ヨシダヒロコです。
Facebookで情報を知って、金沢イオンシネマで2月8日~21日(明日ですね)まで凱旋公演をしていることを知りました。ひねくれ者なので、ベストセラーにはすぐそっぽを向いてしまう悪いクセがあるのですが、この話は辞書の編纂という地味な話ながら(何であんなに原作本が売れたんだろう?)とても人を惹きつける要素が詰まっていて、しかも辞書にお世話になる翻訳者にはたまらない映画でした。イオンシネマは最寄り駅から15分ほど、ちょっとした吹雪の中を歩きました。
DVDはもう販売中です。
公式サイト。
公式サイトにもありますが、予告編を貼っておきます。
辞書「大渡海」編纂中の辞書編集部に欠員ができ、営業でうだつの上がらない真締(まじめ、松田龍平)が配属されます。素質を見込まれてのことなんですが、真締くん変わってるんですよね(わたしは面白い人だと思うけど)。おばあちゃんが住む家の2階で下宿し、大量の本に囲まれて猫と暮らしている。どうも人が苦手なようで、同僚となった西岡(オダギリジョー)とは性格が反対なせいかなかなか打ち解けなかったりします。その真締が、下宿のおばあちゃんの孫である香具矢(かぐや:宮崎あおい)が同居するようになって一変します。誰にでも恋していることがバレバレになってしまうのです。この辺の演技、分かりやすくて微笑ましいなあと笑いながら見ていました。
香具矢の登場シーンは満月の夜でした。縁側(?)に突然舞い降りたかのようで、恐らく真締の一目惚れでしょう。香具矢は女性ながら板前さんです。わたしは大学院浪人をしていた辺りに、女性板前さんのうちに下宿していたことがありますが、本当に香具矢のように美味しいものをぱぱっと作っちゃうんですよね。今でも忘れられない味がいくつかあります。さて香具矢との恋はどうなるのか、というのがサイドストーリー。
そうするうちに、やっと編集室に慣れ、仲良くなってきた西岡から衝撃的な知らせがもたらされます。「大渡海」を中止する、という噂があると。この辞書はどうなってしまうのか、果たして完成するのか?というのがメインのストーリーです。
ところで、用例を集めることを「用例採集」と言うんですね。この映画では真締が「恋」の項を書きます。下の動画の真ん中らへんにあります。
辞書の詳しい作り方
ところで、「恋愛」の定義が面白いのは新明解国語辞典という定評(?)があります。最近第7版が出て、紙の辞書は不便であまり持っていないのですが、これを見ていると電子版があれば待ちたいなと思いました。あるブログから抜き出してきたのですが、変遷が分かります。個人的には、「まれにかなえられて歓喜する」がなくなったのが惜しい。でもずっとこの辞書の中では、だれかがTwitterで言っていたように苦しい恋をしていますね。
れんあい【恋愛】(第7版)
特定の異性に対して他の全てを犠牲にしても悔い無いと思い込むような愛情をいだき、常に相手のことを思っては、二人だけでいたい、二人だけの世界を分かち合いたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念が生じれば不安になるといった状態に身を置くこと。
れんあい【恋愛】(第5版)
特定の異性に特別の愛情をいだき、高揚した気分で、二人だけで一緒にいたい、精神的な一体感を分かち合いたい、出来るなら肉体的な一体感も得たいと願いながら、常にはかなえられないで、やるせない思いに駆られたり、まれにかなえられて歓喜したりする状態に身を置くこと。
れんあい【恋愛】(第4版)
特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持ちを持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる(まれにかなえられて歓喜する)状態。
映画の最後である人が舞台から去るのですが、その際に真締は香具矢にある一言を言います。香具矢は「みっちゃん面白いー」とまた笑います。その時の真締と香具矢の関係性から(筋に関わることなので書きませんが)、その登場人物がいなくなったことで、自分らも将来どうなるか分からない、と思ったのかもな、と感じました。だからあの台詞だったのかもな、決意を新たにしたのかもな、と。
「大渡海」は実際あったら見てみたい気もしますが、現代語を沢山入れた辞書というのは出来上がった頃には時代遅れになっていそうで、その辺が悩ましいですね。
三省堂が全面協力しています。
ちなみに、この日は金曜だったので、金沢の元バイト先(21世紀美術館そば)は大忙しで。バタバタしながら夕方にパエリャ2人前を1人で平らげてきました。今度は、マスターたちとゆっくり話をするため、金曜日と定休日を除いたウィークデーに行きます。