「就活でうつにならないための本」レビュー(2)。

最初、この本のレビューは2回で終わらせるつもりでしたが、3章に出てくる「複雑性PTSD」にページが割いてあるため、やっぱり2章ずつ3回にします。この概念、わたしの記憶が間違ってなければ結構議論があるらしいですが、DSM-Vに載るはずとWikipediaにはあります。

2013-03-27 21.51.15

第3章「情報は、常に時代遅れ」では、まず、1979年に出版された「ジャパン・アズ・ナンバーワン」(注:ハーバード大のヴォーゲル博士著)が登場します。日本人が残業ばかりして働いていた、日本の高度成長期のころの話です。それに対し、1990年ころになると「日本人は余暇を楽しむべきだ」「時短」などと言われるようになりました。それは何となくの流れだったと著者は振り返っています。その後バブルがはじけ、時短は昔の話になりました。生き残りのために夜中まで働くのが当たり前になったのです。

たいした議論もなく突然価値観ががらっと変わることが日本ではよくあると著者は言います。

  • 良い点

明治維新前後、鎖国から開国への大きな変動の中でも比較的早くその変化を受け入れられた。

  • 悪い点

しっかりと議論がされず、何が良くて何が悪かったのかはっきりしないので、過去の失敗が生かされない。典型的なのが戦後の日本の価値観の大変換。

悪魔のささやき (集英社新書)加賀 乙彦

集英社

2006-08-12

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

この本が引用されています。加賀氏は死刑囚のカウンセリングなどされている精神科医で、以前から興味があって、この本も面白かったです。

敗戦の2週間後の話。

マッカーサーが厚木基地に到着した8月30日には、アメリカに反旗をひるがえすものなど誰一人いない。親も周囲の大人たちも新聞も知識人といわれる人たちも、「これからの日本は民主主義の国だ。自由だ人権だ」などと話している。その変わり身の早さ!

日本人の特性には、良い点もあっても、葛藤や議論というプロセスを経ていないので、変化に伴う成長がありません。あっという間に獲得した、確固たる確信のない価値観ですから、それが再び一八〇度変わってもおかしくないそうです。そんなわけで、企業の採用の基準も、去年まで持てはやされていた価値観が、今年は逆転することが多々あります。

★ダブルバインドばかりの情報

1.体育会系サークル出身者は有利、不利?
そもそも、「体育系だから」というくくりで人を判断しようとするところが間違い。

2.留学は有利、不利?
留学経験だけでは有利にならないという意見ももあり。『就活のバカヤロー』p69によると、「会社が求めているのは、語学ができる人ではなく、仕事ができる人」なのだとか。

それに、欧米に留学すると空気を読むより自己主張が強くなってしまいがちです。このため留学経験者に対しネガティブな評価をする企業もありますが、これからの世の中、欧米の価値観を排除ではなく包含するくらいの度量を持つ企業ならば、むしろ有利になるそうです。

3.自分らしさは有利、不利?

『社畜のススメ』の著者である藤本篤志氏によれば、サラリーマンの4大タブーは、「個性を大切にしろ」「自分らしく生きろ」「自分で考えろ」「会社の歯車になるな」だそうで(p33)、これを実行してうまくいくのは天才型サラリーマンのみだそうです。

だとしたら、「自己分析」はどうなっちゃうんでしょう。また、今の就活生は「個性的になれ」と教育されてきた世代であり、今頃歯車になれと言われても……。全くダブルバインド(二重拘束)です。情報を集めるほど混乱します。

さらに就活本の言いたい放題が拍車をかけます。

面接でめずらしさを出したいのであれば、「趣味は女装、日常会話はビスラマ語、修行僧経験あり」くらいはいいましょう。…『就活のバカヤロー』

★複雑性PTSD

内定が取れないという状態が5社、10社と続いていったとしましょう。1回や2回ならいざしらず、大変なストレスです。ひとつひとつの経験は、乗り越えられないというレベルではなくても(マイクロトラウマ)、それが度重なると、深刻なダメージを受けることがあります。マイクロトラウマが蓄積すると、複雑性PTSDと言われる状態に陥ることがあります。

PTSDが死ぬか重症を負うような出来事を体験した場合に生じるのに対し、複雑性PTSDは長期間にわたって反復的なストレスを受けたときに起こりうる症状です。いじめ、虐待、DV、パワハラ、モラハラ等によって怒り起こります。就活によるストレスもこの範疇に入るそうです。

症状はPTSDに比べはるかに複雑で、これくらい耐えられるだろうと思っているうちに、だんだん自分に自信がなくなり、眠れなくなり、身体が緊張するといった不安症状が始まります。さらに自分の感情・感覚に鈍感になり、何を望んでいて何を期待しているのか、何が好きで何が嫌いなのか分からなくなり、こうした症状が絶望感・無力感を生み、親密な対人関係を断ち切ってしまうこともあります。こうしてうつ症状となります。

就活生の複雑性PTSDを促進してしまうのが情報の氾濫。この病気は大雑把には、自分が何を感じ何を望んでいるのか分からなくなる病気だそうです。

★情報の整理

それにはまず、いらない情報を捨てましょう。有効な情報とノイズを分けます。
ノイズの例。
1.やっかみ系ノイズ。留学経験者によるやっかみが「留学は不利」に変化するなど。
2.学歴系ノイズ
3.面接官超人伝説ノイズ
4.ルックス系ノイズ
5.就活武勇伝ノイズ。武勇伝が情報として流れている時点で、同じことをやっても武勇伝になりません。

