頷くばかりだった『翻訳とは何か――職業としての翻訳』。

ヨシダヒロコです。

 

2018-05-13 00_Fotor

この本は2ヶ月ほど前に読み終わっていました。買ったのは2年は前で積ん読でした。山岡先生のこの本は有名で翻訳者は読んでいて当たり前なのですけど、このところ翻訳関係の本や雑誌を多少読み、実務系(先生は出版も訳されましたが)ではこれが一番心に残りました。訳し方指南の本はまた別に評価しています。今回、この本をレビューするのに緊張し、逡巡し、取りかかるまでに時間もだいぶかかっています。

この本は翻訳のハウツーというよりは翻訳の歴史、翻訳論にページを割き、翻訳市場の現状(当時)、翻訳者という仕事についての考えも書いてあります。「こういう心構えで翻訳をするように」というお叱りを受けているような厳しい印象も受けます。「お叱り」は悪いニュアンスではなく、わたしは意味なく声を荒げる人は大嫌いですけど、山岡先生が嘆きたくなる風潮がわたしには何となく分かります。この本が出たのは2001年ですが、既に「簡単に翻訳者になれる」というような宣伝文句が出ていたはずです。

もちろん、教える側の先生方もこの本は読んでいるはずですし、わたしにもキャリアアップのため翻訳学校で是非教わりたい方は複数おられます。単に先生を選べばいいのだと思いますが、それをほとんどの初心者がしないことが残念だとおっしゃりたいのでしょう。別のところ(下のリンク)でそういう発言があります。

冒頭からの翻訳論のパートはついどんどん読んでしまいました。玄奘法師(三遊記の)をはじめ、命がけで翻訳に当たった先人たちが登場します。P74にあるような数学書の翻訳については放送大の『数学の歴史』にあったと思います。今放送大院で去年開講した『異言語との出会い』を学習し始めたばかりです。特に英語との音韻の違いから始まって、異言語との文法の違いや異言語との接点、翻訳(2章分)にも言及する科目で、もっと進んだら独立にエントリを上げます。山岡先生の本にもそのような香りがするパートがあります。

わたしは翻訳分野の背景知識をつけることを重視してきましたが、それだけでは良くないと思い、せっかく多言語やっているんだから言葉そのものについてもっと知りたいと思い始めていました。山岡先生の本を読んだのはそういう意味でちょうどタイミングが良かったのです。昔の翻訳フォーラムにいらっしゃったと最近知りました(会議室がわたしと違ったのでしょう)。故人なので、その当時お話しできなかったことが残念です。先生の作られた辞書は使っていて、EPWING形式で見出しが存在するらしいと知ったばかりです。是非入手したいです。

インタビューがありまして、こちらをどうぞ。これ一度読んでから本を読んでみたかったんです。この時期(2000年)から状況が変わってないというか悪くなってる気がします。

山岡洋一が怒る   翻訳は簡単な仕事じゃないんだ

下のURLには、もう1本山岡先生のインタビューと、『翻訳の世界』元編集長のインタビューと、昔からの知り合いを含む翻訳者さんたちの紹介があります。

http://kato.gr.jp/

インタビュー中にある『翻訳通信』はこちら。

http://www.honyaku-tsushin.net/

辞書はこちらです。金融用語やビジネス系に強いです。

経済金融・証券会計訳語辞典
https://www.dictjuggler.net/ecostock/?error=1

数は多くなくていいから、大事に読み返せるこの手の本を増やしたいと思っています。

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