(真ん中あたりの音叉実験のところに大事な追記が、最後の方に2016年GW明けくらいまでの記念展告知を追記しました)
ヨシダヒロコです。
途中で「座られたらいかがですか」と促され、くだけた感じで座って話している中畑さん。
2回目はちょっと基本というか導入だったので退屈だったかもしれません(メモが間違っているかもしれないし)。わたしの隣のおばちゃんがいなくなってましたし。ここから本編です。素粒子のこと調べてたら、匂いなんてしないのに「フレーバー」とか言うそうです。本当に訳が分からないつぶつぶです。
それでカミオカンデの登場ですが、なぜ神岡にしたかということは前に第1回の打ち上げに(この時だけ)入れてもらって研究者の方に聞いたのを何となく覚えています。神岡鉱山の穴が都合よかったとか何とか。
中畑さんによると、地下に作るとニュートリノが少ない、つまり観測しやすいそうです。地上に比べて10万分の1になります。地下1000m、トンネルを1.7km行ったところにあって、カミオカンデの上がちょうど池の山(標高1368m)です。この山は富山・岐阜の県境だそうです。下の図はスーパーカミオカンデですが。
出典:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa200701/008.htm
カミオカンデ(1983-1996)
3000トンの水タンク、1000本の直径50cmの管、1981年に中畑さんと梶田さんが学生として入りました。実は小柴先生は偉すぎて「さん」とはとても呼べないそうです。普通まともな学生ならこういう研究は考えないけど、梶田さんも中畑さんも山師的だったとおっしゃっていました。小柴先生が「陽子の崩壊を見つけたらノーベル賞だ」と言うので入ってみたら、延々見つからないのでどうしようと思ったそうです。小柴先生はアイデアマンで、(故)戸塚先生は「どれが使えそう」とか見極めが上手だったそうです。
チェレンコフ光
調べると原子核反応でも出る光のようですが、これを使ってニュートリノを検出します。中畑さんのお話では、地下だとやってくるニュートリノが1日に10個とか聞いた気がするので、このビデオのように沢山来るのか?という気がしますが。前にも出したビデオです。英語で言っていることはチェックしてませんが施設も光もきれいだし……。内部を船で移動するのは本当にそうです。これはスーパーカミオカンデの方です。
実際の検出画面はその1で出したようにこんな感じ(スーパーカミオカンデ)。
水中では光は少し遅く進みますが、ニュートリノがたたき出した荷電粒子がそれよりも速く走るとチェレンコフ光が発生します。中畑さんはこのリンクにあるように、池を泳ぐアヒルに例えていました。
http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/sk/detector/cherenkov.html
カミオカンデが捉えた超新星爆発(1987.2.23)―13秒間に11個のニュートリノ。その瞬間、わたしたちの体を800兆個が通り抜けました。この発見で小柴先生はノーベル賞を受賞しました。
スーパーカミオカンデ
水は50000トンで、上の動画のようにボートに乗っているスライドが出ました。ミューニュートリノは素直に走るのでチェレンコフ光がくっきりだけど、電子ニュートリノは曲がったりγ線を出したりして輪郭がもやもやしているそうです。それで区別ができます。
パターンを見分けるプログラムを1986年頃に梶田さんが作り、88年に論文を書きました。28歳くらい、博士号取ったすぐの頃。ミュータイプの数が少ない、ということでもっととどめを刺すようなデータが欲しいと。それで(それもあって?)スーパーカミオカンデができたらしいです。
上から降ってくるニュートリノの数は変わっていなくて、地球の裏側から来るものはタウニュートリノになっていて、上下非対称(正確にはミューになったりタウになったりしている)。スーパーカミオカンデではデータがたくさん取れて、1998年に世界中に信じてもらうことができました。350人が集まったニュートリノ国際会議でずっと拍手が鳴っていました(よくTVで梶田さんが英語で発表して、結論を述べたら大拍手、というところを放送していましたが、あれです)。
上のスライドあまりうまく撮れなかったのですが、地球の裏側から来るものにニュートリノ振動が起こってものが変わってしまっているのです。これについてはあとでもう1枚スライドがあります。
ニュートリノ振動
ニュートンは「光は粒子」といい、ホイヘンスは「光は波」といい、結局どっちでもあることが分かりました。アインシュタインが「光量子仮説」を提唱します。素粒子もみな光であり粒子、で「量子力学」という学問が誕生します。
ニュートリノの波的な現象がニュートリノ振動で、ここで音叉の実験がありました。梶田さんもサイエンスZEROに出てやってましたが、楽器を弾く人なら分かるかもしれません。チューニングの時に音がうなること。音が合っていないと、周波数が違うから他の人の楽器やチューナーと違ってしまいうなりが出ます。
