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初めましての方もいらっしゃると思います。
ヨシダヒロコと申します。同姓同名が多いのでカタカナにしています。
「五感」と書いていますが、匂い(嗅覚)やさわり心地(触覚)は文章のみの表現になります。もし様々な障害などでコンテンツが感じ取ることができないけれど、もっと内容について知りたい方は、コメント等でお知らせください。なお、わたし自身は別のタイプの障害者です。
前回から時間が空きました。秋からBSで再放送している、杏主演の朝ドラ『ごちそうさん』を見ています。東から西に、またはその逆に移動してカルチャーショックにという話はよくありますが、このドラマはヒロインの東京の実家がやっている洋食屋がとってもおいしそうなのと(戦前なのに)、後に大阪に引っ越して以降も、知らない食べ物や文化がこれでもかと出てくるところがすごいです。商店街で相談して夕飯の献立決めたというの、うちの近所でもあったらしいです。
め以子は子供のときから食い意地の張った女の子でしたが、ある時料理に目覚めるときがきます。相手役の悠太郎(東出昌大)は長身で大阪人なので、め以子の女学校の友達に「通天閣」とあだ名をつけられてしまいますが、手違いで下宿生として住むことに。ある時め以子が科学の試験で追試を食らってしまい、ぜんぜん分からないので帝大建築科の悠太郎にお願いして教えてもらいます。それがとても面白い。
ごちそうさん10話「黄身と出会った」
www.nhk-ondemand.jp/goods/G2013051435SA000/
(NHKオンデマンドへのリンク)
ごちそうさん11話
http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2013051436SA000/
ごちそうさん12話(ここが話の肝!週末の完結話)
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2013051437SA000/
12話だけでもいいし、前2話くらい見たらもっと分かるかなと思います。前回予告で題名を「化学」と言っていたのですが、ドラマでは「科学」でした。ただどちらかというと料理は化学の要素が強いですので、タイトルはそのままにします。
お互いツンツンしていた2人が科学のあれが面白いといって盛り上がるのですが、それは悠太郎が「分からないところが分からないのでは」と図星を突いたことをいい(勉強が分からないときは往々にしてそうだと思います)、食べ物を例にして教え始めたからです。
例えば、ドラマ中でめ以子の父がスコッチエッグを半熟にしたいと苦労していましたが、ある工夫で解決します。そこには物理と化学の間くらいが絡んでいます。写真探したら、半熟スコッチエッグ(Soft-boiled scotch egg)はその工夫をせずともできるようですが、肉を多くしたかったらああなるのかな。

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他に出てきたのは、牛乳はコロイド(colloid)という粒子が浮かんでいて白く見えること。岩波理化学辞典によると、コロイドとは通常の原子よりも大きい粒子を形成している状態で、グレアムが見つけました。他にもタンパク質やデンプンなど多くの例があります。

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乳化(emulsification)も出てきました。油と水が混じることで、ドレッシングといえば分かるでしょうか(最近ノンオイルのものもありますけど)。マヨネーズもそうです。

Wikipedia: ITALIAN DRESSING! HANDS OFF
パスタ料理を作る人はご存知と思いますが、シンプルなものほど難しいです。赤唐辛子とにんにくとパスタのゆで汁の塩味でほぼ決まるぺペロンチーノ(アーリオオーリオ)はうっかりしょっぱくなったり唐辛子が辛くなったりします(当社比)。乳化は大事とあるとき知って試していて、今回タブレットを持ちつつ撮ってみました。オリーブオイルのフライパンにゆで汁を入れて揺すって混ぜます。水と油が混じるのがうまく見えるでしょうか。
おいしい作り方のコツを教えている動画(10分)も見つかりました。乳化は3分20秒過ぎと6分過ぎから最後近くまでです。
参考:【失敗しない】美味しいペペロンチーノを作るためのレシピ科学
http://r.gnavi.co.jp/g-interview/entry/1768
魚拓
他に出てきたよくある現象はタンパク質の凝固(coagulation)です。卵はタンパク質でできているので熱で固まります。ベーコンエッグやハムエッグなら両方凝固しますね。

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め以子は苦手だった通天閣に好感を持つようになり、それはお互いなのですが、科学も料理もつながっていて生活に根ざしており、どっちも面白いと気がついたのでした。そしておいしいご飯を作るのに情熱を燃やすようになるのです。
ちなみにこの「料理は科学」、49話~54話の「君をあいス」で作った新メニューでも生かされます。
料理と化学に関して参考本。以前「大さじ2杯は何グラム?」などと言っている建築系の人がいて、なるほどそういう発想もあるかと。その人が選んでいた本がこんな系統だったかと思います。
ホームライフ取材班 青春出版社 2015-01-31
http://www.seishun.co.jp/book/15812/
最後におまけ動画です。
次回第3回は「モルって何?」です。第1回にも書きましたがわたしも最初分かりませんでした。(2018/07/28 12:52追記:急遽これに差し替えました。
「五感で感じる化学(3)――【番外編1】アカハラとブラック研究室が消え去る日はいつ?」
「モルって何?」は第4回です)
監修:原典行(元東京工業大学大学院 物質科学専攻助教)