ヨシダヒロコです。

National Human Genome Research Institute (NHGRI) “Next Generation DNA Sequencing“ Credit: Darryl Leja, NHGRI https://www.flickr.com/photos/genomegov/27861478565/
翻訳祭に行かれた方も、残念ながら行けなかった方もこちらを見に来てくださってありがとうございます。以前書いた通り、ミニ講演会の資料を公開します。一段階目はプレゼンそのもの。Slideshareというツールを使ったので、スライドをダウンロードできます。
ミニ講演会で初めてプレゼンというものしてみた感想を簡単に。
- ノーパソのコネクタにはHDMIと書いてあったのに、現地でこちらの端子が小さすぎて合わないことが判明。メーカーに確認しておくべきだった。パソコン貸してくださったMさん、ありがとうございました。
- スライドショーの間隔がデフォルトで設定されているのに気が付かず、本番で勝手に変わってしまってどうして?となりました。結果最後の2枚のスライドはよく説明できなかった……。
- 原稿やスライドを作って人に伝える準備をしていると、対象のオーディエンスを想定するので、その過程自体が勉強になります。
- 本番でかなり消耗することも確かで、イベントあるごとに話してる皆さんはすごい!と思いました。
- 声を録音したり、カラオケボックスでも練習したり。タブレットのボイスレコーダーアプリは感度がよすぎたようです。
- 今回機会を与えて下さってありがとうございました。90分よりは気軽だし、面白い試みだと思います。
埋め込みができないので、スライドはこちらからどうぞ。ダウンロードはpdfで、ノートは含まれていないので下にコピペします。
https://www.slideshare.net/secret/uAbku3kCPnpmOW
タイトル(P1)
みなさんおはようございます。吉田博子と申します。今回は生物やバイオ系の独習についてお話しさせていただきます。化学の翻訳者からスタートして、医薬は医療機器の翻訳が多いです。このタイトル付けといて何ですが、バイオは「メディカルの基礎」ではありませんね。
P2
はじめに、大事なことを挙げておきます。この「ひとつの参考として」のところは強調したいです。(参考)のところは過去の経験で、結局自分のやり方を編み出す他なかったりしました。学習方法も翻訳の勉強方法も結局は同じかもしれません。最後が一番肝心で、学習していて「分からないところが分からない」というのはいろんな場合でまずいです。そういうことがないようにしていきましょう。
P3
意外に思われるかもしれませんが、理系出身者は物理・化学が多く生物を履修してないようです。というか、わたしも取らせてもらえませんでした。東京と北陸で子供を教えましたが、10年くらい前に関西の難関医学部で生物での受験がやっとOKになった覚えがあります。ですので自分も生物には苦手意識がありました。理系出身でも分野の得意不得意があるし、今回のように分野を増やすときはやはり勉強しないとだめです。
P4
それではわたしのやり方をお話しします。翻訳を始めて結構経ってからのことで、バイオのトライアルに歯が立たないのが悔しくて始めたことです。これから本の書影が沢山出てきますが、スライドの最後にあるようにあとですべてブログに載せるつもりですので頑張ってメモを取らなくても大丈夫です。わたしは最初1人の研究者さんに勉強方法を質問しましたが、生物の専攻の方に聞いたこともありました。人が違えば言うことも違いますので、もし知り合いの研究者さんに質問しても、意見は様々かもしれません。
P5
上の3つは研究者さんからのアドバイスです。「新しい本」というのがキモのようです。『細胞の分子生物学』というぶっとい本があって、化学の専攻の人と生物の専攻の人で少し言うことが違い、生物専攻の人は活用しているようでした。
P6
