ヨシダヒロコです。
ミステリーは以前(10年ほど前)は読んではいたのですが、体系だっておらず、今はもっと読む冊数が減ってしまったので、こういうところに参加して皆さんの視点を参考にしています。
今回ひどい風邪を引いていて、ぎりぎりまで参加が危ぶまれ、幹事の北田さんにはご迷惑をおかけしました。読書会は何とかなりそうだったのですが懇親会は風邪がひどくなりそうなので泣く泣くキャンセルとしました。市川さんが素晴らしいレポである「第3回金沢読書会レポート(執筆者・市川史朗) 」で書いていらっしゃるように、金沢(うち1人はわたし・富山から)勢と主に首都圏から来られた方々で10名ほどの和やかな会になりました。
最初こそ誰も何も言わず、緊張が走りましたが、ミステリーの話になると皆さん俄然口が滑らかになるなる。
今回の課題書はこれです。近頃話題の北欧ミステリー、わたしは初体験だったのですが、この本凄いページターナーですよ。お薦めです。シリーズ第5作と言うことで、4作がかろうじて古本で手に入るかな?以外は絶版(版元倒産)で読むのが難しいらしいです。(追記:これを書いた後で、翻訳ミステリー大賞読者賞受賞 を知りました。おめでとうございます!)
アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム著、「三秒間の死角」上下巻、訳者はヘレンハルメ美穂さんです。この著者コンビの特異な点は、前者が元ジャーナリスト、後者が元受刑者なんだそうです。読むときの注意点としては、面白みが減るので本の裏のあらすじ紹介を読まないこと。わたしは気がつきませんでしたが、気がついた方がいました。
スウェーデン・ストックホルムを舞台とした警察小説です。スウェーデン警察では犯罪者を改心させて内通者として使うことをしているそうで、具体的には書きませんが犯罪の中身に、今までストックホルムに感じていなかった暗部を見た思いがしました。小さいときにNHK「ニルスのふしぎな旅」で見て以来、何かクリーンでのどかなイメージを持っていたのですよ。一応、近郊に知り合いがいます。いつか訪ねていきたく思っています。
シリーズを通しての主人公は市警警部(万年)エーヴェルトですが、先ほど書いた潜入操作員であるピートが前半ほとんど主役を食っています。エーヴェルトは捜査のこととなると夜中も構わず部下に電話をします。人と話したいときもそう。まあわたしはだから「上司にしたくない」と言ったのですが。
ピートはものすごく家族思いで、特に妻に対しての愛情が深く、悪く言えばベタベタ、って感じでしたが、読んでいて素直に感じ入りました。対して、「結婚して時間が経ってそういうのってあり?」という意見もあり、よくよく考えてみれば、昔長くつきあった彼がいたのですがそんな風にはなってなかったですね。
今回の読書会で目立ったのは本格派の頑張りと金沢下ネタ軍団の独走ぶりでしょうか。本格派の人々は、この小説を素直に読むことをせず、「何か伏線があるに違いない違いない」と言う目で読んでおり、出てくる3都市の時差まで考慮したタイムテーブルを作ってまでからくりを暴こうとした人までいました。本格派の人にはどんでん返しのあとの推移が「思った通り」っていう印象もあったようですね。
後半は楽しく読めた人が多かったようです。わたしも調子悪いなか「読めるかな」と心配だったのですが、別の方も同じ心配をしていて、でも本を見たら活字の大きさに「ああ、楽勝だ(笑)」と思ったそうです。前作の「死刑囚」まで1冊だったのですが、この本から上下巻になったのです。800ページありましたが、わたしの場合下巻は数時間でしたね。みなさんそうだったのでは。
金沢下ネタ軍団の某氏は、いきなり「ヘレンハルメって関西方面の芸名?」と言いだし、受けを取りました。どうやら西川ヘレンからの類推らしいんですが、本当はフィンランドのお名前で、ヘレンハルメさんにTwitterでお聞きしたところ、「関西方面とは新しい」と。日本に住んでらしたときは「日本語がお上手ですね」と良くいわれたそうです。
