ヨシダヒロコです。
この講座はまた開講されると思いますが、7日で課題受付は終わり、登録しているわたしには現在動画だけ見えている状態です(28日まで)。最近、読みたいのに買えてないですが『死すべき定め』という翻訳書が売れたり、終活という言葉が流行ったり死生学という学問も人気なようです。
この講座は「東北大学で学ぶ高度教養シリーズ」の第一弾で、「宗教民俗学」という学問から特に日本人の生と死、宗教観、宗教儀式などを取り扱っています。「民俗」とつくのでふだんわたしらのやっているようなことが題材となっており、豊富な写真やフィールドワーク、先生の話術(こんなテーマなのにちょっと受けることを言う)で飽きませんでした。最後は1000~2000字のレポートがありました。その採点はまだ済んでいません。
下の写真はもとはflickrFrickrという写真サイトから、Creative Commonsのライセンスで講座内の最初と最後にアップで使われていたものから。悲しくも美しく、選択が見事です。


わたしの場合、
1.自分自身の死について考えることが多いような病気に罹っている
2.ペットを沢山飼ってきたので、沢山亡くしている
3.周りの人の死、面識がない場合でも考えてしまうことがある。さっき知ったのですが、重力波望遠鏡LIGOの創設者のひとりであるロナルド・ドレーバー氏が亡くなったと。ノーベル賞も取り沙汰されていたような方だそうですが、英語ニュースによると認知症だったと。状態は分からないが残酷なことだなと思いました。
まず、「Memento Mori」という言葉について先生の解説。字幕はダウンロードできるので、適宜句読点を入れました。確かにラテン語系の言葉は「死ぬ」という動詞がmorireだったりmorirだったりします。
「memento mori」というこの授業についてですけれども、この言葉はラテン語の ある意味では
「覚えていろ」という 命令と、「死ぬこと」という言葉が くっついて、「死を思い出せ」「死を想え」 ということになります
宗教民族俗学って知らなかったのですが、こんな説明です。
信仰の定義、 つまりこれは宗教を含むわけですけれども、信仰の定義について考えてみましょう。私はこれをカタカナのヒトと カタカナのカミとの交渉に関する観念と、それに基づく行為である というふうにまとめています。
ここではカタカナの「ヒト」は 人間を表します。またカタカナのカミは漢字で書く神、漢字で書く仏 、カタカナで書くホトケ、霊魂, 精霊, 先祖, お化けなど といった超自然的存在、すなわちスーパーナチュラルビーイング 全体を考えています。つまり ヒトとスーパーナチュラルビーイングとの交渉に関する観念とそれに基づく行為を信仰という ふうに理解しています。さて 私がやってる宗教民俗学の視座というのはそういった「信仰」を研究対象とします。その点でいいますと神学と 言われるようなところが宗教を対象としてると言っても いいかもしれません。そこでさらに宗教民俗学は 宗教の規律というかドグマというような形で教えがしっかりした体形を とってるような部分が変化・曲解・混淆して 受け入れられている、そういった現実の進行場面を対象としています。
民俗学とはよく知らなかったのですが、なんかおもちゃ箱ひっくりかえしたようにいろんな話がいろんな地域から出てきて、庶民のやることですから誤解して違うものを違った拝み方している場合などもある訳です。それをそのまま観察するところが大らかだと思いました。ある事象そのものも教義を無視しているところがあって、それものびのびと死者を祀っているなと。
印象的な話はなんといっても恐山。イタコの口寄せは異次元から怖いものが来るような印象がありましたが、やってくるのは懐かしい人の霊で、「また呼んでくれ」といって帰っていきます。お供え物にも圧倒されましたし、何やら恐山事態自体の構造がカオスなのが興味深かったです。東北らしいもので言うと、震災後の怪異譚。タクシーにお客さんを乗せて降ろしたら、というのはどこかで読みました。それも怖いというより悲しい。先生は突然の死のことを「サドンデス」と言っていました。生者の負い目も大きくなると。
また、在宅ホスピスというのがありますが、勤務医の先生が在宅での看取りをやる医師になったら、なぜかお迎え現象が増えたという話がありました。研究結果は見たことがある気がしていて、不思議だなあと思ってました。幻でも身内が来てくれたら死ぬのも怖くないでしょうし。
生者が死者を悼むのは生者の思いのため、という話を聞きましたが、経験上全く同じことを考えていました。日本人の宗教観について矛盾も突いており、エキサイティングな講義でした。ビデオが「オーロラ」より長めなので、心持ち早送りにしても時間はかかりましたが、こういう話は悲しいことも多く出てくるけれど心を豊かにもしてくれると思います。本来、文学部とはそういう所かと思います。
そんな講座を修了して(レポートの採点まだだけど、した…と思う)、ネット本屋(わたしはe-honからリアル本屋経由で買ってますが)を整理していると、上で書いたのと似た怪異譚が本になっていて評判もいいようなので紹介します。泣かせる話とか感動とかいうのが大の苦手ですが、これは紹介したいなと思いました。
Twitterで遺族の方らしい方が「『忘れない日』ではなく、忘れたくても忘れられない命日」と書いていました。今回の講座は葬式やお墓など回りのこと、何回忌という区切りも紹介していました。震災で亡くなった方には7回忌に当たります。
最後にこういう「臨床宗教師」という資格ができました。医者やカウンセラーでは限界がある場合、災害(熊本地震の実績あり)や医療現場のターミナルケアに出動するらしいです。最初に養成講座を作ったのがこの大学でした。宗教家を対象とします。
http://www.sal.tohoku.ac.jp/p-religion/neo/wiki.cgi?page=%CE%D7%BE%B2%BD%A1%B6%B5%BB%D5%B4%D8%CF%A2