ヨシダヒロコです。
昨日言い足りないことがあったので、もう少し書きます。今日は政治色は薄めです。きっかけはこのツイートです。
「戦争は悲惨でした」「戦争しちゃいけません」という授業は小中学校で沢山あったような記憶があるが、「なぜ社会はかくも愚かな選択をするのか」というのは、もっと義務教育で教えられていいと思うのだがさてどうだろうか。
— 根津修二 (@snezu) August 15, 2013
1)集団心理は怖い
2)流されやすい日本人の特性
3)歴史教育の大切さ
4)人はわかり合えるのか?
5)おまけ
まず、1)ですが、ミクロなものならわたしも中学生くらいの時に経験しています。入りたての時に取ったテストの点数が良すぎたのです。先生が褒める意味でだと思いますけど、それをバラしてしまった。わたしは入学早々、多感な時期に学年中から指さされることになりました。自慢するつもりも目立つつもりもなかったのに。日本では異質なものを叩く傾向がありますね。3年生の時の担任は「勉強教えてやれ」というので教えたりしました。そのころは内気だったわたしですが、アドバイスしたり励ました子が高校合格したときは嬉しかったです。ただ、その他にも色々あって、15にして単独行動が好きな子供になってしまいました。高校に入ってからは優秀な生徒が沢山いたので、ほどほどの成績に落ちてむしろ気が楽でした。
異質なものを叩くというといじめなんかもそうですが、今のいじめはゲーム感覚で次誰に回ってくるか分からないらしいですね。いじめた結果ターゲットが自殺してしまっても、残念ながら1人1人の荷担は小さいので、罪の意識も少ないのではないでしょうか。
そういう集団心理の怖さは戦争にも通じるものがあると思います。ぱっと思い浮かぶのは過去の日本も含むファシズムですが、9.11以降のアメリカも傍で見ていて相当怖かったです(もちろん、9.11の被害者には同情していて、わずかな募金を消防隊員のために送ったりもしました)。ああいうときには「お上」に個人ではどうしようもできない力が働いていて、そして大衆の感情のうねりのようなものがあって、ちっぽけな人ひとりが「それは違うよ」といってもどうこうするのは難しいと感じました。ただ、9.11に関しては、報復戦争を戒める映画や音楽が出て高い評価を受けてはいますね(マイケル・ムーア作品やパンクロックミュージシャンのグリーン・デイなど)。
2)以前「就活うつ」のエントリで引用した、加賀乙彦氏の「悪魔のささやき」。人には「魔が差す」ということがあり、悪魔はいるんだというような内容で、精神科医らしい洞察力に富んだ好著でしたが、戦争に関するところを孫引きします。
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悪魔のささやき (集英社新書)
加賀 乙彦 集英社 2006-08-12 |
終戦2週間後の話。
マッカーサーが厚木基地に到着した8月30日には、アメリカに反旗をひるがえすものなど誰一人いない。親も周囲の大人たちも新聞も知識人といわれる人たちも、「これからの日本は民主主義の国だ。自由だ人権だ」などと話している。その変わり身の早さ!
「就活でうつにならないための本」(詳しい内容をレビューした過去ログあり)にも、日本では大事なことが大した議論もなく決まってしまうことがあるとあります。わたしはそれを、たしかイギリス人だったかの英語教師から指摘されたことがあります。
3)歴史教育の大切さは言うまでもありませんが、わたしは10年近く前までいろんなお宅を回って中高生の家庭教師をしてきました。中学生には歴史も教えました。高校生では、世界史は履修したけど苦手な部類だったので、主にテスト前に分からないところを一緒に考える程度でしたが、生徒は困っているので、倫理や日本史にも手を出しました。わたしには在日韓国・朝鮮人のネット友達がいますが、お子さんが日本の学校に通っていて歴史を習っていない、と言います。だからこんなことが起きる訳で。
散髪中に若い美容師さんに、「夏になると戦争の番組をよくやってますけど、日本と韓国って、どっちが勝ったんですか」と訊かれて、びっくりして眠気が吹き飛んだ。
— Haruki Kazano (@hkazano) August 15, 2013
おそるおそる話していくうちに、その美容師さんは、満州と韓国の区別がついておらず、韓国ももともと中国だと思っていたことがわかった。 — Haruki Kazano (@hkazano) August 15, 2013
で、そういう知識の美容師さんが「韓国人が日本に抗議したり賠償を求めたりしてくるのはおかしい」と主張するわけですよ。散髪中にそんな話したくないので適当に答えたけど。 — Haruki Kazano (@hkazano) August 15, 2013
これは何か言う気なくしますね。 まあこの美容師さんを少し弁護しておくと、ある中学校であった話では、わたしが生徒さんを教えていた当時、第1次か第2次世界大戦前後で学年末になりました。もうその辺りから授業している余裕がないのです。わたし自身、高校の世界史で最後100ページを「後は自分でやって下さいね」と言われてあ然としました。歴史が得意な生徒さんならともかく、学校にはあまり期待できないかもしれないな、というのがわたしの感想です。言っちゃあなんですが、少なくとも家庭教師業界はブラックですしね。
将来海外旅行なんかするときがあったとして、その国の歴史を知っているのと知らないのとは全然違うのにと思う訳ですが。もちろん、戦争への個人的な抑止力ともなるでしょう。原爆資料館のようなところも、子供がある程度大きくなっていれば理解できると思います。修学旅行で行かなくなってきたのは残念なことです。ある程度の知性があれば、人は歴史から学ぶ訳ですが、それでも上で書いたようなわけで止められないこともあるかもしれません。
4)「人は話せばわかり合える」という言葉を目にしました。わたしからすると「どうかな……?」というのが正直な感想です。昔、主治医に、人とは「直接会う>電話>メール」の順で試すのが良い、と聞いてできるだけそうするようにしています。基本的に、顔をつきあわせて話したことのある人にひどいことはできにくい。ただ、顔を見たことがない場合はそうでもなくて、東日本大震災のあとのTwitterを中心としたカオス(避難に関するヒステリックな言説や、トンデモな療法や)には、今だからいいますがかなり辟易しました。「御用学者」と言われて疲弊した学者さんも知っているし。詳しく書いて絡まれると嫌なのでさらっと流しますが、ある病気周りで今もめ事が起きてますしね。顔を見ながら話をすれば、たしかに誤解も少なくわかり合えるかもしれません。でも、現代のサイバースペースの中ではもうそういうことはなり立たなくなっていると思います。これからその中を生きていかねばならない子供たちには酷ですが。
5)おまけ。韓国の議員が靖国に来るという話がありました。一体何をしに来るんだろう?といぶかしく思っていたら、こんな顛末でした。
「韓国の議員たちが靖国神社に来て抗議したというから日の丸を焼いたのかと思ったら、こういう布を掲げていたらしい。この文言を読む限り理性的な訴えである。理性的な声に対してはこちらも理性的な対応をしなければいけない」 東アジア倶楽部FBより pic.twitter.com/SPMwcpagYg
— 山下 歩(TL追いきれない) (@neko_yamashita) August 15, 2013
この文章は「どうしたら戦争をなくせるか」の答えには到達していないと思います。でもまあ、何か試してみることは大事ですよね。