最近ではSNSが困ったノイズを拡散し、就活生を戸惑わせているという傾向もあるそうです。有効な情報とノイズを仕分けるには(p93)、

  • 実名で書かれた情報は信用に足る。
  • 実名で書かれた情報も、その人の属する組織については当てはまるが、他の組織に当てはまるかは分からない。
  • 精神論は、その人個人の思想あるいは思い込み。
  • その情報が書かれた時点では正しかったかもしれないが、今、その情報が有効であるかどうかは分からない。

これが不安やうつを防ぐ第一歩。


「第4章 自分の感情を信じる」
では、思考ではなく感情を見つめる重要性について書かれています。

感情は常に存在しても表現するのは難しく、いざ言葉にしようとするとほとんどが思考になってしまいます。感情は胃痛などの身体反応及び解放と結びついています。

感情には次のようなものがあります。
(参考:オロール・サブロー=セガン著『トラウマを乗り越えるためのセルフヘルプ・ガイド』河出書房新社p131)

リラックスしている、幸せだ、守られている、よそよそしい、恥ずかしい、近しい、恋している、困っている、ねたましい、感謝している、傷ついている、心安らかだ、不快だ、拒絶された、うらやましい、不安だ、尊敬している、信頼している、興奮している、親しみがある(以下10行続きます)

ひとつの出来事について、たいてい3つ以上の感情が浮かんでいると言われています。感情に善悪はなく、それで判断してしまうとネガティブに向かいやすいそうです。ある感情が浮かんできたとき、それが好ましくない感情でも、その人にとっては意味があります。それを善悪で判断すると自己否定感につながるのです。そして、「感情はコントロールするものではなく、見つめるも」のであり、コントロールするのは行動だけで良いのです。感情を受け入れてしまった方が、結局は余裕が出ます。

感情を見つめることは、社会人になってからも有効なツールになります。自分の感情に気付いている人は、柔軟性があるので、世の中が変化しても自分を見失うことがありません。

「これからの時代は○○だよ」と言われても、心から納得していない場合、微妙な違和感が生じます。それに注目することが重要です。

★違和感の意味

人間の心は大きく分けると意識と無意識があり、海上に顔を出している氷山の部分が意識で、隠れている部分が無意識です。分かっていない無意識の感情が沢山存在しています。違和感の背景には意識化されていない感情があり、感情を抑えてしまうとそれは持続します。

  • 自分の中にできた「……すべき」という規則に従うため
  • 周囲の見えないルール(規範)に従うため
  •  自動的に感情表現を中断してしまうため 解離。過去に直面した恐怖を思い起こす場面などに直面すると、感覚・感情が遮断

★違和感から感情を認識する

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感情は、必ず身体の反応を伴います(上表)。

落ち込んでいるA君が胃にかすかな痛みを感じていたとすると、次のような方法で自分の隠れた感情に気付くことができます。

1.自分が違和感を持っている身体の部分に注意を向ける
2.違和感が明確に。違和感が痛みに変わるかもしれない
3.明確になった身体反応がどんなメッセージを自分に伝えようとしているのか考える
4.身体反応にぴったりくる言葉が見つかったら、それが抑圧された感情。思い浮かぶ言葉はどんなに激しくても構わない

一次感情(最初に浮かんだ感情)は歪んだ思考によって抑圧し、たいていは自分に対してのネガティブな感情に変わってしまいます。この歪んだ思考は考え方のクセで、自動思考と呼ばれます。

★自動思考

何かあったら「ああ、俺はダメだ」とか何かあると止まらなくなるのが自動思考です。非常に強力で何度も何度も浮かんできます。自動思考がはたらき始めると、特定のネガティブな感情の他は、無意識の中に置き去りにされてしまいます。

代表的なもの(注:1例ずつ挙げました)。

悲観的運命の確認:「こういう運命なんだ」
否定的自己:「私は最低な人間だ」
自責の念:「私の責任だ」
あきらめ:「何をやっても無駄だ」
悲観的予測:「どうせダメだ」
完璧主義:「○○しなければならない」
悲観的対人認知:「みんな私を嫌っている」

などなど。(ディンクメイヤー・D・マッケイ・G・D、『感情はコントロールできる』創元社 1996を参考)

★自動思考は脳のクセ

「自分は最低な人間だ」と思う人の「最低な行為」を他人から見てみると、大したことではないことがあります。そもそも、最低な人は自分のことを最低とは思わないものです。もしかしたら繰り返し「おまえが悪い」というメッセージを受け続けてきたのかもしれません。

脳のクセである自動思考を変えるには、

1.自分の自動思考を特定する

自分が不調なときなど、どんな感情が頭の中を駆け巡っていたかを思い出す。それが自動思考。パターンに気付けば、始まった途端に分かるようになる。

2.自動思考が必ずしも正しくないことを認識する

過去の自分にはできなかったかもしれなくても、今ならどうか分からない。

3.自動思考とそれに伴う感情や身体反応に気付く

たいていの場合、上半身に力が入っている。「肩に力が入っていれば自動思考」と思えるようになれば、気づきやすくなる。

4.自動思考は脳のクセであることを常に意識する

自分を外から眺めているような感じ→外在化。自動思考には確固たる根拠がないことを判断する余裕ができる。自動思考に「デモシカちゃん(ゆるキャラ)」など笑えるあだ名を付けてみるのもいい。

5.ゆっくりとした深い呼吸をする

これを繰り返すうちに、自動思考は力を失っていきます。

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