円城塔氏の「ポスドクからポストポスドクへ」に寄せて(2017/04/06、2018/03/13リンク張り替え)。


日本物理学会誌 「ポスドクからポストポスドクへ」 円城塔
(シリーズ”ポスドク問題”その12)

(2018/03/13 CiNiiで見えなくなった後、下のブログでも見えなくなっているのに気がついたので、面倒だから下に画像を持ってきて貼ります。この記事よく読まれますし、書いた当時は違いましたが今は社会人学生で、物理を院で専攻しようとまた勉強しています。研究職に今さらなる気はないですが40才後半です)

(2017/04/06 23:25追記:CiNii問題で、ここに文章があったので貼っておきます)

(2018/04/03追記:ここには前にすぐ上に書いたようにpdfのあるブログURLが貼ってありました。内容は下の映像と同じです。最近そのブログでも消えているのに気づいて横線で消して画像を貼りましたが、相変わらずリンクを踏む人が絶えず先方に迷惑なので、URLを削除しました)

 

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円城氏が芥川賞を取ったときに「きくまこ先生」こと菊池誠教授がお祝いの言葉を贈っていたことは覚えていますが、こういう経歴の方だとは知りませんでした。ポスドクを34歳まで続けて辞め、民間勤めの傍ら兼業作家をやった後に専業へ。翻訳者である自分にとって、さらに険しい作家への道は、翻訳者から翻訳者兼作家になった友人の言葉の端々から推し量るしかありません。

それにしてもこの内容は、円城氏が本名不明で「これから嘘をつきます」と書いていなければ書けない類のことでしょう。以前わたしは「ポスドクと羅生門と蜘蛛の糸と杜子春。」という文章を書いて、あるポスドク氏から意見をもらったことがありました。言外に「あなたに何が分かるのか」と言われた気がしました。そういう含みがあったとしてもこの文章を読んだ後だったら想像が付きそうな気がします(けして「分かります」なんて言っていませんし、これからも言わないでしょう)。

上の物理学会の文章は、「これから嘘をつきます」と言って本当のことを述べるところにある種のウィットを感じますし、安部公房に影響を受けたとWikipediaには書いてあった気がしますが、皮肉が非常に効いていて、笑うべきじゃないところに皮肉のあまり笑ってしまいます。「理系だから文章が書けない」なんて言わせない、という何か反骨心のようなものを感じます。

上記わたしの書いた文章で「待遇については聞きにくい」と書きましたが、実はこっそり教えてくださった方もいました。金額的には円城氏の言った通りでした。

ところで、この文章のうち少し解説がいるとしたら、

鬱病らしきものに頑張れと励まし、統合失調症は放っておけば治ると考えており、境界性人格障害の疑いのある者を、自分はあいつを守ると宣言する。

ここですが、全部あべこべに近いです。うつ病についてはまあ知られてますけど。境界性人格障害は難しいですが、巻き込まれず「味方だよ」というサインをずっと送ることでしょうか。宣言なんてしちゃったらまずいです(かつての当事者から)。

きっと、苦労が人間性を磨くという側面はあるでしょう。ですが、それにも限度があるし、ましてや死んでしまっては元も子もありません。わたしが知る某大学に長く勤めていた人は、先日あっさりと「飛び降り多かったんだよ」と。この文章が書かれたのが5年前、それから時代はどっちへ向かっているんでしょうね……。

円城氏の本は、何か探して読んでみたいです。

何かご意見がある方は、匿名でよろしいので書き込んでいただければ幸いです。中身によってはお返事できないかもしれませんが、目は通します。「名無し」はかぶる可能性があるのであまりお薦めしませんが。

(23:34追記:メールアドレスはわたしにしか見えません)

円城塔氏の「ポスドクからポストポスドクへ」に寄せて(2017/04/06、2018/03/13リンク張り替え)。」への10件のフィードバック

  1. 完全な門外漢です。物理学にもポスドクにも。ポスドクの意味すら知りませんでした。まず、この円城塔氏の文章が読めたことを喜んでいます。ネットがなければ、物理学会誌を読むことなど考えられません。だとすれば、喜ぶ先はネットなのでしょうか?ips細胞の山中先生がノーベル賞をとったとき、下支えする研究員の生活の一部をテレビニュースで知り、日本と言う国の政治のお粗末さに(=選挙民の暗愚さに)改めて気がつかされたのですが、円城塔氏の文章で、そのことが再確認できました。これは嬉しいとは表現できませんが、あなたのブログのおかげです。(私は71歳の年金生活者で元地方図書館員。薬理学にも翻訳にも無関係ですが、1年くらい前からあなたのブログの読者になっています。きっかけは忘れていますが。)以上、意見ではなく、感想でした。

    • mitlebenさん、初めまして、長いこと読んでくださって
      ありがとうございます。それに、今回出てきてくださって
      ありがとうございます。

      そうですね、わたしの知人にはポスドクや元ポスドクが
      複数いて、彼らが不遇な目に遭っているというのが前
      のエントリを書いた直接の原因かもしれませんね。

      あのエントリには追記が2,3付いているので、すでにお
      読みかもしれませんが再読していただけたらさらなる発
      見がおありかと存じます。

      円城氏の文章はただ素晴らしいの一言ですね。
      これからもよろしくお願いいたします。

  2. 主さま

    Aと申します。はじめまして。専門は大気化学です(でした)。

    円城氏の当該文書のほぼ当事者です。まずなぜここにたどり着いたかをご説明します。pdfを持っていたのですがなくしてしまったようで探してみました。ところが検索しても番号しかなくようやくこちらへたどり着いた次第です。

