こんにちは。富山で化学を中心とする技術翻訳をしていますヨシダヒロコです。医薬との2本立てが夢なのですが、なんだか寄り道ばかりです。
同郷の人をこのように言うのは心苦しいのですが、5月頃からだったかな、「内部被爆を生き抜く」などの鎌仲ひとみ作品が富山・金沢の単館系映画館で上映されました。その頃別の用で金沢のその映画館に行ったら、明らかにあまり科学的ではない反原発の本が並べてあって。何かショックでした。上映会にも人づてに誘われましたが、考えた末断りました。
それを書こう書こうとずっと思っていたのですけど、時間が経ってしまい、鎌仲氏は今度本を出版するそうです。下のUstはそれに合わせてのものだと考えられます。
ご存じない方のために、鎌仲ひとみ氏は富山県出身の映画監督で、代表作は主に原発に関するものです。自主上映会が多いように認識しています。
下のURLは昨夜Twitterで教えていただいた鎌仲ひとみ×津田大介の対談Ustです。協賛はキッコーマン。
http://www.ustream.tv/recorded/24192834
全部で84分ある対談のうち、10数分が公開されています。
のっけから「黒ゴマは白髪をなくし、杏仁豆腐には脳梗塞に良い」という鎌仲氏。それ、「ためしてガッテン」レベル……。あと山下先生に対抗するため4人医師を集めたところで、自分(=鎌仲氏)の都合のいいことしか言わなければ集めても意味がないですね。山下先生の本は持っているのですが、まだ読めてません。主旨は知っています。4人中3人の医師のバックグラウンドも知っています。肥田舜太郎先生、児玉龍彦先生、鎌田實先生、ベラルーシのスモルニコワ・バレンチナ先生です。
肥田先生のつながりで1冊内部被爆の本は読みました。ブログの検索で出てくると思います。児玉先生の本「内部被曝の真実」は、一応国会討論は聞いたことがあって、恐らくそれを本にしたものを途中まで読みました(体調不良で、図書館に返すのが遅れたのでやむなく返しました)。下のビデオに出てくる、特定の臓器に放射能の影響が出るという説は児玉先生のものですね。鎌田先生は「がんばらない」で有名ですね。チェルノブイリ被爆者の支援をしていたことは寡聞にして知らなかったです。
正直、怖いトレイラーです。福島の方が見たらどんなでしょう。
上の方でちらっと触れた鎌仲氏の著書ですが、今までの映画の宣伝とも取れるものです。
内容紹介
3.11以降、どのような未来が可能か、私たちはこれから何を選択したらいいのか。『ミツバチの 羽音と地球の回転』で、原発に頼らない世界の可能性を描き、日本全国で若いお母さん達による 自主上映のムーブメントを作り上げたドキュメンタリー作家、鎌仲ひとみが提案する、一人一人 が創る「ミツバチ革命」の起こし方。これまで日本の国民はいろんな局面で、お上のやることだから、とあきらめてきたわけですが、 今回だけは、あきらめることができない。自分の子どもの命や健康だけは、あきらめることがで きない。自分の子どもの命や健康のことを、あきらめるわけにはいかないんです。絶対に譲れな い。もし、ここで譲ってしまえば、命をつないでいくことができなくなる。命をつないでいくこ とができない社会には、未来がない。これだけの惨事が起きてもマスコミは変わらなかったし、 政治も変わらなかった。多くの母親が、このまま政府や自治体、マスコミに任せていては、子ど もの命は守れないと悟った時に、自分たちで変えていこうというスイッチが入った。これこそを 私は「ミツバチ革命」と呼びたいと思います。(本文より)
【目次】
はじめに
第一章 ヒバクシャ 世界の終わりに
始まりは医療の問題から/湾岸戦争から7年目のイラクで出会った子どもたち/砂漠の狐作戦/ ラシャとの約束/肥田舜太医師との出会い/『ヒバクシャ 世界の終わりに』への道/九・一 一後の世界とイラク再訪/バグダッド/ムスタファ/アメリカへ がん宣告の中の編集作業/ア メリカの被ばく者/被ばくを生きる。それぞれの普遍/憎しみではなくて、愛/抜け落ちていく のは、生身の人間の苦しみ/放射性物質が引き起こす分断
第二章 六ヶ所村ラプソディー
原発 ハンフォード 六カ所村/フラットな視線/六ヶ所村へ/六ヶ所村通信/内面から共感す ること/巨大開発の犠牲者たち/常識がひっくり返った世界/自分自身の加担も自覚すること/ 日本原燃/「いい人」の集団がなぜ破壊のアクセルを踏み込むのか?/放射能は目に見えない/ 自己欺瞞と合成の誤謬
第三章 ミツバチの羽音と地球の回転
