「人生、ここにあり!」――Si Può Fare――精神科病院元患者の奮闘。

こんにちは。富山で化学を中心とする技術翻訳をしていますヨシダヒロコです。スペイン語とイタリア語をゆっくり勉強中です。

先週、ミニシアター系映画を上映している「フォルツァ総曲輪」さんに初めて行ってきました。ちなみにご存じの方もいらっしゃるかも知れませんが「フォルツァ」もイタリア語で、名詞だと「力」などの意味、「Forza!」と命令形だと「頑張れ」みたいな意味のようです。

観た映画は「人生、ここにあり!」(イタリア、2008年)。原題 “Si Può Fare” (やればできる)。

オフィシャルサイト。
http://jinsei-koko.com/

予告編です。公開は全国で富山がラストに近かったようです。

予告編にあるとおり、物語は1980年代にバザリア法という法律で精神「科」病院(翌日追記:「科」を追加しました)が廃止された後のミラノで起こっています。オフィシャルサイトでは見つからず映画館に貼ってあったチラシで見たのですが、実話を基にしています。たしかミラノではなかったと…もう病院は存在自体なくなっていて、障害者の就業センターになっていて、「患者」という言葉も存在せず「センターの利用者」というように呼ぶそうです。

で、ちょっとこの文章、仮にも精神障害者を題材としているのに患者の描写がウケ狙いで嫌なのですが、あらすじをチラシから紹介します。

舞台は1983年のイタリア――ミラノ。型破りな活動で労働組合を追い出された熱血男・ネッロが行き着いた先は、精神病院の閉鎖によって社会に出ることになった元患者たちの協同組合だった。オカド違いな組合の運営を任されたネッロは、精神病の知識が全くないにも関わらず、持ち前の熱血ぶりを発揮。個性が強すぎて社会に馴染めない元患者たちに、”シゴトでオカネを稼ぐ”ことを持ちかける。すぐに手が出るキレやすい男、彼氏が100人いるという妄想を持つ女、UFOが年金を支給してくれていると信じる男…そんな一筋縄ではいかない面々とネッロは、ドタバタなトラブルを巻き起こしながら、無謀ともいえる事業に突っ走っていくが――。

事業とは場当たり的に決まった寄せ木細工。元患者たちは床を芸術的な才能でもって張り替え、仕事も順調。給料をもらって喜び、普通の人のような生活に酔いしれます。しかし、そんな生活を一変させるようなトラブルが。

映画の中には「セレネース」という単語がたくさん出てきます。統合失調症の有名な治療薬で、主治医のデル・ヴェッキオ医師にたくさん投与されているため、元患者たちは眠くなりすぎたり、性生活が送れなかったり(まあ、インポテンツですね)。上のあらすじにもあるとおりネッロは病気のことを知ろうともせず、別の医師に相談して闇雲に薬を減らそうとします。見ててハラハラしました。それが前の段落に書いたトラブルにつながるわけですが。

色々書きましたけど、観た後の気分が非常にいい映画です。特に、みんながバスに乗って歌うシーンが好きだったんですが、この映画を1月から応用編の教材に使っている「(ラジオ)まいにちイタリア語」のテキストでBGMの曲名が分かりました。ここにビデオを貼っておきます。2000年の古い曲でPVはありませんでした。

先ほど「上映は富山がほとんどラスト」と書きましたが、山梨で2月11日、12日に当事者の方々などを対象に上映会が行われるようです。夕べ眠れずにツイッターを眺めていたら、どうやら精神科病院らしき病院のブログからたどり着きました。わたしも当事者ですが、きっと観た人は勇気を与えられることと思います。でも、今流行りの「キラキラ差別」は嫌ですね。簡単に「前向きになれ」「差別はいけない」じゃダメだと思います。善意なだけに余計始末が悪い。

http://yarimashoukai.blogspot.com/

最後にイタリア語の観点から。

映画の冒頭の会話から、NHKのテキストを引用します。

Del Vecchio: Salve. Del Vecchio, Presidente della Cooperativa.
Nello :Trebbi.
Del Vecchio: Scusi il ritardo. Ragazzi, è arrivato il nuovo direttore.
*************************
Nello: Siamo colleghi, possiamo darci del tu.
Fabio: Colleghi. Come vuole Lei, signor Direttore.
Nello: Nello. Puoi chiamarmi Nello.
Fabio: La ringrazio, signor Nello.
Nello: Sono io che ringrazio Lei, signor Fabio.
Luisa: Io mi chiamo Luisa. Anch’io voglio essere chiamata signora.
Nello: Certo, signora Luisa.

日本語訳
イタリア語の二人称にはtu(君)とLei(あなた)があります。元患者たちはかたくなな態度を取ります。

デル・ヴェッキオ: どうも。デル・ヴィッキオです。協同組合の理事長です。
ネッロ: トレッビです。
デル・ヴェッキオ: 遅れて失礼しました。みんな、新しいマネージャーがいらしたぞ。
*********************************
ネッロ: われわれは仕事仲間なんだ、言葉を崩そう(注: “tu”で呼び合おうと言っている)。
ファビオ: 仕事仲間ですね。かしこまりました。マネージャーさん。
ネッロ: ネッロだ。ネッロと呼んでくれたらいいよ。
ファビオ: ありがとうございます、ネッロさん(注: わざわざ「シニョール」がついている…)
ネッロ: お礼を言うのはこちらです、ファビオさん。
ルイーザ: わたしはルイーザ。わたしも”さん”つけて呼んで欲しいわ。
ネッロ: もちろんです、ルイーザさん。

ところが、段々元患者たちの態度が変わってきます。ネッロがいない間に「ネッロはどこに行っちゃったの?」と言い出したり、映画の終盤では、最初こんな態度を取っていたルイーザ(だったと思う)、トラブルを起こしたネッロに向かって”Torni?”(戻ってくる?)と親しげに話しかけます。

これが分かっただけでも、毎日勉強していた甲斐があったと思ったわけです。
長文におつきあいくださり、ありがとうございました。

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