ヨシダヒロコです。
すぐにエントリが書けなくてすみませんでした。この翌日富山県高岡市でのCiRA講演会ともども、iPS細胞でどっぷりの2日間でした。最初このサイエンスカフェをどこで知ったか良く覚えていません。講演会のほうはネット経由でTV局のHPに行き当たりました。サイエンスカフェは地方での開催が初めてだったらしく目を疑いましたが、こくちーずという予約システムですぐに予約ができました。
CiRA(iPS細胞研究所・サイラ)にはわずかですが寄付をしており、1回目には丁寧なお礼状とその後はニュースレターを送ってもらっています。ニュースレターはHPにpdfでもありますし、頼めば送ってもらえます。どういう研究をしているのかを薄い雑誌のような形式で教えてくれます。
さて、この7月9日のサイエンスカフェは、金沢・片町ど真ん中なのにわたしが知らなかった場所で開かれました。金沢学生のまち市民交流館という場所で、古い家屋でしたが本家HPには書いてありません。2個目に貼ったHPに、大正時代の町屋を改築とありました。
木倉町という写真のような趣のある場所で、小さな食べ物屋や飲み屋があります。片町バス停からはすぐですが、この時間に富山から行く電車が少なく、最初の挨拶は逃してしまいました。
金沢学生のまち市民交流館
http://www4.city.kanazawa.lg.jp/22050/shiminkouryukan/index.html
金沢 まちなび
http://www.kanazawa-machinavi.com/detail/shop.php?shop=1307
富山・新潟などでもこういう場所で行われるサイエンスカフェに出席したことはなく、不思議な雰囲気でした。
(2017/08/25 21:59追記→)主催は、疾患当事者や市民が研究者と共に研究についてコミュニケーションする場作りを進める研究者のグループ「聞イテミル・考エテミル!?」とCiRAの共同主催です。
サイエンスカフェの様子は、短くまとめたものがCiRAのHPにあります。
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/seminar/170712-143000.html
最初は国際広報室サイエンスコミュニケーターの和田濵裕之さんから、iPS細胞の一般的な話。他の方もですが、スライドに出てくる細胞や血液や器具などが、水彩と思われる濃淡の付いた何とも言えない素敵な描かれ方をしていました。翌日お聞きしたところ、「難しいイメージを和らげるため」(2017/08/25 0:34追記:原稿のコピペミスを追記)外部のデザイナーに依頼したそうで、なにか理系っぽくなく絵画のようで気に入りました。iPS細胞は紺まで行かないブルーで塗られていました。
チラシは別の方のデザインで、以下のような可愛らしいものでした。
和田濱さんのお話では、iPS細胞とは何かということを、さっきお話ししたようなデザイン性が高く美しい絵のようなスライド、そして鮮やかな細胞などの写真を使って成り立ちから分かりやすく説明してくれました。まず、受精卵は育てばどんな細胞にもなることができます。2012年ノーベル生理学・医学賞はジョン・ガードン博士と山中伸弥博士が授賞しましたが、最初にガードン博士がカエルを使って大発見をしたのです。1962年のことで、体の細胞もまたどの細胞にでもなれるという発見でした。その後、1980~90年代に受精後の胚細胞からヒトでもES細胞(胚性幹細胞)が作られ、iPS細胞は皮膚の細胞からマウスで2006年、ヒトで2007年に作られました。10周年になります。
iPS細胞の作り方は、簡単にいうと下のリンクの一番上の「iPS細胞とはどのような細胞ですか?」にあるのですが、
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/faq_ips.html
最初に発見されたときは遺伝子4つとレトロウイルス・ベクターを入れていました。そのときは細胞ががん化することがあるという問題がありました。今ではその4つの遺伝子(Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc)にLIN28 DN-p53という遺伝子を加え、レトロウイルス・ベクターの代わりにエピソーマルプラスミドを入れてがん化などが起こりにくいようにしているそうです。
最初は皮膚から細胞を採っていたのですが、深いところなので一針くらい後で縫う必要がありました。今では血液の単核球という細胞を使います。
iPS細胞のコロニーの写真が出てきました。iPS細胞というとよく出てくる青い大きな細胞です。何個だと思いますか?と聞かれました。1個と答えてしまったマヌケはわたしくらいでしたが、実際は数千個(後日談:概算では9000個ほどあるそうです)くらいの細胞があっちにもこっちにも固まっているそうです。無限に増えるのですが、くっつくと働きが悪くなるのでバラして別の皿に入れるそうです。200くらいの様々な細胞になれるそうです。
iPS細胞はもちろん再生医療にも使われますが、病態の再現・創薬・治療法発見にも使われます(2日通して後者の話もよく聞くことができました)。例えば軟骨ができなくなる軟骨無形成症で、病気でない方と病気の方からiPS細胞を作ります。軟骨ができる、できないという病気の状態を実験室で再現できます。患者さんには行うことのできない、いろんな薬を細胞に試してみることができます。これはCiRA妻木範行教授の研究で、既に他の病気で使われている薬が、ネズミを使った実験では軟骨無形成症に効果があるかもしれないという結果も出ています。
アルツハイマー病では個人差があり、iPS細胞から神経細胞を作ると違いがあるので効く薬が違う可能性があります。
ここまででQ&Aタイムです。
- iPS細胞になることのできる細胞の種類は?
大体何でも。分裂する細胞のほうがいいです。
- iPS細胞から他の細胞へと分化させる際、発生過程はわかっていなくていいのですか?
薬の評価系でははっきり分かっていなくともいいですが、分かっていたものの方がデザインしやすいです。
- 初期化で時間は巻き戻りますか?
短くなると細胞が老化した目印とされているテロメアは長くなります。
- 子供さんからの質問。どんな病気でも皮膚から細胞取れば治りますか?
どんな病気でも治るかどうかは分かりませんが、皮膚からとった細胞をiPS細胞にすることで、色々な病気の研究ができると考えられます。
- 軟骨細胞の薬が見つかってどう投与するのですか?
薬の候補がみつかっても、どうやって投与するのが良いかは改めて調べる必要があります。まだ現在のところどうするのが良いのかはわかりません。
iPS細胞を誰かが研究で使いたいときの話が最後にありました。倫理的なことは特別審査がなく、維持費用は計算が難しくて誰も知りません。研究だけで(人件費なし)200~300万、臨床用だともっとかかるとのお話でした。
最後に、以前HPで見かけましたが幹細胞かるたとiPad向けのiPSマスターがあるそうで、これ書きつつ見てると、ほかにもゲームがあるようです。興味ある方はどうぞ。
参考書も紹介されましたが、次回まとめて出します。
これでおひとり目のゲストのお話は終わりです。和やかな雰囲気だったのですが、次の長船(おさふね)先生のお話の時に思いがけないことが起こるのでした。
#こういう内容に間違いがあっては困るので、CiRA国際広報室でチェックして頂きました。どうもありがとうございました。
~後編に続く~
後編 出張CiRA(iPS細胞研究所)カフェ × 聞イテミル・考エテミル!?「iPS細胞の現在:じん臓・すい臓・肝臓の再生医療」in 金沢に参加して(後編・2017/07/09)