六ヶ所村ラプソディーのその後/出口を探して/ミツバチへの旅 スウェーデン/ナチュラル・ ステップの四つのシステム条件/シンプルでエレガントなエネルギーシフト/石油フリービジョ ン/脱原発依存は可能か/地球の回転が生み出すエネルギー/祝島との出会い/祭りと反原発/ 地域分断作戦/希有なリーダー山戸貞夫/山戸孝くんの闘い/離島であることの強み/祝島一〇 〇%エネルギー自給プロジェクト/運動に参加してきた若者たち
第四章 映画と共振する人々
経済の原理と生命の原理/命を大切にする思想/地域でエネルギーを地産地消する/持続可能な 社会に向かうために/民主主義のエクササイズ/自分たちが変わること/話すことで回路がつな がる/ミツバチが作るつながり 震災以降のできごと/自らの根っこにつながるために/共振す る力/つながりを取り戻すために
あとがき
鎌仲氏は、昨日のUstを聴いた人によると味噌やペクチンを薦めているとか。思い切りトンデモなんですけど……。と思ったら、ペクチンを薦めているのは児玉先生もでした。食べ物で放射能の影響が少なくなるんならこんな美味しいことはありません。でもそれはあり得ないんです。善意でやっていることは承知していますが、それが必ずいい結果になるとは限りません。早い段階で原発の危険性を指摘していたことは評価しますが、科学リテラシーがもっとあればなあ、と。
それに、一方的な主張だけを流すドキュメンタリーって、ドキュメンタリーとは言えないですしね。
児玉先生がペクチンを薦めている論文要旨↓
http://www.jamas.or.jp/news2/getrecords?searchNo=113&startNo=1
味噌やペクチンについては、片瀬久美子氏のSYNODOSの記事をお読み下さい。
SYNODOS JOURNAL
2011/7/19 9:15 あやしい放射能対策 片瀬久美子 ペクチンや味噌の他にも色々ありますが、ペクチンについてはむしろ副作用が心配されているそうです。
震災以来給食や食品のWBC測定を続けていらっしゃる東大の早野隆龍五先生によると、どうもチェルノブイリと福島は話が違うらしいです。最初はポケットマネーで、後には寄付を募って、福島に通いました。東大から「黙れ」と言われてもめげず、ツイッターで何言われてもめげず、御用学者Wikiの人もそこには感心しているようでした。
廊下でデータ入力する早野先生。
早野先生の内部被爆関係のツイート(Togetter)より。ちょっと見た時は胸が一杯になる共に驚きました。
ちなみに研究基金の寄付はこちらから。
http://utf.u-tokyo.ac.jp/2012/03/twitter-404a.html
★トンデモを普及させるほかに、福島の皆さんのためできることはあります。寄付もちょっと下火になったようですので、ここで告知しておきます(18:06追記:もちろん震災に遭われた被災者の方々を対象にしている支援も含めました)。
勉強会仲間のうさじまさん(@usausa1975)の「うさうさメモ」より
私が今年福島の桃を食べたい理由 うちの家族は食べるのに反対なようですが、自分用に買ってみたいです。
相馬野馬追
7/29に迫りました。行きたかったなあ……。一部観覧席は満席のようで、盛況みたいですね。よかった。
復興市場
地元の皆さんが必要なものをリクエストし、それを地元のお店から買って調達します。小さな額から寄付できます。
復興支援酒場 銀座店
東北の食べ物を振る舞い、全額を寄付します。9/30まで限定。(2013/05/31追記:2013年12月30日まで延長されました)翻訳者たちがわたしの知る範囲では2回ほどここで飲み会をやりました。3月に東京に行けていれば飲みに行けたんですが、今のスケジュールでは無理そうで残念です。「こづゆ」、食べたかったです。
みちのく未来基金
震災遺児に対し学費の支援をするもので、月1000円から毎月寄付できます。
(2013/05/31追記)
被災馬支援募金:1000円の募金でも律儀に領収書を返してくださいます。
沢山のご閲覧、最初はびっくりしましたが出所が分かってほっとしています。ありがとうございます。
すこし監督の表だってではない仕事におつきあいしたことがある者です。
当時は若輩者でしたが監督の印象は「?」なものだったので御ブログにすこし共感しました。
つぶさな知識は無い私ですが、監督は半分目隠しされた馬車馬のように視点が偏っている印象を持ったものです。
