こんにちは。富山で化学を中心とする技術翻訳をしていますヨシダヒロコです。NHKラジオとテレビで、細々とスペイン語とイタリア語を勉強しています。イタリア語はこの間伊検5級を取りました。現在西検5級に向けて勉強中です。
GWに見た映画ですが、色々付け加えてエントリにします。
チェとの出会いは2000年頃でした。当時富山市立図書館で有志が行っていたスペイン語教室で、アルゼンチン人の先生が彼の演説の肉声テープを聴かせてくれました。聞き取れまれせんでしたが、今思えば、かの国ではずっと英雄なんでしょうねえ。
で、ソダーバーグの「チェ」2部作です。この監督の映画は「セックスと嘘とビデオテープ」(当時の彼と元ピンク映画館に見に行こうとしたら、エロ映画と親に勘違いされどえらく怒られた(^_^;))から見てます。「エリン・ブロコビッチ」、「トラフィック」、最近の「コンテイジョン」など見ました。好きな監督です。
2007年がチェの没後40周年だったことから日本でもいろいろ本や映画が市場に出たようですが、その後母によるとDVD屋から「ゲバラコーナー」が消えたとのこと(実際はひっそり作品は残ってますが)。チェックしているとまだ関連作品は新しく出てます。
チェ ダブルパック (「28歳の革命」&「39歳別れの手紙」) [DVD]
アメリカ人によるインタビュー以外はほぼ全編スペイン語で、そんなことチェの映画なんだから当たり前と思われるかもしれませんが、アトランタ生まれのスウェーデン系アメリカ人であるソダーバーグが撮ったことを考えると、チェに対するリスペクトを感じざるを得ません。日本では字幕が当たり前ですが、外国ではそうではないからです(知る限りでは英語圏、スペイン、イタリアなど)。Wikipediaによると主演のベネチオ・デル・トロもずいぶん研究したそうです。
ネタバレありですが(というか史実ですから……)監督の苦労など含めた優れたレビューがここにあります。ただ、年号はわたしはメモ取ってたので、Part1 と2の区切りとかちょっと間違いがあるんじゃないかなあ……。
http://www3.ocn.ne.jp/~zip2000/che-part12.htm
前編である「チェ 28才の革命」(Che Part One)(2009年、米・仏・西)
1964年ハバナでのチェのインタビューから始まり、時系列は前後します。アルゼンチン人医師であるエルネスト・ゲバラは、亡命先のメキシコでフィデル・カストロと出会い、意気投合。グランマ号というヨットでキューバに向かいます。密航だったという話も。盟友フィデルと共にサンタ・クララで最後の戦闘をし、バティスタ政権を倒しキューバ革命を成功させるまでが描かれています。1959年、ハバナへ向かうところでこの映画は続編に続きます。この間にアレイダとの再婚がまるっと抜けている訳ですけど。
ちなみにエンドロールも興味深い。かなり多くの国が協力しています。あんなに作中でコケにされている米国を始め、メキシコ、なぜかプエルトリコ(ベネチオの出身地だから?)。
それにキューバの革命広場(こんなところです)にはこんなセンターがあるそうです。「チェ・ゲバラ研究センター」とでもいうのでしょうか。スペイン語のサイトです。ここも協力してます。
Centro de Estudios Che Guevara
実は、前編を見ている間、主演ベネチオ・デル・トロはミスキャストでは?と思っていました。
チェのカリスマ性は、誰もが認めるところでしょう。外見からしてこれです。人をとても魅きつける何かを持った人です。もちろん、ベネチオは同士が怪我をしても決して見捨てず、純粋で人情深く……みたいな理想家を演じている訳ですけどね(まだ途中ですが本を読むと実際のチェはそうでもないらしいですね、まあ過酷なゲリラ戦を戦った人ですから)。ベネチオは好きな俳優ですが、ちょっと違うんじゃ……と思っていました。
それが後編で覆されます。
後編「チェ 38才の別れの手紙」(Che Part Two)
ゲバラの最も熱い国連での名言 僕はラテンアメリカで一番の愛国者だ
これをベネチオが演じました。この動画チャンネル、チェのファンにはお勧めです。ブログもフェイスブックもありますよ。FBに登録していると、ウォールがゲバラだらけになってしまうほどです(笑)。
カストロとゲバラに憧れて
ブログ主さんもそうですが、わたしも共産主義者ではありません。
チェはキューバ革命後、キューバでの市民権を得、要職をいくつも歴任し、それなのに家族とフィデルに手紙を残して旅立ってしまいます。ボリビアのバリエントス政権を倒すゲリラ戦に参加するためです。ベネチオがだんだんチェに憑依していくように感じられ、戦いの最中での喘息の演技も本当に苦しそうでしたし、乾いた銃声がして周りの同士が声も発せず亡くなっていく中で、チェもまた……。少しはベトナム戦争ものも見ていたのですが、ゲリラ活動とは本当に厳しいもので、「外国人のあなたがなぜここまで?」と思いながら画面を見ていました。
