ヨシダヒロコです。
その1はこちらです(リンク)。いろんなお話があって全部リンク先を読むのも難しいでしょうから、好きなところだけどうぞ。
前回書いた青いキク、バラは青い色素を入れます。重イオンビームで変異を起こすより、遺伝子組換えの方が成果がよいというお話だったと思います。青いカーネーションは「ムーンダスト」(サントリーのサイト)、青いバラはサントリーの「アプローズ」(サントリーのサイト)です。アプローズはまだ紫っぽく見えます。薄い紫のバラは風情があり、香り高いのが多くて好きですけど。
青いキクは野田さんという方が2013年に作りました(下のリンクにもありますが写真ではちゃんと青でした)。
「青い菊」咲いた サントリーなど開発(産経) (魚拓)
プレスリリース (研究成果) 「青いキク」が誕生
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/076531.html
遺伝子組換えは既にご存知の方もいるでしょう。モンサント社が自社製品グリホサート(商品名ラウンドアップ、200ml 2300円)に耐えられるように作物を作りました。遺伝子組換え作物の環境への影響が懸念されています。
次は雑誌の表紙にもなった(Plant&Cell Physiology)トレニアというお花の話です。多弁咲きシクラメンで、夏の花壇花です。組換え開始から5ヶ月で開花します。
雑誌の表紙がこれです。

動画を見せられ、クリーンベンチでパートさんが実験作業をしています。葉の一片を植えて育てると、培養室で幼植物体となり、土に植えると温室内で開花します。
培養の様子はこんな感じでした(これがガラスの壁の向こうにあって、人間と接触せずに作業します。写真は発芽の実験なので多少違いますけど……)

From “Plant physiology” in Wikipedia, germination table by Rasbak
花が大きくなる過程で遺伝子セットを入れます。時期をずらしてひとつの遺伝子を抑制すると、花のパターンがいろいろできます。それぞれの遺伝子は発現場所やパターンが違います。
色の出方については、細胞の形が変わるから?とか、色々な要素があってまだ分かっていません。
プレスリリース 「花の形・配色パターンだけを効率的に多様化」
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/070829.html
次は遺伝子導入、アグロバクテリウム法を使った遺伝子組替えでの育種です。アグロバクテリウムは土中の細菌で、あるDNAを植物に感染させてこぶを作ります。この時感染=組替えがされていない細胞は殺されます。遺伝子組換えにはよく使われる方法と本で読みました。
これで作られたのが青いキク、バラ、カーネーションです。カーネーションはわたしも買ったことあり、紫に近いと思いました。バラは上に書いたサントリーの「アプローズ」です。キクは農研の成果です。光る花も作りました。花だけで遺伝子機能を抑制し、これは組換えでないとできません。TVに取材されたり、国立科学博物館「ヒカリ展」に出品したりしたそうで、TV用に夜咲いているところを撮った写真を見せてもらいました。一面蛍のようで綺麗で、それが花畑なので不思議な感じでした。
光る花の写真は前発言のチラシにもありますが、多少はっきりしたのは農研機構のHPにあります。
ルシフェラーゼ(ホタル)などの化学発光とGFPなどの蛍光(GFP:下村先生が見つけたオワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質)はメカニズムが違い、GFPでの組換えの前例はありましたがうまく行かなかったため、富山湾に住む海洋プランクトンChiridius Poppeiからの蛍光タンパク質を使っています。ちょっとブログ書きながら検索してみたら、「キリディウス・ポッペイ」でいろいろ出てきました。
プレスリリース「光る花の研究開発に成功」
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/flower/048489.html
プレスリリース「遺伝子組換え技術により開発された『光る花』の論文を公開」
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/flower/054854.html
国立科学博物館 ヒカリ展の魚拓(リンク切れていたらご覧ください)
(余談:以前買った青いカーネーションの写真です。2016年5月に、ネットの花問屋「はなどんやアソシエ」で濃淡3種あるのを買い、その後金沢の花屋さんにもあるのを見かけました。これはたしか真ん中ほどの濃さの色で、咲き具合で色が変わった気もするし、写真は西日が当たっています。上に書いた「ムーンダスト」のサイトをもう一度貼りますが、1輪ずつ咲くタイプが4色、スプレーが2色あるそうです)
http://moondust.co.jp/

盛り上がったのでずいぶんいろんな話をしてもらったのですが、最後にゲノム編集のお話。導入だけだったので、いいことはこんなところ、というのを聞きました。クリスパーとか何だろう、と前から思っていたいましたのでちょうど良かったです。

ゲノム編集は、お話しされた時点でここ3年ほどの技術ということでした。育種の問題を解決してくれるもので、遺伝子を2ヶ所一度に切ることができます。交配だと(2018/03/14 13:39追記:いろんなところが切れるので)いろんな植物ができるのですが、ゲノム編集だと1つしかできません。
農業の課題として、例えばリンゴでは温暖化、担い手不足、病害虫などがあります。その解決や、ジャガイモの芽に含まれる毒をゲノム編集で取り除いて、食中毒リスクを低減することができます。
CRISPER-Cas9(クリスパー・キャスナイン)というものがあり、受精卵などに注入するだけで作業できます。業者さんにこのガイドDNAが欲しい、この配列でなどと頼むと、次の日に送ってくるそうです。
生産コスト減で美味しいトマトもでき、受粉を行う必要がありません。アレルゲンを抑えた米や、養殖しやすい(おとなしくて共食いが少ない)マグロ(2018/03/17 0:32追加:すいません抜けてました)も作れます。
農研機構では世界で初めてキクのゲノム編集を行いました。キクは6倍体だから難しいそうです(2倍体だと楽)。
研究内容はこんな感じで、再び雑誌の表紙になりました(キクが光っているのは、「光る花」の技術も使っているようです)。
プレスリリース
世界で初めてゲノム編集によりキクの性質を変えることに成功
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/074039.html

最後の方、よく思い出せない箇条書きメモが書いてあるのですが、覚えているのは、花きはペットと同じくらいの産業規模があり、プレゼントしたりメンタル的に癒しになるとおっしゃっていたかと。
少なめ人数でも活発だったので、「スライドとか今後は工夫しないと」みたいなことをお話の後で感想としてお話ししていました。またお花のお話聞きたいです。
これを書くために農研機構のサイトには何回か行きましたが、最近はウンシュウミカンのゲノム解読に成功したそうです。
※今回のサイエンスカフェは特に内容が濃かったこともあり、間違っていることがあればご指摘お願いします。関係者の方は特にありがたいです(メールフォームでも構いません)。