『島田清次郎と若者たち―大正時代の中二病―』(講師:風野春樹氏 石川近代文学館 2015/02/28)講演要約。

ヨシダヒロコです。

この程度のブログが集客に影響するなんてうぬぼれてはいませんが、展示期間中に書きたかった(しつこい)。

28日は翌日に近所で試験を受ける予定で、繁華街かつ安くて必ず取れる(新幹線が通った今は知りません)ホテルを知っていたので、予約を入れていました。

この時期まだ雪が降ってもおかしくないのですが、いい天気の日でした。

お昼食べて文学館に向かい、何回も来てるのに四高のコーナーは手前にあることを初めて知りました。見てるとずいぶんバンカラだったようですねえ。

天気の良い空をバックにした文学館の辺り。横に公園があります。

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当日のチラシ。

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講演の前に、一度展示見たのですがもう一度少し見ておきたくて、そうしたら先生と学芸員さんが現れました。学芸員さんの解説付きで、先生の意見も聞きながら展示を案内していたようです。

そして、ギリギリまで展示見ていたせいで部屋は満員。椅子を出して、「メディアの皆さん、消防法に引っかかるので参加人数は書かないでください」的なお願いがされるほど。古い建物ですからね。一番後ろに座りました。

さて、先生登場。オーディエンスは年配の方も多かったです。急いで取ったメモを起こしているので、何か間違いがあったらご指摘願います。

のっけから先生は島清をジム・モリスン、カート・コバーン、尾崎豊などの破滅型のミュージシャンにたとえます。カート好きですし笑えましたけど。

先生が島清を知るきっかけになったのは、マンガ『栄光なき天才たち』と以前から読んでます。わたしは本好きの方から頂いたのですが、直木賞受賞の『天才と狂人の間』も読まれ、「この著者は島清があまり好きじゃないんじゃないか」とがっかりされたそうです。

ちなみに先生は島清がかなりお好きなよう、というか憎めないそうですが、「友達にはなりたくない」らしいです。

作品は『地上』第一部(青空文庫やKindleにもあります)以外は入手が困難で、お薦めは『早春』と詩。医師なので文学よりは性格とか病気のことを語ります、と。タイトルの「中二病」はネットスラングで、島清は天才とか狂人という肩書きではなく、1人の青年でした。

栄光なき天才たち 10 (ヤングジャンプコミックス)森田 信吾

集英社

1990-08

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

天才と狂人の間―島田清次郎の生涯 (河出文庫)杉森 久英

河出書房新社

1994-02

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

地上 第1部 地に潜むもの
http://www.aozora.gr.jp/cards/000595/card46166.html

島清の学生時代について。複雑な家庭の事情、商業学校の時に文学に入れ込んで留年、養ってもらったおじに学費を出さないと言われます。母(父は幼い頃に亡くなる)の再婚相手にも呆れられ、後に離婚。「働くと負けたような気がする」といい、今で言うニートでした。いろいろ職を転々としても1ヶ月も持たなかったり。母と極貧生活をし、暴言・暴力(共依存)。母との濃い関係は、後に女性関係などに影響します。

処女作『死を超ゆる』では、自分をモデルにした主人公が母を殺してしまうという衝撃的なストーリーになっています。

暁烏敏を除いて年長の人とすべてうまく行かなかったのは、父がおらずロールモデルとしてふさわしい人物がいなかったから。女性関係にもだらしなかった。

風野先生は『地上』第1部をヤングアダルト小説だと評しているのですが、それは若者が若者のために書いたからで、若い人たちに熱狂的に迎えられます。昔は本に著者の住所が載っていたので、人生相談を受けたり家に泊めてくれと言われたり若者のカリスマになります。そうして、「自分は特別な存在だ」と島清は思うようになります。

中原中也(金沢、それも割と近所に住んでいたことがある)もファンで、「天才にならなければならん」と友と話し、歌を詠んだそうです。

今評価されているのは第1部だけで、新潮社も「売れるから」と評価もせずに売っていたそうです。第1部の平一郎はスカッとする性格で(島清そのものであるように描かれている)、最後は「偉くなるんだ」と終わるのですが、第2部は平一郎が出てこず、3部では何もしていないのががっかり。

****
ここでライトノベルの解説ですが、面白かったです。
・若者向けアニメ的な小説
・ハーレム(ヒロインがいっぱい)
・俺TUEEE
(小説家になろう等の小説投稿サイトでは、いわゆる「異世界転生物」や「VRMMO物」で圧倒的に有利な主人公が特にピンチに陥る事もなく並み居る敵を蹴散らし続けるという作品が時たま見られる。こういった作品を揶揄して「俺TUEEE系小説」といったジャンル付けをされることがある。 出典:ピクシブ百科事典

