ヨシダヒロコです。
9月のサイエンスカフェのレポをしたばかりですが、先月末に次のに行ってきました。先週大事なサファイアの鏡が搬入されたばかりのKAGRAから宮川さんという研究者さんが来られて、後で分かりましたが夏に神岡であった重力波サイエンスカフェでのゲスト、4人の研究者さんたちのひとりでした。今回のサイエンスカフェと前後して、飛騨でも行われました。今後各地で増えたらいいですね。富山では多分初めてかと思います。天文台サイエンスカフェの開催は年1回です。
重力波捉えるサファイア鏡 「かぐら」の心臓部を公開(2018/03/19)共同・日経 魚拓(リンクが切れていたらどうぞ)
今回は全書き起こしに近い形にはしません。今後KAGRAについての講演や今回のようなくだけた集まりが増えそうな気がするので、あえて文章量を少なめにします。
天文台が森の中ということもあり一眼を持っていったのですが (2018/03/19 3:53青字部分、校正ミス訂正)SDカードを忘れ、タブレットで撮影。数があるのでGoogleフォトでアルバム作りました。本当はもうちょっと修正かけたかったんですが。
https://photos.app.goo.gl/qQ3MzHBFqCwzTFA52
前日になって、「駐車場に雪が多くてスペースがなく、すぐに一杯になるかも」みたいなメールが来て急いで行きました。そこで話聞いて驚いたんですが、天文台とちょっとした温泉、少し離れてライチョウの飼育している富山ファミリーパークがあるだけの本当の森なのに、何を思ったか誰かが(2018/03/19 4:16 青字部分校正)婚活パーティーをやるので駐車場が足りないと。ここで一体何するんだろうと思いながら、送ってくれた親の車を降りました。
森はこんな感じで、池が凍ってました。

駐車場から10分ほど歩いて天文台に着き、展示品を見てサイエンスカフェに出て、また展示品を見て帰りました。ゆるキャラKAGRAさんは初めて知りましたが、職員の方曰く、この絵を描いた「ひっぐすたん」(は知ってる)の本は絶版になったけどとても分かりやすいそうです。たぶんこれ。
去年ここに行ったときにKAGRAに出向いて見せてもらい、模型を作る予定だと聞きました。今回見たら何と自前で作ってました、ジオラマまで。器用な職員さんがいるそうです。

カフェは意外にも子供が多く、KAGRA見学会にも行って興味を持ってやってきたみたいでした。応募多数で抽選があるかもしれなかったのですが、定員オーバーでもそのまま聞いてもらうことにしたと。カフェでは話を遮って質問してもいいのですが、宮川さんは2、3回「子供たちの質問が少ない」と言ってました。幸い、話の終わった後に中学生くらいの子に捕まって質問受けていました。
宮川さんは名古屋出身、家族で富山在住だそうです。都立大→宇宙線研→カリフォルニア工科大(カルテク)でLIGOの基礎設計(ポスドク)→宇宙線研、という経歴だったと思います。何とあの「鳥人間コンテスト」で優勝経験があるとか。
スライド写真はKAGRAの最深部だそうです。経歴紹介の後はLIGOの大発見のお話から。号外が出たとか(日本で)、アインシュタインの宿題(1916年)を100年かかって解いたというお話がありました。3000km離れた2つの波形が一致し、あまりに理論値とも一致していて「ウソでは?」という話になったくらいだったそうです。
宮川さんはそのLIGOで研究していたので、ノーベル賞取った3人も知ってると。「実験屋のレイ」、「プロジェクトリーダーのバリー」、「理論家のキップ」と言われていて、レイは高齢だけどMITでまだバリバリ回路組んでるそうです。人をまとめる立場の人が(バリー氏のこと)受賞するのは珍しくて、それだけ大変なプロジェクトだったとの事でした。あと観測から1年で受賞も珍しいと(梶田先生は20年かかっている)。
生きていたら受賞したであろうロン・ドレーヴァー氏は観測当時認知症でしたが、重力波が来たことは理解したそうです。干渉計は『重力波は歌う』を読むと書いてありますよと言ってました。確かによく分かります。あと(キップ・ソーン氏が監修した)『インターステラー』見た人?と挙手を募ってました。
実際にブラックホール合体の時の重力波の音を出したり、動画を出して「ここで合体しました」など分かりやすかったです。もしブラックホールがもっと大きかったら音は低かったそうです。
↑「可愛い音」と言われてました。
