ヨシダヒロコです。
翻訳祭で話した本のうちでラストから2冊目。実はこれが易しそうに見えてなかなかどうしていい意味で期待を裏切りました。初学者の場合レイアウトも大事だと思っています。この本は手書きイラスト、色つきの部分、文字の配分が良く、好感が持てました。
わざわざ「左巻先生の」と断ったのは、理科教育やニセ科学批判問題で有名な方だからです。ニセ科学とは科学に見えてそうでないものを指し、例を挙げれば「水にきれいな言葉をかけたらきれいな結晶を作る」みたいなものです。ご夫妻で教育現場に長年おられて、著書も沢山ありますがこれが初めて読む本になりました。下に挙げる「高校生物」の化学版(左巻先生著)はレファレンスとして秋に買いました。
中学生物だけでなく、高校生物の検定外教科書もあります。著者からいって間違いないのでそのうち揃えておきたいのですが。
共著者は北大理学部の教授をされていた栃内先生。ブログつながりが長く、今はよくTwitterを拝見している先生です。『進化から見た病気――「ダーウィン医学」のすすめ』(ブログ掲載時に題名間違ってました、すいません!)は2009年出版時に読んでブログにレビュー(リンク)があります。
「中学理科」は題名にあるとおり、大人が生物をやりなおす場面になったときのための検定外教科書です。1章30分で読めるように書いたとあり、確かに読みやすいです。Amazonにページの画像があります。検定外のため、文科省の指導要綱には従ってない部分があり、元塾講師・家庭教師として思うにはDNAのあたりがかなり突っ込んであるのがそうでしょうか。最近は知りませんが、中学校ではほとんどやらないのではないでしょうか。
読者対象はこんな人々。P3より、
1.仕事や学業で生物の基礎を短時間で学び直したい大人。
2.中学生物を短時間で復習したい中学生、高校生。
3.中学生物の全体を知るために予習したい中学生。
このうち、1.の人がメインだそうです。受験準備にもいいと思います。
さらに目次をあげておきます。
第1章 植物の体のつくりと働き・暮らし
第2章 植物の仲間とその歴史
第3章 動物の暮らしと体のつくり
第4章 動物の仲間とその歴史
第5章 生物の細胞と発生
第6章 生物の遺伝
第7章 生物どうしのつながり
第8章 生物の進化
第9章 生物の歴史
第10章 人類の成り立ち
4択ミニテストが随所にはさんであり、簡単そうに見えて意外に間違えてしまうのですが、理解度を確認できます。とはいっても基本的に読み物なので、見開きなどでコラムがあって「へええ」「ほー」という内容で読みでがあります。これだけ内容があって、もし読者が理解できたら簡単にニセ科学にもだまされないのでは?と思うくらい。
わたしは前半を読んでいて、「ああこんな話子供の頃に大好きだったなあ」と思い、分子生物学のところは一応確認のために読み、「遺伝子組み替え」のコラムを頷きつつ読み(知らないことがあった)、最後の方で、太古の昔にあった植物や恐竜の絵や描写があるので、今そういう生き物が生きていたらどんなだったかなと想像したりしました。
字はまあありますが、新書サイズで小さいのでどこにでも持っていって読めます。生物はとても範囲が広いと放送大学の院で授業を取ったときに教わりました。この本は「中学」と付いてはいても、今の時代を生きていくのに最低限必要な知識を楽しく読書してつけられる本だと思います。
「理系のハナシは難しいと思っていませんか?実は中学レベルの約束事を知っていれば、内容の多くを理解できます」(裏表紙より)。