「オデパン」。

オデパン

オデパン
文藝春秋
お嬢様・お坊ちゃまが楽しむためのクラブが…連載中。

フランスものが得意だったはずの藤本ひとみ氏が、初めてと言っていいほどまったく日本を舞台にして執筆中(舞台が日本のもの、ないわけではないのですが)。「オール読物」に連載中。

連載を先に読んだら、秘書版「必殺・仕事人」みたいな話で、しかも主人公の秘書はその企業グループのお嬢様という身分を隠して仕事をしているのです。そのトラブルの片付け方といったら、痛快のひとこと。

そういう経緯になった前置きがこの本に書かれているのですが、「オデパン」って何語だっけ(下のリンクを見ると、フランス語で「パラサイト」の意味)、もともと作中では教養のあるおぼっちゃんおじょうさんが上品に楽しむための集まり。

主人公の真織(まお)はまったく感性の合わない男性と結婚して正直後悔している。そういうどうしようもない結婚生活を書かせると、この作家は容赦がなく、えらくリアル(「離婚まで」という佳作もある)。その真織が遠ざかっていた「オデパン」からSOSを受けてある女性を追放する画策をする。

その過程で出て来る聞いたこともないブランド品、しかも現地からほぼ直輸入というくらくらするような話が連発される。描写から質感や品質が分かる。作中、ドレスに100個単位で埋め込んだフローレス(傷がない)のグリーンダイヤモンドを別の女性がエメラルドと勘違いする話が出てくるのだが、正直大笑いした。グリーンダイヤモンドなんて、店頭でもお目にかかったことがない。こんど宝石屋の知人にあったらこの本薦めてみよう。

こんな話を書いている藤本氏が、実は元公務員だったというのは今回後書き読んではじめて知った。ちょっとびっくり。

ネタバレにならないように遠慮がちに書くが、お金持ちじゃないけど魅力的な男性もちゃんと登場する。わたしはその人が一番心に残った。

出版社側の情報。http://www.bunshun.co.jp/yonda/odepan/odepan.htm

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