・理由もなく最強で周りが賞賛する。「わたしの平一郎様」など。
・温泉回:意味も無く混浴

ダラダラしているところがラノベ的、願望充足的、通俗的ですが、ラノベと違っているのが主人公=作者。

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ファンレターには「こんな主人公がいるのなら、死んでも構いません」。それに島清は「そう思ってくれるのは嬉しい」と思わせぶりに返しています。スペックがインフレーションを起こし、演説ツアー、若者たち大熱狂と、ロックスターみたいになってきます。現実的には何もできてないのに。作者が成長していないことが不幸であり、文壇での評判は最悪でした。

ヒロイン、敵役などにはすべてモデルがいて、実在の人物を悪人として描いたり。恩人もメタメタに書き、本人はそれを「文学的制裁」と言っていました。こういうのが「中2病」で、自分を特別だと思って痛い行動を取ります。まるで中2のよう。自分も若い頃はそうだったなあ、青春とはそんなものです。島清の場合、自信のなさを隠すための自信過剰、20歳過ぎても中2病全開、故郷の親友橋場が一番分かってくれていました。

(島清はいろんな人を小説の中でひどい目に遭わせるのですが、風野先生はそういう例を出すたびに半ばため息をついて「大人げない」とおっしゃるのでした)

他にも島清に親切だったのは、暁烏敏、中山忠直、加納作次郎、徳田秋声がいました。例えばこんなエピソードがあります。

今は金沢学院大学が主宰している「島清恋愛文学賞」というのがあって、先生は「賞を持つのにふさわしくない」と。女性の扱いのひどさについては弁護しようがない、とも。

デビュー作では、初恋の人の名前と自分の名前をくっつけて主人公の名前とするような可愛らしいところがありました。ですが、女性の心のつかみ方が分からないのです。モテることに自信を持っていて、ラブレターは「一緒に世界を変えましょう」とか自分のことばかり。

内縁の妻となった小林豊。ファンの女性で、いきなりプロポーズに押しかけ、その場で関係を持ったという話も。DV、短刀を持って周囲を歩いていたそうで、暴力は日常茶飯事だったそうです。島清が世界一周に行くときには、不貞をしないように髪を切った(刈った?)ということで、しかし洋上で外交官夫人とのキス事件を起こしたことで豊は実家に帰ります(身ごもっていました)。

舟木芳江(海軍少将の娘)とのスキャンダルで島清は作家生命を絶たれますが、自宅を訪れた相手に強引に関係を持ってしまったのでは?今でいうデートレイプ。舟木家に告訴すると言われても、結婚できると信じているので動じませんでした。この時代、特に上流の女性は性的知識が乏しかったのです。

清次郎はこのスキャンダルで作家として終わってしまいましたが、(芳江の父が海軍だったので)右翼の脅迫があったのではないか?だからどこも本を出せなかったのではないでしょうか?家は関東大震災で壊れたが、野宿をしていたのは脅されていたからかも。

著書が出たときのトークイベントなどで他の精神科医の意見を聞いたら、
春日武彦医師:統合失調症らしくない
斎藤環医師:病気ではない

狂気は時期によって変わります。

風野先生:反応性精神病、強いストレスなど、一過性のもので発症、入院後悪化。妄想がでる

入院中妄想に支配されてばかりでもなく、300枚書いたりしています。入院中に発表した詩で自分を「赤い風船」にたとえ、何か悟っているような詩でした。主治医や訪れた人は「廃人」と言っていました。妄想と症状の診断は難しい。6年の間にも変化があって、年賀状は妄想だらけなのに2月には読める小説を書いていたりします。

「拘禁反応」の可能性もあり、囚人などにストレスで精神症状が発生するものです。爆発的には売れなくとも、金沢に帰るなどすれば再起はできたかもしれません。

誰よりも若者らしい人間で、愛すべきダメ人間でした。出版されていないものにも良い作品があり、知られたら再版されるかもしれません。
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以上です。
わたしは、島清の生地である美川町(白山市)にも金沢にも縁があり、今年の初めに『地上』で出てきたにし茶屋街に行ってきたので、それだけでも親近感が湧きます。加えて、ロックミュージシャン(好きなので)やヤングアダルト小説、「中2病」を持ってくることで、現代にも通用する人物像として普遍性が出たと思います。島清関係のエントリは他にもありますので、よろしかったら(これ以上書くのはさすがに疲れました(^_^;))。

先生のTwitterは日頃拝見しているので、一言ご挨拶して帰りました。
次の発言では、この講演会に関するツイート集をお送りします。

講演後に、香林坊大和方面。本当にいいお天気の日でした。

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(2015/04/28追記:大事なものを忘れていました。展示にも大きく関わったこの本。)

島田清次郎 誰にも愛されなかった男

風野 春樹
本の雑誌社
2013-08-22

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

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