越前敏弥先生講演会「翻訳百景」@石川県立図書館(その2)(2012/10/7)。

その1からの続きです。高速でメモを取ったので、タイポがもしあったらご指摘下さい。

次の例は、ジェイムズ・エルロイ。50年代の三流政治雑誌の見出しより。

CANCEROUS CASTRO COMMUNISTICALLY CALIFIES CUBA

WHILE HEROIC HERMANOS HUNGER FOR HOMELAND!
(注:hermanos=スペイン語で「兄弟たち」)

頭韻、脚韻は翻訳者泣かせであるけれど、腕の見せ所でもあるそうです。5,7,5とか、リズムをよくして訳します。

恐怖の共産主義者カストロ、キューバを窮地に追い込む

脅威の郷土愛に駆られ、とうとう闘士たちが立ち上がる

1ヶ月くらい完成までかかったのに、読者に頭韻だと気づいてもらえない悲しさがあるそうです(悲しい……)。

エルロイにはエントリ最初の方のリンクにもあるように「LA4部作」があり、その2作目が映画化されて有名な「LAコンフィデンシャル」です。1作目の「ブラック・ダリア」から入るのがお薦めだそうです。

ブラック・ダリア (文春文庫)ジェイムズ エルロイ

文藝春秋

1994-03

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

同じくエルロイの田村義進訳、「クライム・ウェイヴ」20pより。田村先生は越前先生のお師匠さんだそうで(この本、そんなに前の本じゃないのに絶版です。いやはや、ミステリーは流行り廃りが早い)。

クライム・ウェイヴ (文春文庫)ジェイムズ エルロイ

文藝春秋

2005-03

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

訳例。
鋭いスクープがすっからかんになった58年春。

ハッシュハッシュははったりに歯止めをかけられ、歯ぎしりをしていた。

支離滅裂の揣摩憶測が、信用できる真実として紙上で紹介された。
揣摩憶測(しまおくそく)

かつて輝いていた過去の語り草がかき集められ、…(メモ取り損ないました(^_^;))

こんな名訳が延々続くそうです。

つづいて同じ田村先生の名訳。これも絶版。ウォーレン・マーフィーです。

チコの探偵物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫―トレース・シリーズ)早川書房

1989-03

by [Z]ZAPAnetサーチ2.0

Stop turking talkish.
talk Turkish : わけの分からないことを喋る

舌が絡まって間違えて喋ってしまった。さてどう訳すか?

何をいっトルコ。(会場笑い)

史上に残る訳だそうです。

さらにオヤジギャグの楽しい訳が続きます。

越前先生の訳されたダン・ブラウンは、最後の「ロスト・シンボル」が夏に文庫になりました。作品としては3、4年前です。「ラングドン・シリーズ」と呼ばれています。ブラウン、最近は書いてないようです。

そこで、くだらないけど(でも褒めてる)とおっしゃいながらパロディ本を紹介されました。WordpressではAmazon.comへのリンクがうまく貼れないので、画像だけでも。ブログ「翻訳百景」でも紹介されてます。

“Da Vinci Cod”、”Cod”とは魚の「タラ」で、上の方には”Not the #1 New York Times Bestseller”と書いてあり、作者はDon Brine。”Brine”は海水の意味。”Fishy Parody”とありますが、”fishy”には「うさんくさい」という意味があります。先生は持ち込みをしたのですがダメだったそうで、ですが今回週間STの連載になることになりました(駅とかで売っている、わりかし初学者向きの英字新聞です。単語の訳も付いていたような記憶があります)。言葉遊びは勉強になる、と先生。

ちょっと中を覗いてみると、

Jack Sauna-Lurker lay dead in the main hallway of the National Art Gallerry in London….

舞台がロンドンに移ってますね。で、この亡くなっている人の名前ですが、オリジナルのルーブルの館長はJacques Saunière、ジャック・ソニエールでした。さて、この名前をどう訳すか?

そのまま訳すとジャック・ソーナ・ラーカーなんですが、先生が教えていらっしゃる朝日カルチャーセンターの生徒さん訳。

ジャック・サウナニイール
問題は「サウナにいる」という意味に取れるかどうか、です。
ジャック・スッポンポン・ダンマリエール
「スッポンポン」はまあ分かるとして、「ダンマリエール」は死体だから、だそうです。ここでまた皆から笑い。

で、先生がどう訳されたかというと、
ジャック・サウナデカクレールサウナデネール
ちょっと迷っちゃったみたいです。
ここで聴衆から「どの訳がいいですか?」とアンケートを採り、「くだらなくなってきた」と笑っておられました。

さらに、ダン・ブラウン以外の名義での作品をば。

“187 Men To Avoid”

わたしが講演で見たのはDanielle Brown名義になっていたような気がするんですが、この画像はちゃんとDan Brownも入ってますね。「こういう男とはつきあうな」というユーモア本です。

“The Bald Book” Blythe Brown(奥さんの名義)

ハゲはなんの得になるのか?涼しいとか、滑り台になるとか、イラストと一緒に一言で書いてあるユーモア本。ブラウンは学校の先生をやりながら売れないミュージシャンをしていて、奥さんはそのマネージャー。二人三脚でやってきたそうで。

このタイトルを訳すとすれば「ハゲましのメッセージ」。というところでまた笑いが起きました。

次回に続きます。

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