「書くことについて」(スティーブン・キング、田村義進訳)簡単にレビュー。

ヨシダヒロコです。

今年は体が動かない時期が結構あって(仕事だけで手一杯)、あまり本が読めてないのですが、これはお薦めです。

原版は2000年に1回出ていて、一度訳されてます。その頃落ち込んでいたわたしに、同業者の知人が貸してくれたことがあったので。お気持ちは有難かったのですが、体の状態がひどくて読めませんでした。今年の初夏に、新訳が出ていることを知って買い、かなり時間がかかってしまいましたが読み終えました。文章を扱う人は読んでおいたらいいと思います。

これが旧訳。

小説作法

スティーヴン・キング

アーティストハウス

2001-10-26

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

この新訳の翻訳者さんは、越前先生のお師匠さんなので迷わず買いました。2010年に原版も新しいのが出てます。

書くことについて (小学館文庫)

スティーヴン キング

小学館

2013-07-05

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

原書です。2版目で” A Memoir of the Craft”と付いています。

On Writing: A Memoir of the Craft

Stephen King

Turtleback Books

2010-07-06

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

こっちが古い版。Kindleもあります。

On Writing

Stephen King

Scribner

2000-10-03

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

同じく旧版のKindle版。こういう本はペーパーバックの方が好みに合うなあ。まだ出てないのかな。

On Writing: A Memoir Of The Craft

Stephen King

Scribner

2000-10-03

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

さて、本の中身ですが、
1.履歴書(C.V.) 半生が語られます。やんちゃだった子供時代は爆笑ものですが、若くして結婚し、苦労しながら物書き修行&きついバイトのような仕事をし(2014/10/30追記:高校教師もしていました)、やがて深刻な問題にぶつかります。2回も映画化された「キャリー」他の着想部分が語られます。

2.道具箱(Tool Box) 翻訳者(とくに日英)が参考にするとしたらこの章でしょう。分野にもよるでしょうが、避けたい英文の例や、変わった英文が載っています。

3.書くことについて(On Writing)創作について。自分の経験を交えつつ、たとえばラヴクラフトを出してきて(読んでないけど)けちょんけちょんにけなしたりしています。キングでさえ何度も何度も不採用通知をもらい、その束を壁に突き刺していたようです。ある時、非常に重要なアドバイスが不採用通知に書いてありました。創作話を書けないわたしには、こういう風に作るのか、と興味深かったです。

4.生きることについて(On Living)これはぜひ黙って読んでみてください。

5.閉じたドア、開いたドア(Door Shut, Door Open)英日対訳で、原稿の推敲を見せています。語順が違うから翻訳も大変だったと思います。これから何か書こうという人には大盤振る舞い的なサービスですね。

さて、わたしは20代の一時期、キングの作品を翻訳でたくさん読みました。気分的にかなりやさぐれており、それは訳もなく人が死んでいくような描写を見てすっきりするくらい根が深いものでした。まあ、誰だって「死んだらいいのに」って人くらいいることもあるでしょう。キングは、一時期宮部みゆき(すごく影響を受けていて、「クロスファイア」など設定が似た作品もある)のように超能力者を登場させる作品をたくさん書いていて、彼らは誰にも理解されることがないと言ってよかったのです。その孤独を書くのには都合のいい設定だったと思いますが、そこまでは当時考えず、ページターナーと言われる作品群にはまっていました。「IT」(全4巻)のラストががっかりだったあたりでいったん離れました。

最近キングはミステリーに進出しているらしくて、読みたいのですが来年になりそうです。本来はホラー作家でグロい表現は避けられませんが、わたしの知る限り爽快な作品が2作あり、映画化もされています。「スタンド・バイ・ミー」と「塀の中のリタ・ヘイワース」です。後者は「ショーシャンクの空に」の原作です。両方あまり長くないので、興味を持たれた方は是非。

わたしも何か読んでみたくなりました。副詞を訳すときは注意したいと思います。

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1 thought on “「書くことについて」(スティーブン・キング、田村義進訳)簡単にレビュー。

  1. Pingback: 『できる研究者の論文生産術』を読了。 – To Purple Dawn

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