それで、絵の多い本を3冊です。他にもあると思います。一応言っておくと、生物の基礎の上に分子生物学があります。バイオとは幅が広くあいまいなことばなので、分子生物学と言い換えます。DNA、RNA、タンパク質が関わる学問です。高校生物があやふやだと後が大変なので、分かるところまで戻って勉強しましょう。それでまた難しめの本に進んだり、分からなければもう1回読み直したり本を変えたりすればいいと思います。例えばAさんに合う本がBさんに合わないこともあるので、大きい本屋でどれがしっくりくるかいろいろ見るのがいいと思います。一番右の左巻先生の本は中学生物で、最近出会ってここに入れておきました。
P7
他に、易しめの生物の本です。左の本は有名ですね。右のような高校の参考書も最近はカラーで分かりやすく、予備校の先生の本です。化学式がほぼないので、アレルギーのある方にお薦めです。なんとSTAP騒動の最中に書かれました。
P8
このような図録もあり、高校で使っているようです。コラムが頑張っていて、例えばiPS細胞については京都の研究所の方が書いていたりします。説明だけでは分かりにくいことがフルカラーの図や写真で描いてあるので、生物だけでなく理科一般にお薦めです。昔子供に化学を教えるときに、実験を見せてあげたくてもできないので代わりにこのシリーズを使っていました。
P9
さて、エピジェネティクスという概念があります。今医学でも使われていますが、分子生物学でホットな話題のようです。わたしがこれを知りたいと思ったのは、いきなりカミングアウトしてますが持病を理解したいという気持ちもありました。発生の分野に関係があります。書評サイトにHONZというのがありまして、そのコラムを参考にして同じように3冊読んでみました。わたしの頭痛のお医者さん(注)は、この間学会に行ってきたすぐ後に診察を受けに行ったら、「この分野はとても今進んでて……」とおっしゃってました。
(注)町医者ですのでいろいろ診られる先生です。
P10
エピジェネティクスといわれてもピンと来ないと思いますので。細かいことは省きますが、DNAの鎖にCH3という赤いものが付いていますね。これがメチル基がくっつくメチル化です。DNAにメチル基が付くと左からTTCGなどとなっている塩基の順番が同じでも、できてくるタンパク質が違い、性質の現れ方が変わったりします。
P11
そういうわけで、HONZで紹介された3冊を青木さんのレビューに従って順番に読みました。三毛猫とエピジェネティクスは関係がありますが、どの本にも残念ながらページは割いてはありません。どれも新書で入手しやすいです。ビジュアル的には読みにくいですが。一番右の仲野先生の本は、「お笑い系研究者」を目指しているようですが科学的な事実の間にすごく普通に個人の主観が入っていることがあり笑ってしまうこともありました。余談ですが、新刊の病理学はもっとお笑い傾向が強いようで、売れてるそうです。
P12
こんな本を読んでいて、やっとトライアルに受かりました(注)。バイオ翻訳者の隅っこに入れてもらえたようです。この本はレビューがいいなと思ったら本当にとっつきやすい翻訳書です。著者は非常に引き出しが多い人で、医学以外にも興味が持てるエピソードをいろいろ出してきて飽きさせません。一般書なのでここから読んでもいいかもしれません。夏に出たばかりで新しいですし、是非お薦めです。
(注)スライドの「2年半」は仕事や体調を見ながらで、多少長い本なので今回省いた大学1、2年くらい向けの本も2回ほど読んでいます。次の発言に載せます。
P13
わたしの場合は直接見た方が頭に入るので、こういう風に勉強しに出かけるのが好きです。講演にも行くことがあります。このようにして勉強しましたが、分子生物学は特に進歩が早く、やってもやっても追いつけないと実感しています。
P14
おまけです。そのうちノーベル賞と言われるゲノム編集について一般書を2冊紹介します。左はNHK取材班のもので、文字もゆったりして絵や写真も多く、いろいろな研究者に取材していますが、文章は平易です。右は今読んでいるところなのですが、左と話題はかぶっています。どちらの本でもこの技術の問題点に触れています。ゲノム編集については、秋口に花の品種改良についてのサイエンスカフェで始めて説明を受けました。
P15(ラスト)
みなさんもご自分の勉強の仕方を見つけてトライしてみてください。ありがとうございました。
次の発言(リンク)に、書籍情報と今までに勉強した際に毎回書いていた勉強記録をピックアップします。