ヨシダヒロコです。
前回はサイエンス界の大問題を取り上げてかなり脱線してしまったので、今回は普通に行きます。前の前に予告した通り「モルって何?」です。
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この概念は高校化学の教科書では最初の方にあるのですが、わたし自身思い切りつまずいたというか。実はこれが分からないとその先かなりの部分が分からなくなってしまいます。自分がどうしたかというと、地道に教科書を読んで問題を解いて(計算です)、多分下のビデオにあるようなことを何となく理解したのだと思います。
アボガドロ数というマジックナンバーがあります。すごく桁の大きい数ですが、これがひとかたまりになっている、例えば「ダース」や「カートン」のような概念と考えてください、ということをどっちの動画でも言っています。
アボガドロ数の語源であるアボガドロという人は(ファーストネームはアメデオですが貴族なので本当の名前は長い)化学では超有名人で、トリノ出身のイタリア人です。次回どういう人だったのかを少し書きます。ここに写真が出ていますね。
pdf欲しい方はこちらから。
http://www.compoundchem.com/wp-content/uploads/2014/10/The-Mole-2015.pdf
下の動画2つのうち、最初のスピーカーはプレゼンサイトTEDでも有名な人のようです。2つめは出所がはっきりしないですがイギリス発のようで、ものの例えに出してくるお菓子の違いが面白いです。
(TEDサイト https://www.ted.com/speakers/tyler_dewitt)
この2つの動画では「モルとは原子のひとかたまり、その数を表すのがアボガドロ数。桁が大きいので10を23回かけたのは右上にまとめて書いてある」とあります。次回書こうと思っている周期表にも関係あるのですが、周期表にある数字は飾りではなくて、例えば「すいへーりーべ、ぼくの船」で6番元素である炭素には周期表で12と書いてあり、1モルが12gです。塩化水素(水に溶かすと塩酸になる=HCl)は1モルの質量がH=1.0、Cl=35.5なのでHCl=36.5gです。基本の基本はこんな感じです。なお、この1モルの質量(重さをきちんと表す言葉)は、教科書のもっと前で習う分子量と同じです。
また、「標準状態」と言われる状態があり、0℃、1気圧を指します。この状態で気体である物質は1モルの体積が皆22.4Lになります。この”L”はライフサイエンス分野では大文字になっていることが多いようですが、化学の教科書では小文字です。(2020/09/08訂正:現在では化学でも大文字です)。見やすくするために大文字にしました。
探したらこういう画像があったので、22.4Lがどれほどの大きさかお分かりでしょうか。
Description | Español: Un mol de cualquier gas en condiciones normales de presión y temperatura tiene un volumen de 22.4 L |
Date | 26 October 2015 |
Source | Own work |
Author | Viviana Rosalía Tello Mendoza |
(スペイン語タイトル訳:標準気圧と温度にある気体1モルは22.4L)
またモルに関連して、モル濃度(mol/l)という用語を翻訳者の方はよく見かけるかもしれません。モル数を水1Lとかで割ってあげればいいです。他に、化学反応式(たとえば2H2+02→2H2O)で表されるような化学反応はモルを理解しているととても分かりやすいです。
今書いたような話を英語で読んでみたい人、カリフォルニア大デイヴィス校が教育目的でこんなテキスト出しています。他の部分も基礎の確認に使えそうですね。
思い切り簡単なものがいいという方、にはこれ。ブルーバックスは他にもマンガを出しています。この「モル」の本は結構使えるのでは。計算がセリフで沢山出てきますが、手を動かして計算するのも大事です。他に違う漫画家さんで「化学史」の本もあります。
次回は「周期表、原子、分子とは?その1」です。
おまけです。
イタリアの動画で、タイトルは「うちでできるすごい実験8つ」。画面のセンスがいいので、ゆるーく見ていただければ。それはうちではなくてバカンス先では?ってのも混じってます。YouTuber 2人による作品らしいです。監修の方によるとうちでできない危険な実験が混じっているとのことで要注意だそうです。
監修:原典行(元東京工業大学大学院 物質科学専攻助教)