はじめての人にも分かる翻訳者のトライアル(同日、翌日、2018/09/06追記)。

ヨシダヒロコです。

antica lettera con tazzina di caffè

Credit: Adobe Stock

ここを定期的に読む人が翻訳者のことをよく知る方ばかりではないかもしれないと思い、これを書いています。翻訳者から一般の方や翻訳経験が浅い人向けのアウトリーチというか。

ここでは字幕や出版ではなく、従事している人の数が一番多い「産業翻訳」(実務翻訳)の話をします。文系だと金融、芸術、インバウンドなど、理系だと全分野です。ビジネス一般はどっちもありますね。わたしは面白そうだと何でも手を出したがりますが、専門がかっちり決まっている人もいます。

「トライアル」とは翻訳者の登用試験で、フリー翻訳者は複数のところから安定して仕事をもらいたいため、関係が良好な取引先が複数欲しいところです。そのため受ける翻訳の試験です。募集には多少条件があることが多く、一番よくあるのは「翻訳経験者(会社勤めでの翻訳経験でもいいはず)、経験○年」とか「該当分野の知識や経験がある」などです。

(2018/08/24 10:26追記)

登録先は大きく分けて2種類あり、普通は翻訳会社という仲介会社に登録します。有名なのだとDHC(大学翻訳センター、CMしてるのは副業らしい)などがありますが、英文校閲出す人が翻訳会社の系列会社にお世話になる他は、あまり一般の人には関係ない会社です。そこはクライアント企業、役所、大学の仕事をもらってきます。元弊社などなにかのつながりがあると、直接取引もできます。ブログ書いてるとたまに両方連絡が来る可能性があります。クラウド翻訳も伸びてきていますが、やったことないので触れません。

わたしは今並行して書いている英語の勉強歴のところでもうすぐ書きますけど、20代終わりに当時のパソコン通信絡みで洋楽近辺のお仕事をもらいました(氷河期で就職できずバイト生活中)。コネと洋楽の知識のおかげだったのかなと思います。

それからしばらくして通信の翻訳学校受けたりして、あるきっかけでフリーになろうと思いました。その時までにトライアルに受かっていた会社は少しはあったと思います。

応募手順

  1. 履歴書+職務経歴書を準備。あんまり長くない方が良いらしいです。Worksのページにダイジェスト版があります。希望単価は最初のうちは勝手が分からないでしょうが、慣れたら書いておくと便利なこともあります。なお、紙ではなくWordで準備します(2018/08/25 10:57追記:最近はWordをpdfで保存して提出したり、国内の会社だとパスワードかけたりします)。
  2. 翻訳サンプルが必要な場合もあります。昔翻訳学校で先生に「わたしは(医学)雑誌訳して付けてます」と言われたんですが、今は著作権的にOKなものの方が良いらしいと小耳に挟みました。

これで書類選考です。例えば募集は会社のウェブサイト、各種募集サイトに分野(IT、メディカルなど)、言語(英日など。英日&日英とセットな場合も最近多い。他言語は何でもやらされる)、職種(フリーランス、会社の中で翻訳するインハウスなど)を明記して出されます。応募者の気になる単価は、アメリアという募集サイトでたまに出ることがありますが分からないことも多いです。なので履歴書に希望を書いておいたり受験前にメールで聞くかすると教えてくれることがあります。単価の話は日を改めて。

他にCATツールという、機械翻訳とはまた違うのですが、原文の繰り返しを指摘・置換してくれるツールが使えることを条件にされる場合もあります。蓄積された翻訳であるメモリにある訳が悪いと悲惨な置換のしかたをされるし、Excelみたいに訳文がセルで途切れるので流れがつかみにくいという欠点があります。繰り返しの分値引きされるし。絶対使わないという方もいますが、わたしは2006年くらいから導入しています。

書類選考はほぼ通っていますけど、該当分野での実務経験が必要なケースで落ちたことが1、2回あります。

選考に通るとトライアルが送られてきます。履歴書を見てか、該当分野に「これもできるかな?」って感じで別分野が付いてくることがあり、別分野だけ受かったこともあります。制限時間2時間の会社だと、1課題が(2018/09/06追記:例えばの例で、英日だと)500ワードあったかなという感じです。多いと3課題ほどで(2018/09/06訂正)Wordワード数枚ということがありました(さすがに2時間ということはない。会社訪問の時にそのうち1課題が実際の仕事そのものだったと聞いてびっくりでした)。文章の量はほんとうにまちまちです。

トライアルは翻訳者になりたいと思ったらどの段階で受けてもいいのですが、翻訳については多少は学校に通う人がわたしの周りで多く(半年とか1年とか)、受けるのは在学中か終わったタイミングなどです。仕事を紹介してくれる学校もありますが、上位の人だけです。

