こんにちは。富山で化学を中心とする技術翻訳をしていますヨシダヒロコです。
昨年から今年の冬にかけて読んだ本で、ベストセラーには興味ないことが多いのですが、これは良かったのでご紹介します。2が圧倒的に良いです。映画化されて今ビデオ屋に新作として並んでます。
しばらくお休みしてますが、メディアマーカーを使ってます。色々サービスがありますが、一番高機能に思えたので。1作目の感想はそこからの引用を推敲したものです。
小説
神様のカルテ
現役医師が書いた、あり得ないような人に優しい病院の話。
長野の北アルプスが見える街。漱石の「草枕」を暗誦する、オーバーワークの内科医栗原一止(いちと)先生が主人公。新婚の奥さん榛名、同じ下宿(もと旅館)に住んでいる文学や哲学に詳しい学士殿、絵描きの男爵、一止の同僚・砂山次郎が主な登場人物。
末期の患者さんも出てくる。特に安曇さんのエピソードはよかった。
著者は実際に長野で勤務する若い医師だそうで、医学方面のディテールがリアルなのはそのせいかと思った。感動するというほどではなかったが、楽しく(と言っていいのか?)読めたので、続編も読むし映画も見てみる。
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1作目は文庫化されて安くなってますよ。いつの間にかマンガにまでなってます。
そして、2作目は話が複雑になり深みを増した印象で、悲しい別れもあり、かなり涙腺が緩んでしまいました。
神様のカルテ 2
人の生と死が交錯する24時間診察の忙しい病院で、ベストを尽くす医師たち。
「誰もがいつでも診てもらえる病院を」というのが、大狸先生(内科部長)と古狐先生(内科副部長)の学生時代の約束でした。そしてできたのが、365日24時間患者を診察してくれる本庄病院でした。一止の勤務先です。相変わらず激務をこなす一止の元に、大学時代の旧友で血液内科医のタツ(進藤辰也)が東京から戻ってくるのです。しかしその傍らには、同じく同級生で、タツと結婚した小児科医の如月はいませんでした。しかも、タツは何か隠しており、皆が忙しいのに自分だけ先に帰ったりします。一止は旧友のあまりの変わりように悩みます。
最近言われている「コンビニ医療」、「深刻な医師不足」、「小児科医の激務」の問題は切実です。前作にはなかった視点である気がします。それを作者は登場人物に見事に表現させています。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、病に倒れる重要人物がいて、ちょっと涙腺が崩壊してしまいました。患者さんでは、仲の良い老夫婦のトヨさんとマゴさんのエピソードが同じく泣かせます。最期まで仲の良い、このような夫婦でありたいものですね。
映画では宮崎あおいが演じている一止の妻・榛名(ハル)は、上の第1作の紹介で書いてませんが写真家です。華奢な身体に重い機材を担いで、長いこと山を撮りに出かけたりする、非常に芯が強く魅力的な女性として描かれています。ちなみに一止役は桜井翔です。
映画DVDは一昨日くらいにビデオ屋で見かけたのですが、1作目をベースとしているようですね。今の手持ちが片付いたら見てみようと思いますが、大狸・古狐コンビがどうやらいないらしく(片方だけ)、一止とハルのラブストーリーが軸であるような印象を受けました。もしそうだとしたら、ちょっとがっかりかも。
この小説は、小説と言うよりファンタジーなのかもしれませんね。どこかで読んだのですが、著者自身が「自分の病院はこんなところではありませんよ」とインタビューで答えていました。この小説の中の医師や看護婦たちは、時に規則を曲げてまでも患者のために心を砕いてくれます。現実のお医者さんだってそうしたいでしょうけれど、残念ながら時間も人的資源も足りません。どこにも存在し得ない病院を、この作品は描いているわけです。
だから、「こんな病院があったらいいな」と皆が思うのでしょうね。