『地底から宇宙をさぐる――ニュートリノ質量が発見されるまで 増補新版』読了。

ヨシダヒロコです。

Facebookの機能で知りましたが、約1年前に買ったものをやっと最近読み終わりました。

梶田先生の恩師で、宇宙線研究所所長などを務めた故・戸塚先生の著書(更に偉いのが小柴先生)。2008年に、東海村J-PARCの加速器と協力した待望の実験を見届けることなく、がんで亡くなったそうです。この先生が亡くなったときに放送されたNHKのドキュメンタリーが2015年に再放送され、闘病中に書いたブログのことや(下に貼りましたが書籍化されています)、宇宙と自分の生と死を重ねながら(宇宙もいつかは死にますから)、自らの病を科学者として分析しつくした特異な方として知ることになりました。こういう方が自分から地理的にそう遠くないところで毎日研究していたんだなと。

去年神岡に行ったときに他の本も眺めました。口調が堅くないというか、どこか豪快な性格が出ていて親しみやすい語り口でした。この本もそうで、ニュートリノ研究の歴史や解説の中に研究生活の裏話を混ぜ込んで、戸塚先生の分だけで110ページほどですが読みやすかったです。学会で大御所に会った話とか、浜松ホトニクスの社長は「アタラシモノ好き」で小柴先生と意気投合し、そのころ日本の部品は使っていなかったころだったと。

戸塚先生の分だけで、というのは、梶田先生の授賞以降の2016年に、梶田先生の以前雑誌に寄せた短めの原稿を足して増補版として出版されたのです。師弟の共同作業的な本でしょうか。梶田先生がニュートリノ振動の学会発表をしたとき、神岡の道の駅「宙ドーム」に沢山貼ってあった岐阜新聞で読んだのですが、「(発表を)やれ」と戸塚先生に言われ、結果拍手が鳴り止まなかったそうです(拍手のことは、今の神岡施設長の中畑先生がおっしゃっていた)。

この本を読んでいて、p47にフランクリン・メダルの話があります。ある科学者がなかなか取れないという話なんですが、番組で先生の遺影の前に賞状があるのを見ました。「アメリカで最も権威ある賞のひとつ」と本文中にはあるのですが、検索すると「アメリカのノーベル賞」と出ました。先生が授賞したのは亡くなる前年で、日本でも「ノーベル賞が近い」と言われていました。梶田先生は、「ノーベル賞の定員は3人なのに、(先生の)1人分空けてくれた」とTVでおっしゃっていました。

本に書かれていることでリアルなのは、カミオカンデでの超新星爆発ニュートリノ発見の舞台裏です。今でもスーパーカミオカンデでは次の爆発を待っています。カミオカンデ建設についても最初から関わっているのでいろいろ書いてあり(今は坑道のそっち方面は封鎖されているようです)、ラストはスーパーカミオカンデ建設へ向けてとなっています。

語り口が気に入ったので時々また本を開くかもしれません。例えば、素粒子物理学者が「傲慢」という話をやはり外国人物理学者の講演で聞いたことがあります。先生は次のように書いています。

高エネルギー物理学がその後の40年間に手にした成果は実に目を見はるものがある。(略)1930年にローレンスがサイクロトロンで8万電子ボルトまで陽子を加速したのを思い出してほしい。60年後、陽子の加速エネルギーは1億倍、衝突エネルギーは1000億倍になったのである。ときどき物理屋が「俺たちがやろうと思ったことで、できないことはない」といういささか傲慢な言動を口にしても、どうか許してあげてほしい。加速器は物理学者が作り上げた機械のほんの一例だけれど、これだけの恐るべき技術的な進歩を実際にやり遂げたのだから(p28)。

これは一例ですが、とても魅力的な文章です。ブログは(2017/10/07改稿)Web Archiveにhttp://fewmonths.exblog.jp/ と入れると”The Fourth Three Month”として一部が残っています。2008年頃のアーカイブをお探しください。ブログにはご自分のいろんな考えも書いていました。湯川先生や朝永先生のようにエッセイをたくさん書かれたらきっと一般の人にも広く読まれたような文章だと思います。

ブログの書籍化はこちらで、すでに持っていますが、素晴らしい写真が省略されているようで残念です。

このブログ書きながら書誌情報見てて気づいたのですが、余命が短いと分かっていた先生のブログからの本がもう1冊ありました。こちらは科学エッセイで、神岡町図書館の物理コーナーでも見かけました。「話し出すと止まらなくなるので、今日はこの辺で」みたいに書いてあって微笑ましかったです。

最近知ったのですが、静岡県人の先生を記念して、富士市の道の駅に「戸塚洋二ニュートリノ館」があります。HPは多国語展開で、英語のページや展示にも先生の可愛らしい似顔絵が見られます。プラネタリウムまであります。

(2017/10/07追記:今回紹介した本の)表紙写真はスーパーカミオカンデと思いますが、大体の施設写真は写真が趣味の中畑先生が撮っているそうなので、クレジットはないけど弟子として参加しているのかも。

さて、やっと梶田先生のご本を買う番になりました。他に関連本は何冊かあります。小柴先生のは大分前にジュニア向けの本を読みました。現・東北大カムランドの鈴木厚人先生も書かれてます。

「ニュートリノは難しい」という人に。面白いのはこんなちっちゃな、重さがあったといって大騒ぎになるようなつぶつぶが物理の理論を変えるといわれていたり、宇宙の始まりを解き明かすかもといわれていることです。知らない間に飛んできて身体を通り過ぎている(山ほど)というのもミステリアスです。

4年前、右も左も分からなかった頃に神岡から鈴木洋一郎先生がお話に来られるというので、小柴先生のこの本を読みました。子供向けでも話をぜんぶ分かったわけではないけど「楽しかった」と思ったのはその時が最初でした。もう1冊、梶田先生受賞後に出た初心者用向けの本を貼っておきます。

 

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