去年の中性子星合体も、合体の時の音や複数の望遠鏡の動画も聞いたり見たりできました。貴金属がこの合体でできることが分かったので、NASAが元素周期表を書き換えているそうです。
中性子星合体の音。
こういう話でよく聞く「ベテルギウスの超新星爆発」もそろそろかという観測が、2017年6月30日、チリのアルマ望遠鏡が星の変形を捉えたため言われているそうで、でも明日か1000年後かは分かりません。
KAGRAの見学会はレアになりつつあり、そのうち振動を避けるため研究者さえほうり出されてリモート操作になるというお話。わたしは2016年に当選して行けましたが、その年の運を使い果たしたかと思いました。
わたしが苦労している一般相対性理論、KAGRAの原理の話も色々あったのですが、
KAGRAのトリビア(まとめてみました)
- パイプの直径は80m。
- レーザーは赤外線で、クリーンルーム中でも出ている。腕時計に反射して目に入ったりすると失明
- 赤外線を使うのは、設計するときに安定だから。
- ビームスプリッターは水晶(合成石英)
- 鏡のサファイアはホワイトサファイア、機械的損失が少ない(ブルーサファイアやルビーとの区別の話がありました。不純物で色が変わる)
- 感度が10の-19乗とすごく小さいため、いろんなノイズと研究者さんは戦っているそう。
- 地球上で重力波は作れても小さすぎ、大きなものは人工的に作れず、直接何かに役に立てるのは無理
簡単なしくみがpdf1枚でここにあります。
http://gwcenter.icrr.u-tokyo.ac.jp/KAGRA_Nobel/data/KAGRA2_panel.pdf
重力波観測前のですけど、国立天文台ニュースがここに。
https://www.nao.ac.jp/contents/naoj-news/data/nao_news_0247.pdf
宮川さんのKAGRAでの仕事は干渉計の制御(コントロールルームの設計:リモート操作が大変)で、直属の上司は梶田先生だそうです。
わたしが疑問だったのは、イタリアにあるVirgoをどう発音するのかだったのですが、ヴァーゴとヴィルゴ(それぞれ英語、イタリア語)とあっちとこっちで表記が違うので。実はKAGRAも海外ではGにアクセントが付いて「かぐーら」とか呼ばれちゃうらしくて、みんな呼びたいように呼んでいるらしいです(多国籍のチームですし)。VirgoのTwitterアカウントの中の人にも質問して答えもらったことあったのですが、もっと時代が前だったらどう読むかとか煙に巻かれたような感じでした。
もうひとつ、鏡はなぜサファイアなのかという質問は、寺の鐘を鳴らしたらずーっとゴンゴン響いてるような性質がサファイアにはあるとのこと。おぼろげにしか理解できなかったので、今後の宿題とします。
重力波観測成功が解禁になったときに号外が出た話から始まり、スーパーカミオカンデと『君の名は。』の糸守村の関係、富山県人や岐阜県人なら知っている「ノーベル街道」こと国道41号線の話など、とっつきやすい話もありました。ノーベル街道に縁がある研究者さんたちが子供時代を振り返って言うのは、「自然の中でよく遊んだ」が共通しているようです(田中耕一さんは2ヶ月かそこら前にまた大発見をしたそうですがまだ概要を読んでません)。
今後どんな面白いこと(©大隅先生)があるかということについては、よく聞かれるそうですがまず新しい観測手段であること。宇宙の新事実(4次元以上が発見されるとか)、宇宙初期の星の進化やブラックホールの研究などなどがあります。宇宙初期の話は、論文を分からないながら眺めたことがありますが、昔々のブラックホールがあって重力波がまだ飛んでいるのではという話があるらしいです。
「今日は最後に何かある」と聞いてましたが、職員の方がひとり春で退職になるそうです。その簡単な送別会というか、最近星が好きな宮川さんが星つながりでも交友があったのでしょうか。KAGRAトンネル掘削の最後に出た砂で砂時計を作ってあって、そんなレアなものをプレゼントされてました。とても親切な職員さんなのでいらっしゃらないとつまんないですが、長いことお疲れ様でした。
アルバムにあるスーパーカミオカンデグッズはここではなく街中の科学博物館にあります。わたしはノート狙ってます。
もうさすがに雪は解けたと思いますので、職員さんが退職になる前に夜にでも行けたらいいなあ。
※間違いの訂正を歓迎します。関係者の方は特にありがたいです(メールフォームからでもOKです)。