    私は日米通算14年間有期職をつなぎ続け、最後はうつ病を患い決まっていたパーマネント移行も取り消され妻と3人の子供を抱えて無職になった経験があります。幸いにして無職になって3ヶ月で現在勤めている上場企業に拾ってもらいましたが、当然この問題を他人事とは思えません。

    私は現在49歳でまさに「ポスドク1万人計画」のど真ん中を生きてきました。しかも、浪人や留年、ニート時代が通算4年あったため博士をとったのは32歳の時でした。博士課程は学振DC1で自活できていたので「自分は研究者の勝ち組に入れた。もう安心だ。」と思いD1で結婚、すぐに子供が生まれました。

    もちろんいい経験もさせてもらいました。学振PDとしてアメリカの国立機関へ行き、素晴らしいボスの下でこれ以上望めないような研究環境で、思う存分研究させてもらい、先方での雇用に切り替えてもらうこともかないました。そこが研究者としての私のピークであり限界だったと思います。

    私にとっては相当ハイレベルな場所でしたので最大能力を出し続けないと一軍にはいられない場所でもありました。そして二軍落ちから帰国かコミュニティースクールの二択をせねばならない状況に陥りました。しかし当該分野で論文は少ない方ではないし受賞も複数していたので帰国さえすればどうとでもなるだろうくらいに思っていました。

    しかしそんなものは妄想にすぎませんでした。業績が自分の半分以下の相手にも簡単に負け続け気付けば96もの大学や研究機関に蹴られ続けていました。ぼろぼろになってようやく入ったのが地方環境研という最悪の地獄でした。研究所とは名ばかり、実態は測候所です。パーマネントへ移行すると年収は430万円に下がりその後も絶対に公務員以上にはならない仕組みでした。

    そして職場の悲惨さと将来不安からうつを患い職を失いました。現在は専門からある程度離れた内容とはいえ研究開発職をさせてもらっており、これまで経験したことのない厚遇に恵まれて会社には本当に感謝しています。

    アメリカへ行った当初、同い年で公立高校の教師をしているルームメイトの家に住んでいました。はっきりと覚えているのですが、「おまえさ、年収いくらなの?」とあまりに平然と訊いてくるのでぎょっとしながら「3.8kだよ」と言ったら彼は悪いことを訊いてしまったという顔をして困惑していました。

    同い年の彼の半分にも満たなかったのです。もちろん彼に悪気はなくGDP世界2位(当時)の国から国費で研究しにやってきている博士号持ちの給料が一介の公立高校教師のそれを下回るはずがない、いったいどんな厚遇を受けているのか聞きたかったのでしょう。

    国土が限られ資源もない国である我が国が科学者になろうと夢見る若者にこんなことをし続けていて我が国に未来はあるのでしょうか。これこそが学問の自由にかけられた悪しき制約に他ならないと思います。

    長文失礼いたしました

    A

  3. すみません。上記、フルネームが出ると思いませんでした。修正させていただけませんでしょうか。

  4. 早速のご対応ありがとうございました。自分で書いておいて恐縮なのですが、やはりちょっとまずいなと思う部分があるので名前はAにでも置き換えていただくか、ご面倒でしたら全文削除していただいて構いません。お手数おかけしますが、よろしくお願いいたします。

    上記修正願いの方もAでお願いいたします

    わずらわしいことを申し上げてすみません

      • さっきから何回かブログ内部からコメントしたのですが、最後しか反映されませんでした。納期明けにオンラインを聞きながらでいつもに増して疲れていて、届かなかったのかもしれません。今のは普通に外からコメントしています。

      • 迅速なご対応をしかも何度もいただいてしまい申し訳ございませんでした

        ウソの話ではないだけにあとから考えたらいろいろあるなあと思ったものです

      • 遅くなりましたが、病弱ですので体調を見ていました。
        前回のコメントはオンラインセミナー聞きながら行いました。今後すぐに対応してくれないブログ主もいると思いますので気をつけてください。どこかのWordpressにログインしておられたのでは?

        わたしはB4でアカハラ(パワハラ)に遭い、適応障害→うつ病→だめ押しでDV離婚→病名が双極性障害となり、うつ病の間に他大学の修士に進学しましたが中退しています。あなたより少し年上なので、アカハラの自浄作用は望めませんでした。不況で正社員にも実質なってません。

        大変だったのは読んで想像がつきましたが、今はきちんと就職されている様子、よかったのでは。(わたしの)フリーは厳しいですからね。

      • Aです。

        お辛いところいろいろすみませんでした。ブログの感覚を忘れていてツイッターのそれになっていました。とにかく、素早いご対応をいただいてありがとうございました。少し敏感な状況にあるのです。

        ご指摘の通り、私ははしごを外されても運よくとてもいい会社に拾ってもらうことができ、現在は上司にも恵まれていて、文句を言うものでもないのですが円城さんの文書が日本語雑誌とはいえ正式掲載されたものなのに本文が消えてなくなっていることに少々狼狽しました。

        自宅PCをよく探してみたら原文pdfを見つけることができました。

        うつはつらいですね。長男がコロナ休校を発端とするうつで見ていてかわいそうです。立場の強くない人はみんな潜在的な不安を抱えているんでしょうね。せめて子供たちだけでもと移住先を真剣に考えたこともありますが、あまり現実的ではないと思いました。

        重ねましてありがとうございました

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