翻訳ミステリー大賞シンジケート第6回金沢読書会『ステーション・イレブン』(2015/06/13、うつのみや本店)。

ヨシダヒロコです。

1週間前になりますが、はじめてのSF読書会、はじめての本屋さんでの開催でした。場所については、書店員さんのメンバーが協力して下さったそうです。うつのみや(金沢にあるのになぜか「うつのみや」)は、金沢に住んでいた大学時代からお世話になっていて、今でも月1で通院兼羽を伸ばしに富山から金沢に通っている身としては、欲しい本が良く見つかる貴重な本屋でもあります。「はじめての海外文学フェア」まだ開催中です。

翻訳家の満園真木さんをお迎えして始まりました。

今回の課題書『ステーション・イレブン』は、2月に出たばかりの文芸色の強いSFで、原書は2014年刊、『2001年宇宙の旅』のアーサー・C・クラーク賞の他、全米図書賞(フィクション部門)、ベン/フォークナー賞最終候補作にも選ばれました。著者のマンデルは「SF」というカテゴリ分けが最初気に入らなかったようで、NYタイムズの記者を巻き込み少々論争があったと満園さんが教えてくださいました。ジャンルについては、ミステリとSFが混ざったようなのが今はあると北田さんもおっしゃっていて、訳者さんも大変だなと。

さてこの小説はポスト・アポカリプスもの、パンデミックものということですが、前者は文明崩壊後、パンデミックは今まさに韓国で流行っているMERSのように、感染症で人が死ぬというもの。映画でなら観たことあります(『ホット・ゾーン』『コンテイジョン』など)。幹事の北田さんが長い参考書リストを作ってくださって(毎回ありがとうございます)、「パンデミック~アポカリプス」のトップにあげられているのはキングの『ザ・スタンド』(たしかドラマ化されるとか)、ディストピア(管理社会)もののトップはオーウェルの『一九八四年』でした。

冒頭はアーサーという老いた俳優が『リア王』を演じる舞台場面から始まります。皆言っていたけどこの章はぐいぐい引っ張ってくる感じ。アーサーが心臓発作で急に舞台の上で倒れ、客席にいた青年ジーヴァンが心臓マッサージをします。その甲斐はなかったのですが、その後「グルジア風邪」という伝播力の高いウイルスが流行っていることを医師の友人から知らされます。帯にもある通り人類の99%は死滅してしまうのですが、2章以降どうなるのか?

今までの課題本にはページ数が多いものも多かったのですが(引きこまれるとあっという間ですが)、これはごく普通のページ数で、するすると読める本でした。皆が言っていたのは、課題書とならなければ出会えなかったかもしれない、と。

ステーション・イレブン (小学館文庫)

エミリー・セントジョン マンデル

小学館

2015-02-06

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

小学館文庫はまだ歴史が浅くて、と翻訳家さんがおっしゃっていました。書店員さんは、なかなか本屋においてなくて、と。

わたしがあの場で言った感想はあるのですが、言わなかったことも書きます。一番心を惹かれたのが、文明が滅びたとき、残されたものが持つどこか甘いような郷愁です。P350より「自分は旧友を亡くしたが、テレビのニュースが正しいとすれば、おそらくいまこの空港にいる人々の誰もが大切な人を亡くしたはずだ。不意に、仲間の避難民たち、この空港にいる百人ほどの他人への、たまらない愛おしさが湧いてきた」、など。

今回の参加者はお初の方も、県外からの方も多かったのですが、自己紹介の後意見交換。かなり活発でした。メモを全部書いてたら長くなるのではしょりますが。

受けたのが「関係者生き残りすぎ!」。割とあった意見が、時間が行ったり来たりして、1章1章でオムニバス的という。パニックについても言っている方多かったですが、いかにもなパニックはなく静か、それどころか「文明博物館」なんてものを空港に作ってしまう。人間っていいな、と言っている方や、その博物館にあったスノードームこそ文明、という方も。空港に足止めされた人々が着るものがなくなって、お土産の「美しいミシガン北部」というTシャツを皆で着ていたのは可笑しかったとか。