うまく受かった場合でも、仕事に入ってからも随時開拓します。翻訳学校には新しい分野の翻訳をしたい場合など、また勉強しに行く必要が生じることもあります。もちろん色々本が出ているし、独学で何とかする人もいます。翻訳は人の目にさらさないとうまくならないので、最低でこの辺に勉強会があったらと思います。ネット勉強会で持ち回りで論文訳していたことありました。翻訳学校の必要性は今考えています。

わたしの場合トライアルの打率は、持病の調子が悪かったりするとやってもやっても落ちます。翻訳自体、馬力や体力も大事な気がします。もともと和訳から入りましたけど、去年英訳で医療機器・機械方面に受かったこともあって「ウソ?」と思ったこともあったし、治験が絡むと全滅に近かったりします。化粧品英訳はOJTでした。わたしは周辺・背景知識を付ける努力はしてきたつもりだけど、特に英訳では翻訳技術がいまいちなのかもと思っています。ちなみにトライアル自体の合格率は1割くらいらしいです。

他に、もうプロジェクトが決まっていて翻訳者さんを探しているという場合もあるそうです。普段の募集は優秀な方が少ないので常時募集というところが多いです。

(こないだ登録ある会社の別分野に落ちたとき、「いつでも一定の翻訳をできる翻訳者さんを求めている」と言われました。もちろんなのですが、こういう体の人は請負だと障害者雇用促進法も適用外だろうし、どうしたらと思っていたりします)

 


 

トライアルの決まり事でよくあるのは、

  1. 納期が決まっている場合は守る。早いと1週間ですが、事情がある場合は早めに申し出るとよいです。納期が決まってない場合もあります。
  2. 別紙に書いてあることが多い決まり事を守る。制限時間のある試験の場合時間を測って書くとか、名前や受験番号を書いてくださいとある場合ちゃんとファイル中に入れるとか、ファイルを圧縮するとかの処理。分からなかったら聞いてくださいね、とよく言われます。やり取りも見られているそうです。
  3. 納品時は「このメールへの返信で」とか「タイトルは変えずに」というのが多いですかね。
  4. 結果は、会社の方も仕事の合間に複数採点をしているので、早くて3週間くらいです。即不合格通知来た、という話も聞いたことあります。

 


 

この本がとても親切なのですけど、実はアメリアに連載時のものがまるまるあるのを春頃に見つけました。伝という会社の近藤さんこと「カントク」のジョークも関西弁で炸裂していて楽しいです。残念なことにかっとんだジョークや美味しいところが本ではだいぶ削られています。さらに残念なことに、この会社わたし落ちまして、次のチャンスないらしいんです。カントクの書いていたことで納得したのは「この人と一緒に仕事ができるか」を見ている、という言葉です。

受かっても100%喜ぶことはできず、本読むと分かるんですが翻訳会社は翻訳者をランク付けしています。合格者の上の方にいればすぐ仕事が回ってきますし、逆だと言わないでも分かりますよね。最悪どこからも仕事が来ないということもあるし、受注が途切れる場合もあるので、そしたらまたトライアル行脚の旅に出るのです。

2冊目の『プロが教える~』は何年か前から持っていて、去年秋のトライアルで活躍しました。書き手の中には存じ上げている方が複数いて親近感が持てましたし、複数人の勉強のしかたや翻訳に対する意見が読めます。あともうちょっと課題をやってないので1冊丸ごと紹介できないでいます。技術内容が分かっていたら分かりにくい原文をかみ砕いて訳せるという箇所もあり、「そうしてもいいんだ!」と思いました(書いた方に質問してみたら程度問題らしいです)。

猫先生こと青山さんは古い友人で、ブログ「女は翻訳でよみがえる」のリンクがここにもあります。この本はKindle本で、さらっと業界のことが分かります。辞書のことは進歩が速いので今は少し事情が違ってきているのかもしれないのと、特に仕事のないときに遠方の翻訳会社を訪問するときは、「近くについでがあってきました」と言った方が担当者さんがほっとします。直接お話しすると良くも悪くも担当者さん(コーディネーターさんとかコーディさんという)のキャラクターや社風が透けて見えることがあるんで面白いですけどね。

翻訳フォーラム有志の『できる翻訳者になるために  プロフェッショナル4人が本気で教える 翻訳のレッスン』も評判高い本です。上2冊は技術系ですけど多分この本はそれだけではないかもしれないので。積ん読が多いため、この本や気になるムック本、「通訳翻訳ジャーナル」でたまってたり買えてなかったりするものはゆっくり買います。

まだ暑い日が続いて消耗しますからゆっくりしますが、本を挙げているうちに「もっと休養できて元気出たら、どの辺を読もうかな」という気になってきました。

これを読まれた、特に「翻訳者には興味あるけどどんなことをしているんだろう」と思っておられた非翻訳者の皆さんにとって、秘密のベールに包まれていた翻訳者が「ちょっと分かった!」となってくれたら嬉しいです。

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