罪的行為を含みます。
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知人・友人からの被害80%のソースは以下の通り。

性暴力の8割「知人から」…被害者支援の弁護士「自分を責めないで」(弁護士ドットコム)
https://www.bengo4.com/c_1009/c_1198/li_328/
魚拓

子の性暴力被害なくそう 大津のNPO、小中学校へ出張講座(京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20170327000021

魚拓

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医師の意見

日付をクリックして付いたコメントも見てみることをお薦めします。

河野美代子のいろいろダイアリー
http://miyoko-diary.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/post-e617.html

魚拓
この先生のおっしゃることその通りで、被害に遭うとなぜでしょうね、被害者がいろいろと責められます(女性が被害者の場合、女性にまで)。なにか社会的に性 被害を生み出す土壌があるのだろうと考えています。
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今回のおまけ:陰鬱な内容だったので、最後に綺麗な話題を。院生の時先輩が紹介していた「生物発光」という現象。ホタルとかホタルイカなどがそうです。バイオで検出に使いますが、近所の大学でバイアルの中で光るのを見せてもらったことがあり、とても美しいものでした。

Firefly

Photo: Firefly Mr.k_Taiwan via VisualHunt /  CC BY-NC-SA

監修:原典行(元東京工業大学大学院 物質科学専攻助教)

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