エンドロールを見ていて、配役の中で気になったのはルー・ダイヤモンド・フィリップス(ボリビア共産党の代表モンヘ役・「ヤングガン」などに出演。ネイティブアメリカンだと思ってたので、ヒスパニックの血が入っていたとは)。なんと!気がつかなかった。出演者の役名はもちろんスペイン語で、あだ名と実名が両方書いてあります。ゲリラ兵士たちへのリスペクトがここでも感じられます。「ゲバラ日記」のファンにはおなじみなあだ名だそうです。
プエルトリコ出身のベネチオには(恐らくアルゼンチンの)方言指導が付き、他にもキューバ、ボリビア方言指導者の名前がありました。通訳者(Translatorと書いてありました)は3人、スペインには2人いました。なんとボリビア政府と警察まで協力してます。
これは、映画を観た方へのプレゼント。
BALDERRAMA — MERCEDES SOSA
彼女の歌声は、もうライヴで聞くことはできません。わたしも知ったばかりですが、2009年に亡くなっています。
ラテン音楽雑誌、Latina5月号P21より
メルセデス・ソーサ
Mercedes Sosa(1635-2009)
ユパンキよりはだいぶ下の世代だが、アルゼンチン・フォルクローレといえばまずはソーサを思い浮かべる人が多いだろう。過去の記事でも<不屈の歌手 メルセデス・ソーサ><フォルクローレ史に描かれるメルセデス・ソーサの軌跡><メルセデス・ソーサ魅力分析><南アメリカのシンボル、メルセデス・ソーサ><メルセデス・ソーサ――病の床から目覚め、帰ってきた”母なる人”の軌跡>など、様々な時代に渡り特集が組まれた。2009年に豪華ゲストを迎えた『カントーラ』を発表するも、同年10月に逝去。国中が喪に服した。追悼記事は同年11月号で。【ラティーナ掲載記事:多数】
アルゼンチンの国民的歌手だった人だそうです。Youtubeを探すと、本当に愛された歌手なのですね。コメント欄に「カセットテープから始まって、CDに移って、ずっと聴いてました」とか、”Viva Che”とか書いてあります。残念ながら、日本語サントラには歌詞の対訳が付いていないとamazonレビューで不満が上がっていました。英訳で見つけたのがこれですが、アルゼンチン人に「違う」といろいろ指摘されています。タイトルの「バルデラーマ」はアルゼンチン人が集いギターを奏でるバーの名前だそうで、英日で勉強したことがちらっとあるのですが歌詞の対訳とはこうだから難しいのです。最低、スペイン語の歌詞は下にありますので。
チェの映画って、あと「モーターサイクル・ダイアリーズ」(1回見たけどだいぶ忘れました)を除くと日本では多分あと2本ほどあると思います。追々見てはここに書くと思いますが、スペイン語圏で新しい映画があるそうです。現在まだ日本では手に入らない、チェの新作ドキュメンタリーがあるのです。スペイン語圏のみで販売、他言語の字幕はなしです(観た方に確認していただきました)。上のブログの方は映画取り寄せて見られたそうで、同じ方による字幕が付いた予告編を下に貼っておきます。
【予告編】チェ、新しい人間(Che,un Hombre Nuevo【ドキュメンタリー映画】
今更ですが、チェ2部作の原作を手に入れました。「ゲバラ日記」はずいぶん前から2バージョン持ってたのですが翻訳に馴染めず、そのうちなくしてしまい買い直しました。1冊目から読んでます。ほんとは読み終えてからこれポストしたかったんですが、すぐには無理そうなので。まじめなファンからは「先に読め」と怒られそうですけど、代わりに後に挙げるカストロの著作と平行して観てました。
「チェ 28才の革命」原作(横のリンクにあるブログ「現代ラテンアメリカ情勢」の伊高浩昭氏による後書きが非常に興味深い)
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革命戦争回顧録 (中公文庫) チェ・ゲバラ 中央公論新社 |
「チェ 38才別れの手紙」原作(最新版の翻訳はベネチオが表紙なのでこれにしました)
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ゲバラ日記 (中公文庫BIBLIO20世紀) エルネスト・チェ ゲバラ 中央公論新社 |
