片瀬久美子さんの「あやしい放射能対策」。 

こんにちは。富山で化学翻訳を営むヨシダヒロコ(@chiruru)です。医薬翻訳者の駆け出しでもあります。

原発事故で放出された放射性物質による被害を避けるための対処法として、”放射能を分解除去できる”とか”放射能の毒出しができる”などと宣伝されている疑わしい方法が、雑誌などのメディアや放射線の害を警告する活動をしている一部の団体などから紹介されて広まりつつある。しかし、体内の放射性物質除去という効果に疑問が大きいだけでなく、かえって健康を害する恐れがあったり、効果が期待できないのに高額な商品であるなど、問題視すべきものが多い。その代表的ないくつかを紹介する。

SYNODOS JOURNAL : あやしい放射能対策 片瀬久美子

震災以降ずっと言いたかったけどうまく言えなかったこと、いやそれよりはるかにレベルの高い文章なのでオススメ。

まず、マクロビについて。

もともとはマクロビオティックにもとづく食事療法を実践していた医師が、長崎の原爆の被爆者達に「爆弾をうけた人には塩がいい。玄米飯にうんと塩をつけてにぎるんだ。塩からい味噌汁をつくって毎日食べさせろ。そして、甘いものを避けろ。砂糖は絶対にいかんぞ」と指導していたそうで、それが伝えられて味噌や玄米、塩などが放射線の害を防ぐとされている。

なるほど、だから味噌なんですね(震災以来、放射能を取り除くには味噌、とマクロビオティック信奉者が言っていたのです)。意外と歴史があるみたいで、もっと最近始まったものだと思っていました。

リンク先のFoocom.netの記事。

「1日2杯の味噌汁が効く」は本当ですか?  放射能汚染のトンデモ科学に騙されないために

私はここで「味噌汁にはまったく効果がない」ということを言おうとしているわけではない。しかし、科学的な検証をしていない『AERA』の記事を信用して、これまで味噌汁を飲んでいなかった人が味噌汁を飲んだり、味噌の摂取量を増やしたりする人が増えることはありえる。その人たちにとっては、放射線の防御効果は不確かであるにもかかわらず、食塩摂取量は上がることになるだろう。

健康になるために食べた味噌で、例えば高血圧なんかになっては元も子もありませんものね。

次は、EM菌について。

EM菌とは、乳酸菌、酵母、光合成細菌を主体とする有用な微生物の共生体だそうである。

これが「放射能に効く」と言ってママたちに人気だったりします。決して馬鹿にしているわけじゃなくて、子供を守らなければいけないママたちの弱みに付け込んだ商売です。

EM菌の開発者は「その主要菌である光合成細菌は、粘土と混和し、1200℃の高温でセラミックス化しても、そのセラミックスから取り出すことが可能である。想像を絶するこの耐熱性は、光合成細菌がガンマ線やX線や紫外線をエネルギー源とし得る機能性を有するからである。そのため、外部被曝はもとより、内部被曝の放射能を無害な状態に変換していると考えられた」と説明しているが、1200℃の高温に耐える微生物など、かなり疑わしい。

このセラミックスですが、お風呂に入れたりするそうです。水がきれいになるそうです。

http://www.emj.co.jp/shopping/qanda03.html

EM・X GOLDの製造方法を調べると、最後に抽出・殺菌を行っているのでEM菌が生きたまま体に入るのではなさそうである(http://emx-gold.jp/products/index.html)。だとすると、「EM菌が放射能を抱き込む」という説明は菌が死んで不活性になっているので適用できなさそうである。 (ところで、1200℃でも死なない脅威の生命力というのが本当ならば、EM菌をどうやって殺菌しているのであろうか?)

こういう矛盾したことを平気で言ってのけるところがトンデモのトンデモたる所以です。

次は米のとぎ汁乳酸菌について。

米のとぎ汁に砂糖と塩少々などを加えてペットボトルなどに入れて常温でおいておく方法が紹介されている。とくに培養前の器具類の殺菌もしていないし、特定の種菌も入れていないので、どんな菌が増えるのかあやしい感じだが、甘酸っぱくできたら成功だそうである。それを飲用したり、応用として米のとぎ汁に豆乳を加えて発酵させてヨーグルトとして食べたり、点眼したり、霧吹きして肺内に吸い込んだりすることで、培養された乳酸菌・光合成細菌・酵母によって放射性物質の毒出しをするそうである。あるブログでは離乳食にも使うと書いてあって驚いた。

すごく得体が知れなくて怖いんですけど……。で、こんなことになったりします。わたしも下の文章と似たような例をツイッターで見かけました。

ツイッターで、「米のとぎ汁乳酸菌」による毒出しを実行している人のツイートに「昨夜、乳酸菌を顔にスプレーして、目にもちょっとふりかけて、今朝起きたら両目が真っ赤か!目やにもすごくてびっくり@@ 効いてる証拠って思っていいんですよね?」というのがあった。悪質な代替療法では、害が出ているのにそれは「好転反応」といって毒が出ている証拠だと誤魔化すことが多いが、まるでそれと同じ様子である。効いてる証拠なんていっていないで、眼科に急いで行くべきだろう。

ホメオパシーについて。

砂糖玉にあるかないかくらいの成分をしみこませます。彼らはそれを「水が記憶しているから効用がある」と言ってますけど、水に記憶があるんだったら、例えば上水道や下水道の記憶があったっておかしくありませんよね?誰かが言ってたたとえですけど。

ホメオパシーはこの療法に縋ったことで何人かの死者を出して問題となった。このホメオパシーを推進する団体も、抜け目なく放射性物質の害から身を守るというレメディを宣伝している。「(原文ママ) 特に放射線物質の排出を促すレメディについては、体内に溜まった有害物質がレメディーをとることで体外へと排出されたことが検査結果によって数値で出たケースによって実証されました」と宣伝しているが、この実証されたという実験の詳細などは公表されていない。団体主催者によると「レメディーとってたら、被曝も大丈夫!!」なのだそうであるが、まったく大丈夫ではない。そして、『放射線に対するホメオパシーの防御と治療』という本が出版されており、急性の放射線中毒に対するレメディまでもが記載されているが、内容はどれも信用できない。ホメオパシーのレメディに薬効がないことは、すでにきちんと証明されている。

死者が出た例として、一番新しいのはこれでしょうか。赤ちゃんに必須なビタミン K2 シロップを与えず、代わりにホメオパスからK2 シロップのレメディー(さっき書いたとおり、ただの砂糖玉で薬効なんてない)をもらって与えたところ、ビタミンK欠乏性出血症で赤ちゃんが亡くなってしまったという話です。以下のブログに詳しいです。

わかってないのは自分(みつどん)だった件

ホメオパシーについては、カリスマ的人気を持つ由井寅子氏が被災地で何をしていたか、写真をまとめた Mochimasaさんのエントリも参考になるでしょう。

被災地でピースサインして記念撮影する由井寅子 日本ホメオパシー医学協会会長

ペクチン、スピルリナについては知識がほとんどないため割愛します。いい機会なので今回勉強します。

わたしが上からものを言っているように思う方もいらっしゃるかもしれませんが、わたしも前のエントリ「わたしもいっちょう黒歴史を曝すか。」で書いているとおり、トンデモにはまったことあります。今、被災地を中心とした日本中が閉塞感や絶望感に覆われている中で、希望を与えるかのような嘘をついて自分の懐にいくばくかの金を納めようとする神経が理解できません。被害者が早く目を覚ますことを望みます。

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