『ステーション・イレブン』とは、アーサーの最初の妻だったミランダが書いていたマンガなのですが、いつでもどこでもそれを書いているミランダは可愛い、という意見も。

終末とは『猿の惑星』みたいなのであとでアバター出てくるようなのかと思ってたら全然違った、という意見はユニークでした。あと、文明崩壊してもしてなくても人間は変わらない、エセ宗教も恋愛も劇団も同じくある、便利か便利じゃないかが違うだけ、とおっしゃる方も。

皆さん「文芸っぽい」と言ってましたが、「文芸文芸してない」という意見も。

他に、伊藤計劃の小説を出していた方もいました。わたしが今日買った『ハーモニー』だったかな?

満園さんによると、3.11のことを思いだしたそうです(震災に遭った方は読まない方が、という意見も他の方からありました)。東京はあの時パニックで、それでもなるべく日常っぽく過ごそうという空気があったそうです。そこでどなたかが『災害ユートピア』の話を出しました。こんな本です。震災後話題になりました。

災害ユートピア――なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

レベッカ・ソルニット

亜紀書房

2010-12-17

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

他に、作中に出てくる『ステーション・イレブン』はグラフィック・ノベル(出版社が違うとアメコミという)的なチラシがもうできていて、確かマンガ化の話もあるとか。この本の映画化権はもう取得されているそう。映画になるかは分からないけど。

UK版のハードカバーは表紙が可愛らしいと持ってきてくださったので、写真を貼っておきます。

index

http://www.amazon.co.uk/Station-Eleven-Emily-John-Mandel/dp/1447268962

ひとり、エピソードがリアルでないというか、想像の範囲を出なかったという方がいらしたのですが、あとでこんな感想を書いてました(同日追記:すいません、Twitterの仕様変更らしく、前の発言が入ってしまいます)。

個人的には、「リアル」の基準はその人の体験によっても違う気がします。

ちなみに、下ネタ隊は出番なかったようです(いつの間にか一言求められるようになっている?)。

懇親会にはほとんど全員が参加しました。近所のイタメシ屋で、なぜか下ネタ隊が息を吹き返した?のでしょうか。どうしてああなったのかはよく分かりませんが、「パンツ」の訳が難しい問題(わたしがこないだ仕事で間違えたので)を出したのはわたしです。他にハーレクインなどの官能小説の表現や、BLはアメリカにあるのかとか、いつもと違うノリになってしまいましたが、それはそれで楽しかったです。遅くまで盛り上がっていたらしいですね。

2015-06-13 18.06.50

2015-06-13 18.15.51

2015-06-13 20.08.03他に、登場人物をあり得なさそうな男言葉・女言葉で訳す問題、ってのがあって、ロックミュージシャン、ノエル・ギャラガーのオレ様言葉で特にMステ出演時のものが話題になりました。帰ってからインタビューまで見ましたが、あれって「俺は○○だぜ」みたいな言葉なんでしょうか、本当に。

あとでこんな辞書を知ったんですけど、文芸方面の方出番あるでしょうか?

官能小説用語表現辞典 (ちくま文庫)

筑摩書房

2006-10

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

わたしは最近少しずつSF読もうとしているんですが、この手のジャンルは初めてで、新しい経験で良かったです。翻訳家の方が来てくださって、気さくにお話ししてもらったのも楽しかった。今回は新しい方が多かったし、また来てくださるといいなと思っています。

おまけ。話題の金沢駅近くにあるミステリー喫茶店「謎屋珈琲店」でこういうのやります。残り1人だったかな。普通にコーヒー飲みに行けるそうなので(謎解き必須かと思った……)、興味のある方は是非。

2015-06-13 17.36.26

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