今更ながら、この間観た「風立ちぬ」のレビュー。

ヨシダヒロコです。

この映画はずっと見たく思っていたのですが、死ぬかもしれない病気持ちには体調を選ぶので、この間まで回復を待っていました。
観たのは約1週間前です。結果、まあ思った通りですが、普段映画を見て大泣きなどしないわたしが大変なことになり、初めて「いっぱい泣いてなんかすっきりしてしまった」という感覚を味わいました(^_^;)。

堀辰雄の「美しい村・風立ちぬ」(新潮文庫)は、わりかし文学も読んでいた高校生の時に1回読んで、もちろん意味は全然取れませんでした。ですがこういう多感な時期にとっかかりだけでも作っておくと、大人になって読み返した時に理解が深まります(「人間失格」なんかもそうでした)。戦前にはほとんどなかった、婚約者同士のサナトリウムでの2人暮らしという、自伝的な内容を決して悲しいだけではなく描いています。例えば、夜中にものすごい騒音がして、何事かと思ったらどんぐりが大量に落ちてきていたとか。

当時結核は命取りの病気だったらしいですが(堀自身も肺を病んで治ったようです)、2人は死を見つめているのに何かそこには清らかで透明な雰囲気があり、節子(映画の中では菜穂子、本当は綾子さんといったらしい)が亡くなってもその印象は変わりません。どこか淡々としています。宮崎監督がこの本を読みこんだことが、特に映画のラストのほうになって、そして堀へのクレジットが出たときによくわかりました。わたしは年表がついている新潮文庫を読みましたが、青空文庫にもあります。

わたしが「この映画を見たら悲しいだろうな」と思ったのは上記の理由が半分で、もうひとつは工学を学んだからです。映画は零戦の設計者である堀越二郎の話も半分入っていて、二郎が病弱な女性と出会って恋をし、妻にするという形で上の小説の設定を生かしています。

以前BSプレミアムで夏に放送されたドキュメンタリー「零戦~搭乗員たちが見つめた太平洋戦争」(おそらく、NHKオンデマンドで見られるはず)の再放送を見て内容の重さに呆然となったのですが、その中に堀越もいました。どちらかというと元特攻隊員のインタビューを中心とした番組でしたが、もちろん零戦の設計などに関することも出てくるのです。留学までして設計を極め、最高の飛行機を作ったのに、それが人殺しの道具として使われる。戦況が悪くなってくると、せっかくの設計を変更せざるを得なくなる。それは零戦の良さを殺す方向に、装甲をつけて軽い飛行機を重くすることでした。そういうものを事前に見ていたので、これはエンジニアとしてはつらかっただろうなと思ったのです。映画中では、最後に二郎に一言で語らせています。飛行機とは、美しく恐ろしいものとつくづく感じました。

わたしが映画を見に行った翌日くらいに、「プロフェッショナル」で宮崎監督が出演したと聞きました。引退宣言を知った後だったからか、映画では例えば関東大震災の描写などにすごい気迫が感じられました。あと、番組中にもあったそうですが、サナトリウムを出てきた菜穂子が駅を降り、ホームで二郎を探すがお互いなかなか見つからない、やっと見つかった2人が抱き合うというシーンがありました。人の体の柔らかさが伝わるような見事な描写でした。製作途中の飛行機や飛行機の内部など、どうやって調べたんだろう。クレジットを見ると、今回のアニメーターは「千と千尋」とは違って日本人ばかりですね。精鋭を集めたのかなという気もしました。

長々書いてきましたが、今日これを書いているのは、もちろん高畑監督の「かぐや姫の物語」初日だからです。朝、宿泊先のホテルを出る前に、解禁になったビデオクリップを見ましたが、映画館での予告と、映画館でもらった非売品のDVDでもう見ていました。「竹取物語」も大切な人と最後には別れなくてはならない話ですが、どういう解釈なのか楽しみです。予告を見る限り、かなりおきゃんでおてんばなかぐや姫のようで、すでにイメージを覆されています。

というわけで、中学校の時の「ナウシカ」に始まったジブリの歴史の半分が終わりました。世界には宮崎監督や高畑監督に影響を受けた若い監督がたくさんいます。ときどきみなさんが検索してくるスペイン語映画「しわ」のように(お勧めです)。これからは先代の監督たちの精神を受け継いだ世界各国の監督にも活躍してほしいです。

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