更にその方のわんこは構って欲しくて読んでいる本をかじるそうですが、どうやらわたしが欠席していた第2回か、金沢ミステリー読書会のどっちかで恒例になっているらしく、今回は19ページまで読んだところでそこまでかじられてOKだったらしい。本が素晴らしいことになっていました。ペットのイタズラにはわたしも手を焼きますが、本をかじるとは恐ろしい子。
ついでに、市川さんのレポとも絡むんですが、ある犯罪行為をするのに詩集とチューリップが使われます。図書館に勤務の某さんはとても悲しそうでした。なんだか、別の本にも本を粗末にする話があったそうなのです。
この2つは表紙にありますね。上巻と下巻に分けて。
他の雑談としては、北陸人の県民性(行き来はありますがお互い仲悪いです)。例えば金沢の人は富山の言葉を「ケンカを売っている」と思い、逆から見ると「底意地が悪い」とか「お高くとまっている」とか。更に、石川県の中でも金沢辺りと能登でまた仲が悪いそう。他に、よくミステリドラマのロケ地に使われるこの辺の場所、作中後半の鑑識的な観点からの議論などがありました。医療職というだけで専門違いだというのに鑑識の質問攻めに遭っていた可哀想な方がいらっしゃいました(実はわたし、病気してなければ化学専攻なので鑑識も良かったかなーと思ってました。地方上級までは受けましたよ)。
最後にヘレンハルメさんからのメッセージが配られ、是非参加してみたかったこと、スウェーデンでは首相が薦められてこのシリーズを読んだことなどが書いてありました。メッセージは近々「翻訳ミステリー大賞シンジケート」のブログで公開されるので、そしたらリンク貼りますね。
(2014/04/25追記:「三秒間の死角」著者、訳者受賞コメントと、金沢読書会にヘレンハルメさんが送られたメッセージのリンクをここに張っておきます)
http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20140422/1398120497
(2020/03/10追記:サイトが移転したので新しいリンクを張ります)
http://honyakumystery.jp/1398120497
この日兼六園は桜の咲き始めだったのかな?で人が一杯だったそうで、参加者がひとり人混みにつかまって遅れました。桜は今年は長く持ち、昨日くらいが終わりだったそうです(これを書いている今、金沢にまた行ってきたところなので)。
わたしは会場近くの玉川公園の桜をちらっと見て、皆さんは懇親会へ。鶏に舌鼓を打ったそうです。
ところで、金沢は文豪が多く輩出されているところなので、文学館などが多いです。本好きの方には楽しいところだと思います。わたしが行ったところとしては、
石川近代文学館 (気に入って何度も)
こんなところです。
現在は石川四高記念文化交流館の一部です。四高とはご存知の方もいらっしゃるかもですが、現在の金沢大学で、昔はかなり有名人が出ているのですが、帝大になりそびれたらしいです。ちなみに犀星は校歌を書いていますが、自らは四高は出ていません。
神明宮 …………………… 金沢市野町2-1-8
神明宮(しんめいぐう)は、芝神明(東京都)、東岩倉神明(京都)などと並んで、日本七神明の一つ。春と秋に行われる「あぶりもち神事」で知られる。中原中也の詩「サーカス」は、幼年期にこの神社の境内で見たサーカスを書いたもの。また、室生犀星の生家に近く詩人に縁のある神社である。主祭神天照皇大神、豊受姫大神
(こちらのページ より引用)
神明宮には、まだ変わっていなければ人型のおみくじが3種あります。健康運、金運、恋愛運だったはず。ここに中也がきたのかと思うと感慨深かったですね。中心街から歩いても行けます。
秋に来ると、鏡花、犀星など原作の古い映画を上映しています。10月だったと思います。ミニシアターのシネモンド にて。
というわけで、他県から「来てみようかな」と考えていらっしゃる方々に向けて宣伝も打ってみました。ついでに温泉にも入りたいという方には、市街地から行ける湯涌温泉がお薦めと、昔旅行会社勤務だった身内が申しておりました。
たまにこういうレポにもアクセスがあるので、ミステリー好きな方、次回は夏だそうなので、是非いらして下さいね!わたしのような素直な読み方しかできない人間でも、数を読んでいなくても何とかなります!