音叉実験。
(2016/04/29 14:06追記:音叉の実験は、中畑先生が4/24に東大の講演会でもう一度実演し、片方の音叉におもりを付けていました。質量が違うからうなり、振動が起きるのだという話です。大事なことが抜けていました)
ニュートリノ振動は、質量の違う状態の重ね合わせ。標準理論(沢山の物理学者が100年かけて考えてきた、とあるHPにありました)を越える理論です。スライドで表すとこんな感じに。
それで、ここにもある謎なのですが、過去カミオカンデからのゲストの皆さんが話題にしたこともはいっています。真ん中らへんにあります。
http://www.senshu.phys.tohoku.ac.jp/houmon/vol7.html
今回例に挙がったのは、1.なぜニュートリノはそんなに軽い? 2.宇宙の謎(ビッグバン、今回話にはなかったけどダークマター)、3. 反物質(日本人の発見)
で、お話が終わって質問タイムになりました。皆いろいろ質問攻めにしてましたけど、例えば実際のニュートリノってどのくらいの質量なんだろうとか、ビッグバンのこととか、割と年上の男性の方が複数熱心に質問していました。
おまけでオモチャ。休憩時間に遊んでくださいね、と置いてあったんですが、このボールは投げ上げると色が変わって帰ってきます。出来のよくないものもあるらしいのですが。
で、わたしは時間内には無理だったので、終了後にまた中畑さんのところに近寄っていって、お聞きしたいことを聞いてきました。次にブログに書こうと思っていますけど、このエントリの中で出てきた故・戸塚先生のドキュメンタリーが、ノーベル賞受賞すぐにNHK BSで再放送されました(2009年初回放送)。一言でいうと、ガンになった科学者が現場を離れ、ブログを書いたり自身を見つめて残された時間を過ごすというもので、とても色々考えてしまう内容でした。中畑さんにとっては近しい方だったので(昨日確認したところ、番組に出演されていました)ためらわれるところはあったんですが。あの番組を見ていて思ったのは、「宇宙の始まりは人間の始まりでもあるんだろうか」「始まりがあれば終わりもあって、この研究はそれとも関係があるのだろうか」ということでした。
中畑さんは「再放送されましたね」と話すとすぐに「はい」と言われ、1つ目の質問に関しては「人間を作っている物質ができた(元となるものができた?)という点では始まりと言えるかも」と。ダイレクトではないというニュアンスのようでした。2つめの質問に関しては、「今宇宙の終わりについて言われているのは、膨張していって残されたのはニュートリノと電子だけ。そこにニュートリノはあるけれど、話としては関係がない」ということでした。ニュートリノと電子しかない空間を想像すると寒々しているので、そう言いました。疑問が聞けてよかったです。それにしてもあの番組は、どこかにアーカイブでもないだろうかと思うほど胸に迫るドキュメンタリーでした。
ごはん食べて帰ろうとしたら、富山駅に市電が入ってゆくところでした(右手)。少し分かりにくいですが。
ノーベル賞に直接関わった方のお話が聞けてよかったです。これからもハイパーカミオカンデや、富山大と共同のKAGRAなどなどいろいろあるので楽しみですね。資料をpdfで添付します。梶田さんのサインや言葉があるので、見てみてください。あと、やさしいニュートリノの話とか。スキャンする上で切れてしまったところがあるのですが、印刷して合わせてみてください。
難しい話を偉そうに書いてますが、素粒子物理学なんてきっと今回の受賞があってからようよう少しずつ……という感じですので、変なところがあったらご指摘くださいませ。
(2016/01/31追記:最後にサイエンスカフェとやまの旗振り役でもある科学博物館学芸員さんから告知があったのですが、いま博物館でやっているノーベル賞受賞の記念展、3月31日までの予定でしたけど伸びそうですとのこと。コンパクトな博物館ですが、増倍管は間違いなくあるそうです。天文台のはそろそろ終わってしまいますが)
(2016/04/29 14:13追記:東京駅すぐそばのKITTEにあるインターメディアテクでも、5/8までメダルレプリカなど少し展示をしています)
梶田隆章さんノーベル物理学賞受賞記念 受賞研究紹介展その他
http://www.tsm.toyama.toyama.jp/?tid=100767 魚拓
次回のサイエンスカフェとやまは3月19日、昔は高岡短大と言っていた(就職率がすごくよかった)大学が富山大に統合され、その芸術文化学部の先生が『軒下プロジェクションマッピングの発案から公開までの記録』というお話をします。実はサイエンスカフェはネット中継されています。リンクにカフェのHP(ブログ)がありますので、問い合わせるとお知らせを送ってもらえるはずです。