川崎様、コメントありがとうございます。監督のことは多少映画好きなら地元民は震災前から知っていたと思います。誤解して欲しくないのは脱原発自体がまずいと言ってはいません。ネットで見ていた人なら分かるのですが、震災以来様々なデマや流言が流れました。中には被災地の人を死に追いやったものもあります。
わたし自身原子力は専門外ですけど、それでもおかしいよ、と思うことが多く(震災以降そんな感じになった人はよく見かけました)書かせてもらいました。
全部共感してもらわなくても構いませんが「すこし」でコメントされたのはなんでだろうなあと思います。
以前から、鎌仲さんがどんなテーマの作品を撮っておられるのかは何となく見聞きすることがあり、反骨のドキュメンタリー映画監督というイメージを持っていました。昨日、初めて、上映会(+ご本人のトーク)に参加してみたのですが、「データはどういう目的で使うかが重要」(←目的ありきで「使う」ものなの??)とか、(映像の鼎談中に、避難者の保養施設で提供するケアについて話す中で)「酵素玄米」云々とか、びっくりした発言がいくつかあり、???と思って検索していて、こちらのブログをみつけました。
震災直後は早野先生、KEKの野尻先生、現東京海洋大の勝川先生、大阪大学の菊池先生、片瀬氏等が発信される情報に触れ、「正しく怖がる」ということに共感して(かつ励まされて)いたので、鎌仲さんは科学的な視点を蔑にしておられるようで、残念に思いました。
私は首都圏在住で直接の被害は受けなかったのでこんなふうに言えるのかもしれませんが、被災者の「気持ち」に寄り添うことと「科学的なリスクの判断」は、分けて考えるべきだろうと思います。もちろん、「気持ち」の部分で被災者間が分断されたり、私には見えていない、困難が多々あるのだろうと推測はするのですが・・・。
昨日疑問に思ったことも含め、もっと勉強しなくてはいけないなと思います。
似たような違和感が述べられているブログに、思わず反応してしまいました。
失礼しました。
茗荷さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
菊池先生などは(Twitterで)本の資料に本当にイヤイヤ鎌仲さんの作品を見ていましたから、その辺ご存知なくて何か間違って紛れ込んでしまわれたのですね。
科学はああいう方々がもっと信じているとは良く言われていることで、知識があれば論文になっていても疑いますから。このブログ記事は2012年に書かれ(日付は皆さんあまり目に留めないです)、かなりPVを集めてきましたがあまりコメントはいただいていないので光栄です。あれからわたしは社会人学生になって高校以来物理も履修しています。
除染にEM菌を使うなど荒唐無稽な話も長くあります。
もう今年は終わる講座で、東北大が実践的災害学という学問をネット講座で教えてくれるものもあります。原発関係は扱っていませんけど。
https://hirokoyoshida.wordpress.com/2018/02/08/gacco-tohoku-irides-quake/
ブログを読んだ限りでは鎌仲監督の何が具体的にやり過ぎなのかがわかりません。
味噌やペクチンなどの食べ物が内部被爆には有効ではない、
&早野先生のご紹介ですか?
味噌がまったく効かないという科学的根拠はなんでしょうか?
吉川さん、現在病気療養中のためお返事が遅れました。ただ、こう書いて分からない人には説明が難しいです。
>味噌やペクチンなどの食べ物が内部被爆には有効ではない、
&早野先生のご紹介ですか?
どういう意味でしょうか?文章の意味が分かりません。
>味噌がまったく効かないという科学的根拠はなんでしょうか?
吉川さんは信じていらっしゃるのでしょうか?どなたからどういう風に聞いていますか?あれから7年、もうすぐ8年経っていて、震災直後に人が沢山死ぬと言っていた人もいました。それが本当ならどうして問題にならないのでしょう(ちなみにわたしは甲状線の経過観察をしている身です。乳がん検査のついでなどでよく見つかるそうです)。
味噌はわたしも好きなんですが、食品以上の意味はないはずです。発酵食品を薬のように思う人はいますが……。基本的には消化管で分解されるはずだし、逆にどういうシステムで味噌が放射線に対して何かの防御になるのか疑問なのでお聞きしたいくらいです。
ただし、わたしが何を言おうと気持ちの上で不安が消えないと無理なので、吉川さんがそれでも不安と思うならどう説明しても届かないでしょう。