下の本は借りたDVDと平行して読んでいました。語り口調なので読みやすいです。1965年のチェが行方不明になった頃に映画でも読まれた手紙から、2003年までのフィデル・カストロの演説を主に集めたものです。インタビューではかなりプライベートにも迫ってます。フィデルにはもっと怖いイメージを持っていましたが、いい意味で裏切られました。後書きに翻訳者の苦労話があります。要するに英語版とスペイン語版で内容がかなり違ったと。多国語はこれだから怖いです。
チェ・ゲバラの記憶
色々あっただろうが、大事な友だったのだろうなと思う。帯が泣かせる。
おまけ1:
現在の中央・ラテンアメリカの状況は、伊高氏のブログで読んでいます。時代はだいぶ変わったのですね。
2012/4/15 第6回米州首脳会議始まる
米州首脳会議(OEA=オエア)で、ラ米諸国数カ国がキューバが招待されないことに抗議して欠席
4/17 米州首脳会議終わる
ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC=セラック)が新たにできたことも大きいようで、米国の立場がなくなってきているようです。英語圏のニュースだけ見ていたらまず入ってこないニュースですね。
おまけ2:チェの日記が50年ぶりに発見される
この日記は、上の「チェ・ゲバラの記憶」と同じ柳原隆敦氏の翻訳で6/5発売予定です。期待できそうです。
チェ・ゲバラ革命日記 エルネスト・チェ・ゲバラ 原書房 |
長くなったのでこの辺で。そのうち、”Che”の使用例を探したので書きます。
こんばんわ
FBのほうでもメッセージ送らせて頂きました。
2000年頃からゲバラのファンということは、僕より3~4年先輩ですね。ブログやFBでいろいろ書いていますが、実は僕のゲバラ歴は浅いのです。
それでも、3~4年の間に(猛烈に)勉強させていただき、それなりにゲバラとカストロさんについて、オタクを名乗ることが出来るようになった次第であります(笑
チェ2部作、2度観ましたがこの映画は、実はあまり好きではありません。というのも、指摘されているように、ベネチオは好きな俳優ですが、ちょっと違うんじゃ……と僕も思うからです。
大学時代にまだゲバラファンじゃなかったころ(5年ほど前ですが)この映画を観てもゲバラに魅力を感じなかった。。つまりベネチオ氏のせいでゲバラの魅力を知るのが遅れてしまったのですw
というわけで、やはりゲバラをちゃんと知りたい人はドキュメンタリーがお勧めですね!掲載して頂いた、「チェ、新しい人間」は本当に良い作品です。
また、長々と書いてしまってすみません。。ブログのリンクも登録して頂いて嬉しい限りです。よろしくお願いします。
Tanakaさん、わざわざいらしてくださってありがとうございます。
この記事、ネタ集め抜きで書くのに2時間かかったんですよ。でも、「西検受かるには」みたいな記事の方が受けるんです。なんか違うんじゃないか?と思うんですが。
この映画を観たあとで「21グラム」を見ました。大事故を起こしてしまって苦悩する前科者をベネチオは巧みに演じていたと思います。
わたしは前の方のエントリでマイケル・ムーアを絶賛していますが、彼のやり方はわたしは嫌いじゃないけれど、ドキュメンタリーというのとは違いますよね。なんだか9.11以来映画の見方が変わってしまった気がして。
チェのドキュメンタリーは予告編を見る限りでは淡々としていそうですが、それならまさにわたしが見たいタイプのドキュメンタリーです。言っていることを理解したいので、せめて英語字幕が付けばなあ……。
付け加えます。それでもラストのチェの死のシーンは胸に迫るものがありました。エントリ本文にはわざと書かなかったのですが、ソーサの歌のせいです。多分。
ソーサの歌がラストにあるのは気が付きませんでした。
あ!そうそう、この映画でリサ・ハワードさんがインタビューされているでしょ?
このインタビューの本物版がこの「チェ 新しい人間」で拝見できますよ!予告編の葉巻うまそうに吸ってるのがそのインタビューです。
このインタビューの原文、英語で観れるんですが、ちょっと探してきます
映画内のインタビューアー、リサ・ハワードさんによるインタビュー。
映画のセリフが見当たらないような。。。
Che Guevara on ABC 3/22/64
http://havanajournal.com/politics/entry/che_guevara_on_abc_3_22_64_issues_and_answers/
Tanakaさん、ソーサの歌は初めて聴いても胸を揺さぶられるものがありました。歌詞を知りたいとamazonでつぶやいている人の気持ちも分かります。インタビューは映画冒頭の部分でしょうかね?用が済んだらこれから読みます。恐らく、もっと年長の人(学生運動の時代はバイブルだったそうですよ)で新しい情報を懐かしく読んでいる方もいらっしゃると思うので、情報提供これからもお願いしますm(__)m。